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ショート動画サービスから学ぶ、ユーザーを惹きつけるSNSマーケティングの秘訣
今世界で「ショート動画」が注目を集めていることをご存知だろうか。ショート動画とは、15~60秒前後の短尺動画のことだ。例として挙げられるのは、言わずと知れたTikTok(中国)やSnapchat(アメリカ)だろう。
最近ではInstagramやYouTubeといった大規模なプラットフォームがInstagram Reel、YouTube Shortと呼ばれるショート動画投稿専用の機能を開始するなど、勢いは止まるところを知らない。
2021年9月時点で、英国および米国のユーザーがTikTokに費やす時間は、すでにYouTubeを上回っているというデータもあるほどだ。今回は、ショート動画がなぜ人々をこれほどまでに惹きつけているのかという理由を紹介し、実際にショート動画を用いた画期的なサービス事例を紹介する。
ショート動画が人々を惹きつける理由
驚くべき勢いで拡大しているショート動画。なぜ人々を惹きつけているのか、その理由から分析する。
1. 動画の世界に没入できる
ショート動画の一番の特徴は、なんといってもその没入感。TikTokを見ていたら知らぬ間に30分経っていた、という経験をしたことをある方もいらっしゃるのではないだろうか。
ショート動画は15秒〜1分以内で動画の結末まで見られるため、飽きることなく最後まで集中して見ることができる。一つの動画の中でもかなりスピーディーに画面が切り替わって場面が進むことも動画に没頭できる一つの要素だろう。
2. 受動的かつ感覚的に沢山の情報を得られる
TikTokを想像していただくと分かるように、ショート動画のUIとして、一つの動画が見終わったら自動的に画面がスワイプされて次の動画が再生されるものがメジャーだ。
そして、動画であることで見たそのままを感覚的に理解できる。例えば記事を読む時のように集中せずとも、大量の情報が流れ込んでくる仕組みになっており、良くも悪くも人々を半強制的に惹きつけている(中毒にしている)のだ。
アメリカのショート動画サービス3選
アメリカ発のショート動画サービスを紹介する。ユニークなコンセプト、およびマーケティング戦略を行っているものばかりだ。
1. Firework
FireworkはB2Cの動画マーケティングプラットフォーム。Fireworkを利用することで、ウェブサイトにノーコードで縦型のショート動画を埋め込むことが可能だ。TikTokやInstagramのストーリーを見るような感覚でページを見てもらえるようになる。
動画を見ながら「購入ボタン」もクリックできるようになっている。Fireworkを使った場合、訪問者が購入ボタンを押す割合がFacebook広告よりも10倍増加したという。
動画に没入することで、商品単体だけでなく、動画内に広がる世界観を含めて商品を良いと感じやすくなる。また、動画を見ることで商品の使用感がわかるため、商品を使用している自分がイメージしやすくなる点も強みだ。
2. Dubsmash
Dubsmashは一言で言うなれば「口パク動画」を作ってシェアできるショート動画アプリだ。自撮り動画に有名な曲の一部やアニメのセリフなどを組み合わせた動画を作ることができる。K-POPアーティストのBTS、日本人モデルの水原希子など、著名人がDubsmashを使った動画を投稿している。
アプリは各国の言語に対応しており、ローカライズも進んでいる。テキストやステッカーなどで動画を加工することも可能だ。
Dubsmashが人気を集めるようになったのは、2018年後半のアプリの大型アップデート以降。2015年、ベルリンで発表されたDubsmashは、以降順調にユーザー数を伸ばしていた。しかし、2017年に発表されたTikTokに急速にシェアを奪われ人気が低迷した。
DubsmashはTikTokと同様、ホワイトアングロサクソン(WASP)をターゲットにしていたが、それではTikTokにシェアを奪われてしまうと判断。そこでDubsmashはユーザー層を再度分析したところ、インディーのヒップホップソングに合わせた「口パク動画」がメインの投稿であるDubsmashは、ヒップホップというジャンルの影響もあり、ユーザーの大半がアフリカ系アメリカ人のティーンエージャーだということが判明。
そこで、一気にアフリカ系アメリカ人のティーンエージャーにターゲットを変更した。これまでベルリンを本拠点として活動していたオフィスを、ニューヨークのブルックリンに移転し、主要ターゲットの環境に少しでも近づき、アプローチする施策を実施した。
2018年後半から、自社の公式Instagramに投稿する動画も9割ほどアフリカ系アメリカ人のダンス動画に変更している。2018年10月以前は、ホワイトアングロサクソン(WASP)が登場する動画がほとんどだったことを考えると、ターゲットを明確に変更したことがここからも見て取れる。
結果、低迷していたアクティブユーザー数は回復。今では米国在住の10代の黒人の約25%がDubsmashを使っているという。
プロダクトの機能性などで差別化を図るのではなく、ユーザーの属性を絞ってユーザーを獲得した好事例と言えるだろう。
3. Triller
Trillerは、アメリカ出身のラッパー3組(スヌープ・ドッグ、21サヴェージ、ミーゴス)が出資しているショート動画投稿プラットフォームだ。
TikTokでは、比較的ダンス動画が多く見られる一方で、Trillerは、音楽にコンテンツの主軸が置かれている。例えばTikTokでは、流行の音楽が使用されることが多いが、Trillerではヒップホップミュージックを用いた動画が多く投稿されている。
Apple MusicやSpotifyなどのストリーミングサービスと契約を結んでおり、使用できる音楽の幅も広い。Trillerはヒップホップのファンダムに近い存在だ。
流行りの音楽を短尺で使用して動画を作成するTikTokよりも、ヒップホップファンにフォーカスしており、よりニッチだが、エンゲージメントの高い層がターゲットになっている。
もう一つ、TikTokと異なる点がある。それは、動画を作成する際、TikTokは自分で動画をつなぎ合わせて作成するが、Trillerはショート動画を複数撮影すると、音楽に合わせてAIがそれらを自動で繋ぎ合わせ、動画に仕上げてくれるところだ。MVのような動画が手軽に作成できるところは大きな強みである。
ショート動画の波は日本にも
実はショート動画の波は日本にも来ている。ショート動画を使った日本のサービスを最後にご紹介しよう。
Mow
MowはVTuberマネジメント事務所のV Chuu(ブイチュー)が2021年8月にリリースした動画を使ったソーシャルマッチングアプリだ。男女の出会いだけでなく、「同じ趣味を持った友人」や「気の合う友人」も探すことができる。
主にZ世代に向けたアプリで、UIはTikTok・Instagramのリール機能に類似している。SNSを見る感覚で相手を探せることが特徴だ。動画を視聴し、気になった相手の動画に対してリアクションを送ることで会話がスタートするため、自然な流れで出会いが生まれやすいというメリットがある。
また、既存マッチングアプリの「テキストと加工された写真だけでは人柄が分かりにくい」「実際に会ってみると想像と違った」といったペインも解消できることが期待される。
ジェンダー的に自由なアプリであることも特徴で、「性別を男性もしくは女性のみしか選べない」という一般的なマッチングアプリに必要な設定はない。ジェンダーフリーな設定、動画というコンテンツを投稿して利用するサービスであることを考えると、ターゲットであるZ世代の傾向をよく捉えたサービスだと言える。
一般的なマッチングアプリは良くも悪くも「男女の出会いを求めている感」が出てインストールすることに抵抗がある人も一定数いるだろう。
しかし、「ソーシャルマッチング」アプリであり、男女関係なく新たな人間関係を構築できるアプリであれば、抵抗が少なく感じるユーザーも多いのではないだろうか。コロナ禍で人と出会うことが難しくなった中で、新たな出会いや繋がりを生むプラットフォームになりそうだ。
おわりに
日米ともに、ショート動画を用いたサービスは今後さらに拡大が予測される。今回紹介したサービスは、ターゲットを見極めたり、彼らに合ったマーケティング戦略を立てることで、サービスを低迷期から復活させていたり、人気を獲得したりしている。これらは、ショート動画以外のサービスの改善や、新規のサービスを立ち上げる際にも役立つ考え方だ。
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