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リモートワークで組織カルチャーを醸成するためのアイディア
日本では、ここ最近で今までは一部の企業でしか採用していなかった、リモートワークに注目が高まっている。その背景には、モバイルデバイスやオンラインツールの発達、そして感染症に対しての危惧があるだろう。
こちらアメリカではその国土の広さから、すでに多くの企業がリモートワークを実践している。実に、米国企業の約5万社が採用しているほど、一般的になってきている。
サンフランシスコと東京にオフィスのある我々btraxでも、都合に応じてリモートで働けるようになっているし、他の州に住んでいるスタッフもいる。そもそも、日本とアメリカの2つの国をまたいでの仕事なので、自ずとリモート性が高くなる。
リモートワークしやすい職種
もちろんその仕事の内容によっては、物理的に一つの場所にいないと仕事が遂行できないこともある。一方で、職種によってはリモートワークがしやすい、もしくはリモートワークの方が良い結果が出やすいケースもある。アメリカでは下記の5つの仕事は比較的リモートに向いているとされる。
- 経理
- エンジニア
- 教師
- ライター
- コンサルタント
上記以外にも、最近はテクノロジーの発達により、医療系、IT系、そして営業系の仕事がリモートになり始めている。日本の感覚だと、営業は対面が常識とされるが、国土の広いアメリカでは、オンラインミーティングを通じて営業活動をすることが一般的になっている。
リモートワークを実践している海外企業例
会社単位ではどうだろうか?一つの例として、アメリカでは、下記のようなスタートアップおよびテクノロジー企業がリモートワークに対応している。(参考: FlexJobs)
業種別では:
- IT系: SAP, Red Hat, Salesforce
- 医療、ヘルスケア系: Magellan Health, CVS Health, BroadPath Healthcare Solutions
- 営業系: Hibu, Enterprise Holdings, Philips
- 教育系: Houghton Mifflin Harcourt, Pearson, EF – Education First
- カスタマーサービス系: Concentrix, Liveops, Sutherland
- 経理、会計系: Fiserv, Wells Fargo, JPMorgan Chase
- 人事、採用系: ADP, Kelly Services, Robert Half International
下記の企業などは、ほとんどのスタッフにリモートで働くオプションを与えている。これはすなわち、住んでいる場所とオフィスが全く異なっていても就職できるということである。
InVision
本社はNYだが、全員のスタッフがリモートで働けるようになっている。
リモート対象のスタッフ率: 100%
GitHub
世界中からの人材採用と、より集中して働けるようにリモート勤務オプションを与えている。
リモート対象のスタッフ率: 100%
SalesForce
34,000人のスタッフ全員に対してリモートで働くオプションを与えている。
リモート対象のスタッフ率: 100%
Amazon
より多くの人材を獲得するために、多くの職種においてリモートのオプションを設定している。
リモート対象のスタッフ率: 94%
TopTal
国内、および海外からの人材獲得のために100%のリモートオプション率を達成している。
リモート対象のスタッフ率: 100%
リモートワークのメリット・デメリット
最近はリモートの利点ばかりが注目されがちであるが、もちろん弱点もある。それぞれについて今一度確認してみよう。
リモートワークの利点
- 通勤時間の短縮
- 出勤準備時間の短縮
- 通勤コストの削減
- オフィス内の雑音が無い
- 仕事とパーソナルな時間の融合が可能
- 子供の送り迎えがしやすい
- タスクによっては仕事の効率が高まるケースがある
- 好きな場所から仕事ができる
- 勤務時間がフレキシブルになる
リモートワークの弱点
- チームメンバーとの心理的距離ができる
- 電気代が上がる
- カフェ代がかかる
- 情報漏洩の可能性
- 上司に必要とされるマネージメントスキルが上がる
- 仕事内の内容によっては効率が悪い
- オンラインミーティングはで密談がしにくい (画面の外に誰かいるかも)
- 仕事のあとのカジュアルな食事や飲み会に参加できない
- 人事評価が完全に結果主義になりがち
リーダーシップスタイルによってもリモートに向き不向きがある
実はあまり知られていないポイントとして、会社やチームトップのスタイルによって、リモートワークに向いているか向いていないかの差が出る。リーダーシップはおそらく下記の3つのスタイルに分類される。
- カリスマ型: 圧倒的な存在感と説得力で周りのスタッフを引きつける
- 人間力型: スタッフへの細かな心遣いを通じてチームのパフォーマンスを上げる
- 実行型: とにかく仕事の結果を見せることでメンバーを引っ張っていく
この中で、最もリモートでもリーダーシップがはっきしやすいのが、3のスタイル。オンラインでもオフラインでも、仕事の結果を出すことでチームがまとまる。その次が2で、対面とは異なる方法だが、各スタッフに対してのやりとりをすることで、リーダーシップが担保される。一方、1つめのカリスマ力は、その姿がリアルに見えてこないと一気に下がってしまう。
最初から完全リモートのAutomattic社からカルチャー醸成方法を学ぶ
このリモートワークのコンセプトをいち早く取り入れていたスタートアップが、Automatticだろう。Automatticは、ブログプラットフォームのWordPressを開発している会社で、世の中のサイトの30%が利用している。
同社は15年前の創立当初から、全てをリモート社員でスタートした。当時のチームはファウンダーのMattと20人のリモートスタッフで構成されていた。
世界の99.9%の人材を失わないためのリモートワーク戦略
そのころにサンフランシスコのイベントでMattと対談した際に「採用するスタッフをオフィスに来れる人限定にしちゃうと、世界の99.9%の人材を獲得できなくなる。世界には優秀な人たちがたくさんいるのに、その人達と仕事ができないのは、あまりにももったいない」と語っていたのを覚えている。
オフィスに来ている ≠ 仕事をしている
彼によると、会社のオフィスにスーツで出社し、9時から5時まで机にへばり付きエクセルを睨んでることは、一見仕事をしているように見えるかもしれないが、必ずしも結果に繋がっていない可能性がある。オフィスに来れば仕事をしていると評価される時代は終わったと語る。
800人のスタッフは世界67か国に点在
その後Automatticは成長を続け、現在では、800人の従業員が世界67か国から仕事している。人によっては毎月旅行をしながらノマド的に働いているとのこと。場所も、時間も、文化も違うスタッフをどのようにしてまとめているのか。リモートをキーワードに、そのカルチャー部分を探ってみる。
世界各地に点在するAutomatticのスタッフたち
オフィスがない代わりにスタッフに「お小遣い」を提供
オフィスの家賃が浮いた分をスタッフに対して毎月の$250の「お小遣い」として与えてる。その使い方は自由で、カフェのコーヒー代にしたり、コワーキングスペースに使ったりできる。シアトル在住のスタッフは、近くにいるスタッフと一緒に集めたお小遣いで、船着場をオフィスとして借りていたこともあったという。
また、新入社員にはホームオフィスをセットアップするための助成金も与えている。そのお金で自由に家具やパソコンなどのデバイスを購入してもらう。
全てドキュメント化する
オフィスでのやり取りと違い、リモートチームは基本的にオンラインでのコミュニケーションとなるため、それに参加していなかった人にも後で見れるように、やりとりの内容をドキュメントにまとめておく。もしくは、やりとりの様子を動画にして残しておく。
雑談チャンネルを設ける
リモートチームの一番の弱点は、仕事に関係のない雑談がしにくい点。これがオフィスだと、キッチンや共有スペースなどで、カジュアルな話ができるが、チャットなどのやり取りだと、どうしても仕事の内容に終始しがち。そのために、カジュアルなやりとりのできるチャンネルを設け、そこで週末の活動や、趣味の話ができるようにしている。
テキストスタンドアップ
通常のオフィスだと、毎朝チームが集まり、その日のやることなどを軽く話し合う”スタンドアップ”と呼ばれるミーティングが行われる。それをチャットでも前日やったことや、今日やることを軽く説明する、テキストスタンドアップ方式をとっている。
内向的なスタッフを安心させる
リモートでやりとりする際には、どうしても疑心暗鬼になりがちで、特に内向的なスタッフの人は、周りにどう見られるかを気にしすぎる。そういう人を安心させるために、上司や同僚があえてカジュアルな会話を振ってあげたりして心をほぐす。また、バディー制と呼ばれる、チーム内に友達を作り、精神的安心感を担保する方法もある。
文化の違いを理解する
複数の国から参加している場合は、それぞれの国の文化的背景から来る、やりとりのスタイルの違いを理解する。はっきりというタイプや、なるべく遠回しにする文化、ジョークが多いスタイルなど、それぞれの国による違いを理解し、許容する。
インプットよりもアウトプットを重視する
どのようなやりとりをしているか、どのようなスタイルで仕事をしているかよりも、どのような結果を出しているかという、アウトプットに注目をして評価を行う。
年に一度みんなで集まる
スタッフ全員がリモートのAutomatticは、全スタッフが、年に一度世界のどこかの街に集まる、Grand Meetupと呼ばれる合宿を行う。毎年異なる場所で1週間スタッフ全員が集まり、半分は仕事、半分は遊びを通じて交流を行う。この合宿では、なるべく会ったことのないスタッフ同士が交流できるように、食事の際の座席も考えられている。そうすることで、よりお互いの信頼感を高め、今後の仕事の効率アップにつなげている。
年に一度全スタッフが一つの場所に集まるGrand Meetup
信頼関係をアップさせる雑談と冗談
リモートで働く際に、最も危惧されるのがスタッフ同士の信頼関係の担保。日本では雑談は悪とされがちだが、アメリカ企業ではカジュアルな会話から生まれるアイディアや、連帯感がカルチャー醸成では重要な方法となっている。チャットやオンラインミーティングでも、雑談ができるようにすると、心理的な安心感が生まれる。そのためには、リーダーが率先して冗談やパーソナルな話題を初めてみると、周りもそのノリを理解してくれる。
目指すのはオフィスにいなくてもコネクトしてる安心感
オフィスに来ていないということは、オフィスにいなくても声をかけやすいということでもある。それを活用して、好きなタイミングでメッセージを送り、空いた時間でさくっと話すことも可能になる。会議室を抑える必要もない。これは社内だけではなく、社外の人たちも同じで、営業スタイルもアポイント型からオンデマンド型に変更し、商談のスピードを上げることも可能になる。
時代はリモートから分散型へ
実は、Automattic社を含め、いくつかの企業は、リモートと呼ばずにDistributed (分散) 型のチームと呼んでいる。これは、リモートという響きが、どうしても距離があるように感じるため、物理的に離れた場所にいるスタッフで構成されるチームを、分散型チームと呼ぶのがトレンドになりつつある。サーバーのように、チームも一つの場所に集まっていた時代から、クラウド的に分散するのが時代の流れかもしれない。
まとめ: それぞれの良し悪しを理解し対応する
ここまで読むと、まるでリモートワークが最高だという感じもするが、もちろん弱点もある。どうしてもスタッフの距離は開いてしまうし、ディスカッションなどの対面で行う方が圧倒的に有利なタイプの仕事もある。
一方で、通勤時間の節約や、より仕事に集中できる環境など、メリットもいくつかある。どちらが良いか悪いかということではなく、その仕事の内容によって、臨機応変に対応できるのがベスト。意味もなくオフィスに強制的に出勤させたり、頑なにリモートにこだわる必要はない。
また、「ワークライフインテグレーション」のように、仕事と私生活をあえて分けずにミックスしてしまう、新しいタイプの働き方もある。
最も重要なのは、スタッフ同士でしっかりと信頼関係を築き、ゴール達成に対して最適な働き方をすることで、みんながハッピーに働けるスタイルを常に探し続けることだろう。
我々btraxも、社内カルチャーの醸成からアウトプットとしてのビジネスの結果が生まれると考え、日々クライアントの方々と共にイノベーションの創出に取り組み、マインドセット構築をお手伝いするプログラムも提供している。ご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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