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不況に強いビジネスと成長した企業から学べる4つの教訓とは
- 新型コロナウィルスの拡大で世界的にGDPが低下
- 不況に強いとされる5つの産業
- 不況がきっかけで誕生・成長した企業
- リーマンショック直後に生まれた多くのスタートアップ
- 不況がイノベーションに不可欠な理由
新型コロナウィルス の経済に対して与える影響が少しずつ表に出始めている。内閣府の発表によると4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除く実質で前期比7.8%減、年率換算では27.8%減だった。
マイナス成長は3四半期連続で、減少率は比較可能な1980年以降でこれまで最大だった2009年1~3月期(前期比年率17.8%減)を超えた。
世界レベルでの実質GDP増減率 (年率) 落ち込みはリーマン時の3.5倍
日本はまだマシな方で、国外を見てみると主要国の2020年4~6月期の実質国内総生産(GDP)は前年同期比9.1%減少した。リーマン危機時の約3.5倍の落ち込みとなった。
特にイギリス、フランス、イタリアなどのヨーロッパ各国の低下が目立つ。また、アメリカも日本を上回る低下を見せている。
出所: 時事通信 作成: 2020.8.16 Masashi Hagihara
実際にアメリカのスタートアップ界隈でもレイオフが進み、全米での失業率も急激に増えてきている。
不況こそイノベーションを生み出す最適なタイミング
これだけを見ると、悪いことしか起こっていないように感じられる。しかし、歴史的には多くのビジネスやサービスが不況の最中に生み出されている。
現在でもユーザーに愛されている多くの企業やブランド、製品のその多くは景気が良い時よりも世の中に大きな変化がもたらされた時期にリリースされたケースが少なくない。
米国ユーイング・マリオン・カウフマン財団による2009年の調査によると、フォーチュン500社のうち不況や弱気市場で創業した企業の割合は驚異的に57%に達している。
その主な理由としては:
- 世の中が大きく変革することで新たな社会課題が生まれる
- 就職できなかった人が起業家になってビジネスを始める
- 人件費などのビジネスを行う上でのコストが下がる
- 倒産するビジネスが多くなるため、競合が少ない
不況に強いとされる5つの産業
歴史的に見ると不況や景気後退の影響を受けやすい業界もあれば、景気がどうなろうと業績が好調な業界もある。
景気に全く左右されない企業は無いが、失業率が上昇したり、消費者心理が低下したりしても、次のような業界は好調な業績を上げている傾向がある。
日用消費財
景気がどうなろうと人々は特定の日用品を定期的に必要としている。
歯磨き粉、石鹸、シャンプー、洗濯洗剤、食器用洗剤、トイレットペーパー、ペーパータオル。これらの製品は常に需要があるため、消費者の必需品とされている。
P&Gは不景気の時期にに自社のブランディングに注力し、業績を成長させた歴史がある。
スーパー・ディスカウントストア
不景気になると外食を控える傾向があるが、消費者はどこかで食品を購入する必要があり、その多くはスーパーやディスカウントショップで購入される。
ウォールマートやコストコは不景気になる程業績が伸びている。
酒類メーカー
調査によると、不況時には消費者はアルコールやその他の悪徳品に費やす総額が少なくなる傾向にあるが、バーよりも家で飲む機会が増える。そしてより安価な製品をより多く購入するにつれ飲酒量は増加する傾向にある。
不景気が与えるストレスもアルコールの需要を高める理由になる。
コスメ関連
不況にもかかわらず、女性も男性も社交的な場や仕事場での外出時には身だしなみを整えたいと考えている。
例えばエスティローダーは、不景気で人々の気持ちが沈む時期に、少しでも明るい気持ちになれる真っ赤なリップが大ヒットして業績を伸ばした。
葬儀関連のサービス
人生で確実に訪れるのは「死」と「税金」の2つと言われる。不況の際に必ずしも業績が上がるわけでは無いが、葬儀関連のサービス景気に左右されない産業である。
不況がきっかけで誕生・成長した企業
それでは実際に不況の時期が一つの転機となった企業の例を紹介する。
GE – 1980
天才発明家エジソンがジェネラル・エレクトリック社 (GE) をニューヨーク州で設立したのは1890年。世界経済が不況に陥っただけでなく、米国経済の崩壊と金の供給不足に直面した。
しかし、同社は生き残り、1896年にはダウ・ジョーンズ工業平均株価の12社のうちの1社となり、113年後の今日に至っている。
IBM – 1896
IBMが1896年にニューヨークで設立された頃、米国経済は長期的な低迷に至っていた。
その後、1924年にトーマス・ワトソンが経営を引継ぎ、パンチカードのコア技術をベースに大企業のクライアントとの大規模なプロジェクトの獲得に注力することで会社を急成長させた。
その成長の秘訣は「ビッグ・ブルー」と呼ばれるようになった同社の文化的基盤だと言われている。
General Motors – 1908
1908年9月16日にミシガン州フリントにゼネラル・モーターズが設立された。当時、米国の金融システムが再び暴落し、連邦準備制度の創設を促すきっかけとなった暴落から立ち直ろうとする中、GMはオールズモビル、キャデラック、リライアンス・トラック・カンパニーなどのブランドをわずか1年の間に買収した。
1923年にアルフレッド・P・スローンが引き継ぎシボレーブランドが飛躍たことで、1980年代まで続く前例のない成長曲線を描いた。
Disney – 1923
兄弟ウォルトとロイディズニーは1923年にディズニーブラザーズカートゥーンスタジオをロサンゼルスにあった叔父ロバートのガレージ設立した。
そこで不思議の国のアリスやラッキーラビットのオズワルドなどの作品を制作。しかし、当時は大恐慌の真っ只中で、しばらくは鳴かず飛ばずでだった。
転機となったのはミッキーマウスの登場だった。ミッキーは、会社を新たな高みへと押し上げ、世界一のエンターテインメント企業にまで成長させた。
Microsoft – 1975
1975年、米国はスタグフレーションに陥っていた。失業率の上昇とインフレ率の上昇とGDPの低迷が重なり、OPECが原油価格を4倍にすることを決定した結果ガソリン価格が大幅に高騰した。
ビル・ゲイツとポール・アレンは、最初の顧客の本社近くのアルバカーキ(N.M.)にマイクロソフト社を設立した。
その後、1979年にワシントン州ベルビューに移転した同社は、MS-DOS、Windows、Microsoft Officeなどの製品を立て続けにリリースし、世界一のIT企業への急速に成長した。
CNN – 1980
連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制のために積極的な利上げを決定したとき、それは「二番底」と呼ばれる不況を引き起こした。
1980年6月1日(日)午後5時、メディア起業家のテッド・ターナー氏がカメラの前に立ち、24時間ニュースを放送する米国初の新チャンネル「ケーブル・ニュース・ネットワーク」を視聴者に紹介したのはこのような谷間の最初の出来事だった。
現在では、1982年にCNN2という名前でデビューした姉妹ネットワークのヘッドライン・ニュースとともにCNNのニュース番組は世界中のテレビで見ることができるほどに成長した。
ユニクロ – 1997
前身の「ユニーク・クロージング・ウエアハウス」が設立されたのは1984年だが、ユニクロとして最も飛躍したのがバブル崩壊後の1997年頃から。
その時期よりプライベートブランド)の売上比率を一挙に高め、製造直売小売業(SPA)に業態転換したことで大きく飛躍した。翌年に発売された「フリース」は衣料は2~3万枚も売れればヒットといわれた時代に、200万枚も販売を記録した。
翌年は800万枚のメガヒットを記録し、日本中がフリースブームに沸いた。ユニクロはバブル&デフレの波に上手に乗ったことで大躍進を遂げたことになる。
Apple – 2001
もちろんAppleの創設は2001年ではなく、1976年。しかし、現在の急成長の基盤を作ったのはジョブスが同社に復帰して数年後の2001年頃。その時期は、ドットコムバブルが崩壊し、テクノロジー系の企業に関わった多くの人が苦い経験をしていた。
ジョブズがエンジニアチームに依頼してiPodのプロトタイプを開発したのもこの頃のこと。2001年10月23日に発売された5GBのiPodは、わずか1年の開発期間を経て”ポケットの中に1000曲を入れる “を可能にした。
そして、iPodとそのiTunes音楽プラットフォームは瞬く間にヒットしただけでなく、iPhoneやiPadへの道を切り開き、Appleを世界のトップ企業として再確立させた。
リーマンショック直後に生まれた多くのスタートアップ
スタートアップの事例からも学んでいこう。
おそらく直近で一番記憶に近い大きな不況が2008年頃に起こったリーマンショックだろう。実はこの直後から、現在多くの人に利用されているサービスが生み出されている。
2007年のiPhoneの発売にも合わせ、この時期は近年イノベーションが最も創出された時期といえる。
Airbnb – 2008
複数のビジネスモデルを試していたスタートアップ ファウンダーの3人が家賃を払うために、共同で住んでいたアパートの一部を貸し出したことからAirbnbがスタートした。
その後、何度かのピボットを経て、現在のサービスモデルにたどり着いた。新型コロナの影響で今一度ピボットを行い、IPO準備を進めている。
Credit Karma – 2008
クレジットスコアを無料で提供するCredit Karmaは2008年にスタート。それまで有料であったサービスを完全無料化することで、多くの人気を集めた。
Credit Karmaはその後2020年2月にフィンテック大手のIntuitに$7.1Bで買収された。
Groupon – 2008
Grouponは2008年の不況の真っ只中に、消費者に商品やサービスのお得な情報を提供して企業を宣伝するウェブサイトとして設立された。
市場が不確実な時代において、効率性、コスト削減、透明性のある価値をすべての関係者に提供するGrouponは企業やブランドと顧客を結びつけるためのプラットフォームを提供し、人気を博した。
その後、Grouponは2011年にIPOを果たした。
Slack – 2009
Flickrの創設者が始めたゲーム系スタートアップの社内コミュニケーションツールとして開発されたのがSlack. その後順調にユーザーを集め、2019年にIPOを達成。
新型コロナの影響でリモートワークの拡大が進み、Slackは需要は大幅に拡大している。
Square – 2009
Twitterのファウンダーの1人がモバイル決済/端末サービスとしてSquareをリリースしたのが2009年。フードトラックなどの普及によりユーザーを拡大した。
2015年にIPOし、現在では日本を含め世界中で3,000万社以上の企業が利用している。
Uber – 2009
ライドシェア大手のUberは、2009年にファウンダーたちが寒い冬のパリでタクシーが捕まらない状態からインスパイアされスタート。
スマホで呼べるリムジンサービスから開始し、その後、フードデリバリーサービス、バイクやスクーターのシェアサービス、人材派遣サービスなど、様々なプラットフォームを横断して国際的に展開。
2019年にはIPOも果たした。
Venmo – 2009
大学の同級生だった2人が、2009年にデジタル決済アプリVenmoを立ち上げた。当時は手数料がかかっていた個人間デジタル送金を完全無料にすることで多くのユーザーを獲得した。
その後、決済プロセッサー大手のBraintreeが2012年に2600万ドルでVenmoを買収し、デジタル決済大手のPayPalはその後2013年にBraintreeを3億ドルで買収した。
WhatsApp – 2009
主要メッセージングアプリの一つであるWhatsAppは、元Yahooの2人によって世界中の人々が素早くメッセージをやり取りできる方法として2009年に作られた。
当時はWifi経由でメッセージが送ることができるのが画期的だったため、携帯ネットワーク機能を持たない国で大きな人気を博した。
2014年にFacebookがWhatsAppを190億ドルで買収し、現在では世界で20億人以上のユーザーに利用されている。
Pinterest – 2010
デジタルピンボードのPinterestは2010年に二人のファウンダーによって設立された。その使いやすさと楽しさから人気を集めた。
2019年にはIPOも果たし、現在では毎月3億人以上のユーザーが利用しているサービスに成長した。
Instagram – 2010
現在では世界で大人気のInstagramも2010に誕生した。スマホで写真を撮りアップするだけのシンプルなアプリに人気が集まった。その後、2012年にFacebookによって10億ドルで買収される。
現在では世界中に1.2億以上のユーザーを抱える。
不況がイノベーションに不可欠な理由
このように、現在誰でも知っているような一流企業のその多くが不況の真っ只中、もしくは直後にスタートしているのがわかる。おそらくそれは偶然ではない。
好景気の時はぶっちゃけ何が理由でヒットしているかわかりにくい。消費者にも余裕があり投資も集まりやすいため、中途半端なサービスでも売れる可能性がある。
その点、不況の時こそ世の中に本当に求められる消費やサービスだけが生き残ることができる。そうなってくると、その時期に生き残った企業は、その後大幅な成長を達成するポテンシャルを秘めている。
今日のような景気後退の中でも、未来のトップブランドになる企業がスタートを切っている可能性もあるということとだ。
一つ確実に言えるのは、変化は必ず訪れるし、企業は常にそれに対応していかなければならない。
ちょうど100年に一度の大きな変化が今年訪れたということで、近いうちに産業の新陳代謝が急激に進むことが予想される。
おまけ: ビートラックスも第一次ドットコムバブル後にスタートした
ちなみに、我々ビートラックスの設立は2004年8月。当時の不景気が理由で創設者が就職先が見つからなかったのが創設のきっかけとなっている。
当時はWebデザイン会社としてスタートしたが、現在ではUXデザインを中心に、リサーチから新規サービス作りまでを幅広く提供している。ご興味のある方は、ぜひご連絡ください。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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