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オープンイノベーションが日本で生まれにくい理由とは?
以前の記事「【オープンイノベーション】 大企業がスタートアップとの協業を成功させる為の3つの方法」を読んでもわかる通り、語り尽くされたかのようにも感じられるこのトピック。それでもいまいちど、自分なりの見解を書いてみようと思った。
オープンイノベーションとは?
一つの企業が他の企業や外部リソースを利用する事で、新たな事業形態を生み出す取り組みが注目されている。
具体的には、企業間の垣根を超えたコラボレーションや、企業と個人の協業、社員以外でも自由に参加出来るアイディアコンテスト等、複数のスタイルが存在する。
これらは、”外”の力を借り、一緒に作り出す事で、社内リソースだけでは実現不可能だったアウトプットを得る事を目的としている。
多くの場合、大企業とスタートアップがコラボーレーションし、それぞれだけでは生み出されないようなイノベーションを生み出そう、というのがオープンイノベーションの典型的なコンセプトであるが、日本ではそれを実現するのがかなり難しいと感じる。
破壊される側と破壊する側がコラボ?
「スタートアップとベンチャー企業の違い」を読んでもわかるとおり、そもそもスタートアップと大企業ではそのゴールも存在意義も大きく異なる。
加えて、特にアメリカ西海岸を中心に、スタートアップの究極の目標が、既存の既得権益でこり固まっている社会をディスラプト (破壊) することであることを考えると、破壊する側とされる側が手を結んで何かを達成するのは至難の技かもしれない。
異なるスタートアップと大企業のゴール
では、スタートアップ企業と大企業では、それぞれ何を目指して進んでいるのであろうか?想定されるゴールを下記にそれぞれ3つほどあげてみた。
スタートアップの3つのゴール
- 新しいビジネスモデルの創造:
時代の変化や先進テクノロジーを活用して、今までに存在していないタイプビジネスを作り出す - 急成長:
とにかく速いスピードで急激に成長し、IPOやM&Aなどのエクジットに向かって突っ走る - 社会の変革:
既存のわかりにくい、使いにくい、値段の高い商品やサービスを破壊し、ユーザーのメリットを最大化させることでより良い社会にする
大企業の3つのゴール
- 利益確保:
大企業であり続けるために、これまで生み出してきた利益を確保し続け、安定した経営状態をキープする - 会社の存続:
急成長よりも安定成長をベースにより寿命の長い企業としての長期的戦略を作成、実行する - 株主への還元:
株価の上昇や利潤の分配などを通じて、株主の方々への利益還元を行う
おそらくこの違いが明確にわかる良い例が銀行 (大企業) とスタートアップ (フィンテック) だろう。
銀行はもちろん安定的してその存在を保ちたいと考え、フィンテック企業は既存の銀行が提供していない、もしくはしにくいサービスを通じて顧客のメリットに繋げる。
これは一見すると水と油に感じるかもしれないが、上手にコラボレーションすればそれぞれに大きなメリットをもたらす。その一方で、多くの場合、そこで働く人たちの意識の違いでなかなかうまくいかないことも多い。
この良い例が、先日、日本のとある銀行の方とのミーティングをした際のエピソード。
今後、フィンテック系のサービスがユーザーのフロント的役割を果たす事が増えそうであるので、一緒にサービス提供をしていくべきだという話をしたところ、銀行のスタッフの方が「では、我々はどのようにフィンテック企業さんに発注すれば良いでしょうか?」との質問があった。
やはり大企業、特に日本では「ベンチャー企業に発注する」という意識が強いのであろう。
オープンイノベーションを実現するために改善すべき日本の3つの商習慣
それでは今後どのような事柄が改善されれば、スタートアップと大企業がコラボする、オープンイノベーションが実現するのであろうか?自分なりにちょっと考えてみた。
1. 納品型の受発注関係
諸悪の根源がこれ。そもそもスタートアップは自社サービスを作り、展開し、ユーザーを獲得している。それに対して「発注」するという意識や、「納品」する契約を結ぶことが既にナンセンス。
加えて、まだまだ多くの契約書が「納品内容が好まれなければ、発注側は納品内容の改善あるいは、発注先を替えることができる」仕組みになっている。未だこの仕組を採用している組織からはイノベーションが望み難い状況かもしれない。”
そもそも、多くのビジネスがデジタルやクラウドへ変換していくなかで、そろそろ「納品」という概念にも限界がきているように感じる。
関連: 日本企業の「納品カルチャー」は終わり:UXこそビジネスの起点
2. 厳しすぎる社外秘制度
そして、社外の企業や人材とコラボしようとも、既存の多くの社内情報が社外秘とされ、外部の人々とやり取りする際に機密保持契約を結ばないと話しが前に進められない事が一般的。ディスカッションすらままならない。
そもそも機密保持契約を締結する事自体に数ヶ月かかるケースもあり、スピードが遅すぎる。
そして、契約内容も、多くの場合変更が難しい事が多く、海外では一般的とされる条件の交渉に柔軟に対応する事が出来ない。これは、担当部署と法務とのやり取りが頻繁に行われていない事が一つの理由であろう。
3. 月末締め、翌月末払い制度
毎日がサバイバルで、一分一秒を大切にしているスタートアップにとっては、日々の成長と売上が死活問題になる。
ここで、日本特有の支払制度、そう、月末締め、翌月末払いの仕組みが全然フィットしない。スタートアップにとってみると、2ヶ月後はどうなってるかもわからない状態なのに、そんな悠長なことを言ってられない。
それも、納品、検収が行われてから請求書の発行となるため、受注する側がいつ支払いを受けられるかの確証が得られにくい。
これらの条件は、恐らく日本特有の下請け業者との取引の中で生まれ、広く一般的とされているようであるが、そろそろ廃止するか、楽し仕組みを利用しないとオープンイノベーションは生み出しにくい。
まずは受発注関係という認識を払拭することから
これらの日本企業の特殊な商習慣は、随分以前に”社内規定”として定めた内容に関して異を唱える者が少なかった事が原因であろう。
発注側がリスクをコントロールし、優位に取引を進められる様になっている。その一方で、受注側はかなりのリスクと不利な条件を受け入れなければならない事が常識になってしまっている。
この辺アメリカではどうなっているのか?
例えばアメリカでは、大企業とスタートアップがコラボする場合、大企業側がスタートアップに投資をするか、APIなどを通じてサービスの連動を行うことが多く、受発注関係になることは非常に少ない。
発注っぽい感じになったとしても、ある程度規模のあるプロジェクトをスタートする際には、全体の半額分ほどを手付金として支払う事が期待され、その後の支払いも、納品、検収型ではなく、プロジェクトのスケジュールに合わせて、毎月定期的に支払われる。
例えば、サンフランシスコのとあるデザイン会社は、ハードウェアのプロトタイプを作成するにあたり、同じ街にある工場と一緒にプロジェクトを進めている。
その工場は、まず全体のコスト見積もりを出し、プロジェクトが進んでいる間、2週間に一回請求書を発行し、その2週間以内に支払いを受けている。そうすることで、信頼関係と健全な経営状態を担保できるのだ。
また、契約内容もその都度チェックを行い、その内容をお互いが柔軟に変更対応する事が期待される。これは、相手企業を下請けではなく、あくまで同等な立場の”パートナー”として認識しているのが大きな理由である。
日本企業がクリアしなければならない課題は多い
今後日本企業が海外の企業やリソースと組む事で新たなイノベーションを創出する為には、リスクを恐れず既存の商習慣から生み出された規定に対して柔軟に変更を施す必要があるだろう。
それには、関係各部署だけではなく、企業のトップが社内規定の大幅な見直しの必要性を理解する事が重要となると感じる。
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