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ワークショップはオンラインでも上手くいく?押さえておきたいポイント5つ
- ワークショップもオンラインで実施する機会が増加
- オンラインワークショップをより上手に実践するためのポイント
- オンラインの利点① 参加における場所の制約を受けない
- オンラインの利点② 保存・複製が簡単にできる
- オンラインの利点③ 具体的な2次元のプロトタイプを素早く作りやすい
- より質を高めるために① 参加者側の安定したインターネット環境、社内ルール等を確認する
- より質を高めるために② インタラクションの機会を意識的に増やす
- 今後はオンラインとオフライン、双方の強みを意識した上で、使い分けていくことが大切
仕事でのオンラインとオフラインの主従関係が崩れた
朝礼、セミナー、打ち合わせ、ハンコも飲みも、オンライン。コロナ禍において、他者との間に身体的距離を保ちながらも経済活動を進めていくため、この数ヶ月は多くの企業が「業務のオンライン化」に試行錯誤してきた。
当初は、在宅勤務やオンライン会議、ウェビナーへの参加などに戸惑いがあった人もいるかもしれない。しかし、「オンラインが前提の暮らし」を体験してみることで、通勤ラッシュからの解放、家族と過ごす時間の充実など、もたらされるメリットに気づかされたこともあったのではないだろうか。
そんな中、米Twitter社は早々に、在宅勤務を社員への「永久の権利」とする発表をした。他、日本国内でも、出社率を5割程度に制限したり、定期代の代わりに在宅勤務費用を導入する企業も出てきている。
(5月、CEOから社員へ「希望する場合は、在宅勤務を永久に続けられるようにする」と伝えられた。出典:Business Inider)
以前は、同じ空間で対面で行うオフラインの業務が主であり、オンラインは「やむを得ない場合の代替手段」だった。
しかし、この数ヶ月でその関係性は崩れた。そして今後は、在宅勤務は働き手にとっての当然の権利、あるいは選択肢となる時代へと移り変わっていく、そんな兆しが見える。
ワークショップも“フロムホーム”を選べる時代
こうした中、ワークショップも「オンラインでの実施は可能か」という問いが多く投げかけられた分野の1つだ。
ビートラックスも、クライアント向けの研修やサービス開発、社内向けのチームビルティングなど様々なワークショップを数多く提供してきた。
そして日本、アメリカの両方でソーシャルディスタンスが強いられるようになり、ワークショップのあり方・やり方を見直し、オンラインワークショップを実施してきた。
こうした経験から、オンラインワークショップにおける、必要なツール、時間配分、プログラム設計、ゴール設定などについて、多くの気づきを得られたと実感している。
そして、オンラインとオフライン、それぞれのワークショップを今後どう使い分けて行ったら良いのか、という視座を得ることができた。
その中でも興味深かったのは、オフラインではできなかったが、オンラインでは可能になるという点も多いことだ。これまでは気づかなかったオンラインの良い点はいくつもある。
そこで今回は、オンラインワークショップの優れたポイント、そしてより上手に実践するコツや注意点を整理したい。
オンラインワークショップの3つの優れたポイント
1. どこからでも参加できる
1つ目は、参加における場所の制約を受けないことだ。インターネットにアクセスできる環境であれば、地方在住の人も首都圏在住の人も、同じ条件下で参加できる。
オンラインでは会場への移動が必要ないため、多様な人がより気軽にワークショップへ参加できるようになる。そして従来のオフラインワークショップ開催のために確保していた移動時間や会場設営のための費用を別のことに回すことができる。
さらに、時差や言語が障壁とならない範囲であれば、海外からの参加も可能だ。btraxの提供するプログラムでは、日本にいながら、サンフランシスコ在住のファシリテーターによるワークショップを受けることもできる。
(弊社サンフランシスコと東京のメンバーが同時に参加したオンラインワークショップの様子。ビートラックス主催のオンラインワークショップでは、全体進行のための音声・ビデオコミュニケーションツールにはZoomを使用している。)
こうした、参加のための機会がより広く行き渡ることは、ワークショップの新たな可能性を広げるという点で、オンラインワークショップの大きな利点だ。
2. 保存・複製が簡単にできる
ビートラックスでは、作業ツールとして主に、MiroやGoogle Slidesなどのオンラインホワイトボードを使用している。これらのデジタルツールのメリットは、手書きに比べて保存・複製が簡単にできることだ。
こういったツール上では、参加者が入力したデータが自動的に保存されていく。そのため、オフラインワークショップで行っていた壁一面のポストイットの撮影、そして共有フォルダへのアップロードという手間が不要になる。
また、各段階でのホワイトボードを消さずにそのまま残しておけることもオンラインの利点だ。
オフラインワークショップでは、次のワークのためのホワイトボードをその都度、用意する必要がある。部屋の壁が手狭になってしまうと、それまでの議論の軌跡を消して新たなスペースを作る、といったことも多く見られた光景だ。
一方、オンラインのツールでは、無制限かつ簡単にホワイトボードを増やしていくことができる。マウスを動かすだけで、議論の振り返りも可能だ。
(オンラインワークショップでは複数のツールを組み合わせて運営している。)
ビデオチャットやZoomの録画データを編集すれば映像資料の作成もしやすいため、ワークショップの過程や雰囲気を参加者以外の人へ伝達・共有することも容易になる。
オフラインワークショップが終わった際に視界に入る大量のポストイットはやりがいを感じさせるものである一方、いつまでもその場に放置できるものではない。ワークショップが終わった後にゴミが出ないという点も、オンラインワークショップの特徴と言えるだろう。
3. 具体的な2次元のプロトタイプを素早く作りやすい
3つ目は、最終的に2次元のプロトタイプ作成を想定している場合ではあるが、画面上で表現可能なプロトタイプを素早く作りやすいことだ。
近年、SketchやFigmaなど、パワーポイント感覚でスマホアプリ等の画面推移を短時間で制作できるツールが普及してきた。より多くの人がサービスのプロトタイピングに挑戦しやすくなってきていると言える。
サービスの2次元のプロトタイプ作成、および検証をゴールとする場合のワークショップでは、最終的にこれらのツールを使ってアプリの画面推移や、一連のユーザー体験をショートムービー等で表現することも多い。
つまり、参加者がオンライン上で、議論をしながら共同制作ができる環境が既に整っているということだ。ゆえに、それまでの議論から制作までの流れがよりシームレスになるという点からメリットは大きい。
もちろん、状況によっては抽象度の高い「手描きのプロトタイプ」が重要となることはある。
プロトタイプを丁寧に作り込みすぎると、作者としての愛着が強くなってしまう、あるいはユーザーからの素直なフィードバックを得づらい、といったことは長らくデザイン思考関連のワークショップや書籍でも言われてきたことだ。
しかし、より忠実なプロトタイプの共有や検証が求められる際は、早い段階からオンラインツールでプロトタイプを作ってしまった方が、メンバー間での具体的なイメージの共有がしやすくなったり、制作・検証までより早く進められることになり、利点も多い。
オンラインワークショップの質を上げるための2つのポイント
一方、オンラインワークショップの質を上げるためのポイント、気をつけなければならないこともある。これらを留意した上でワークショップの準備、設計、運営することが重要だ。
1. 安定したインターネット環境の用意、PCスペックや社内ルールの確認
オフラインでは考慮する必要のなかったことではあるが、オンラインでのワークをスムーズに進めるために、欠かせない準備がある。
まず、移動の必要がなくなる裏返しとして、インターネットへのアクセス環境は確保するということ。
参加者のネットワーク環境が不安定だと、ワークショップ全体の進行に支障が出る。そして同時に、使用PCの処理能力や参加者のワーク環境もクリアにすることが必要である。
MiroやZoomなどのツールの使用にあたっての社内承認を得ることはもちろん、参加者のPCのスペックがこれらの複数のオンラインツールを同時に動かしても耐えられるかどうかも確認しなければならない。
また、参加者のリモートワーク環境のチェックも必要だ。ビデオをオンにした状態で参加できる環境か、ノイズを拾わない静かな環境かも事前に確認しておくことが必要である。
当たり前のことのように聞こえるかもしれないが、オンラインワークショップを実施する上で非常に大事なポイントだ。これらに関するトラブルはワークショップが始まってからでは対処しきれないことが多いため、準備の段階で確認を怠ると致命傷になりかねない。
2. インタラクションの機会を意識的に増やす
オンラインワークショップの特徴として「参加者の発言の機会がファシリテーターに大きく委ねられる」ということが挙げられる。
Zoomなどのオンラインコミュニケーションツールを使う際は、誰か1人が喋り出したら、ひと段落つくまで、他の参加者はしばらく聞きながら待っていなければならない。複数人が同時に発言すると、途端に場が混沌としてしまうからだ。
オンラインワークショップでは、ワークを進めて欲しい時間は少人数での議論がしやすいようブレイクアウトルームを活用することは多い。それでも、参加者の感じる「マイクが空くまで、自由に発言できない時間」は、オフラインワークショップに比べて長いのが現実だ。
そのため、オンラインワークショップを実施する際、特にファシリテーターは、参加者間のインタラクションが活発になるような工夫を入れることが重要になる。
これは特に、全体向けのレクチャーが長くなる場合や、3人以上での議論をしながらワークを進める際により強く意識したいことだ。
具体的には、プログラムの随所で参加者側へ発言の機会を提供するような「問いかけ」を散りばめていく。答えて欲しい人へ順にマイクを渡していく、言わばクイズ番組のMCのような役割が求められると言えるだろう。
そうして参加者の意識が「たくさんいるオーディエンスのうちの1人」とならないよう、積極的に対話をしながら進めていく姿勢を常に示すことで、オンラインワークショップの場の温度、盛り上がり具合は大きく変わってくる。
他にも、参加者全員が発言できるようなアイスブレイクを複数回用意しておいたり、休憩時間を自由参加のカジュアルトークの時間に充てるなどの工夫も有効だ。
また、オフラインならば部屋の隅で個別に聞けたはずの「些細な質問」が、オンラインの「常に参加者全員が見えている状態」ではついつい遠慮してしまうということもある。
そうした小さな声を吸い上げるために、Slack等でメンバー間のチャットチャンネルを設けることも効果的だ。その日のワーク終了後、参加者からの学びや質問を毎日投稿してもらうルールを設けると、インタラクションの機会を増やし、双方の学びやワークショップとしての成果の質を上げることができる。
まとめ
新型コロナウイルスの完全なる収束はまだ見えない。引き続き、他者との間にソーシャルディスタンスを保ちながら、私たちは暮らしのための様々な活動を起こしていく必要がありそうだ。
そうした今後の時代、様々なプロジェクトにチャレンジする過程では、オンラインワークショップが選択肢のうちの1つとして検討されることが当たり前となっていくだろう。
オフラインの手法に慣れ親しんできた人にとっては、オンラインのワークショップとの違いに戸惑いを感じる点もまだあるかも知れない。しかし、これからの時代へ向けてより重要になるのは、オンラインとオフライン、両者の強みを意識した上で、使い分けていくことだ。
決して「オフラインの縮小版」や「代替案」としてオンラインワークショップを設計・実施していくのではなく、両者の特性を適切に見極め、適切な目的設定やシーンのもとに実践していくことが重要である。
そうすることで、より良い学びやより良い社会を実現するための成果を生み出していくことができると信じている。
btaxでは、より良いユーザー体験を実現する新サービスの開発や、デザイン思考研修にて、オンラインとオフライン、双方の適性を生かすことのできるワークショッププログラムを設計し、提供している。
興味をもたれた方はこちらよりお問い合わせを。
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