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ブロックチェーン技術で著作権を管理 【インタビュー】Binded CEO, Nathan Lands
コンテンツのデジタル化とインターネットを介しての配信が進むにつれ、その管理とマネタイズ、そして無断利用に対する対応が困難になってきている。例えば、ネット検索で見つけて来た写真の転載や、文字コンテンツの再利用、音楽ファイルのダウンロードなど、どこまでが合法であるかかも含め、非常に分かりにくい時代になっている。
一方、クリエイター側から考えてみても、デジタル化の波はコンテンツの作成、配信、販売、保護の全ての領域において大きな変化をもたらし始めている。例えば音楽であれば、MP3やYouTubeの発達でCDの販売による売り上げを得る事が困難になり、写真家もいつどこで無断に写真が利用されているかが分かりにくくなっている。
ブログの記事だって簡単にコピペ出来てしまう為,無断転載が後を絶たない。これにより以前まではクリエイターの収益源であったコンテンツがインターネットを通じて無料で簡単に取得可能になり、コンテンツの収益化が非常に難しくなっている。
これは、コンテンツを有料販売する為の新たな方法が必要とされ、同時に無断利用を防ぐシステムも重要になってくる。そのようなしくみが無いと、長期的に考えるとアート、写真、音楽、文章、ゲームなどのコンテンツの品質低下に繋がる。
しかし、既存の法規や仕組みが現代のコンテンツにおける”著作権”と”利用ライセンス”に関する概念に全く対応できていない。今までは作品の権利を政府のしかるべき機関に対して申請することでクリエイターの作品における著作権が守られてきた。しかし大量のコンテンツが生み出される現代において、一つ一つの作品に対して権利申請していては時間もコストも見合わなくなって来ている。
そんな問題に対して最新のテクノロジーで解決策を提供するのがBlockaiである。Blockaiは通常フィンテック系のサービスに利用されるブロックチェーンの時術を用いてクリエイターの著作権を保護するサービスを提供している。
今回インタビューしたのは、数年来の友人でもあり、BindedのCEOであるNathan Lands. 以前にビットコイン関連のスタートアップも経営していた彼は,仮想通貨のベースとして利用されているブロックチェーンのテクノロジーに精通しており、その新たな利用方法が全米でも注目を集め始めている。
フィンテック以外にも利用価値の高いブロックチェーン技術
– まず始めにブロックチェーンについて簡単に説明ください
ブロックチェーンといえば、ビットコインなどに代表される仮想通貨などに利用されているテクノロジーです。その仕組みはかなり複雑ですが、役割を簡単に説明すると、ネット上でのやりとりの証明をする分散型データベースのようなものです。
– ブロックチェーンが仮想通貨に利用されている理由は?
ユーザー同士のやり取りやデータの移動を一元的に記録/証明することができるので、デジタル通貨のやり取りの証明に活用が可能です。言い換えるとAさんが所有している$1がBさんに渡った時点でその$1がAさんの所有データからBさんのデータに移動した事を証明することで、デジタル特有の”コピペ”による複製を防ぎます。デジタルコンテンツでありながらも、ひとつひとつがユニークな存在になるのです。その点において、仮想通貨に最適なテクノロジーになっています。
– その技術をコンテンツ保護に活用?
はい。同じ技術を利用してクリエイターが作成したオリジナルデジタルコンテンツの”魚拓”をブロックチェーンのデータベースに作成日時と同時に登録し、証明書を発行すれば、いつ誰が作成したかという公式データをブロックチェーン上に記録する事が出来ます。
クリエイターの保護とデジタルコンテンツの配布を両立させる
– そもそもこのサービスを始めようとしたきっかけは?
元々ビットコイン系のスタートアップをやっていたので、このテクノロジーに関する知識はありました。サンフランシスコはアーティストも多く、クリエイター系の友達も沢山居るのでこのサービスを考えました。まだ数人しかいないアーリーステージのスタートアップですが、今後は展開をどんどんプロダクトを煮詰めて行きたいと思っています。
– Bindedはどのような仕組みでコンテンツ保護を行なうのでしょうか?
サービスのサイトからアカウント登録をし、そこに作成したファイルをドロップします。その時点でブロックチェーンに登録され、Bindedから登録証書が発行される仕組みです。
– クリエイターにとってのメリットは?
作者として証明されるだけではなく、自動的にネット上の類似の画像ファイルが表示される事で監視機能も利用出来ます。コンテンツがしっかりと保護されるので、クリエイター側もどんどんネットを通じてシャアする事が出来るのです。また、将来的には万が一他のユーザーが無断で利用しているときの警告メッセージの送信や、ライセンス販売を通じてのコンテンツ配布機能を実装する予定もあります。
無断転用はアメリカでも大きな問題
– 写真を中心にネット上での無断転用は結構問題になってますよね?
そうですね。例えばストックフォトの最大手のGetty Imagesが無断利用者に請求書を送りつけたり、逆にフォトグラファーから巨額の額を訴えられたりなどが日常的に起ってます。無断転用は問題ですが,やりとりがギスギスしてますね。もう少し平和な解決方法があればと思います。例えば偶然Googleの画像検索で見つけて転用していたユーザーに「この写真を利用するならこちらのページから$10支払ってもらえれば問題無いです」とかのメッセージが送信されるしくみとかね。
– クリエイターの著作権の概念も難しいですよね
はい。完全に同じもののコピペであればあからさまなんですが、オリジナルを”少しだけ”変更したりとか、”インスパイアされて”似たようなデザインを作成したりとかしている場合の判断は難しいですね。これに関しても、今後はAIなどを利用した画像認識技術を活用して画像類似率が70%以上ならアラートが来るとかのシステムが出来ればと思っています。
Bindedのアーティスト向け管理画面
ブロックチェーン経由で登録される証明書
既存のシステムは時代に合っていない
– そういえば政府に登録しなくても自分の作品を封筒に入れて、自分に郵送すればその消印で作成日が証明されるっていう方法がありますよね?
Poor artists’ copyrightってやつですね。学生や下積み中のアーティストなんかが行なう安価で著作権を保護できる方法です。でも、コンテンツのデジタル化や速いスピードでコンテンツが量産される現代においては現実的ではない方法になってますね。そもそもそれに費やす手間と時間を考えるとやってられないです。
– 既存の仕組みだと自分が作成者だと実証する事が難しいですよね?
そうなんですよね、いちいち政府に登録していては時間とお金が掛かってしまう。それをせずに万が一裁判になっても自分がオリジナルの作成者だと証明する方法が限られている。そして、いつどこで誰が無断転用しているかを簡単に調べる方法もあまりない。それらを解決するのがBlockaiです。
日本のユーザーにもどんどん利用してもらいたい
– Blockaiが最終的に目指すのは?
クリエイターの為のワンストッププラットフォームになる事ですね。現在は画像だけですが、音楽や文章、動画といったさまざまなコンテンツをアップして、自動的に証明書が発行され、ネット上での利用状況の監視も行われる。加えて利用したい人にはライセンスの販売もプラットフォーム上から行なえる様になれればビジネスモデルとしても成り立ちます。
– 日本企業からの投資に関する問い合わせが来たとか?
そうなんですよ。現在複数の大手日本企業から投資に関しての興味をもらっています。このプラットフォームは世界中のクリエイターにも使ってもらいたいと思っているので、今後は日本のユーザーにも利用してもらいたいと思っています。
インタビューを終えて
Nathanはスタートアップのイベントであったり、自社イベントに招待し合ったりなど、普段から仲良くさせてもらっている友人の1人。人懐っこい笑顔と少年のようなルックスを持つNathanは実は一児の父でもある。奥さんは日本人でオフィスはサンフランシスコのJapan Townにあるなど、なにかと日本とのつながりも深い。
お金よりも社会問題の解決。どんな状態でも常に前向きな姿勢。誰に対しても誠実な対応をする彼はサンフランシスコベイエリアの起業家のモデルとも言えるような、さわやかさな雰囲気を持ち合わせている。恐らく今後大成功をしても今と変わらない服装と雰囲気を維持するだろう。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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