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海外で話題の音楽系オンラインサービス10選
音楽系スタートアップにとって、日本の音楽ビジネス市場は大きな可能性に満ちている。IFPI (国際レコード産業連盟) が発表した2012年の世界の録音音楽市場報告書によると、日本の音楽ソフトパッケージや配信サービスの売上高は米国を抜き43億ドル (約4250億円)を記録し、世界一の市場規模になった。
日本は音楽市場に対するCD比率が78%と非常に高いのに加えて、若年層を中心としたアイドル人気で音楽ソフトの売り上げが良かったことが理由の一つだろう。
一方、アメリカでは市場に対するCD比率は40%以下となっており、音源そのものは持たずにストリーミングを通じて音楽を聴くという世界的なトレンドに移行していることが予想される。つまり、日本の音楽市場はCDの売り上げに依存しており、日本でも近い将来、徐々に音楽ストリーミングサービスやライブ・パフォーマンス市場に主軸が移る可能性があるだろう。
CD売り上げは1999年の286億ドルでピークを迎え、現在では100億ドルを切っている。iTunesなどのデジタル音楽配信が期待されているが、2011年では52億ドル相当の市場規模。 音楽市場の起爆剤としての役割を担うのは少々物足りないだろう。
しかしながら、音楽ストリーミングサービスやライブパフォーマンス市場は収益を増やしており、音楽ビジネス市場において日に日に重要度が増している。特筆すべきは音楽ストリーミングサービスの人気であり、2008年の配信音楽市場シェアでは5%に過ぎなかったが、2010年には28%まで需要を拡大している。
音楽スタートアップが提供するサービスは、CDによる音楽販売やiTunesのような音楽配信ビジネスではなく、ライトリスナーや熱心な潜在的な顧客を新たな形で取り込む形態だ。全世界で登録ユーザーを増やし続けているスウェーデンの音楽ストリーミングサービス『Spotify』が良い事例となるだろう。
それでは、上記のSpotifyを含む音楽市場で成功を収めている海外スタートアップが開発する注目サービスの事例を幾つか見てみる事にしよう。
1.Grooveshark
開発国: アメリカ合衆国
設立年: 2007
ユーザーニーズ: 専用ソフトをダウンロードせずに、ウェブブラウザ上で音楽を制限なく聞きたい。
サービス概要: ウェブブラウザ上で、5000万曲以上のライブラリにアクセスできる音楽共有、ストリーミングサービス。ユーザー登録不要で、好きな音楽を無制限で聞くことができる。さらに、自分専用のプレイリストも作ることができる。
価格形態: 料金プランによって変動 (Free:無料、Grooveshark plus:$6/月 プレミアム:$60/年)
主な成功要因: CDを買ったりiTunesなどの音楽配信サービスを使用するほど音楽を聞かない、というライトリスナーをターゲットに据えた戦略が成功の要因になっているだろう。さらに、専用ソフトではなく、ウェブブラウザを通して楽曲を聞くことができる手軽さも売りとなっている。
2. Next Big Sound
開発国: アメリカ合衆国
設立年: 2009
ユーザーニーズ: お気に入りアーティストやバンドの人気度が知りたい。ソーシャルネットワーク上などの更新情報を抜け目なくまとめてチェックしたい。
サービス概要: Twitter, Facebook, Myspace, Youtubeなどのオープンデータと独自データを組み合わせて、アーティストの成長具合や人気度を測る。さらに、レコード会社などの顧客にはダッシュボードが与えられ、アーティストが成長していくための不可欠な要素であるアルバム売り上げ枚数やファンの性別、年齢などの基本的情報をチェックすることができる。
価格形態: 基本的には無料だが、上位版へのアップグレードは$20/月。
主な成功要因: 市場規模の大きい音楽業界に必須であるマーケット分析を主なサービスとし、ソーシャルネットワークなどのオープンデータと独自データを組み合わせて優れたデータ収集を提供することが、注目の理由になっている。さらにユーザーに対し、ソーシャル上での更新情報を提供することによりアーティストとの親近感をより一層、深く感じられることが継続的な使用理由に繋がっているだろう。
3. Pandora
開発国: アメリカ合衆国
設立年: 2000
ユーザーニーズ: 作業中BGMとして、自分が指定したジャンルや好きなアーティストに似たプレイリストを流したい。新しい音楽に出会いたい。私だけのラジオステーションが欲しい。
サービス概要: ユーザーが指定したジャンルや好きなアーティストに基づき、ユーザーに楽曲を配信するあなただけのラジオステーション。ユーザーが出すフィードバックによって今後のプレイリストに反映され、ユーザー好みの音楽を突き詰めることができる。
価格形態: 無料。但し、広告無しの有料バージョンも有り。
主な成功要因: 従来のラジオは受動的なものであったが、Pandraが提供するサービスは自分の好みによってカスタマイズできる新しいラジオを実現したことにある。さらに、新しい音楽との出会いなどドキドキ感がユーザーの継続的な使用を生むことも注目の理由だろう。現在は、ライセンスの問題で米国のみのサービスとなっているが今後、グローバル展開が楽しみなスタートアップである。
4. PledgeMusic
開発国: イギリス
設立年: 2009
ユーザーニーズ: アルバムなどを作って自分達の音楽を世に広めたいが、制作費が足りない。お気に入りアーティストのアルバム制作やツアーを支援したい。
サービス概要: 音楽に特化したクラウドファンディングサービス。アーティストがアルバム制作費などの出資をユーザーに募り、作品制作の補助を担うことができる。出資者は、そのアーティストの限定コンテンツにアクセスできたり、パーティーに招待されたり、コンサートのリハーサルに参加することができる。
価格形態: 出資額による
主な成功要因: 音楽産業がかなり盛り上がっているイギリスならではのスタートアップ。さらに、ロンドンのミュージシャンが中心となって結成された企業であり、業界への理解と情熱はとても深い。出資したアーティストがアルバム制作に成功した場合など、自分も作品制作に関わることができたという感動が更なる出資を生み、継続的なアーティスト支援に繋がっていくだろう。
5. Rap Genious
開発国: アメリカ合衆国
設立年: 2009
ユーザーニーズ: ラップ音楽の歌詞を理解したいが、解釈がどうも難しい。難解な歌詞を解説してみたけど、誰かに批評してほしい。
サービス概要: ヒップホップ音楽好きのユーザーが、歌詞の解釈や分析を行い、クラウド化することで知識共有を目指すコミュニティー型サービスの提供を行う。将来的には、ヒップホップだけではなく、ロック音楽さらに文学、スピーチ、聖書、研究文書などにもサービス拡大を目指していくとのこと。
価格形態:
無料主な成功要因: ヒップホップ音楽に多用される暗示や難解な言葉は、一般的なライトリスナーには理解しずらいという点に注目したユニークなサービスが成功に繋がっている。Rap Geniousの創設者達はシリコンバレーの有名なインキュベーター「Yコンビネーター」の卒業生であり、最も成長が著しいスタートアップとなっている。さらに、人気ラッパーが自ら創設した公式アカウントを通して、自作曲の歌詞を解説したり、ファンの方々との交流も人気理由の一つだろう。
6. Shazam
開発国: アメリカ合衆国
設立年: 1999
ユーザーニーズ: いつも流れているこの曲名を知りたい。運命的な出会いであるこの曲を知らずして、家に帰れない。
サービス概要: 外出先などで耳にした音楽の曲名が思い浮かばない時、その音源にスマートフォンを近付けると楽曲やアーティスト名をデータベースから検索してくれるアプリケーション。YouTubeやアーティストの経歴、ディスコグラフィなど複数のメニューが表示され、その場で閲覧したり、購入もできる。
価格形態: 無料 (広告あり) $6.99 (広告無し)
主な成功要因: 音楽のタグ付け機能は、独自性が高いこと、さらにiPhoneでの楽曲のダウンロードが注目を集めたことが良い印。また、高い技術力と市場の需要を明確に見据えた上でのマーケティング戦略は売上実績に直接反映し、シリコンバレーの有数投資機関KPCBから注目を受けた。また、こうした成功の領域は音楽からテレビの世界にまで拡張し、放送広告からも大きな収益を上げている。
7. Songkick
開発国: イギリス
設立年: 2007
ユーザーニーズ: 好きなアーティストのコンサート情報を知りたい。新しいアーティストにライブで出会いたい。
サービス概要: Songkickはライブ音楽好きのユーザーに対し、基本的な二つのサービスを提供する。一つは、ユーザーによってお気に入り登録されているアーティストが近くでライブを行う場合、そのコンサートやチケット情報をタイムリーに知らせてくれるサービス。さらに、ユーザーの音楽的嗜好を独自のアルゴリズムによって分析し、新しいアーティストのオススメも行う。もう一つは、過去の200万件に及ぶライブのセットリストや写真、批評などをユーザーから募集し、データベースを作り上げる試みである
価格形態: 無料
主な成功要因: ありそうで無かったお気に入りアーティストの動向を知れることが、注目の理由になっている。好きなバンドのライブのコンサートを知ったのは、誰かのフェイスブックのポストを見終わってからという悲しい事態も防ぐことができる。さらに、チケット市場から広く情報を収集し、そのチケットを売ることも魅力的なサービスだ。音楽販売の業績低下に比べて、ライブ市場は2006年と比べて一段と盛り上がってきたので、ライブ情報サービスの未来は明るいだろう。
8. SoundCloud
開発国: ドイツ
設立年: 2008
ユーザーニーズ: 録音した楽曲を披露したい、サウンドファイルをFacebookやTwitterで共有したい。まだ誰も聞いていないインディーズ音楽が聞きたい。
サービス概要: アーティストが制作した楽曲を共有したり、ユーザーが新しい曲を発見できる音楽共有サイト。録音したサウンドファイルを好きな場所に保存でき、FacebookやTwitterとの相性もグッド。新人アーティストの音楽配信プラットフォームとしての役割を担っている。
価格形態: 料金プランによって変動 (Free:無料、Lite:$29/年 Solo:$79/年 Pro:$250/年 ProPlus:$500/年)
主な成功要因: ソーシャルネットワークと音楽コンテンツを自由に共有できる点で、従来のMySpaceと大きな差別化を図っている。また、音楽以外のオーディオも共有できることから、ユーザによっては、iTunesの代替として利用する場合もある。また、プロのアーティストにも愛好されており、これもユーザベースの拡大を促進する要因。メタルバンドのThe Deftonesは、同サイト上で多数のファンを持ち、発表したトラックの中には、50万回近く再生されたものもある。
9. Spotify
開発国: スウェーデン
設立年: 2006
ユーザーニーズ: ウェブ上で、しかも無料で音楽を聞き放題なサービスを探している。
サービス概要: 全世界で、2000万人のユーザーを抱える音楽ストリーミング配信サービス。専用ソフトをインストールすれば、すぐに1500万曲を超える楽曲にアクセスすることができる。無料アカウントの場合、楽曲途中に挿入されるコマーシャルを流すことによって、収益を得ている。
価格形態: 料金プランによって変動 (Free:無料、Unlimited:$4.99/月 プレミアム:$9.99/月)
主な成功要因: 従来のCDによる音楽販売やiTunesなどの音楽配信サービスに変わるサービスとして注目を集めている。Spotify上で、友達をフォローしたり楽曲をソーシャルネットワーク上で共有することで、より一層ソーシャルな側面から音楽を楽しめることも大きな魅力の一つとなっている。
10. Stageit
開発国: アメリカ合衆国
設立年: 2011
ユーザーニーズ: コンサートに行きたいけど、ライブ会場まで行きたくない。ウェブ上で、ファンの方々にライブをお届けしたい。
サービス概要: アーティストが、ウェブ上でライブ中継を提供できるサービス。「ノート」という仮想通貨を使用し、チケットの購入やチップなどを払うことができる。ライブ中継を行う時に、チャットを通してアーティストはファンとコンタクトを取ることができ、タイムリーなフィードバックを得ることができる。
価格形態: チケットの金額による。
主な成功要因: CDなどの音楽販売などの市場が縮小する中で、ライブパフォーマンス市場はかなり盛り上がっている。そこにターゲットを絞り、ウェブ上でライブ中継の機会を提供することはアーティストにとっても、ファンにとっても有益だろう。
まとめ
先日、サンフランシスコで『Music Tech Summit 2013』が行われた。これからもさらに成長していくであろう音楽ビジネスの大きな活気に後押しされ、数多くの音楽系スタートアップが集まり、大盛況のもと幕を閉じた。このイベントは2008年から続いていて年を追うごとに、音楽スタートアップの盛り上がりに伴い、イベント規模も大きくなり活気を帯びている。違法ダウンロード対策に追われるなど、明るい話題が少ない音楽市場においては音楽スタートアップの大きな熱気はこの業界に新たな風を送り込むことだろう。
さらにスタートアップだけでは無く、Googleの定額制音楽サービス「Google Music Play All Access」や、Amazonの音楽ストリーミングサービス「Amazon Cloud Player」など大企業による音楽ビジネス市場参入が行われ、大きな盛り上がりを見せているのも注目すべき点だ。
アップルも音楽ストリーミングサービスの開始に向け、ワーナー・ミュージックグループとライセンス契約で合意した。加えて、世界最大のコンサートプロモーション企業、Live Nation Entertainmentや飲料メーカーであるRed Bullは音楽スタートアップを支援するための投資ファンドやアクセレーターを立ち上げ、音楽系スタートアップの継続的支援を表明しているのも見逃せない。このように、音楽系スタートアップが新たな音楽体験の楽しみ方を作り出すための環境が十分に整っていると言えるだろう。
実際に、日本でも2012年にNTTドコモやKDDI、レコチョクが邦楽を中心とした定額制音楽ストリーミングサービスを打ち出した。さらにIT・音楽・映画の祭典であるSXSW 2012では日本から、数多くの音楽系スタートアップが参加し、来場者の大きな関心を集めた。その多くの事例がバーチャルジャムセッションやオンラインライブ中継など、新たな音楽体験の楽しみ方を提供し、音楽市場に新たな価値を投じるものだ。
さらに弊社が企画・運営する日本発海外市場向けスタートアップ向けピッチイベント『Japan Night』の第4回では、音楽系スタートアップが2社参加した。ソーシャル上で自分だけのプレイリストを作れる『Beatrobo』が予選会優勝。iPad や iPhoneを用いて楽しく楽器を演奏するための電子楽譜・レッスンサービスを展開する『PiaScope』が優勝し、2012年10月にエンジェルラウンドで13万8,000ドルの資金調達に成功した。
日本企業も国内市場での成功を足掛かりに、世界中に事業を拡大し、グローバル市場での存在感を示していって欲しい。そして、日本企業による成功ケースを作り出し、日本国内で海外展開の好循環が生まれるよう願っている。
【12/6(水)開催】動画生成AI最前線:Mootion CEO × チャエン氏 特別対談
世界が注目する動画生成AI「Mootion」から、CEO Yonggang Wang氏が来日。 AI専門家チャエン氏を迎え、最新技術と市場展望について語る特別セッションを開催いたします。
■ 特別デモンストレーションあり
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