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走った分だけ払う自動車保険 – Metromile (メトロマイル) を試してみた
自動車は95%の時間使われていない
この稼働率は例えばスマホと比べてみると非常に低いことがわかる。なのに駐車場や保険などの維持費は異常にかかる。もしかしたら、自動車というプロダクトが現代の社会の常識から考えると非常に非効率な存在になって来ているのかもしれない。ネットやスマホに触れて育ってきた世代から考えると、自動車を所有することが”非合理的”であると感じる事もうなずける。
自動車の平均稼働率は10%以下
車社会と言われているアメリカでも、自家用車の平均的な稼働率は10%以下だと言われている。例えば一日24時間のうち通勤で平均片道30分、往復で1時間使った場合、その稼働率は4.17%. 週末に合計で10時間利用したとしても、ギリ10%程度である。
これが日本の場合、通勤で自動車を使わないケースも多いため、その稼働率の低さは容易に想像ができる。これがセカンドカーなどになるとその稼働率は数パーセントまで落ち込む。自分の場合も、バイク通勤であるため、車は月に1-2度しか乗らない。
それなのに、自動車は購入価格に加えて、維持費がかなりかさむ。”若者の自動車離れ”の背景にはこのような理由があるのかもしれない。その一方で、自動車は所有する喜びや、走る、操る際のワクワク感は何にも代え難い魅力を持っているのも事実。アメリカの都心部ではUberやLyftなどのライドシェアの普及が進んでいるが、自動車の所有率は下がってはいない。
米国における自動車の販売台数の推移:
乗ってないのに保険料だけがかかる問題を解消
“ほとんど乗らないのに保険料が掛かるのがバカらしい。” そんな貴方に最適なのが、”走った分だけ保険”のMetromile. 三井物産も出資をしたこのスタートアップは、既存の保険会社を買収し、固定費プラス走行距離分の利用した分だけしかチャージされない、”Pay-per-Mile”というコンセプトの従量制自動車保険を提供している。
普段からあまり自動車に乗らない or 短い距離しか走らないユーザーをターゲットに、都心部を中心にそのサービスを提供している。これは、最近流行り始めている“オンデマンド型”サービスの一つである。
走っってない時には課金されない保険:
実際に利用してみた
申し込みは全てオンライン。登録すると数週間以内に専用デバイスの”Metromile Pulse”が送られてくる。手のひらサイズのこのOBD2型デバイスを車両のヒューズボックス付近に取り付ける。
このデバイスは自動的に車両の情報を獲得し、Metromileのクラウドにコネクトする。このデバイスはGPS機能も装備しており、その車両の走行距離だけではなく、車両の現在地、走った日時、ルート、そして移動した際のスピードなどの走行履歴のデータまでが細かく記録される。これにより、ユーザーの走行データがリアルタイムで記録される仕組み。そして、そのデータはWebやアプリを通じてユーザーに届もけられる。
オンラインで申し込めばデバイスが無料で送られてくる:
古い車がコネクテッドカーに
このデバイスを装着することで、車両の場所や移動データに加え、車体に異常がある際のエラーコードも読み取り表示してくれるので、古い車でもちょっとしたコネクテッドカーになったような感覚になる。その安心感もありがたい。
古い車でもデバイスを簡単に装着:
見やすく使ってて楽しいWebダッシュボード&アプリ
そして、このサービスの最も優れているのがWebアプリとモバイルアプリのユーザー体験であろう。料金や走行データが一目でわかるだけではなく、今までの走行データがマップとルートを視覚的に表示し、移動スピードやエンジンのエラーコードも表示される。また、現在の車両の存在場所もマップ上に表示されるため、セキュリティー的なメリットも得られる。
アプリのUIのクオリティは非常に高い:
ユーザーとビジネスの双方のメリットを達成するUX
以前の記事「誰にでも分かるUXの基本」にて、UXの大きな役割の一つは、ビジネスとユーザーとのメリットを両立させることだと説明した。今回のMetromileもそのUX部分が秀逸である。例えば、過去の走行データをアプリのダッシュボードから見ることのできる。再生ボタンを押すとその動きが動画のように再生されて、見ているだけで面白い。これだけでも高いユーザーメリットを実現している。
この機実はこのダッシュボード、ルートに加えて走行スピードも表示されるため、いつどこでどのくらいのスピードを出していたかが一目瞭然。別にこれでスピード違反で捕まることはないが、運転しているときに「あ、これもデータとして記録されるんだ」という意識が働き、自ずと安全運転になる。
これにより、事故の可能性を下げ、保険提供側のメリットにも繋げている。
走行履歴が可視化されて表示:
スマホライクな課金方法
Metromileの料金は基本料金+利用した分で算出され、毎月クレジットカードに課金される。まるでこれは固定費用+データ利用量で課金されるスマホの料金体系に非常に近い。むしろこの方式の方が最近では一般的な感覚であり、しっくりくる。これまでの年間走行距離に合わせて年に1-2回のサイクルで支払っていたのが不思議なくらい。
ダッシュボードで確認できる月々の利用明細:
サポートリクエストもアプリ経由
既存の自動車保険と比べてこのサービスの良いもう一つが、もし何かあった時のサポートもアプリ経由で簡単にできるところ。まだ実際には使ってはいないが、UIを見る限り、ワンタップでロードサイドサービスや保険の申請ができる仕組みになっている。この辺もスマホを最大限活用した優れたユーザー体験だと感じる。
もしもの時にもアプリ経由:
Uberとパートナーシップを組み、ライドシェア向けの保険としても活用されている
走行距離に合わせて保険を提供するというコンセプトはライドシェアとも相性が良い。むしろドライバーの走行パターンに合わせて保険料を変える方がむしろ自然だとも言えるだろう。それもあって、MetromileはUberとパートナーシップを結んでいる。個人として申し込む際にも、車両の利用方法の選択肢に”Ride Share”があるぐらい。走った分だけ、は現代のニーズにマッチした保険スタイルなのかもしれない。
ユーザーの走行データを獲得するビジネスモデル
このMetromile, 肝心な料金はどうなのか? その走行距離にもよるが、自分の場合は保険料がかなり安くなった。比率で言うと既存の保険の約半額。これで実際にビジネスが成り立つのかとも思いがちであるが、おそらく彼らの狙いはユーザーの走行データの獲得であろう。AmazonがスマートスピーカーのEchoをかなり安価でバラまいているのと同じく、一番のゴールはデータの獲得である。
GoogleやAmazon, Uberなど、最近台頭している企業に共通しているのが、多くのユーザーと、そこから得られる膨大なデータ、そしてそのデータを活用してユーザーに最適なユーザー体験を元にしたビジネスモデルの構築である。Metromileもデータビシネスを狙っているのは間違いない。
バス停に掲げられたMetromileの広告
三井物産も出資、オフィスはbtraxの数ブロック先
Metromileは現在までに2億ドル強の投資を受けており、日本の三井物産もシリーズDで出資をしている。2018年3月現在で、カリフォルニアやオレゴンをはじめとして7つの州で利用が可能。
ちなみにMetromileのオフィスは、btraxから徒歩で5分ほどの場所。彼らのオフィスはサンフランシスコの都心部にオシャレなビルを構えている。
めっちゃオシャレなMetromile本社ビル:
既存の自動車保険を解約してみたところ…
今回自動車保険をMetromileに切り替えるために、既存の保険会社に解約の手続きを行った。先方のサポート係の方が電話口で「なぜ解約するかお知らせいただけませんか?」と聞くので「あまり車に乗らないのでMetromileに切り替えることにしました」と伝えると「That makes sense (そりゃそうですよね)」と言われた。所有しないライフスタイルへの変化。保険業界にも大きなパラダイムシフトが訪れているのかもしれない。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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