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6,500万人ユーザーを獲得した米国スタートアップのステージ別マーケティング【インタビュー】Joshua Duyan氏 – Lumosity, VP of Marketing –
LumosityはLumos Labs, Inc. が手がける脳トレゲームでモバイルアプリとウェブ上でサービスを提供しています。サンフランシスコを拠点とするスタートアップで創業から9年が経った今、6千万人を超えるユーザーを抱える人気サービスへと成長を遂げています。
現在に至るまでには100人ユーザー獲得から1万人、100万人へとユーザーと増やしていくために様々なマーケティング方法を取り入れてきたはずです。このように成功したスタートアップから、今回はLumos LabsでVice President of Marketingを務めるJoshua Duyan氏にインタビューさせて頂きました。
創業ストーリー
Q: まず、創業ストーリーを教えてください。
創業メンバーの2人であるKunal Sarkar氏 (現CEO and co-founder)とMichael Scanlon氏 (現Chief Scientific Officer, and co-founder)はプリンストン大学のルームメイト同士でした。2人とも卒業後はベイエリアへ移動し、Kunalはプライベートエクイティファンドに勤め、Michaelはスタンフォード大学で神経科学について研究をしていました。
Kunalは24 Hour Fitnessジムに勤めていた経験もあったことから、ある時2人は“神経科学の研究をベースとしたゲームを開発することで人の脳力をトレーニングするというビジネスチャンスがあるのでは?”ということに気づきます。
そこで2人の知り合いでゲーム開発やウェブサイト構築の経験があったDave Drescher氏をチームに加え、2005年から1年半かけてゲームやビジネスモデルを構築し、シリーズAの投資を成功させました。最初のプロダクトは言わば、基本的な脳トレゲームで脳のブートキャンプのようなプロダクトでした。2007年夏にサービスローンチをし、その頃私もチームへ加わりました。
創業9年で6千万人ユーザーを超える企業へと成長
Q: 現在Lumosityは6千万人を超えるユーザーを抱えていますが、現在に至るまでの流れを教えてください。
最初の2年間は今とは打って違ってとても古くデザインも最悪なオフィスでしたが、みんなが使ってくれるような役に立つプロダクトを作るのに必死でした。2008年6月にはFirstMark Capital, Norwest Venture PartnersとHarrison Metalから約3億円の資金調達に成功し、最初の6・7年間は毎年200%増しの勢いでビジネスを拡大してきました。
従業員も最初の4名から20名に増え、オフィスも引っ越しました。2011年には最初の3つのVCに加え、Menlo Venturesから合計約32億円の資金調達(シリーズC)に成功し、またオフィスを移転させました。
サンフランシスコダウンタウンにある現在のオフィス
従業員も増え続け、2012年にはDiscovery Communicationsから最後の投資である約31億円の資金調達(シリーズD)を受けました。前のオフィスでは1フロアだったのが、2013年末に現在のNew Montgomeryストリートにあるオフィスビルの3フロア分へ引っ越し、今は6,500万人以上のユーザー、180名の従業員を抱える企業へと成長を遂げています。現在のオフィスは4つ目です。
Q: 最初のプロダクトは2007年夏にローンチしたとおっしゃいましたが、最初の段階のユーザーはどのように獲得しましたか?
実は私が参加したときにはもう何千人ものユーザーがいたのですが、最初の100人や1000人のユーザーは初期段階のPR活動を通して獲得しました。おそらく、一番大きかったのはTechCrunchが記事を書いてくれたことで、多くの人にLumosityの名が知れ渡りました。
主要メディアに取り上げてもらうことで一時的ですがトラフィックがあがり幅広い人に知ってもらう良い機会となりました。後はラッキーだったのか、皆が使いたいと思ってくれたので口コミで広がったんだと思います。ウェブサイトへも日々ある程度のトラフィックがあるようになって、徐徐に右肩上がりに増えていきました。
参照:TechCrunch
あとはマーケティング活動をする上で重要なことは自分たちが何者でどんなプロダクトを開発していて、どのように役に立つのかを正確に伝え、説明できることです。Lumosityの場合、単なるゲームではなく科学的根拠に基づいたゲームであることや、Lumosityを利用することで得られる利益、どのようにいつ使うべきなのか、などです。
そうした枠組みを人々に伝えるられるチャンネル探しをするために、多くのジャーナリスト、ブロガー、PRエージェンシーと連絡をとりLumosityについて説明することにたくさんの時間を費やしました。
同時に、自分たちのウェブサイトにもLumosityについて説明するページを設けました。オンライン広告を買ったりテレビCMでより多くの人にリーチし始めるのはこのような「説明する」というマーケティング活動が最初にあってからの話です。メディアやブロガーを通してのPR活動で1万人ユーザーは獲得しました。
Q: その後1000万人ユーザー獲得までの道のりを教えてください。
1万人から10万人、100万人ユーザーへと拡大するためにはオンライン広告によるマーケティングが必要でした。当時2007年頃はモバイル広告やFacebook広告はありませんでしたから、Googleディスプレイ広告がメインでした。もちろん基本となる最初の段階のPR活動や口コミもし続けた上で100万から1000万人ユーザーへの拡大に成功しました。
Lumosityにとって欠かせないテレビCM
〜約1500万人から現在の6500万人ユーザーへ到達するまで〜
2012年1月からテレビCMを流し始めました。テレビCMを流し始める前まではおそらく1500万人くらいのユーザー数でしたから、今はその4倍規模のユーザー数へと拡大しています。ただ最初はとても小規模からスタートしました。
テレビCMは私たちのプロダクトに最適なマーケティングツールでした。オンライン広告と違ってテレビCMは場所、年代や性別関係なく幅広い人々へリーチできるからです。
例えば若い男性向けの服を販売する企業だったらターゲットを絞ってオンライン広告を出すことが一番効果的です。しかしながらLumosityは若い男性、若い女性、中年男性、中年女性、高齢男性、高齢女性と幅広い年代の方にとってバリューのあるプロダクトなので、テレビCMは最適でした。
もう1つテレビCMが良い理由はビデオマーケティングから得られる効果です。CMを流すにあたって当然、動画を作成しなければなりません。ビデオ動画は私たちの創業ストーリーやプロダクトについて効果的且つ簡単に大勢の人に伝えることを可能にしました。
有名なタレントを起用するのではなく、一般人の方にLumosityを使ってみた感想や体験談などをインタビュー形式で話してもらいました。動画を観れば分かるように、男女関わらず幅広い年代の人へインタビューしました。
テレビCMを始めてからこの2年半の間に様々なバージョンを作成してきました。上の動画は古いものですが、最近では働く若い女性、働く若い男性、主婦、退職した人向けバージョンなど、ターゲット層を絞ったいくつかのパターンを用意しています。
例えば、退職した人には「退職後もLumosityのゲームをすることで脳の衰えを防ぐことに繋がる」、また子育てをする主婦には「今は子育てで大変だけどいつか職場復帰するためにもシャープな脳をキープしたい」といったストーリーを共有してもらうことで同じような境遇にいる他の人にも使ってもらうきっかけになれば良いと考えています。ちなみに、ちょうど先週には新しいテレビCMが完成し公開しました。
またテレビCMはLumosityというブランディング効果にも大きく影響しました。Lumosityというブランドを認識してもらい、我々が目指す脳のトレーニングをより幅広い多くの人へ知ってもらうことができました。
ピッチイベントやEメールマーケティングも効果的
Q: その他の主要なPR・マーケティング活動はなんですか?
今スタートアップをしているんだったらピッチイベントに参加することでしょうか。我々が創業した際はTechCrunch Disruptみたいなピッチイベントはなくて、おそらくピッチイベントには一度も参加したことがないと思います。でも今だったらピッチイベントに参加することは凄く効果的です。
もう1つこれはLumosityでもやっていることですがEメールマーケティングです。当社は2種類のメールがあって1つは登録者全員に毎日送信されるリマインダーメールです。Lumosityは毎日使ってもらうことで効果が出ますし、多くの人が毎日使いたいと言ってくれています。でも毎日使ってもらうのって難しいでしょ。
だからトレーニングリマインダーを希望する人にはいつの曜日の何時にリマインダーを送ってほしいか登録をしてもらってその時間にリマインダーメールを送信しています。
もう1種類のメールはもっとプロダクトについて知ってもらうような教養要素を含んだメールで、週に1回送信しています。多くのマーケッターはEメールマーケティングをする際は出来るだけ短い文でコンテンツをなるべく少なくと言いますが、Lumosityのユーザーは読むのが好きだと研究するうちに分かりました。
ですので、割と長めの内容の深いメールを送信しています。社内の神経科学を専門とするリサーチチームとコピーライターが協力して、より内容の濃い、興味深い内容のコンテンツ作りをしています。
Q: ではEメールマーケティングの頻度と始める段階についてどう考えていますか?
当社の場合、まずサービスローンチをした2007年には登録後2週の間に届く3回のメールのみしか送っていませんでした。それが適切かと思ったんです。しかし、1年後にはもっと送ってもいいんじゃないかという話になり3回から5回にしたら、コンバージョンも上がりましたし、特に不満の声もありませんでした。
そこで5回から7回にしたらよりよい結果がでました。既にプロダクトの中にあるコンテンツであっても、Eメールの中にも含めることでユーザーにより理解を深めてもらうことができました。ゆえに、Lumosityの場合は頻繁に長いEメールを送ることが効果的だと言えます。
Eメールマーケティングはプロダクトをローンチした最初の段階から効果的だと思います。Eメールは顧客とのダイレクトコミュニケーションツールですから、顧客との距離を縮めてくれます。可能性は低いかもしれませんが、時に顧客からの返信でプロダクトへの反応を知ることができるかもしれません。
現在は多言語化に対応。2015年は日本市場に展開
今までに英語の他、ドイツ語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、日本語、韓国語(準備中)と着々と言語の幅を広げています。TwitterやFacebookのような米国スタートアップが日本市場で成功しているように私たちにもその可能性があると考えています。
2015年に1番力を入れるのが日本市場です。スマートフォンを持っている人の数や、ゲーム市場規模の大きさからしても日本市場が米国の次に大きなオーディエンスを獲得する可能性を秘めていると思います。これからどのように日本のオーディエンスにLumosityが受け入れられ、日本展開を広げていけるのか我々も非常に楽しみです。
ウェブサイト:http://www.lumosity.com/
筆者:先ほど、今のスタートアップはピッチイベントへ参加するべきという話がありましたが、ビートラックスではJapanNightというピッチイベントを毎年開催しています。日本のスタートアップを集めて投資家を前に英語でピッチをしてもらい、海外進出の後押しとなるようなサポートをしています。
今年開催された第7回 JapanNightでは視覚追跡機能を持つヘッドマウントディスプレイのFOVEや家庭用プリンターでも導電性インクを使って電子回路の印刷を可能にするAgIC、名刺管理やデータ管理をスマートにするSansanなど近い将来大きな活躍をみせるであろう企業らが参加をし、イベントは大きな盛りあがりをみせました。
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