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ヨガウェアファッションブランド|ルルレモンが成功した訳とは
ルルレモン(lululemon)というファッションブランドをご存知だろうか。ヨガやピラティススタジオへ通うと必ず着ている人を見かけるだろう。
ルルレモンはカナダ、バンクーバー発のヨガウェアブランドで、近年その成長はITスタートアップ並みに著しい。
昨年には、新規出店で全体の売上高を37%増に押し上げた。(参照: SankeiBiz) ヨガブームと並んでルルレモンの人気もうなぎのぼりだ。ここ数年でヨガウェア=ルルレモンというほどまで認識が広がったように思える。そして最近はヨガウェアだけでなくランニングウェア、メンズウェアまで幅広く提供している。
何故ルルレモンはここまでの急成長を遂げることができたのか。これは「ブランディング」に成功したからだと考えられる。ブランディングとは簡単に言うと”目に見えない企業資産を創造することで企業価値を向上させること”であるが詳しくは今さら人には聞きにくい「ブランディングとは」を読んで頂きたい。
ブランディングを成功した企業は顧客のロイヤルティーを獲得し安定した収益アップにつながると言われる。なぜかというと他の似通ったブランドと「ブランディング」によって差別化されるので、価格競争をしなくても消費者は高い商品を好んで買ってくれる。
今回はどうして米国やカナダでルルレモンが数年の間にここまで人気になったのか、日本での販売戦略について、一ファンとして一顧客として分析したいと思う。
ルルレモンの歴史
ルルレモンは1998年にヨガに目覚めたチップ・ウィルソンによって創立され1店舗は13年前の2000年にバンクーバーでオープンした。ヨガウェア特有のあのストレッチ性の布は運動にヨガに最適で人気はどんどん広がった。
チップはヨガウェアという商品販売だけではなく「ヨガやランニングなどの運動を通して精神的、身体的に体を健康にして、生活を豊かにしよう!」と、お客さん、スタッフやヨガインストラクターへ呼びかけることにも力をいれた。
当初バンクーバー1店舗しか考えていなかったがルルレモンのヨガウェアと彼のコンセプトは多くの人へ受け入れられ、彼の事業は他のカナダの都市、アメリカカリフォルニア州、オーストラリアへと着々と拡大していった。
質の高さ
ルルレモンの商品は割とシンプルなデザインではあるが高いほうだ。例えばヨガパンツは98ドル、トップスは40ドル~65ドルほどである。他のメーカーで同様なヨガウェアはもっと安くて半額ほどで手に入るだろう。しかしながら売れるからにはそれでも買おうと思わせる他のメーカーを上回る質の良さ、ルルレモンというブランド力があるからに違いない。私も何着か持っているが何回洗っても新品を着るような持ちの良さである。よく使うパンツは週に2回は着て、洗濯し、乾燥機にかけるが、縮むことがなくストレッチ感も新品同様だ。
ルルレモンのセールス戦略
1)接客の良さ
店員は全員ルルレモンを着用していて、とてもフレンドリーに対応してくれる。どこの店舗にも試着室のドアに小さいチョークボードが掛かっておりそこに試着している人の名前を書き接客するシステムになっている。
日本人受けするカスタマーサービスかどうかは別にして、お客さんとスタッフの距離を縮めより真の顧客の声を聞くことに成功していることには間違いないと感じる。実際にファーストネームで呼ばれると質問をしやすく店員もピラティスやヨガを日常的にしているため会話はどんどん広がる。
2)商品の希少価値を高くする
ルルレモンでは商品の在庫数の数を少なくする、セールをしない、商品の入れ替わりを頻繁にすることから希少価値を高め、顧客に早めの購入を促している。希少価値を高くすれば顧客が購入を先延ばししたり、セール時まで購入を待たれる心配がない。
3)パートナー契約
世界中のジムやヨガ・ピラティススタジオとパートナー契約を結びスタジオでルルレモンの商品を置いて販売してもらっている。パートナー契約を結ぶことでそのジムやスタジオのコミュニティーメンバーを広げると共にルルレモンの売り上げ向上にもつながる。
4)ギアーにも力を入れる
ヨガウェアだけでなくギアーにも力をいれている。ここで言うギアーとはヨガやピラティスで使う小物のことである。例えばマット、ブロック、ストラップなどでこれらのギアーにもルルレモンはこだわっておりヨガ・ピラティススタジオへ提供している。
5)スポーツチーム、選手へのサポート提携
本格的なスポーツチームやコミュニティーとタイアップしてそのチームに必要なスポーツウェアやギアを提供することもしている。さらに世界中の有能なヨガ・ピラティスインストラクターをルルレモンアバンサダーとして指名している。カナダのスキーオリンピック選手もアンバサダーに指名されている。(参照: lululemon athletica strategic sales)
日本での販売戦略の変化
上記の”3つの戦略”の中で説明した通り、日本のピラティススタジオでも最近ルルレモンとタイアップして商品をスタジオで販売している。スタジオのHPにもルルレモンの広告が出ている。そして多くのインストラクターがルルレモンを着てレッスンをするため生徒達は自然とルルレモンというブランドとロゴを認知することになる。
これは他のヨガウェアブランドと差別化を図ることにつながり、顧客に少し高くても買う価値があるなら買おうを思わせている。つまり顧客がルルレモンの質の良さと買う価値を知っていればそこに価格競争は存在しないのだ。
他にも日本では私の通っていたスタジオだけでなく東京と横浜で合わせて6カ所のスタジオがルルレモンとパートナー契約しておりルルレモンの知名度を広げている。
実はルルレモンはかつて日本にも店舗を構えていた。1店舗目は2004年夏に東京・青山でオープンし目白、自由が丘、名古屋•栄市にも出店した。しかしながら、現CEOクリスティーン・デイに代わった2008年日本からルルレモンの店舗は撤退し現在のようなスタジオでの販売に限られている。
ではなぜルルレモンの店舗は日本から撤退してしまったのか?そこには現CEOなりの戦略があったに違いない。その当時日本ではまだルルレモンの認知度は低く、ヨガも流行り始めたころだったため消費者の幅は限られていた。
また日本のヨガ•ピラティススタジオはアメリカのスタジオと違い、きちんとロッカールームと着替えスペースがあるためヨガウェアはスタジオの中でしか着ない。
ところがアメリカでは着替えスペースがあるスタジオが少ないためヨガウェアを着てスタジオへ行きヨガウェアを着たまま帰る場合が多い。そのためアメリカの方が外でも着る服、つまり普段着として着る需要が多いのではないかと思う。
さらにアメリカのスタジオでは多くの場合、自分のヨガ・ピラティスマットを持参してスタジオで使うためマットやマットを運ぶ用のバックやストラップも良く売れる。これに比べて日本ではスタジオに全て揃っているため自らマットなどを購入する必要はないのだ。
質の高いものを好む日本人にとってルルレモンへの需要はあると思うが、このような日本の実情を鑑みて”日本へ店舗を出すのにはまだ時期尚早”と現CEOは決断したのだと私は思う。
CEO交代でどうなる?ルルレモンの成長と新たなステップへ
創造者のチップ・ウィルソンから現CEOクリスティーン・デイへ変わったのは今から5年半前の2008年だ。この5年半でのルルレモンの成長は著しい。クリスティーン・デイは何者かと調べてみたら彼女はルルレモンの前にスターバックスに20年もの間勤め、取締役としてアジア・パシフィックの事業開発に大きく関わっていた人物であった。皆さんもご存知の通り、スターバックスは年々店舗数を増やし、今では日本で絶大なる人気を誇っている。
一方、ルルレモンを日本から撤退することを決断したのも彼女である。文化の違いを理解した上での判断であったのだろう。企業が国際展開する際に最も重要である文化の違いを理解し、当時のルルレモンにとって日本での店舗拡大は難しいとの判断から、スターバックスとは異なり店舗拡大をやめて、スタジオとのパートナー契約、スタジオでの販売に切り替えたその決断力は素晴らしい。
そのクリスティーン•デイは、先月、新しいCEOを決まったら自分は辞任すると発表した。彼女は5年半のCEOを勤め今がルルレモンにとって新たな時代に踏み出す時であり、良い区切りだと考えたようだ。
彼女の発表後、ルルレモンの株価は14%も下落し(参照: CEO Bows Out at Lululemon )、多くの株主は不安を抱いているようだが、今度ルルレモンがどのような展開をみせるのか期待したい。
ルルレモンがブランディングに成功した理由がわかっていただけただろうか。これらのセールス戦略によってより多くの人々にルルレモンの名を認知してもらうことは「ブランディング」への目的に直結していて、全て理にかなっていることを理解して頂けたら幸いだ。
セースル戦略に加えてウェアの質の高さ、その土地の文化に応じて販売戦略を変えることでルルレモンは多くのファンを獲得し急成長を遂げた。
今後もアジア、ヨーロッパでさらなる国際展開に力を入れることだろう。現在アジアではシンガポールと香港だけに直営店舗を構えているが、日本での確実な収益アップが見込まれ、認知度が高くなれば、いずれ必ずルルレモンは日本へ戻ってくると思う。日本への直営店舗の再上陸が一体いつになるのか非常に楽しみである。
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