
デザイン会社 btrax > Freshtrax > LEGOを倒産の危機から救った...
LEGOを倒産の危機から救った「ボロボロのスニーカー」~ データ偏重を乗り越えた挑戦と逆転劇 ~
商品開発やマーケティングにおいて、データや数字の重要さは誰もが認めるところだろう。ビジネス戦略についてもそうだ。
しかしながら、我々がこれまで数多くのプロジェクトを通じて得た経験からいうと、数字ほど当てにならないものはない。デザイン思考のワークショップでは、クライアントさんと共に、顧客の「生の声」を聞きに行くたびにそう痛感させられる。
今回は、レゴブロックが会社の倒産の危機に陥っていた時期に、データではなく顧客の声を重視したことで、倒産の危機を逃れたストーリーを通じて、その本質を掘り下げたいと思う。
2003年、LEGOは崖っぷちに立っていた
今の姿からは想像もできないかもしれないが、ブロック玩具の代名詞とも言われるLEGO (レゴ) は、2003年ごろ、倒産寸前まで追いやられていた。
その当時のLEGOは、売上30%減、1日あたり100万ドルの損失という未曾有の危機を迎え、瀕死の状態だった。その理由は「データを重要視しすぎた」こと。
具体的には、「子どもは集中力が続かない」「シンプルを好む」という市場データを盲信し、簡単で短時間で組めるセットへ舵を切ったことだった。
結果、販売は低迷。LEGO本来の魅力である、“作り上げる達成感” が失われたからだ。

経営危機に陥っていた2003年のレゴ社 出展: Sage
11歳のスケーター少年が示した真実
窮地のLEGOが行ったのは、久々の “顧客との対話” だった。11歳の少年に「一番大切なモノは?」と尋ねると、彼はボロボロのシューズを差し出した。理由は「難しい技を習得した証だから」と。
この瞬間、LEGOは気づいたのだ
- 子どもは挑戦を求めている
- 難関を突破した“証”を誇りたい
- 「成長の勲章」こそ価値
ということに。これは数字やデータからだけでは決して得ることのできないインサイトだった。
そして、戦略を180度転換した
その少年から得られたインサイトを元に、LEGOは大幅に製品の方向展開を行った。彼らが具体的に行ったのは
- パーツ数を増やし、構造も複雑化
- 完成まで時間を要する “やりごたえ” を演出
- 完成品が「自慢できる勲章」になる設計へ
⠀結果、売上は急回復し、今日の世界No.1トイブランドへと上り詰めた。
データとインサイトのバランスを取る
市場データは「潮流」を示すが、人間の動機や感情までは写し取れない。LEGOの失敗はデータを絶対視し、顧客の声を置き去りにしたこと。逆に、成功は顧客の深層心理を拾い上げ、プロダクトへ反映したことだ。

V字回復を達成したレゴの売り上げ推移 出展: reddit
僕らが学ぶべき3つのポイント
このLEGOのストーリーから得られることは3つあり、我々が提供しているデザイン思考ワークショップを通じた新規事業創造プログラムでも、大切にしているポイントでもある。
- 仮説より先にヒアリング: データ分析前に顧客へ直接あたり、生の課題を抽出する
- “証拠”をデザインする: 顧客が努力や情熱を誇示できる要素を組み込む
- KPIに“感情指標”を入れる: 完成度やNPSだけでなく、達成感・熱中度を測定する
この教訓をbtraxのデザイン現場でどう活かしているのか?
僕ら btrax がプロジェクト毎に行っているのは、「数字 → 仮説」ではなく「声 → 洞察 → 数字」という逆転プロセスだ。具体的には次のようなサイクルを徹底している。
1. フィールドインタビューを最初に組み込む
事前にデスクリサーチで得た数字はあくまで “問いを立てるための材料”。初日の午前中にクライアントと一緒にユーザー宅や店舗に出向き、最低5件のインタビューを実施する。これで “肌感覚” を全員にインストールする。
2. その場で “証拠” をモデリング
ユーザーから得たインサイトをもとに、数字だけでは測れない「ワクワク度」「達成感」を記録する。そして、サービスやプロダクトを企画する際の意思決定時に必ず二軸で評価する仕組みを組み込む。
3. プロトタイプに対するフィードバックの際も数字だけではない感触を大切にする
参加者の表情変化や声のトーンをリアルタイムに記録。テスターが“おっ…”と前のめりになった瞬間をマークし、後でなぜそう感じたかを深掘りする。また、ポストイットで「好き/違和感 / 改善アイデア」を貼り出し、その熱量を可視化。貼られた量と語彙の強度が、そのままユーザーのエネルギーを示すバロメータになる。
人の声が成功への羅針盤となる
数字は「方向」を指し示すコンパスになる。でも、最終的に航路を決めるのは “人の声” だ。
顧客と語り、本音を聞き、それをデザインへ落とし込む。レゴの再生劇は、そのシンプルかつ強力な原則を改めて証明している。次にあなたが戦略に迷ったときは、エクセルを閉じて顧客のもとへ足を運ぼう。そこにこそ突破口がある。
次はあなたの番だ。
データの海で方向を見失いかけているなら、まず顧客の声を浴びに行こう。僕らと一緒に“ボロボロのスニーカー”を探しに行きませんか?
我々が提供しているデザインワークショップの詳細資料や事例紹介をご希望の方は、お問い合わせページから「資料希望」と一言ご連絡を。24時間以内に担当よりご連絡します。
この内容に関連するポッドキャスト
変革をリードする次世代リーダーのためのサンフランシスコイノベーション研修プログラムのご紹介
シリコンバレーの最前線でイノベーション支援を手がけるbtraxによる、経営幹部、事業責任者、本部長・部門長・部長などの部門責任者向けの実践的イノベーションプログラムを提要しています。サンフランシスコの地で、先端技術やトレンドに直に触れながら、デザイン思考やスタートアップマインドを体得できます。
btrax CEO ブランドン K. ヒル、元・日本マイクロソフト株式会社業務執行役員 澤 円氏をはじめとする日米エグゼクティブの知見や実践的ワークショップを通じて、組織変革とイノベーション創出に必要なスキルを5日間で習得します。
詳細はこちらまでお問い合わせください。