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流通の未来を変える“ラストワンマイルの効率化“とは?
物流システムが整っている日本ではだいぶ前から当日配送がデフォルトの選択肢になっているようだ。そして国土が日本の何倍も広いアメリカでも、Amazonの存在で、最近では2日以内に商品の発送が行われる”2-Day Shipping”のサービスがすっかりユーザーたちの間で当たり前の存在になっている。
こうした背景から、商品到着までにかかる時間に対するユーザーの期待値は高くなり、他社でもそれに準じた速さが求められるようになってきている。
そのため、いかにスピーディーかつ効率的に、商品をユーザーに届けられるかというところが、アメリカのロジスティック周辺企業を中心にホットな話題となり、ラストワンマイルデリバリーの効率化に大きな注目が集まっている。
ラストワンマイルデリバリーとは
ラストワンマイルとは直訳すると「最後の1マイル」を意味するが、このような物流ロジスティクスでは、最寄りの基地局から利用者までを結ぶ最後の区間を意味する。
したがって、ラストワンマイルデリバリーの効率化とは、供給側の手を離れ、ユーザーの手に届くまでの最後の配達部分をいかに効率的に行うかということになるのだ。
現在、アメリカのサンフランシスコを中心にこの部分のサービス強化を目的とするスタートアップが次々に誕生している。例えば、Delivは、配送者をクラウドソーシングして店舗や商品の中継地などから、商品を待つユーザーの家までの輸送を効率的にすることを試みている。
日本ではすでに当たり前かもしれないが、国土の広いアメリカにおいて、当日配達や時間指定も可能にしたことが評価されているスタートアップで、APIとしての側面も持っている。
Delivは、配達者のクラウドソーシングという形でラストワンマイルデリバリーの効率化を実現させているが、人間ではなくロボットに配達させるという方法で課題に立ち向かうスタートアップも続々登場してる。
本記事では、ロボット×ラストワンマイルデリバリーをテーマに輸送の効率化に取り組むスタートアップを3社紹介していく。
ロボット × ラストワンマイルデリバリー3社
1. Marble:フードデリバリーからラストワンマイルロジスティクスの世界へ(2015年創設、San Francisco, CA)
Marbelは、昨年2017年、自動走行ロボットを実際にサンフランシスコの街を走らせ始め話題になったスタートアップ。彼らはレストランやショップのレビューサイトを運営するYelpとパートナーシップを組み、自動走行ロボットにレストランからオフィスや自宅へと食事を宅配させることに成功した。
ロボットには、食事の温度を保ったままお届けできる機能や、周りの歩行者や障害物を察知して走行できるようなセンサーを搭載しており、実際に多くの人々が利用していたそうだ。
昨年末サンフランシスコ市の規制が強化され、ロボットが走行する姿は一時的に見られなくなってしまったが、Marbelはこのようなロボットの実用可能性を実証した例を作ったと言えるだろう。
フードデリバリーロボットの会社として認識されているMarbelだが、先日ついにフードだけでなく、eコマースなどのラストワンマイル区間の商品配送などにも手を伸ばして行くと発表。
CEOのMatthew Delaney氏は「フードデリバリーの事業では、多くの人々がオフィスでのランチデリバリーなどにロボットを利用したが、これからはお年寄りや小さな子供も当たり前のようにデリバリーロボットを使えるような社会にしていきたい」とTech Crunchに語っている。
2. Udelv:自動運転のデリバリートラック(2017年創設、Burlingame, CA)
Udelvは、ラストワンマイルデリバリーのために誕生した自動運転のトラックを介してラストワンマイルロジスティクスの効率化に取り組むスタートアップ。2018年1月には、公道では世界初となる、自動運転車によるラストワンマイル配達の試験運転をサンマテオで成功させた。
現在は花屋、ペイストリーショップ、薬局、レストランなどを含むサンフランシスコ・ベイエリアの9社がクライアントとしてUdelvのサービスを利用している。
ユーザーは、スマートフォンにダウンロードしたUdelvのアプリから商品の注文を行い、商品が近づくと通知を受け取って外で待機、トラックから自分の商品を取り出して終了となる。とてもシンプルな流れで得られるユーザー体験が特徴だ。
無人での試験運転以外にも、緊急時などの対応も可能なように遠隔地からの安全操作のシステムが整っているが、現状ではまだ車に人が乗った状態での運送を行っている。このようにUdelvはロボットによるラストワンマイルデリバリーの実現を着実に進めているようだ。
3. Nuro:ローカルコミュニティでの消費活動に切り込む運び屋ロボティクス(2016年創設、Mountain View, CA)
最後に紹介するNuroは、今年2018年1月にシリーズAとして9200万ドルの投資金を獲得したばかりで、ローカルコミュニティでの消費活動に着目したスタートアップとして注目されている。
彼らは、日用品のちょっとした買い出しやクリーニングの受け取りなど、「歩いて行くには少し遠いから車で」というようなシーンで、オンデマンドに配達の注文・受け取りができる自動走行車型ロボットシステムの開発を行っている。
NuroはGoogleのセルフドライビングカープログラムの一環としてスタートし、現在は独立して製品・サービスの開発を行っている。まだ公開されている情報が少ないスタートアップではあるが、今年6月には大手食品卸売のKrogerと提携を発表し、ビジネスとしても着々と動きを見せはじめているようだ。
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流通業界におけるロボティクスの今後
ラストワンマイルデリバリーの効率化に対し、ロボティクスの力を使って取り組むスタートアップを3社紹介したが、他にも数多くの会社が同様のフィールドに誕生している。
政府の規制が多く、ロボットが公道を走って利用者の元まで商品を届けるのには、まだまだハードルが高いようにも見えるが、ここに挙げた3社のように技術開発や供給側とのパートナーシップ構築、自動化はせずともユーザーの獲得を先に進め、実用化までギリギリのところまで本気で迫るスタートアップが存在しているのは事実だ。
デリバリーロボットが社会の当たり前になるのもそう遠くはないはず。
eコマースが普及し、即日配達など、よりスピーディで便利な配達がユーザーにとって当たり前のサービスと認識され始める一方、商品の運搬など単純な肉体労働が伴う仕事を希望する労働者が減っているという傾向がすでに先進国を中心に見受けられている。
日本でも運送業に限らず、近い将来の労働力不足が懸念されているが、そういった面から見ても、ロボットがラストワンマイルのロジスティクスに導入されれば、社会的な大きな変革が生まれるのではないだろうか。
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