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PinterestのDesign Leadが語る、優れたUXを生み出すオフィスとは【インタビュー】 ケイティ・バルセロナ氏
FacebookにTwitter、最近はSnapchatが若者の間で大流行中。そんなSNS全盛の時代に、特に世界中の女性から圧倒的な支持を得るSNSがある。それがここサンフランシスコ発の「Pinterest」だ。
まるで写真をアルバムに貼っていくように、ネットで見つけたお気に入りの写真を保存、分類、共有することの出来るPinterestの魅力は何と言ってもそのデザイン性だろう。ファッション雑誌のようなインターフェイスは多くの女性をユーザーへと変えてきた。
(↑Instagramが「絵日記」のイメージならPinterestは「ピンボード」だろうか)
そんなデジタルデザインの最前線を走るPinterestは一体どんなオフィスから世の中へ発信されているのだろうか。今回はサンフランシスコのPinterest本社内のカフェ内にて、先日東京で行われたbtrax主催のイベント、DESIGN for Innovation 2016にも登壇してくれたDesign Leadでオフィスデザインも担当するケイティ・バルセロナ氏に話を聞くことが出来た。
ユーザーエクスペリンスから社内外でのカルチャー作りまでPinterestのブランディング全般を担当している彼女はイベントではストーリーデザインのセッションでブランディングにおけるストーリーの重要性を語ってくれた。
5月に開催されたDESIGN for Innovation 2016のダイジェスト動画
https://www.youtube.com/watch?v=300C16vNN4s
彼女が体験した日本でのおもてなし
そんな彼女が今回の日本滞在で感じたUXにおいてのアナログ・デジタルの違い、東京での体験、印象、そして移転したばかりの新オフィスをデザインする上で大切にしていることとは?
日常生活で感動したアナログ面のUXの充実度
イベント登壇を終えアメリカに戻った後、先日の日本滞在の際に印象に残っていることについて聞くと、「コンビニはすごく便利ね!郵送することだって出来るし、光熱費の支払いも出来るんだって?!おにぎりもすっごく美味しかった!」と答えてくれた。日本のコンビニのクオリティの高さをすごく気に入ってくれたようだ。
また、交通システムにも驚かされたという彼女に「東京ではどれだけ歩いても2マイル (約3km) 歩けば必ず電車の駅が見つかる」と伝えると「このオフィスから最寄りの駅までは7マイル (約11km) も歩かなきゃいけないのに」と羨ましそうにしていた。
彼女が感じたように東京は世界屈指の生活しやすい都市だと言えるだろう。サンフランシスコでの不便な日常生活と比べてみても、実は東京は生活面でのインフラがかなり発達しており、買い物も移動もかなり便利である。それは、いわゆる日常生活でのユーザー体験 (UX) が優れているという事である。日本のアナログ面の“おもてなし”は成功したようだ。
(↑どちらが生活しやすいかは一目瞭然。)
ごちゃごちゃしていて戸惑ったデジタル面
ではオンラインサービスやアプリなどのデジタル面はどうだったのか。こちらはアナログ面とは打って変わり、“ごちゃごちゃしている”というのが彼女の率直な感想だった。
“MUJI(無印良品)のようなシンプルで洗練されたアナログデザインとは対象的に、デジタルな物はすごく機能が多くてわかりづらいの。”Just In Case”(何かあった時用)の機能がとても多いわ。”と日本のウェブサイトやアプリケーションの印象を語ってくれた。
理由としては国内市場が小さいがゆえに多くの種類のユーザーをカバーしなければいけないため、機能やデザインを削りにくいことが大きいだろう。使いやすさとデザイン性を最重要視しているPinterestのデザイナーから見てみるとやはり日本国内のサービスは複雑過ぎる様だ。
また、日本企業特有の文化として「何か不具合が起こってもそれは誰か1人の責任ではなくチーム全体の責任になるんだ。だから”大は小を兼ねる”といった感覚でどんどん機能が増えていってしまう。」と説明した。「インタレスティング」と答えてくれた彼女の顔からはアメリカ人から見た日本企業の文化がいかに特異であるかが感じ取れた。
(↑同じようなサービス内容にも関わらず”ごちゃごちゃ”しているという印象を与えがちの日本企業のサイト)
優れたUXを生み出すためのオフィスデザイン
オフィスデザインのおける、日本企業とPinterestなどのサンフランシスコスタートアップの違いについても指摘してくれた。
「日本の会社はもっとオフィスの重要性を認識するべきよ」とケイティは語る。一日の大半を過ごすことになるオフィスだからこそ、より働きやすい空間にするべきだという。その大切さを「ミーティングの連続で疲れていても会社が無料で提供している15分マッサージを受けただけで生産性が全く違うのよ」と自分の体験を踏まえて笑いながら話をしてくれた。
オフィス中央の吹き抜けには真っ白な螺旋階段。おしゃれなカフェのような社員食堂には無料とは思えないほど豪華なランチが並んでいる。ふと周りを見渡すだけで彼女の話に説得力は十分だった。
(↑スタッフなら誰でも無料で使えるまるでカフェのような社員食堂)
実際に社員達が働いているフロアーに案内してもらうと、彼女のオフィスの大切さを認識すべきという主張はより力を増す。
ガラス張りの会議室。社内間でのコミュニケーションを促すピンボード。至るところに設置されているふかふかのソファー。木目のデザインのインテリアが生み出す自然のぬくもり。そんな空間でいきいきと働く社員達から“やらされている感”は微塵も感じられない。
噂によるとPinterest社はこの新しいオフィスのデザインに約20億円を費やしたらしい。
一見贅沢とも思われる金額であるが、オフィスへの投資は非常に理に適った考え方だ。ただただ与えられた仕事を“作業”のようにこなしていればオッケーではなく、AIとの仕事の奪い合いになりによりクリエイティブな人材の育成・獲得が必要になってくるこれからの時代において、“ひらめき”を生み出すようなオフィス環境の重要さはどんどん増していくだろう。
(↑ ふと一息つけるような空間がたくさん )
感心しながら案内してもらっているとファウンダーでCCOのエヴァン氏とすれ違った。「あそこで仕事しているのがエヴァンよ」とケイティは言うが、1000人以上の企業でオフィスで創業者とすれ違うなんて日本ではまずありえない光景だろう。こんなアットホームな雰囲気も彼女は気に入っているという。
物理的にも人間関係的にも”開放感”という言葉が良く似合うPinterestのオフィス。低い天井から蛍光灯が照らし肩書きがデスク位置を決める、そんな“圧迫感”が頭の中をよぎってしまう典型的な日本企業のオフィスとはまるで正反対だった。
Pinterestが大切にする“社員へのUX”
UXが考え尽くされたPinterestはこのオフィスから生まれたのかと思うと、納得できる。オフィスデザインが社員へ対するUXへの思いやりで満ちていたからだ。
「これからのサービスはいかにユーザーエクスペリエンスを研究し、優れた経験を提供出来るかが成功の鍵」そんなフレーズをよく耳にするようになった。でもいったいどこから始めればいいのだろうか。
そのヒントがこのPinterestのオフィスにはあった。世界へ通用するイノベーションを生み出すには何よりも前にクリエイティブを促すオフィス作りから始めるべきなのかもしれない。なぜならオフィスこそが私たちの想像以上にオフィス環境とイノベーション創出には深い関係性があるようだ。
優れたUXは、社員へのUXが考え尽くされたオフィスから
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