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日本企業がマーケティングを活用していくためには
特に国外市場で競っている(または拡大の意向がある)日本のビジネスリーダーたちに向けて、どのようにマーケティングを活用すべきかというアドバイスを提示していきたいと思います。日本の国内市場は非常に特殊であり、日本国内で戦術的に実践されているマーケティングの形式はおそらく海外では通用しないでしょう。
まず、もう一度、なぜ今そこまでマーケティングを取り入れることが不可欠であるのかを明確にし、日本の事業の方向性に影響を与えている変化の要因に焦点を当てましょう。
1940年後半から1950年代にかけての日本は、欧米の製品を真似た廉価商品を販売し、主に低価格・低賃金で競ってきました。しかし、このアプローチの限界を迎えた日本は、価格のみならず品質においても競争力を得るために驚くべき変貌を遂げます。日本が先駆けとなって開拓した製造方法とアプローチは、世界中の競争のあり方をも変えることとなったのです。
今日、日本の事業は単なる品質競争から、戦略や革新面の競争へと進化しなくてはならない時代を迎えています。良質な製品だけでは、もう競争力を維持することはできません。製品に限らず、競争へのアプローチにおいても真のイノベーションが必要とされているのです。すなわちそれがマーケティングというわけです。
失われた20年間を経て、2014年は「アベノミクス」、2020年の東京五輪、高齢化と人口減少が及ぼすプレッシャー、国際的な競合相手(特に韓国と中国)の活動と、変化を促す数々の要因が存在し、これらは日本にとってかつての力を取り戻す機会となるでしょう。日本は中枢となる新たな事業技術と企業家精神にその卓抜した能力を集中させる必要があるのです。
日本におけるCMO
以前にも記事にも書かせていただいた事でありますが、私は日本企業にCMOの職能を組み込むべきだと感じます。しかし、それは米国で設けられているChief Marketing Officer(主任マーケティング役員)をそのまま採り込むという意味ではありません。「CMO」は企業におけるマーケティングの役割を連想させるグローバルな略語であるため、日本企業においては「消費者マーケティングチーム(CMO: Consumer Marketing Office)」と名称を改め、より適切な形態で組織に組み込むことを提案したいのです。
CMOの働き
以下の図に示すように、異なるマーケティングの役割を担うそれぞれの役員チームが協力して業務を行います。
チームリーダーはローテーションで決まり、「マーケティングのスーパーマン」的存在の人物には依存しません。CMOは社内で消費者の声を代弁する立場となり、専門知識を持った外部パートナーの協力を得ながら、急速に変化する競争環境上の課題や消費者動向に柔軟に対応します。チームはマーケティング支出のROI(投資利益率)を測るためのKPI(重要業績評価指標)を定め、成功の定義づけを行い、また必要な予算の正当性を説明します。
リーダーのローテーションに加え、知識と経験を維持しながら常に新しい思想を取り込むため、チームのローテーションも計画して実施します。この図に示されるように、CMOを通して、マーケティングは社内全体の各部門に平等に並ぶ一職能として部門横断的に組み込まれることになります。
CMOの直接の報告先は事業主またはCEOです。ピーター・ドラッカー氏の言葉を借りれば、「…事業においてマーケティングは他とは違う一種独特な職能である」ので、事業主またはCEOが直接関わることは不可欠です。
CMOが日本の事業にもたらす恩恵とは
CMOは、明確なマーケティングプランや戦略のもとに成り立つ企業の組織構築の動機付けや整合のための基盤をCEOに提供することで、イノベーションの主導権を維持あるいは再獲得する手助けとなります。売上目標の達成や、より高利益を確保しながら市場シェアを築く確率を高め、さらに、消費者のイメージやフィナンシャルコミュニティの認識における企業のブランド価値を高めることにもつながります。これによって、1.認知 2.試用 3.リピート 4.支持というマーケティングの4つの効果の実現を促します。
CEOに向ける8つの提案
1. セールスとマーケティングを2つの異なる職能に分離し、それぞれの役割を明確にする。
2. CEOに直接報告を行う新しい役員会レベルの職能としてCMOを確立する。
3. CMOの職能を組み込むため、会社の組織や部門横断的な業務プロセスを見直す。
4. 社内におけるマーケティングの地位を高め、社員がマーケティング分野に特化し、専門家としてのキャリアを伸ばしていけるようにする(エンジニアのような認識で)。
5. 外部からの援助を得ながら、マーケティングのリクルートとトレーニングプログラムを継続して実施する。
6. 外部の代理業者をサプライヤーとしてではなく、パートナーとして扱う。彼らはアドバイザー、自分が決定者という認識で!
7.マーケティング投資のROI、効果、効率性、一貫性、そして継続性を測定するプロセスを実施し、KPIを定義することで全面的な改善を行う。
8. CMOチームと外部パートナーに対し、インセンティブと特典を盛り込む。
ペリー提督の旗船「ポーハタン」号のレプリカの横でポーズを取る著者(下田にて)
マーケティングの黒船来航なり!
大半の日本人にとってペリー提督と1854年に下田に来航した黒船はお馴染みでしょう。ペリー提督率いる黒船来航によって、日本と米国との間に最初の通商条約が締結されることとなり、日本の250年間に亘る鎖国に幕が下ろされました。国外からのプレッシャーによって日本に変革をもたらしたこの象徴的事象を例に、¥私が皆さんにイメージして頂きたいのは、¥日本企業にマーケティングを取り入れてもらうというミッションを掲げた、言わば「マーケティングの黒船艦隊」来航です!その貨物の中に、グローバル市場の競争がもたらす脅威も乗せて。
最後に、ウィリアム・スミス・クラーク氏が1876年に札幌農学校を去る際、自分の教え子たちに贈った激励の言葉を思い返して頂きたいと思います。「少年よ、大志を抱け!」という彼の言葉は、日本国内でもよく知られたモットーとなっていますが、日本のビジネスリーダーたちもマーケティングを事業の中枢的職能として取り入れるべく、大志と決意を胸に直接的に関わっていかなくてはなりません。
「マーケティングは非常に基礎的なものであり、独立した職能として捉えることはできません…それは最終的な結果、すなわち顧客の視点から見た事業全体なのです。」
変化は決して容易には生まれません。しかし、それは必然且つ必要なものです。市場は常に変動を繰り返す競争の厳しい環境です。立ち止まって傍観するという選択肢にはありません。マーケティングを全面的に取り入れ、海外市場でKPIを達成することを目標として下さい。それを実現できるどうかは、次の一歩を踏み出すあなたにかかっています!
ロバート・E. ピーターソン – Guest Contributor マーケティングやコミュニケーションに関わる問題解決のコンサルティングを行うウィッカボーグ・コンサルティング・グループ(Wickaboag Consulting Group)社社長。東京在住。1999年にコンサルティング業を開始する前は、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)社およびサーチ・アンド・サーチ(Saatchi & Saatchi)社に勤務。トヨタを30年来の顧客として持ち、電通のコンサルタントとしても地位を確立している。 |
Photo by: Robert E. Peterson
原文: How Japan Can Embrace Marketing
編集: Hinako Sato
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