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本当に日本のブランドロゴは文字ベースのデザインが多いのか?
先週、各国のブランドロゴの考察として下記のポストをリリースした。主に、日本企業の多くのロゴが、数十年前から普遍的に ”文字ベース” のスタイルを利用していることが多いという内容だ。
ありがたいことに、この内容に関して、大変多くの反響をいただいた。その中でも、下記のような多少の批判も見られた。
前回のポストに対する暖かいご意見
日本にはシンボルマークがないかのような誤った印象操作にも腹が立つ
選び方が恣意的すぎる!たとえば Fortune 500 (からB向け企業を抜いたとしても) 基準に沿って挙げるとこういう偏りにはならないはず
恣意的な抽出そのものだよな。
タイガー魔法瓶と象印に謝れ!
なので、できるだけロジカルに検証してみた
上記のほとんどが、それなりの真実味があると考えられる。ということで、フォローアップとして、本当にそうなのかをできる範囲で検証してみることにした。
手法としては、日本のトップブランドの中で、どのくらいのブランドが文字ベースのロゴを利用しているかというもの。すなわち、日米の相対的なブランド比較ではなくて、あくまで日本のブランドにおける調査になる。
ブランドランキングTopを調査
まずは日本の “代表的” なブランドということで、Interbrandが発表している Best Japan Brands 2020 Rankings におけるロゴの中から、文字ベースのもの、シンボルと文字、シンボルっぽい文字のもの、シンボルだけのもの、それぞれの数の統計を調査することから始めてみたい。
- 文字ベースのもの: 49%
- 文字とシンボルのもの: 39%
- シンボルっぽい文字のもの: 11%
- シンボルだけのもの: 1%
文字ベースのもの代表例:
まずは、ロゴタイプ = 文字要素がメインになっているロゴ。100のブランド中、半分近い49%がこれに該当する。
文字とシンボルのもの代表例:
次に、ロゴシンボルとロゴタイプの両方を並べて利用しているパターン。それぞれ独立して利用することもあるが、基本的には両方並べるのが原則になっているもの。全体の39%がこれ。
シンボルっぽい文字のもの代表例:
もう一つのタイプとして、基本は文字なんだけど、少しデザイン要素を入れることで、少しシンボルっぽくアレンジされているロゴ。全体の11%が該当する。
シンボル “だけ” のものはたった一個
そして最後にシンボルだけで、文字要素を一切利用していないタイプ。これは、100うち、たった一つだった。そして、このロゴはニューヨーク近代美術館 (MoMA) にも展示されているほど、世界的に有名である。
参考: ネコマーク誕生物語
タイガーと象印は?
ちなみに、冒頭の指摘の一つである “タイガー魔法瓶と象印に謝れ!” に関しても調べてみたところ、残念ながら両社とも公式ロゴはロゴシンボルとロゴタイプの両方を合わせたものなっていた。残念!
結論: やっぱ文字要素が多い
上記のデータからもわかるとおり、やはり日本企業、それも創業年数が多い企業は、共通して文字要素がメインになっているロゴを利用していることが多い。その一方で、クロネコのように、シンボルだけでも世界的に知名度が高いブランドも存在する。
例えば、味の素なんかは最近アメリカのデザイン会社と一緒にリブランディングを行い、文字ベースのものから、よりシンボルに近いロゴのスタイルに変更を行った。
また、デジタルチャンネル対応という意味で考えれば、メルカリのように、アイコンがロゴよりも知名度が高くなってきているケースも増えてきている。
参考: ロゴにおけるデザインの重要性がわかるマッシュアップ例
シンボル “だけ” のアメリカブランド
では、一方でアメリカのブランドで、文字要素を廃し、シンボルだけで突き進むロゴを利用している代表例を見てみよう。大抵の場合、元々は文字とシンボルの両方を利用したが、ブランド認知度が高まった時点で文字要素を外したロゴにリデザインしている。
ちなみにシンボルだけのロゴを採用しているアメリカのブランドは、Top100のうち5社である。従って、必ずしもアメリカのブランドはシンボルだけのロゴが多いというわけではない。
一方で、AppleやNikeといったトップブランドがシンボルだけのロゴに移行したのは興味深い。大多数のブランドが未だに文字ベースのロゴ or シンボル + 文字のロゴを採用している中で、シンボルだけで攻めるのはかなりの覚悟が必要だろう。
シンボルだけになっていく理由
そもそも、文字要素を外して、シンボルだけのロゴになっていく理由をいくつか考えてみよう。
- 自信がある: ロゴテキストがなくても、そのブランド名を認識してもらえる自信があるから
- 定着している: シンボルだけで認識してもらえるほどにブランド認知度が高まったので、文字要素をドロップした
- デジタル対応: サイトやアプリ上で表示する際に、より可視性が高く、サイズ的にもフィットしやすいシンボルを採用した
- グローバルを視野に: アルファベットを読めないユーザーにも一眼で認識してもらえるようにした
- ユニバーサルな存在を目指す: ブランド自体が名前ではなく “記号” になることにより、より普遍的な存在になるため
シンボルロゴのルーツ: 家紋
最後に、日本のブランドはシンボルだけのロゴが少ないという結果だったが、そもそもロゴシンボルのルーツの一つが日本に古くからある “家紋” である。
昔は、異なるバックグラウンドにより、文字が読めない人々も多かった。そういう人でも一眼でわかるシンボルとして家紋が発達した。また、戦での旗印としても、敵味方が一瞬でわかるといった役割もあった。
この美しい日本の家紋は、ルイヴィトンも影響を受け、ホログラムの元ネタにもなっている。そして、我々、ビートラックスのロゴも家紋から大きなインスパイアを受けている。
ブランドのシンボル化はデジタルとグローバルに対応するため
今後の世の中の流れと日本企業の成長を考えるのであれば、少しずつロゴタイプ中心のブランドロゴから、シンボルへの移行をしていくのが正しい方向だと考えられる。
近い将来、全ての企業がテクノロジー企業にならなければ生き残れないことを考えても、デジタル対応とグローバル対応は、企業のブランディングにおいても重要な要素になってくると考えられる。
参考: ライフスタイルブランドとは – その代表事例と構築方法 –
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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