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創造的なアイディアを生み出すために「余白」が必要な3つの理由
この記事で伝えたいことは、すぐに行動するのではなくコーヒーを淹れて、自由に優雅に考える「余白」を作ってほしいということだ。
それは結果的に認知疲労を回復させて、多様な視点で考えることを可能にし、創造的なアイディアを生み出す可能性を高めてくれるだろう。
私は大学院で創造的なアイデアを生み出す方法論の研究をしている。というのも、自分自身が成長するにつれて斬新なアイディアを出しにくくなってきていたからだ。
子供の頃は斬新なアイディアが出せていたのに、なぜ今難しくなってしまったのか。
それを様々な論文を参考にしながら考え続けた結果、私は「余白の重要性」に気づいた。ここでの余白は、いわば「自由に優雅に考える時間」である。
余白の重要性に関しては、これまでも著名なクリエイターたちが暗に主張している。
例えば、手塚治虫がその一人だ。
彼の名言の一つに「合理化はゆとりや遊びの空間を消して、むしろ人を遠ざけることになります。」というものがある。これは、「ゆとりや余白を持つ重要性」を暗示的に示している。
実際に、行動の自由度を上げることはアイディア創発の可能性が高まると言われている。
Kuo and Yeh[1]の論文では、規定された経路を歩くよりも、無拘束または自由歩行中にAUT(思考の流暢さと柔軟性のスコア)が向上することが確認されている。
つまり、行動を制限することは思考の柔軟性を妨げてしまうのだ。
このように余白を持つ重要性が謳われる一方で、肝心なその理由を解説した記事はあまり見られない。そのため、本記事では、創造的なアイディアに自由時間(余白)が必要なわけを筆者なりに紐解いてみたい。
1. 余白は視点の切り替えを可能にするため
創造的なアイディアには「まなざしを革新してくれる」何かを備える必要がある。
つまり、視点の切り替えが重要であるが、ここに苦労している人は多い。その理由の一つは、一人で制限なく自由に考えられる時間が少ないことが原因だ。
例えば、新規コンセプトを考えるワークショップに参加していたとしよう。ファシリテーターがワークショップを組み立て、プログラムに従って、個人のアイデア発想の時間が割り当てられるだろう。
そこで考えるアイディアは基本的にプログラムのフレームに従っていて制約が多い。結果的に、自由な解釈を阻み、想定外の視点を獲得することが難しくなってしまう。
そんな時に、自由に物事を考える余白をつくることが重要になってくる。
余白をつくることで、拡散的に様々な角度で自由に物事を考えることができる。それが、想定外の視点を引き出し創造的なアイデアを生み出すことを可能にするのだ。
2. 余白はモチベーションを高めるため
創造的なアイデアを生み出すために必要なのは、高いモチベーションだ。モチベーションは、類推的思考を強め、オリジナリティの高いアイデアを生み出す手助けをしてくれる。
逆に、モチベーションが低いと創造性の低いアイデアに落ち着いてしまい、プロジェクトの失敗を招いてしまう危険性が高くなる。
実際、モチベーションが下がり革新性の低いアイデアに落ち着いてしまうケースは多々ある。
例えば、筆者が最近見たコンセプト開発の現場では、最初は楽しくコンセプト開発していたにもかかわらず、時間的な制約により次第に焦り、いつの間にか楽しさを忘れてモチベーションが下がった結果、ありきたりな着眼点に落ち着いてしまっていたのだ。
このように、モチベーションの管理は、創造的なアイデアを生み出すために必要不可欠だが、それを維持・向上させるためには、余白が重要な役割を担う。
余白を取り入れることで、個人は遊び心のある自発的な方法で深く没頭することができる。その結果、フロー状態(想像力や思考力が高い状態)に入りやすくなり、創造的なアイディアが生まれやすくなるのだ。
さらに、自由にアイディアを深掘りすることで、当事者意識が高まりモチベーションの維持にもつながることも見込める。
3. 余白は思考の柔軟性を高めるため
創造的なアイディアには視野を広げる、思考の柔軟性が必要である。
一般的に、即行動は正義だと考えられているが、創造性を高めるためには少し時間を置くことが重要になってくる。
例えば、Adam Grant[2]の研究によると、作業前に自由時間(余白)を設けた社員の方が、上司からの創造性の評価が高かったことを示している。
この理由は、拡散的思考にある。つまり、作業前に時間を設けたことによって、一つの事象に囚われることなく、様々な角度から方向性を検討したことにより創造性の高い活動ができたのだ。
このように、余白を取ることは、思考の柔軟性を高めて創造的なアイデアを生む手助けをしてくれると考える。
まとめ
闇雲に進めるのではなく、スケジュールにゆとりを持ち、自由な時間を設けることの重要性をいくつかの事例を交えて説明した。
今後も研究者かつ実践者として創造性を高める知識をシェアしていきたいと考えている。ぜひご期待いただきたい。
参考文献
[1] Kuo, C.-Y., & Yeh, Y.-Y. (2016).
Sensorimotor-conceptual integration in free walking enhances divergent thinking for young and older adults. Frontiers in Psychology, 7, 1580.
(https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2016.01580/full)
[2] Jihae Shin & Adam M. Grant
When Putting Work Off Pays Off: The Curvilinear Relationship Between Procrastination and Creativity
(https://faculty.wharton.upenn.edu/wp-content/uploads/2020/04/ShinGrant_AMJforthcoming.pdf)
Written by Ryusei Anzai (btrax Japan, UI/UX Design Intern)
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