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ガイ・カワサキから学ぶ、スタートアップ定番 10の間違い
現在のシリコンバレーにおけるスタートアップエコシステムの源流を作ったのは間違いなくAppleだろう。
そのAppleの黎明期だった1984年にエヴァンジェリスト (伝道師) として参画したのが日系アメリカ人のガイ・カワサキだ。彼はAppleの魅力を世界に広げることで、マッキントッシュの成功に大きく寄与した。
現在は起業家 / ベンチャーキャピタリストとして活躍している彼は、これまでに多くの起業家に対して投資家、アドバイザーとしての立場から多大なる影響を与え、成功に導いてきた。また、複数の関連著書を通じてスタートアップ成功のための「法則」を伝えている。
起業家にありがちな10の定番ミス
今回はそのガイ・カワサキが以前にUCバークレーで行った講演「スタートアップ起業家にありがちな10の間違い」を動画共に紹介したい。
どれもかなり “あるある” な感じで、すでに体験したことのある人も多いと思うが、ぜひ参考になれば嬉しい。
1. 市場の1%を獲得するのは意外と難しい
全市場の1%獲得すればかなりの売り上げが見込める。それもあり、スタートアップで商品やサービスを展開する際に、既存の市場の1%程度であればなんとか獲得できそうだと思いがち。
しかしそれは大きな間違いで、一見簡単に儲かりそうだけどそんな簡単じゃない。ドッグフードの実例をもとにわかりやすく説明している。
2. スケールアップを急ぎすぎる
多くのスタートアップが最初から急成長を見込んでオペレーション拡充を急ぎがち。でも実際にはスケールが遅れて倒産する企業はない。
そもそも、そんなに急いで体制を整えたところで、ユーザーやオーダーが集まらない限りは無駄なコストになるだけだ。
3. パートナーシップに期待するな
スタートアップを始めた直後はユーザーも売り上げも少ないため、大企業などとのパートナーシップを結んだりするだろう。しかし、パートナーシップは全く意味がない。
そんなの売り上げが無い時の言い訳にすぎないのだ。起業家に必要なのは数字を達成すること。余計なことに気を取られずにとりあえず業績を上げることに集中するべき。
4.ピッチよりもプロトタイプを作ろう
スタートアップにとってピッチはとても大切だが、現代では可能な限りプロトタイプを作成して投資家に見せた方が何かと有利だ。ピッチではいくらでも誤魔化すことができるが、プロトタイプでは無理だ。
そして、プロトタイプがあるということはある程度プロダクトがあることを意味するので、投資家からのバリュエーションを挙げてもらいやすくなる。
5.ピッチの際には10/20/30ルールを採用せよ
多くの場合、スタートアップのピッチを行う際にプレゼンに色々盛り込もうとしすぎる。そんな時はガイ・カワサキ流、ピッチの10/20/30ルールを活用するのがおすすめ。
スライドを利用したピッチを行う場合の目安は10ページ, 時間は20分, フォントのサイズは30ポイントだ。そうすることで本当に重要な情報だけがピッチに凝縮されることになる。
6. 全て同時進行で行え
一般的な企業では一つずつタスクをこなすことが一般的だ。しかし、スタートアップの世界では複数の事柄が一気に動き出す。
順番で行うことはできない。「資金調達が出来たらプロダクト作り始めます」は絶対にダメ。チーム作りも、資金調達も、プロダクト作りも、採用も、仕組み作りも全て同時に行わなければならない。
7. 株式の51%を保有すれば会社のコントロールが出来るは幻想
創業者達が株式の過半数を所有していればコントロールを奪われない。と思うのは完全に間違い。外部資本が入った瞬間からコントロールを失う。
株式会社だから全ては取締役会の決議で決まる。51%以上のシェアがあれば大丈夫。それはスタートアップの世界では通用しない。現実では決議で決まることはほとんどないのだ。
8. 特許はあまり意味がない
特許さえ取れば競合に真似されないと思ったら大間違い。スタートアップはあまり特許を過信しない方が良い。その理由として、特許を取っているだけでは真似されることを防御できないし、一旦訴訟になるとお金も時間もたくさん掛かるからだ。
なので、もし投資家とのミーティングで特許の話をするのは一回だけにした方が良い。それ以上言うと相手の興味がなくなる可能性がある。
9. バランスの取れたメンバーの採用を
スタートアップの初期メンバーを探す際には自分が持っていないスキルの人間を優先して採用すべし。初期の頃などは、ついつい自分に似た人に興味を持ちがちなので要注意。
自分がエンジニアだったらビジネス担当を。ビジネス担当だったらエンジニアを採用することで、バランスの取れた強いチームを作ることが可能になる。
10. 投資家とは友達になるな
スタートアップの多くはどこかの段階でVCから投資を受ける時がある。そこで勘違いしがちなのが「VCは友達」と思ってしまうこと。もちろんできるだけ支援はしてくれると思うが、業績が出ないままでいると冷酷な判断をされることも少なくはない。
そもそも彼らの仕事は起業家と友達になることではない。リアルな現実がそこにある。VCからの投資を受ける際にはそこを理解しておこう。
11. VCに過度な期待をするな
VCはスタートアップのプロだから投資してくれたらさぞかし手厚いサポートも受けられると思ってる人が多い。しかし現実はそんなに甘くない。一ヶ月に数時間もらえれば良い方だ。
彼らは非常に忙しいし、投資からのリターンを出すことが最優先になるため、特に業績の良くないスタートアップにはなかなか時間を割いてくれない。
One ore thing的なエピソード。
終わりに
シリコンバレー地域でも、ガイ・カワサキ以上にスタートアップや起業家が持つべき心得をここまで明確に理解し、表現できる人はかなり少ない。それもユーモアを交え、わかりやすい英語で話してくれる。
今後紹介したセッションはかなり昔のものにはなるが、その内容はタイムレスで現代の起業家にもかなり貴重な示唆に富んでいると思う。
以前に対談させていただいたこともあるが、彼は知識が豊富なだけでなく視点の鋭さや、時流理解のセンスも飛び抜けている。対談の最後に彼の本にサインと “Change the World!” と書いてくれたのが嬉しかった。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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