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AIの進化が我々の仕事に与える7つの変化【生成AI Vol. 4】
AIの話題になると最も興味が湧いてくるのが、我々の現在の仕事に対する影響だ。特に高い知能やスキル、そしてクリエイティブな能力が求められるタイプの職業に対しての影響が気になるところ。
というのも、これまで人間の仕事を機械が代わりに行う際には工場やロボットのような、単純作業が主な役割と考えられてきた。言い換えると、マルチタスクよりもシングルタスクの方が得意な分野であった。
しかし、ここ数年のAIの発達と生成AIの登場により知能的な領域にまでAIが進出していくことが予想される。
ということで、今回はAIが我々の仕事に与える影響を考えてみたい。
無くなる可能性の高い仕事
現在存在する仕事が無くなってしまう?そんなことが果たしてあるのだろうか?
まずはこの画像を見てほしい。
右上から電話交換手、タイピスト、馬車の運転手、エレベーターガール。これは時代の変化と共に無くなった、もしくは絶滅しかけている仕事である。
このように一時期は存在していた仕事でも、テクノロジーの進化でその存在価値が著しく低下する職業は確実に存在する。
統計で見る未来予想
ゴールドマンサックスのリサーチによると、約3分の2の仕事が生成AIの影響を受ける見込みとのこと。
これらの職種の雇用割合と、それらの仕事の25%から50%のタスクが自動化の影響を受けることを考慮すると、現在実施されている仕事のうち最大25%が生成AIによって自動化される可能性がある。
アメリカやヨーロッパの分析を基にした推定によれば、生成AIによって、約3億人分の正規の仕事が置き換えられるという計算になる。
短・中・長期ごとに生成AIによって変化する仕事
実際に複数の生成系ツールを使ってみて「これは直ぐにでも変化するな」と思った仕事もあれば、もう少し時間がかかりそうなもの。そして、おそらくあと数年は大きな影響は受けないが、長期的には変化が訪れそうな仕事を考えてみた。
直近で変化しそうな仕事
- フォトグラファー
- イラストレーター
- 3Dモデラー
- ライター
- モデル
これらの職業は生成AI、特にMidjourneyのような画像生成AIやChatGPTに代表される文字生成AIを活用すれば今にでもある程度代替できる。もちろん全て一瞬にして無くなることはないが、需要はかなり下がる傾向があると予想する。
中期的に変化しそうな仕事
- コーダー
- リサーチャー
- グラフィックデザイナー
- UI デザイナー
- 秘書
上記はもう少し時間はかかりそうだが、確実に変化が訪れそうな職業。現段階ではむしろAIを活用することで効率が上がり、しばらくはより短い時間でアウトプットができると考えられる。
長期的に変化しそうな仕事
- 会計士
- 弁護士
- 通訳
- 税理士
- マーケター
短期間ではあまりAIの影響を受けないかもしれないが、3-5年もすればかなりAIによってその仕事の内容ややり方が変化すると思われる職業。ここで紹介されている職種のその多くが、現在のマニュアル工程の多くがAIによって自動化されていくだろう。
クリエイティブ系の職業は生成系AIの影響が大きい
第一回でも紹介した通り、ジェネレーティブAIは”何かを生み出すタイプ” ということは自ずとクリエイティブ系の仕事に対しての影響が大きいと考えられる。
またそれは同時に、現在存在しない新しい仕事を新しく生み出す可能性もある。
クリエイティブ職にフォーカスを当てて、現在のクリエイティブ系の職種の中でも、生成AIによって需要が上がりそうな仕事と下がりそうな仕事をそれぞれ3つほど考えてみた。
生成AIで必要性が下がりそうなタイプの仕事 Top 3
- イラストレーター
- フォトグラファー
- コピーライター
これらの仕事はある意味「オペレーション」に近いタイプの仕事内容。言い換えると「作るだけ」の仕事であり、AIに取って代わられる可能性がかなり高い。
生成AIで必要性が上がりそうなタイプの仕事 Top 3
- クリエイティブディレクター
- アートディレクター
- UXデザイナー
逆にAIや機械ではなかなか真似のできないのが全体のクリエイティブの指示や、総合的な体験を設計するような仕事。
ある意味インスピレーションが必要だったり、ゼロイチで物事を考えたり、文化的特性を理解していないとなかなか良い仕事はできないので、AIはまだまだ苦手なのではと思われる。
AIが進化することで我々の仕事に与える7つの変化
では最後に、その職種に関係なく幅広い視点で生成AIによって、我々の日常における仕事にどのような変化が訪れるかを予想してみる。
- プロンプトエンジニアの重要性が高まる
- ファクトチェックがかなり重要な職業になる
- 事務職の生産効率性が爆上がりする
- クリエイティブ職がより身近なものに
- AIによってSNSマーケティングが完全自動化される
- 肉体労働系の職種のニーズがかなり高まる
- AIによって勤務時間が短縮される
1. プロンプトエンジニアの重要性が高まる
生成AIが世の中に普及したことで一気に注目が集まっているのが「プロンプトエンジニア」という名前の職種。
以前のエントリーでも紹介した通り、文字や文章を出力してくれるChatGPTや画像生成系のAIサービスを利用する際に不可欠なのがプロンプトである。
言い換えると、AIからの出力のクオリティーは入力したプロンプトや、その結果を元にチューニングしたプロンプト内容によって大きく左右される。
ということは、優れたアウトプットには優れたプロンプトが不可欠であり、それをコントロールするのがプロンプトエンジニアの役割。
まあ「エンジニア」と呼ばれているが、難しいコードを書くわけではないので、トライアンドエラーの場数を踏めば誰でもプロンプトエンジニアになる事が可能で、これまでのエンジニア職よりもかなり間口が広いと思う。
2. ファクトチェックがかなり重要な職業になる
AIによって生成された文章や画像、そして映像などはここ数ヶ月だけでもかなりそのクリティーが向上しており、そろそろ人間の目だけではそれが本当なのか偽物なのかの区別がつかなくなってきている。
結果的に、ディープフェイクなどの偽コンテンツが世の中に蔓延し始めている。
特にChatGPTなどのテキストベースのAIツールは不正確さが最大の問題になっている。ChatGPTと対話する際、無意識のうちにその発言を信頼してしまう。しかし、これらのAIツールは実際には自身が言っていることが真実かどうかを知ることはできず、単に人間らしく信頼できる情報を提示するだけなのだ。
言い換えると、そこに解決すべき明確なギャップが存在します。このギャップを埋めるために必要なのが、ファクトチェッカーの仕事。AIツールが一般的になるにつれて、信頼性のある正確な情報を提供し、デマの拡散を抑制するために、舞台裏で働くファクトチェッカーの数が増えていくだろう。
一つの例として、GoogleやMicrosoftなどの企業が近い将来、BardやBing ChatのようなAI搭載の検索エンジンに対して大規模なファクトチェッカーチームを編成することが予想されている。
3. 事務職の生産効率性が爆上がりする
生成AIを使う一番のメリットは生産性の向上だろう。すでに多くのSaaS系ツールにAIが導入されており、作業効率がどんどん高くなっている。
例えば、GoogleはGmail, Docs, Sheets, SlidesなどのGoogle Workspaceアプリで生成AIを導入している。同様に、MicrosoftもOffice 365の生産性向上アプリスイートで同様の取り組みを行っている。他の多くの企業のプロダクトにもAI技術を導入し始めている。
これらのAIツールが開発され、誰にでも利用可能になると、これらのツールは世界中の頭脳労働者の生産性を飛躍的に向上させるだろう。
資料の準備やビジネスプレゼンテーション、マーケティングキャンペーン、ニュースレターなど、かつて数時間かかっていた仕事が数分で完了するようになる。
これは一部の人にとっては、仕事を失う危険性を感じさせるかもしれない。でも、AIがオフィス業務の退屈な作業を単純化してくれれば、それによって人が創造的な仕事に時間を使うことが可能になるメリットもあるだろう。
4. クリエイティブ職がより身近なものに
文中でも説明した通り、生成AIの中でも、DALL-EやMidjourneyなどの画像生成AIツールがクリエイティブ界に大きな影響を与えている。
すでに多くのアーティストたちが、「著作権保護された作品を参考にすることは不公平」であるとこれらのツールの使用に抗議している。
しかし、より実用的な観点から見ると、我々 btrax の現場でもそうだが、創造的なAIツールは芸術家、グラフィックデザイナー、インテリアデザイナー、ファッションデザイナー、プロダクトデザイナーがより速く新しいアイデアを出すこと補助する役割になってきている。
AIが最初のラフな下書きを作成することで、後で迅速に微調整や調整を行い、より迅速にオリジナルのコンテンツを生み出す柔軟性が得られるのだ。
実際に、特定のアーティストの独自のスタイルでオリジナルの音楽を作成できるAIツールが既に登場している。したがって、ミュージシャンやソングライターも将来的にはこの技術を利用する可能性があるだろう。
生成AIはまだ完全に動画作成をマスターしていないが、これらのツールの急速な進歩を考えると、2023年末までにはそのクオリティーの有無は別として、AIが作成した動画が世の中に蔓延することも驚くことではないだろう。
その後それらが十分な品質になれば、映画製作者たちもこの技術をインスピレーションの源として活用する可能性が大いにあると考えられる。
5. AIによってSNSマーケティングが完全自動化される
現在、ソーシャルメディアキャンペーンの計画、組織、デザイン、スケジュール作成は人間が行なっており、かなり手間がかかっている。というのも、ブランドイメージ、トーン、ターゲットオーディエンス、ブランドカラー、スタイルガイドなど、考慮しなければならない要素が数多くあるからだ。
SNSマーケティングは「マーケティング」といえどもかなりクリエイティブな側面が強い。それゆえ必要とされる能力や技術も幅広い。
しかし、生成AIを使えばかなり自動化が進められる。AIツールの進化により、わずかな手間だけで1ヶ月間のソーシャルメディアキャンペーンを自動で実行することができるようになるかもしれない。
その場合、ソーシャルメディアマネージャーは、企業の歴史やカルチャー、プロダクトやサービスの説明、ターゲットオーディエンス、トーン、キャンペーンの期間などの具体的な文脈とともに要件をプロンプトとして入力するのが主な仕事になってくるだろう。
それ以外の作業はAIツールが担当し、デザインを作成し、投稿をスケジュールし、ストーリーを投稿し、コメントへの返信を代わりに行ってくれる。
6. 肉体労働系の職種のニーズがかなり高まる
上記のようにAIテクノロジーは頭脳労働系の仕事をかなり奪ってしまう予想がされている。
その一方で、AIにはなかなか真似のできないような仕事はこれからも引き続き存在し、よりニーズが高まると思われる。
例えば、農夫、配管工、電気工、整備士、建設作業員などの仕事はAIが代替しにくいため付加価値が上がり、過去に比べてかつてないほど利益を上げる可能性がある。
もしかしたら、一部のホワイトカラーの仕事よりもさらに利益が上がるかもしれない。その理由は、ブルーカラーの仕事の多くが手作業を必要とし、簡単に自動化できないからである。
生成AIは、デスクワークのパターンを簡単に学習し、有用な結果を生み出すことができるが、それらの能力は今の所ソフトウェアに限定されている。
一方で、ソフトウェアだけではトイレの水漏れを修理したり、土地を耕したり、家を建てたり、害虫駆除を行ったり、車のへこみを修復したり、故障したエアコンを修理することがまだまだ難しい。
ということはすなわちAIによってそれらの仕事を置き換えることは難しく、生身の人間の仕事としてその価値がより高まるということでもある。
7. AIによって勤務時間が短縮される
そして最後の変化。これはかなり嬉しい予想。
生成AIによって、多くの仕事が効率化され、以前よりはるかに速く働けるようになることを考えると、一部の仕事では所要時間が減少し、労働時間の短縮につながると考えられる。言い換えると、つまらない単純作業や無駄な残業が必要なくなる。
そして、人的資本は今後必要なくなるため、企業はホワイトカラーの仕事において自動化をますます推進していくだろう。しかし、ある程度の人的介入は依然として必要であるため、一部の業界の従業員は労働時間の短縮を期待することができると思う。
まとめ: AIテクノロジーの理解は今後のキャリアに必須
このようにAIの発達、特に生成AIの存在は、我々のこれまでの仕事内容に大きなインパクトを与える。そしていくつかの既存の職種を脅かすと同時に、人としての新しい価値の再定義も進められる。
これは同時に、これまで学校で教えてもらったことや、職場でのルーティーンがどんどん通用しなくなるということでもある。
テクノロジーの変化をしっかりと理解し、時代に取り残されないようにしたい。
さらに生成AIについて知りたい方は、先日自身が登壇したSchoo社の生放送授業のアーカイブ配信をご覧いただきたい。今後のクリエイターやビジネスマンのキャリアの変化についてより詳しく解説している。
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