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VCだけじゃない – スタートアップ向け次世代ファンディング方法
テクノロジー系スタートアップを中心に新しいタイプのファンディング方法が注目されている。つい4, 5年前までは、スタートアップにとっての資金調達の大半がVCからの出資であった。
一方で、近年はサービス系を初めとして「リーン・スタートアップ」と呼ばれる少ない予算と人数で素早い展開を行うスキームがトレンドである。
その場合、あまり多くの資金を必要としない為、今までVCが行って来た数億円から数十億円規模の投資案件は多くのスタートアップからは必要とされない。
同時にVC側の既存プロセスによるデューディリジェンスや判断基準では、投資スピード、規模、対象が最近のスタートアップにマッチしないものになってしまった。
そこで、より小さな金額を早いサイクルで展開し、起業家を助けるような仕組を提供する投資機関が求められている。それに対し、ここシリコンバレーを中心に、10年程前には存在しなかったような、起業家にとってより敷居が低く、有効的な資金調達方法が増えて来ている。そ
してその方法は、最近はテクノロジー系スタートアップに限らないのも事実である。
下記に紹介するのは、小規模スタートと成長に応じた最適なファイナンスを目指すスタートアップのニーズに応えるような、新しいスタイルのファンディング形式であり、成長ステージによって使い分けられる事も多い。
- クラウドファンディング (Crowdfunding)
- アクセレレーター (Accelerators)
- スーパーエンジェル (Super-angels)
インターネットを活用したコミニュケーションが発達するにつれ、企業に対する投資及び、資金調達のスキームにも大きな変革が起ろうとしている。それでは、それぞれの仕組みについての詳細を検証してみたいと思う。
クラウドファンディング (Crowdfunding)
クラウドファンディングとは、主にネットを介して、複数のユーザーや投資家からの資金調達を達成させるシステムで、主に小さな金額を大勢の人々から募り、その合計で希望調達額を達成させるものである。
この方法を活用する事で、借金やエクイティベースの投資を受ける事無く、資金調達が可能になる。ここ数年、多くの起業家に待ち望まれていたこのスキームであるが、やっと最近になり加速度的に普及している。
なお、現在のところ、アメリカ証券取引委員会 (SEC)の規定により、未承認の一般投資家による、スタートアップに対するエクイティベースの直接的なクラウドファンディングは制限されている。その点にも関連し、下記に紹介する3つのクラウドファンディングサービスは、それぞれにユニークな特性を持っている。
まず最初に紹介するのは、Kickstarterである。恐らくアメリカでクラウドファンディングと聞いて一番最初に人々が思いつくサービスがこれ。起業家のユーザーが自分のやりたいビジネスアイディアをアップ。
それに対して協力したいと思う不特定多数のユーザーから小口の”寄付”を募る仕組み。出資したユーザーは、その会社の株式やその他エクイティを分配される事は無いが、その代わりに、ビジネスが達成した時に何かしらのインセンティブが与えられるようになっている。例えば、本を自費出版したいユーザーが達成金額として$10,000を設定する。
資金が集まり出版の暁には、一口$100を出してくれたユーザーには直筆サイン入り特別版を、$50の方には特別版を、$20の方には通常版を誰よりも早く提供する等の特典を提供する。
Kickstarterは、サービス開始当初は圧倒的にIT系起業家ユーザーが多かったが、最近では多くの非ITビジネスにも多く利用されている。特に社会貢献をビジネスに繋げるソーシャルアントレプレナーへの出資が集まりやすいという。
ファンディングに参加するユーザーも急速的に増加しており、実に2011年9月だけでも合計880万ドルの資金が起業家ユーザーに対し集まっている。
Kickstarterにおける資金調達額の推移($)
次に紹介するのはP2P型融資マーケットプレイスを提供するLending Clubである。このサービスのコンセプトは、ユーザーが個人投資家となり、リストされている起業家ユーザーに融資を行うというもの。
上記のKickstarterがより”寄付”的要素が強い一方で、こちらは出資者の賢い資金運用とリターンの実現を目指す。登録しているスタートアップは、ビジネスの内容、必要な資金額、リターンに関するターム等を表記。
出資側の管理画面にはそれぞれの業界やビジネストレンドに関する詳しいコンテンツや、見込まれるROIに対する分析データが充実しており、リスクをマネージしながらも手堅い資金運用が可能になる。
利用してみると、自分の資金を複数のスタートアップに対して運用が出来るため、まるで非上場の企業に小額投資を行うオンライントレーディングの感覚を受ける。しかしながら、株式等のエクイティを受け取る”投資”ではなく、あくまで利子からのリターンを想定した”融資”である。
また、厳密に言うと、ユーザーはクレジットカードを利用して資金クレジットを購入するため、起業家ユーザーに対しての出資元はVISAやMasterCard等になる。スタートアップにとっても、非上場の段階から一定期間の増資を達成させる事が可能になるため、非常に有益なサービスと言える。
シリコンバレーに位置するこの会社は、2010年はじめにサンフランシスコのテックプレゼンイベント、SFNewTechにも出場し、その当時から大きな注目を集めていたのを記憶している。
通常は証券会社や銀行等の金融機関が行っていた資金運用を、シリコンバレーのいちスタートアップのサービスが行うという事で、金融業界に革命を起こすと考えられている。
しかし同時に、法律のグレイゾーンを利用している事も事実で、政府の対応も注目されている。現に、彼らは一度アメリカ証券取引委員会から一定期間サービスの停止を言い渡された事もある。今後の動きが気になるところだ。
Lending Clubでの月々の資金運用金額推移 ($)
もうひとつのサービスは、投資家と起業家の”出会い系”サービスがコンセプトのAngelList. こちらのサイトには、積極的にスタートアップへの投資を予定している全米の投資家のリストと、それぞれのプロフィール、投資準備額、投資タイムライン等が明記され、起業家にとっては現実に投資を積極的に検討している投資家とその額が一目で分かるので、自ずとテンションが上がる。
スタートアップ側にはビジネス詳細や目標調達金額を明記させる事で、投資家とのマッチングを目指す。当初はシリコンバレーのエンジェル投資家が主にリストされていたが、その利用価値から最近は全米の多くのVCも登録している。
ちなみにこのサイトに投資家として登録するには、既に登録している投資家2人以上からの推薦状が必要。ユーザーによっては、起業家と投資家の両方のアカウントを持っているケースがあるのもアメリカらしい。
最近は有望なスタートアップからの注目を得る為に、投資家側も他との差別化を目指している。そう言った意味では、多くの起業家からのアプローチを得る事ができるAngelListの投資家側からの利用価値は大きい。
また、スタートアップ側からしてみても、より最適な投資家に”出会う”事が出来、今までのようにピッチを作り投資家のオフィス周りをしなくても良くなる為、時間の節約にも繋がる。結果として、速いスピードで多くの投資案件が成立している。
最近ではスタートアップのサイズも多種多様になり、業界的な広がりも見せている。クラウドファンディングは、既存の概念に捕われる事無く、様々な方法で資金調達が可能になったという点で特筆すべきシステムである。特にシードファンディング時に於いては、非常に有益な方法であろう。
アクセラレーター (Accelerators)
アクセラレーターは、その名前 (加速させる) の通り、 主にスタートアップが立ち上げ後に速いスピードでの成長と、更なる資金調達を目指す際に活用されるケースが多い。彼らは、スタートアップを短期間、エクイティの一部分と引き換えに場所、資金、メンター等の成長をサポートするシステムを提供し、その後投資の可能性がある投資家に紹介している。
当初このモデルは、ドットコムバブル時のインキュベーターの二の舞になるのではないかと批判されていたが、ここ数年で、継続的に大きな成功を収め、スタートアップからも絶大なる支持を得ている。
その理由としては、上記の通り、Web系ビジネスの資本効率が根本的に新しくなっているからである。著名なアクセラレーターとしては、Y Combinator, Seedcamp and TechStarsがあり、彼らの全てがIT系スタートアップにフォーカスしている。しかしながら、昨今のビジネスに於けるコストダウンを見ると、オフィススペースとメンターを提供するアクセラレータは、KickstarterやLending Clubに登録しているような、非IT企業にも魅力的なオプションになる可能性も大きい。
アクセラレーターは未だスタートアップから絶大なる人気を得ており、全応募者の中でわずか1%しか受け入れられていない。ちなみにこの数字は、ハーバードやイェール大学の合格率よりも低い。そして多くの場合、受け入れた企業に対して、入居直後に数万ドルから数千万ドル程度の資金を提供する。
もちろんアクセラレーターブームは、スタートアップコミュニティーの過激なものであり、一時的なバブルであると指摘する人も多い。しかしながら、彼らが提供するプラットフォームは、他の業界の起業家にとっても非常に魅力的なものであり、今後は様々なビジネスモデルに対して普遍的に定着する可能性を秘めている。
時期別Y Combinator からの卒業企業数
スーパーエンジェル (Super-angels)
最近アーリーステージの資金調達に関しては、VCよりもスーパーエンジェルという人々から行う事がセオリーになりつつある。スーパーエンジェルとは、自身のビジネスの成功や、所属していた会社のストックオプション等から得た資金を元に、スタートアップ企業に対して投資を行う個人投資家の中でも比較的大きめの資金があり、他の投資家に対しての影響力の高い人々を指す。
例えば、LinkedInファウンダーのリード・ホフマンやDiggファウンダーのケビン・ローズ等である。彼らが投資するスタートアップの成功率が高い為に、他の個人投資家も、彼らの案件に”乗っかる”ケースが多い。その結果、スーパーエンジェルが投資活動をする場合は、まるで小規模のVCファンドが動くのに近い仕組みが生み出されている。
既存のVCからの投資よりもスーパーエンジェルからの資金調達がスタートアップから好まれる理由は2つある:
- Web系のビジネスが驚くべき程に資金効率的になり、巨大な資金の必要性の低下 (需要側)
- 統計的にみても、小さなファンドの方が投資家に対して効率の高いROIを達成 (供給側)
現実的にここ10年間を見ても、巨大VCファンドは低い利回りに叩きのめされて来ている。テクノロジー系だけではなく、バイオやクリーンテック等大きな資金が必要としている業界からのリターンがあまりにも少なすぎたのだ。
それにより、多くのLP (ベンチャー会社に投資する機関投資家) はサイズよりもクオリティー重視に方向転換をしている。このようにVCファームが投資サイズとスピードに苦戦している一方で、スーパーエンジェルは速いスピードでの”一本釣り”を成功させている。
実に先日も日本のとあるスタートアップをシリコンバレーのVCに紹介した所、VC側から”うちは小規模のシードファンディングも行っているので、怖がらないで”との一言があった。
それほど、VCはWeb系スタートアップへ投資に対して苦戦しているのだ。参考までに、数は少ないが既存のモデルとサイズでも成功を収めている代表的なVCはUnion Square VenturesやSequoia Capitalである。
まとめ
次世代のファンディング方法が利用可能になり、資金調達からエクジットまで、スタートアップに於ける成長ストーリーに大きな変革が起きようとしている。
比較的小額のシードファンディングは、クラウドファンディング、成長期にはアクセラレーター、より大きな資金とサポートが必要になったら、VC, 安定期にもプライベート・エクイティからの増資が可能になっている。これらのスキームが揃う事により、会社としての実力が構築され、時間はかかるであろうが、よりビッグなIPOが期待する事が出来るであろう。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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日本時間:2024年12月6日(金)9:00
米国時間:12月5日(木)16:00 PST / 19:00 EST
*このイベントはサンフランシスコで開催します。
■参加方法
- オンライン参加(こちらよりご登録いただけます。)
- 会場参加(限定席数) *サンフランシスコでの会場参加をご希望の方は下記までお申し込みまたはご連絡ください。(会場収容の関係上、ご希望に添えない場合がございます。予めご了承ください。)
- 対面申し込み:luma
- Email(英語):sf@btrax.com
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