デザイン会社 btrax > Freshtrax > カップルでスタートアップを始め...
カップルでスタートアップを始める前に知っておきたかった事 – FailCon 2013 セッションより
サンフランシスコで開催されている数多くのイベントの中でも、失敗談を通して起業家を成功に導くことをテーマに数々のユニークな内容を提供しているのがFailCon. 2009年から始まったこのイベントではこれまでにも好評だった、”Uber ファウンダー Travis Kalanick 驚異の失敗歴”. ”私がもっと早くにクビにするべきだった5人”に続き、今回のタイトルは”From 2 Founders to 6, Then Back Again (2人から6人へ、そしてまた2人)”.
軽いノリでスタートアップを始めたカップル2人が語る、間違いだらけのファウンダー(共同創業者)選びと恋人と会社を始める難しさに関するセッション。
ミキとジャクソンのカップルは、付き合い始めてから4ヶ月後に共同でスタートアップを始めた。2人で始めた彼らは数ヶ月の間にファウンダーが6人にも増え様々な困難を経験し最後はまた2人に戻り、現在その会社はもう存在しない。そして、実は最後に残った2人のうち1人はミキではない。
そんなストーリーを通しファウンダー探しの難しさ、そして愛する人とビジネスを行う事のリスクを語ってくれた。今から考えると”いかにもな失敗“だらけだと言う2人が語る、”スタートアップを始める前に知っておきたかった事”を紹介する。
From 2 Founders to 6, Then Back Again
- Miki Johnson, CEO (ミキ-写真右)
- Jackson Solway, Co-founder (ジャクソン-写真左)
僕たち二人は付き合いだしてしばらくしてから、クリエイター向けのソーシャルネットワーキングサイトを展開するスタートアップをシカゴで設立した。あまり先の事は考えずに始め、気づいたら予想出来なかった多くの困難が待ち受けていた。そして、どこのスタートアップにもありがちなミスをことごとくしまった。
その中でも最も明白なのが、恋人とビジネスを始めた事だ。客観的に考えれば、そんなの上手くいくはず無いと思うかもしれないが、その当時はそんな事にも気がつかなかったんだ。そしてその後、共同創業者が合計で6人まで増えたのだが、それぞれの人達が異なる理由でうまく噛み合ず、結果的にチームが崩壊してしまった。そしてプロジェクトも終了した。今日はそれぞれのケースを紹介したい。これらはスタートアップ創業者チームとしては、恐らくよくあるパターンだと思う。
テクノロジー担当のピーター
素晴らしいエンジニアで、ジャクソン大学からの友達。企業に勤めていたところをスカウトした。元々大企業にて複数の部下のいるマネージャーだった彼にとって、ファウンダーの1人になるのは初めての経験。そして当初からスタートアップ特有のエキサイティングであるが、不安定な生活にも不安を感じていた。それまでは安定した大企業にて不自由ない給料を受け取っていた彼にとって、安定性が全く得られないスタートアップで働く事が次第に大きなストレスとなり、最終的に会社を去る結果となった。
ネットワーキングイベントで知り合った”W”
まだ学生なのに、既に2つのビジネスを成功させていた。彼のビジネス的センスを期待して、チームに誘ったのは良いが、最初の給料交渉のときから何かがおかしかった。出来たばかりのスタートアップなのに、なぜか彼は妙に自分の待遇にこだわり、スタート時点からかなり厳しい給料交渉をしてきた。
あとで気がついたのは、彼にとってみれば肩書きすら共同創業者であったが、会社に参画することはむしろ”就職”であり、一緒に経営するよりも単純にコードを書いていたいタイプだったのだ。それも高い給料をもらいながら。そして会社と彼のヴィジョンもズレ始めてしまった。しかも、本来は従業員的な立場のはずなのに、書類上彼が”創業者”として記載されている事が、のちのち投資家やインキュベーターへ応募する際の大きな弊害になった。
オンラインでみつけたデザイナー”L”
デザイナー向けオンラインポートフォリオサイト、Dribbbleにて発掘した彼女は、ファウンダーになる条件で、初期のサイトを”試しに無料で”デザインしてくれる事になった。そして素晴らしいデザインは出してきてくれたものの、しばらくすると会社にはあまり来なくなってしまった。フリーランスでの仕事が忙しくなったのだ。もちろんお金をもらって請負っているクライアントを優先するのは理解出来るが…。結局はデザイン作業の途中で彼女は会社を離れる事に。
アレクサス
実は彼女には本当に悪い事をしたと思っている。僕たちが会社を始める4年程前から同じようなコンセプトを考えていた彼女は、ユーザーエクスペリエンスに関する知識やスタートアップ関連の人達とのコネクションを提供出来るという事でチームに加わった。
活発な議論が得意な彼女は、ミーティングでもどんどん意見を発表し、気に入らない内容に関しても正直に発言するタイプ。当初は会社にとって有益だと思っていた彼女のディスカッションスタイルは、しばらくすると他のメンバーとの間に少しずつ、そして確実に溝を作り始めていた。そして2012年の暮れ、会社を去ってもらう事にした。
実はそれを伝える直前に彼女は仕事の為に、住んでいたサンフランシスコから仕事の為に会社のあるシカゴに引っ越しをしていた。そんな大きな決断をさせた直後に辞めてもらわなければいけない自体になってしまい、彼女にはとても申し訳ない事をしたと感じている。僕たちにとっても、とても辛い経験であり、とても後悔している。少しでも相手に対して疑問がある場合は、怖がらずに正直に話し合う事。人間関係に目を背けてどうにかなると思っていても、不幸な結果にしかならない。
そして最後は僕たち2人
今から考えてみると、僕たちはとても性格の異なる2人だった。恋愛のパートナーとしてはこの違いが心地よかったが、それがビジネスになると、どうしても決定的な方向性の違いを生み出してしまった。具体的には、会社の成長に対して、ジャクソンは大きな資本を元に急激な成長を、ミキは自己資金の範囲内で、売り上げのスケールに沿った、ナチュラルな成長を希望していた。この二つのスタイルを一つのスタートアップで同時に達成する事は単純に不可能である。もしあなたにも共同創業者がいる場合は、この二つのタイプのどちらで進めるかに関してじっくりと話し合い、事前に決めておく事。
そんな二人で始めた僕らの会社は、ある意味最初からうまくかない大きな要素を抱えており、その他の創業者達を参加させたのも結論としては失敗だったと言わざるを得ない。創業後しばらくして資金繰りが苦しくなった会社は、ジャクソンとピーターが中心になって資金調達を進めた頃に、ミキが会社を離れる事になった。彼女にしてみれば、資金調達をすること自体に疑問を感じていた。
僕たちがこの経験から学んだ事
こんな失敗だらけの僕たちだったが、そこには普段の生活ではなかなか得る事の出来ない貴重な学びがあったのも事実である。その中でも最も重要だと思う3つの質問を紹介したい。この質問は会社を始める全ての人達が、必ず自分自身に問うてほしい内容。
- なぜ自分が会社を始めるのか、その理由をクリアにする
- 自分の会社を始めたら、少なくとも向こう10年間一週間に60時間以上働く覚悟があるか
- もし今日宝くじに当選しても、明日も変わらず仕事を続ける程仕事を愛しているか
上記を踏まえて、もし共同創業者と少しでも腑に落ちない事があったのなら、怖がらずにとことん話し合う事、そして、危険信号になるべく早く気づく事が大切だと感じている。
セッション感想: 愛する人とビジネスを始める難しさ
スタートアップの創始者同士の関係は、仕事仲間というよりもむしろ恋愛パートナーに近い。そのぐらい”濃い”関係が必要とされ、少しでも歯車がズレると、後に大きなほころびを生み出す可能性がある。
スタートアップが上手くいかない一番の理由はお金でもプロダクトでもなく、人間関係にあるとつくづく思い知らされる内容だ。
このようにして、ビジネスに失敗した2人。実は、最近彼らは婚約をした。スタートアップはうまくいかなかったが、そんな失敗をも乗り越え、男女としての揺るぎない絆はしっかりと築き上げていたのだ。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
【イベント開催!】Beyond Borders: Japan Market Success for Global Companies
日本市場特有のビジネス慣習や顧客ニーズ、効果的なローカライゼーション戦略について、実際に日本進出を成功に導いたリーダーたちが、具体的な事例とノウハウを交えながら解説いたします。市場参入の準備から事業拡大まで、実践的なアドバイスと成功の鍵をお届けします。
■開催日時:
日本時間:2024年12月6日(金)9:00
米国時間:12月5日(木)16:00 PST / 19:00 EST
*このイベントはサンフランシスコで開催します。
■参加方法
- オンライン参加(こちらよりご登録いただけます。)
- 会場参加(限定席数) *サンフランシスコでの会場参加をご希望の方は下記までお申し込みまたはご連絡ください。(会場収容の関係上、ご希望に添えない場合がございます。予めご了承ください。)
- 対面申し込み:luma
- Email(英語):sf@btrax.com
世界有数の市場規模を誇る日本でのビジネス展開に向けて、貴重な学びの機会となりましたら幸いです。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。