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私がもっと早くにクビにするべきだった5人
以前に多くの反響を頂いた、”Uber ファウンダー Travis Kalanik 驚異の失敗歴“でもご紹介した、FailConが今年も開催された。
通常カンファレンスは成功者からのノウハウやコツを教示してもらう事が多いがFailConではスタートアップ時に必ず伴う苦い経験の体験者を招き自身のストーリを元にその立ち直り方を紹介し”失敗から学ぶ”のが目的である。
今年はメインテーマを”Pre-Launch (起業前)”と”Post-Launch (起業後)”に分け、合計17名のスピーカーがそれぞれの会社のフェーズに合わせたケーススタディーのプレゼンテーションを行った。
その起業後の話しの中でも、会社の成長期に関するストーリーが大変興味深かった。
プレゼンのタイトルもずばり”私がもっと早くクビにするべきだった5人” プレゼンターは最近Microsoftへのバイアウトを成功させたYammerのUX ディレクター、Cindy Alvarez氏. ここ数年で急成長を遂げたYammerが経験した人事に関するお話である。
会社の成長期には急激なスピードで規模の拡大を行うのでどんなに慎重に人材確保を行ったとしても会社の成長ペースに合わないスタッフが現れてしまうのが普通である。
もちろんスタッフを解雇するのは誰もが避けたい選択肢であり非常に大きな苦痛を伴う。その一方で会社の成長を望むのであれば経営者やマネージャーにとってはとても重要な仕事でもある。
逆に会社に合わないスタッフを長時間キープし続けるけると会社の成長の妨げだけでなく、モラルの低下、他のスタッフへの心理的弊害等を生み出してしまう。
それでは、Cindyが実経験をベースに語った、なるべく早めに解雇した方が良い5つのタイプのスタッフを紹介する:
- 初期メンバー
- 指示待ちで自主性がないタイプ
- いつまでも出世しないタイプ
- アーティストタイプ
- 型にはまったタイプ
1. 初期メンバー
恐らく多くのスタートアップは予算の関係で立ち上げや会社の初期に雇うのは若くて経験が少ない分給料が安いが勢いがあって、何でもやってくれるタイプのスタッフであろう。
そして彼らは、新しい会社に大きな期待と興味を持ち、自身の経験を積む為にもどんな仕事にも文句を言わず、がむしゃらに頑張ってくれるだろう。
会社としても、その時期は事業内容や方向性もはっきりと定まっていない事が多く少ない人数で様々な業務をこなすため、スタッフの皆が多種多様な役割を担うケースが多い。
しかし残酷な事に、会社が成長期に入ると、彼らの会社にとってのバリューが急激に下がってしまう。なぜなら実に多くの場合、会社の成長スピードが彼らの成長スピードを上回ってしまうからだ。
また、会社が成長すると予算に余裕が出来て、それぞれの業務に対して豊かな経験のある優秀なスタッフを雇う余裕が出てくる。
そして初期に様々な業務をこなしてくれていたスタッフは、成長期に入社した優秀なスタッフで構成され始めたチームについて来れなくなる。
そして、設立時に必要でふさわしいと思ったスタッフの価値は、会社が成長期に入ると著しく変化してしまう。
しかしながら、例えばロケットが噴射する時に必要とされる装置と軌道に乗せるために利用される装置が異なる様に、成長期に必要なのは成熟した組織での経験豊富なエキスパートであり、そのエキスパート達が会社を引っ張り成長させてくれるのである。
お金も無く会社のシステムもしっかり出来ていない時に、ファウンダーの言葉だけを頼りにがむしゃらに頑張ってくれた立ち上げメンバーとは精神的なつながりがあり、彼らにとても感謝する気持ちがある。
当のスタッフも会社への思入れがあるので、辞めたく無い気持ちが大きい。しかしここで覚えておかなければいけないのは、会社のフェーズによって必要な人材は違うという事。
また、会社の初期から一緒にいたからと言って、能力以上のポジションを与えるのは大きな間違いである。
会社の成長を第一に望むのであれば、非常に苦しい事だが、成長期にはスタッフの入れ替えが必要とされる。
2. 指示待ちで自主性がないタイプ
次に要注意なのは、仕事に対して非常に受け身で、与えられた仕事しかこなせないタイプ。彼らは、上司からの指示があればそれなりの仕事はこなすが、結局何をやらせてもあまり良い仕事をしない。
そしてなぜか細かなミスが多い。しかしそのミスが必ずしも致命的ではない為に、すぐにクビにしないケースが多い。
でもそれは間違っている。なぜなら彼らは自分は何をしたいかが決まっていないが故に、仕事に対しての真剣度が足りないからである。
このタイプは、忍耐力が足りないのか、好奇心が旺盛なだけなのか、頻繁に役職を変えたがる。
どんな仕事をしても悪くは無いが、常に上司からの細かなディレクションを必要とし、決して素晴らしい結果は出さない。
そして、いつまでたってもエキスパートになれないので、結局雑用ばかりを任され、部署をたらい回しにされたあげく、どの役職にもあわない人材になってしまう。
このようなスタッフをいつまでも会社にいさせておくと、”まあまあ”な仕事を容認してしまう会社だとの印象を他のスタッフに与えてしまい、彼らの自主性を下げ、会社全体のパフォーマンスレベルが落ちる事になってしまうので、要注意。
3. いつまでも出世しないタイプ
スタートアップはスピードと成長度が命であり、そこで働くスタッフもその限りである
。キャリア面で彼らに必要なのは、速いスピードでの能力アップと、なるべく早い段階での上のポジションへのステップアップである。
新人スタッフが入ってくれば、既存のスタッフは彼らの上司にアサインされるケースが普通で、長い間同じ役職を続けられるのは稀である。その一方で、いつまでたっても出世しない、もしくはしたがらないスタッフもいる。
彼らは既存のポジションではかなり良い仕事をするのであるが、どうしても次のステップに進む事が出来ない。
若い後輩が入ってきたので、マネージャー職を与えてはみたものの、能力がたりないのが露呈してしまう。
しかし、こういった際に元のポジションに戻すのは大きな間違いである
このようなスタッフは、現状のポジションで満足してしまい、現状維持が心地よいと感じている。
言い換えると、向上心が足りないのだ。しかしながら、出世のチャンスをつかめないスタッフを会社に残しておく程スタートアップは甘くは無い。速いスピードでのスキルアップとポジションアップが出来ないスタッフには辞めてもらうしか無い。
4. アーティストタイプ
実はこれが一番ややこしいケース。彼らはスタートアップのスタッフ、特にデザイナー職に多いタイプで、やる気満々で、アイディアも沢山ある。
自分が与えられた仕事は徹夜してでも成し遂げる程の情熱を持っている。そして何より一緒にいて楽しい。まさに、会社の立ち上げ時には最高の人材である。
ではなぜクビにする必要があるのか? このようなタイプのスタッフは、会社の方向性と自身の考えが合っている場合は最高のパフォーマンスを発揮するのだが、少しでも考え方が経営者や上司の意向と合わなくなると、極端にパフォーマンスが落ちる傾向にある。
彼らは感情の起伏で仕事のクオリティーに著しい差が生まれ、興味の無い仕事に対してはとことんやる気を失う、ある意味自身の”こだわり”に対してのエキスパートだからだ。
彼らは仕事と趣味の境目が薄く、興味のある仕事はどんな条件でも喜んで行い、アウトプットのクオリティーも高い。しかしそれが”仕事”という認識が薄く、ビジネスとしての割り切りを理解しない。
成長期の会社がなりふり構わず利益を追求している姿を目の当たりにしたとすれば、一気にやる気と仕事のクオリティーが低下する。
この時期に会社に必要とされる人材はバランスの取れた長距離走選手であって、一発勝負のスプリンターは役に立たなくなる。
アーティストタイプのスタッフを解雇する時に気をつけなければいけないのは、他のスタッフへの影響である。
なぜなら、彼らはユニークでカリスマ性が高く、人一倍他のスタッフに対しての影響力が高いので、その解雇プロセス次第ではチームに大きな影響を与えてしまう事がある。
5. 型にはまったタイプ
最後はいわゆる大企業タイプの従業員。大きな組織での経験が豊富なこのタイプは、頭は良いが、クリエイティブな考え方が苦手で,頼んだ仕事は確実にこなすが、頼んだ以上の事はしないケースが多い。
決まり文句は、”それは私の仕事ではないですよね?” 彼らは組織がしっかりしている大企業では恐らくもっとパフォーマンスが高いと思われる一方、組織構成が未熟な若い企業ではストレスをためてしまう。
事実、スタートアップでの経験が無い人間は、早いスピードで状況が変化し、全てがかっちりとしたシステム化していない状況が我慢出来ない。
また、ことあるごとに会議をしたがるのも彼らの特徴。
このタイプを解雇する際に難しいのは、彼らに落ち度が少ないというところだ。彼らはスタートアップ会社のカルチャーとあっていないだけで、必ずしも仕事ぶりに問題があるわけではない。
事実、問題の本質をつかむ前に、ソリューションを提供してしまう事も多々あった。ただ、いつまでたっても問題の本質をつかんでいないので、スタートアップに必要とされる「期待する以上のアイディア」を出してくる事はない。
実際に解雇通知をした際にも非常に驚かれた。本人も解雇される自覚が全くなかったからだ。しかし、会社に対して積極的にクリエイティブなアイディアを出してこない保守的なスタッフは必要ないと判断した。
クビにする際のポイント
おそらく従業員の解雇を喜んでやる人はいないだろう。その役回りを引き受けたとしたら、非常に気が重く、可能であれば他の方法が無いかと思ってしまう。
しかかしながら、会社の成長のため仕事として割り切って行わなければ行けない。Cindy Alvarez氏が提唱する、少しでも悪影響を最小限にとどめる為のポイントはこちら:
- 切るのであればなるべく早めに: 切られる人も残ったスタッフも悪い印象を持ちにくい
- 他のスタッフへの影響を最小限にとどめるために、チームにはしっかりとロジカルな説明を
- その際の理由は、そのスタッフに問題があったのではなく、”会社としてのスタンダードを保つため”が一般的
- 可能であれば、解雇されるスタッフから他のスタッフに説明をしてもらう(「自分からやめる」的な)
まとめ
上記の内容は数年で急成長を達成したYammer社のマネージャーによるケースなので、かなり極端な内容でもある。
アメリカにも時間を掛けてスタッフを育てる企業も沢山あるが、シリコンバレーを中心としたスタートアップは、かなり急激な決断をする事でも有名。
会社の成長フォーズによって必要となってくるタイプの人材も変わってくるので、スタッフの入れ替えもある意味、成長プロセスの一つとして考えた方が良い。
Githubの様に滅多にスタッフを解雇しない珍しい会社もあるが、アメリカでは結果を出せないスタッフを解雇するのは非常に一般的で、スタッフもその覚悟で働いているケースが多い。
その分、実際に解雇する方もされる方も、ある意味”恨みっこ無し”が一般的。どちらが悪いわけでもなく、その人+ポジション+会社のステージのコンビネーションが合っていないケースがその理由であるからだ。
機能しないものはどう頑張っても機能しない。残酷ではあるが、会社の成長を望むのであれば経営者やマネージャーにとっては避けられない決断なのかもしれない。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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