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数字で見るデザイン経営の重要性
ここ数年で日本でもデザイン思考やデザイン経営などの概念が浸透し、ビジネスにおけるデザインの重要性がなんとなく認知され始めている感じがする。
その一方で、実際にはどのくらいの効果が表れているかを可視化するのは意外と難しい。というのも、デザインの組織や経営に対しての効果をこれまでの財務資料等の仕組みで測るのには限界がある。加えて、目に見える結果が現れるにはそれなりの時間もかかる。
企業経営におけるデザインの重要性が具体的な結果として表れ始めた
そんな中、以前の「【経営xデザイン】なぜデザインオリエンテッドな企業は強いのか」でも紹介した通り、また、ロンドン・ビジネススクールは、製品デザインへの投資が1%増えるごとに、売り上げと利益は平均して3-4%増加するという調査結果を発表。
また、アメリカのリサーチ会社、Motiv StrategiesとDMIの調査結果を見てみると、デザイン的アプローチを経営の戦略に積極的に取り入れている状況企業の株価の伸び率が、S&P 500全体平均と比べ10年間で228%高くなっている。*Design Value Index Results
マッキンゼーの最新調査でもデザインの経営に対する重要性が証明された
そして、マッキンゼーもこのトピックに関する調査結果を発表した。同社はここ5年間で、上場企業300社における200万点にものぼる財務資料、10万以上のデザインに関連する施策を調査。
この調査は、医療テクノロジー、消費者製品、そしてリテールバンキングの3つのセクターに対して行った。
その結果、デザインを経営に活用している企業は平均と比べ、売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっているという結果が出た。
これにより、経営に対するデザインのポジティブインパクトがより一層明確になった。
マッキンゼーのパートナーであり、イギリスでプロダクト開発とデザインに関するサービスを提供するベネディクト・シェパードによると、商品の差別化がどんどん難しくなってきている現代において、多くの企業の重役たちが、プロダクトやサービスデザインの重要性を叫び始めていると語る。
デザイン施策の計測方法とその活用事例
上記の調査に参加した300社の中には、役員レベルにデザインリーダーを配置したり、エクゼクティブのボーナス報酬をユーザービリティー向上による収益向上などに紐付けたりなど、デザインの力を活用して競合との差別化を測る企業がいくつか存在する。
そんな中でも、下記の4つの領域においてのデザインの経営に対するインパクトを計測している。
1. デザインの影響が実際の数字で計測できる領域での活用
例: とあるゲーム会社はホームページのユーザビリティを改善したことで売り上げが25%アップした。
2. ユーザーとの対話を最優先したユーザー体験 (UX) 設計
例: とあるホテルはお土産のアヒルのおもちゃにそれぞれの都市名を刻印することで、コレクション性を高めた。それにより顧客の維持率が3%高まった。
3. プロジェクトチームに優秀なデザイナーを参加させ裁量を任せる
例: ストリーミング音楽配信サービスのSpotifyではデザイナーに多くの権限を与え、自分たちの判断で自由な活動ができるよにした。
4. プロダクト開発においてリサーチ、プロトタイピング、改善を推奨
例: とある旅客クルーズ会社は、ユーザー行動調査及び支払データを元に、船上で人気の高い活動を分析し、機械学習を活用することで、最も効率の良い船のレイアウトを導き出した
リサーチの結果、上記の4つの領域を一貫して実行している企業は売り上げなどの業績が他の企業よりも急上昇していることがわかった。
逆に言うと、この4つ全てをしっかりとコミットしていなければ、しっかりとした結果が出てないという事でもあった。
デザインを経営に導入したいなら本気でやるべき
この結果は、デザインを経営に活用したいのであれば、単に”かじる”だけではなく、会社における包括的な領域で取り組む必要があるという事である。
実際のところ、マッキンゼーがリサーチをしたその多くの企業は、経営におけるデザインの導入が中途半端であったことが理由で、明確な結果には繋がっていないという事実があるという。
リサーチ対象企業の実に40%が商品開発の段階でユーザーとの対話を全く行っておらず、50%はデザインチームの貢献についての具体的な測定基準を設けていない。
マネージメントチームがデータを活用し、デザインにおける客観的な意思決定が下せる企業は5%以下である。
プロトタイピングを行う時期についても、60%の企業はユーザーからのフィードバックを得るための初期段階ではなく、商品開発の後半に社内向けのためだけに行っている。
まずは経営陣がデザインの重要性を理解し仕組み化することから
上記のような状況は会社全体のプロセスに関する内容であることから、デザイナーやデザインチームではなく、経営陣やマネージメント全体が作るべき”仕組み”なのである。
しかし、今までそのような仕組みを持たない企業はどのようにすれば経営にデザインを導入することが可能になるのであろうか?
おそらく、まずは試しに1つのチームにおける1つのプロジェクトを題材に、前出の4つの領域において、しっかりとデザイン施策を盛り込んでみる。
そして、その結果をデータを元に分析し、どれだけ効果があったかを測定する。その結果を元に徐々にその仕組みを会社全体に広げていくのが正しいやり方だと思う。
我々btraxがクライアントプロジェクトに取り組む際もその方法を活用している。例えば大企業の一部署におけるプロジェクトに対して、デザインスプリントなどの、今までのやり方ではなく、”デザイン的”アプローチを採用し、その結果を冷静に測定する。
今までのやり方と比べ、どのような変化が起こり、そしてその根本となる理由を明確にすることで、小さいスケールではあるが、少しずつでも経営にデザインを取り組むことができるようになってくる。
なお、この辺のプロセスに関してより詳しい内容を知りたい方は、公式サイトの問い合わせページよりご連絡ください。
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