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グローバル市場でEコマースを成功させるための3つのマインドセット
コロナウイルスをきっかけにさらなる注目が集まっているEコマース市場。トレンドに乗り、Eコマースというツールを活用してビジネスの拡大を考えている企業や個人事業者も多いのではないだろうか。
一昔前までは、Amazonや楽天に代表されるマーケットプレイスがEコマースの主要チャネルだったが、現在ではShopifyやWix、日本でもBASE、STORES.jpに代表される、誰でも簡単に自身のEコマースサイトを作成し、商品を販売できるサービスも増え需要の高さが伺える。
しかしその一方で、日本国内だけでは既にどの分野も市場が飽和している上、仮に国内でのパイが取れたとしても、世界の市場規模から見れば市場が小さい日本では直ぐに頭打ちする。海外に進出しようにも何から手を付けたら良いか分からず、行き詰まっているサイトが何かと多い印象だ。
今回は、筆者が実際に日本のEコマース市場調査プロジェクトを通して考えた、事業者が抱える上記のような課題から、今後Eコマースでさらなるビジネス拡大のチャンスを見出したいと考えている方に対して、グローバル展開する際に意識したいマインドセットを3つ、イノベーションの街サンフランシスコから紹介したい。
ただトレンドのみに左右されて、至極当たり前のように日本国内という狭い市場にターゲットを絞ってスタートするのではなく、長期的な目標・ビジョンと共に、グローバルという広い視野で取り組んでいただきたい。
マインドセット1: 販売者視点ではなく、常にユーザー視点で!
まず最初に持つべきマインドセットとして重要になるのが、Eコマースを売り上げアップのためといった販売者視点ではなく、ユーザー(消費者)が抱えている問題を解決するためのツールとして導入するという、ユーザー視点マインドセットを意識することだ。
当たり前だが、解くべき問題なくしてビジネスの展開は望めない。なぜならそこには対象となるユーザーがおらず、誰にも利用されないのが目に見えているからである。
これはグローバルに展開するか否かに関わらず、Eコマースビジネスを始める際には必ず意識したい点であるが、導入の目的がいつの間にか「販売チャネルを増やしたいから」や「売り上げアップに繋がるから」といった販売者目線になってしまい、ユーザーをほったらかしにしているケースが多く見られる。
極端な例だが、今日のコロナウイルスの影響が特に大きい飲食業界。多くのレストランやカフェがEコマースを活用し、オンラインでの注文・デリバリー販売などの対策を始めている。
コロナウイルスは普段では考えられない異常事態で、経営を続けていく上でEコマースの活用は必要不可欠な対策かもしれない。
しかしそこで一番重要な、誰の、どの問題を解決するのかというユーザーの立場に立った視点が抜けてしまうと、せっかく作成したEコマースページもコロナ対応策という目的でしか利用されず、長期的な展開はなかなか望めない。
ここで最も意識するべきポイントは、誰をターゲットにし、そしてその人が抱えている課題は何なのかを第一に考えること。その結果、もしEコマースが最適な解決策ツールだとするならば、それを使ってどのような価値体験をユーザーに提供できるか、Eコマースが持つ強みを知った上で活用していくことが大事になる。
ユーザーが実店舗で抱える購買体験課題を解決するのがEコマースの強みであり、ユニークさだと定義するならば、Eコマースを立ち上げるよりも前に、実店舗に向かいユーザーの購買体験を観察をしたり、実際に彼らにインタビューをしたりするなどして、彼らが店頭で抱えている課題は何なのかを知ることが必要になる。
その結果次第では、本当に解決策としてEコマースが適切な手段なのか、もしかすると他にも最適な方法があるのではないか、という新たな視点も出てくるかもしれない。
上記のような調査を行うことは一見、手間と時間が掛かり面倒なステップと思われるかもしれないが、長期的に見れば、それが他社との差別化に繋がり、例え市場が飽和状態にあるEコマースであったとしても、グローバルで十分に勝負できる武器となるのだ。
マインドセット2: 「まずは国内から精神」は捨てる!
Eコマースに限らず、日本の企業の多くは何かと「まずは国内から精神」が強い。素晴らしいアイデアがあるにも関わらず、なぜか海外に進出する前にまずは国内でサービスをリリースし、結果が伴ってきたら次はアジア、そしてアメリカや欧州に進出するというのがケースとして多く、これがグローバルにサービスを展開する際の足止めとなっていることがある。
日本のEコマースサイトは、リリースに先駆けて当たり前のように日本市場だけをターゲットにしているサイトが目立つ。サイトは日本語のみで海外のユーザーには全く対応しておらず、商品の配送も日本国内のみ。
さらには、支払いに関しても海外のクレジットカードが非対応で、Apple Payなど海外では当たり前の決済方法も受付けていなかったりと、お世辞にも海外フレンドリーとは言えない。
このような例はまさしく、「まずは国内から精神」の典型であり、一刻も早くマインドセットを改める必要がある。なぜなら、それはただ単にグローバル展開の可能性を逃しているだけに留まらず、競合にチャンスを与えることにも繋がるからだ。
例えアイデアが画期的で、日本である程度結果が伴、海外進出に繋げられたとしても、その間に競合が同様のサービスを海外フレンドリーで立ち上げれば、それだけで機会を逃してしまう。だとすれば、最初から海外でも展開するマインドセットでスタートした方が良い。
さらに言えば、日本である程度結果を残せば、海外に進出しても結果が付いてくると考えている企業が多いのももう1つ、勘違いマインドセットだ。
日本から海外進出を目指す企業の多くが口を揃えてアピールするのが、「Eコマース分野で国内ナンバー1の販売実績があります」や「既に国内で〇〇年以上Eコマースビジネスを展開している老舗です」という日本国内での実績。
しかし、国内での実績を引き下げて同じやり方・視点でサービス展開したところで、全く異なる文化・考えを持つ海外では受け入れられない可能性が相当に高い。
1つ目に挙げたマインドセットとも通じるが、その土地・文化に併せた視点でユーザーが抱えている問題を定義をし、その問題を解決するために自社のEコマースサイトがどう価値提供できるのかを示すことの方が重要だ。
だからこそ、「まずは国内から」というマインドセットでサービス展開を進めるのではなく、初めから海外での展開も視野に入れた視点を持つことが必要となる。
世界中の人へ商品・サービスを周知できるというEコマースならではの強みをもっと効果的に活かして頂きたい。
マインドセット3: Eコマースだけに絞られない、広く柔軟な視野で!
Eコマースの競合は他のEコマースサイトだけではないということも意識したいマインドセットの1つだ。Eコマースはあくまでもユーザーの課題を解決するためのツールでしかなく、それらは実店舗やSNS上にも存在する。
EコマースはEコマース、実店舗は実店舗として考えるのではなく、Eコマースは実店舗が抱える弱みを補うため、そして実店舗はEコマースが抱える弱点を補うためといった、柔軟な視点・マインドセットを持つことが大事な要素となる。
“Eコマースは実店舗よりも便利で、商品も安価に提供できるから、ユーザーは自然とEコマースを好むだろう”という先入観・バイアスを振り払うことを意識してもらいたい。
アメリカの企業に習うとその重要性が分かる。2014年にサンフランシスコで誕生したフットウェアブランドのAllbirds。今年1月には日本でも店舗をオープンし本格的に販売を開始するなど、設立以来アメリカを初め、イギリス、ドイツ、上海などグローバル市場へ積極的に進出、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けている。
元々、Eコマースサイトを活用した方法で、顧客と直接取引をするD2Cブランドとして立ち上がった同社だが、2019年12月までに世界各国で約15店舗、そして2020年には新たに20店舗を展開する予定と発表を行うなど、Eコマースだけではなく実店舗の拡大も続けている。
他にも、不定期でポップアップストアを各地域で開催するなど、普段、遠方で実店舗に足を運べないユーザーにも真摯に対応しているのが印象的である。
彼らはEコマースだけでは、靴のサイズや色、形、素材が分かりづらいという顧客が抱える問題を把握し、実店舗やポップアップストアという形でEコマースが持つ弱みを補っているのだ。
インターネットがこれほど普及し、サイトが無数に蔓延る現在、Eコマースというソリューションだけに絞ってユーザーの課題を解決しきれるかというとそれはかなり難しい。それぞれのツールが持つ強み、弱みをしっかりと分析し、それぞれのツールでどのような購買体験をユーザーに届けられるかを常に意識することが重要なのだ。
おわりに
今回は、コロナウイルスをきっかけに今後ますますの市場拡大が予想されるEコマースに分野を絞って、グローバル展開をする上で意識したいマインドセットを3つご紹介した。しかしこれらはEコマースに限らず、他の分野であっても適用・応用が可能である。
Eコマースはビジネスの可能性を広げる素晴らしいツールで、誰でも簡単に始められるところまでインフラが整理されつつある。
多くの日本企業がEコマースを活用し、グローバルにサービス展開をしてくれることを強く願う一方で、トレンドだけに左右され、ユーザーを無視したものになってしまっては、他社との差別化が難しく、毎月のサイト運営費をドブに捨てるだけで終わってしまう可能性がある。
運営しながら軌道修正していくことも重要だが、スタート前にしっかりとユーザーが抱える課題定義を行い、明確な目的・ゴールを定めることで、よりスピーディーかつ効果的にグローバル市場でのビジネスチャンスを広げることに繋がると筆者は考えている。
コロナウイルスの影響を強く受ける時期だからこそ、Eコマースを短期的なソリューションとして活用するのではなく、一度立ち止まり、上記のマインドセットを意識しながら取り組んでみてもらいたい。
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