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みんなが支えたくなる旗を立てることがCEOの仕事【インタビュー】Drivemode CEO, Yo Koga – 古賀洋吉氏
11月に開催されたJapanNightのサンフランシスコファイナルで、DrivemodeのCEOである古賀氏の白熱したプレゼンは会場を圧倒させるほどのエネルギーを放っていた。Drivemodeの社員達は古賀氏のプレゼンをみにバックステージへ集合しお祭りのように盛り上がっていた。その光景からは本当に社員から愛されているCEOということが見て取れた。
Drivemodeはジップカーやテスラモーターズ出身の様々な業界で活躍した起業家が自動車運転に改革を起こそうと2014年に創業した。運転しながらでは困難であった、ナビゲーション機能の操作、メッセージの送信、音楽の選択と再生等このアプリをインストールすることで簡単に安全に行うことができる。
Drivemodeでは社員が自由にピッチコンテストに出て、プロダクトを紹介し、数々の賞を獲得している。CEOの古賀氏によると、アーリーステージではプレゼンをほどんどせずに資金が集まってしまったというのが驚きだ。プレゼンなしで200万ドルを調達したというのだ。
今回は、社員からの人望が熱く、家族のように信頼し合える組織を作り上げたDrivemodeのCEOである古賀氏にお話を伺った。
Q1:会社の経営マネジメントはどのように行っているのですか?
僕の仕事はみんながやりたくないこと、できないことをやることです。そして僕の手に負えなくなってきたら、他の人に引き継ぐというスタイルをとっています。例えば、誰もトイレ掃除をやりたくなかったら僕がやります。ただ仕事として量も増えて重要になってきたら、掃除のプロを雇えばいいですよね。
スタートアップは本当に小さいので、どうしようもないつまらない仕事でもとにかくまずは自分でやります。僕の手に負えなくなったら、その時は僕よりできる人を雇います。それまでは全部のボールをCEOが拾わないといけないんです。
基本的に僕は何でも屋です。僕の過去の経歴は経営コンサルタント、エンジニア、プロダクトマネージャー、コーポレートディベロップメント、ビジネスディベロップメント、マーケティング、ヘッジファンド、ベンチャーキャピタルファンド、ファイナンス経営、かなりやっているんです。そして、いまはデザインをしてます。その経験のおかげで、自分の会社で空いてる穴は自分が埋めていけばなんとかまわると思っています。
Q2:なぜシリコンバレーで起業されたのですか?
天気がいいからシリコンバレーに住んでいて、たまたまここで起業しただけです
もともと、ボストンで、ジップカーという会社の海外戦略とグローブスパンキャピタルのファンドのディレクターを兼務してました。ジップカーをAvisに売却した後に一緒にやっていたメンバーが辞めてしまい、つまらなくなってしまったので、ベンチャーキャピタルファンドのシリコンバレーオフィスに転勤しました。
成立の問いと、成長の問いは別
よく、なんでシリコンバレーでやるんですかと聞かれますが、単にシリコンバレーの事しか僕にはわからないからです。日本で始めるなら、僕なんかではなく、日本に詳しい人がやるべきですよね。
起業家の仕事は2つあって、ビジネスモデルを成立させることと、そしてそれを成長させることです。成立しないものは成長させても意味がないので、基本的にまずは成立にフォーカスしなければならないと思っています。だから僕はアメリカにフォーカスするしかないし、アメリカでの成立に向けた最強チームを組むしかない。
日本にすぐに展開したいかといえばしたい気持ちもありますが、投資家のお金を受け取って事業をやっている以上は、「海外展開カッコいい」みたいなノリだけで海外に突っ込むのは不誠実だと思います。
大きい夢ほど一人ではできないのだから、自分がやりたいことをワガママでやるというスタンスじゃだめで、みんなが支えたくなる旗を立てることがCEOの仕事ですよね。
Q3:Drivemodeをローンチした経緯はなんですか?
シリコンバレーに来てから、車に乗る機会が増えました。毎日の通勤中の車のなかで、Drivemodeのようなものが欲しくなったので作ることにしたというだけです。
僕は、基本的に何もしない状態に耐えられなくて、起きてから寝るまでの間はずっと何かしていたい性格なんです。ボストンで働いていたときは電車通勤で移動中は常に仕事をしていました。シリコンバレーに来て、急に運転中に何もできない状態になったんです。
なので2000ドルくらいのカーナビを買ってもうちょっとテクノロジーがある状態にしようとして、買ったら「何このひどいの」って思いました。全然使い勝手がよくなかったんです。なので、結局スマホを使っていました。でも危ないですよね。
運転中にスマホ操作するのって。カーナビのひどいテクノロジーをなんとかしようと思って、考えはじめたら、まわりのみんなが資金を出すよといってくれたので、、、起業しない理由が残っていない事に気づいて当然のように起業しました。
Q4:日本人はシリコンバレーで起業するべきだと思いますか?
僕にとって変人を受け入れるアメリカはとても居心地がいいです
起業する場所は個人の自由で、価値観は人それぞれだと思うので、一般論としてどうあるべきとかは思いません。あえて言うなら、変人は日本に居づらいので、それがいやならアメリカは住みやすい、ぐらいでしょうか。
日本は、平等・均一性を重視しているので、すごい人は頭角を現しにくく、だめな人は追い込まれる。そういう意味では、起業家はほとんど変人なので、アメリカとの相性はいいかもしれませんね。
何が起こるかわかってることだとワクワクしないんです
僕、大学は明治大学出身なんです。そこからハーバードのMBAにいく人なんて全然いなかったので、正直無理だと思っていました。でも無理そうなやつを上から狙っていくという性格だったので、一生懸命勉強して、無理そうなところに挑戦しました。無理だと感じながらも、無理そうなところをあえて挑戦したいと思っていました。
最初はオレゴン大学に交換留学をしてコンピューターサイエンスを勉強しました。そのときは日本では経済学部だったのですが、同時にエンジニアでもありました。1997年の日本ではプログラミングを教えてくれる人がいなかったんです。
なのでアメリカで来ました。大学生の頃にスタートアップでエンジニアとして働いていました。プロダクトマネージャーだったんですけど、バイトで海外に出張してました。時々大学へ行って、オフィスに戻って夜12時まで仕事をするという生活を送っていました。
出張でシリコンバレーに来た際にスタンフォードの近くのホテルに泊まりました。そのときに天気がいいからこのあたりに住みたいと思いました。
倒れるかどうかよりもいかに早く起き上がれるかが重要
大人になったときに怒られずにここに住むためにはどうすればいいのかと考えたら、アメリカの大学院に行くのがいいかと思って勉強しました。どうしても天気がいいところに住みたくてスタンフォードに行きたかったけど、落ちたからハーバードに行くことになりました。でもいいんです、スタートアップの世界では倒れるかどうかよりもいかに早く起き上がれるかが重要なので、気にしません。
Q5:現在のプロダクトを作っていて一番苦労していることはなんですか?
正しいデザインは想像以上に難しい
僕らの作っているプロダクトはめちゃめちゃ難しいいんですよ。UIデザインは当然ながら、どういうUXデザインがいいのか、とくにインタラクションデザインの方向性を見極め、どういうテクノロジーを使ったらいいのかを決定するのはかなり難易度が高いです。
単にGoogleやAppleでエグゼクティブを務めたトップデザイナーを雇った程度では満足いく結果は出てきませんでしたね。世界のどこにも存在しないようなデザインのフレームワークを作るためには、ひたすら顧客と対話し、テストするしかない。しかしそれ故に僕らが作っているものは価値があるものだと思っています。
僕よりすごくないと採用できない
本当に優秀な人を採用するのはシリコンバレーでも難しいですね。シリコンバレーのエンジニアやデザイナーは給料が非常に高いのですが、僕がすごいと思える人はごくわずかです。そもそもいい人は就職活動とかしないんですよね。
彼らは基本的にふらふらしてて面白い事を見つけてから居着く生き物なので、ネットワーキング経由でしか見つからない。レジュメで経歴がすごい人を見つけても一緒に働いていて僕のペースについてきてもらえないので1日で解雇ということもありました。
デザイナー採用の例で言うと、幸い面白そうなスタートアップということでシリコンバレーのいろいろな会社から応募が大量に来るのですが、今のところ数百の応募者は全部不採用で、最終的にはネットワーキング経由でトップクラスのスタートアップでリードポジションを経験している人の中から厳選して決めました。
とても時間がかかりましたね。実力は当然ながら、アーリーステージのスタートアップにおいてはオーナーシップと情熱を持って仕事ができる人が必要です。そういう人はシリコンバレーでも本当に少ないと痛感しています。そしてすごい人を雇うためには、雇う側の実力こそが大事だと思います。
リクルートからDrivemodeにジョインしたエンジニアの平田氏にもお話を伺いました。平田氏はJapanNightのセミファイナルにて英語でのピッチを行い、チームをファイナル進出へと導きました。
Q6:平田さんからみたCEOの古賀さんはどんな方ですか?
自然体で経営者の気質がある人
僕からみて、古賀さんはめちゃめちゃ働く、有言実行をする人だと思っています。スタートアップは基本的に人材リソースが少ない中でなんでも自分たちで行わなければいけません。そんな時、必要な役割が誰もできる人がいないと古賀さん自身でそれを果たします。
僕は定期的に1ヶ月ほど泊まりこみでサンノゼのオフィスに出張をしているのですが、古賀さんは休みの日でもオフィスにすっと現れて、仕事をして行く人なんです。
有名経営者の本を読んで経営者の生き様や働き方を僕なりにイメージしていましたが、古賀さんはまさにそのような生き様であり、働き方をしていたのです。これが経営者なんだなと思いました。
一度、どんな本をよく読むか聞いてみたことがあるのですが、経営者が書くような自己啓発本などは読まないと言ってました。この人は本当に、自然体で経営者の気質がある人なんだなと思いました。
筆者: Mariko Higuchi / Marketing Specialist, btrax, Inc.
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