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btraxのデザイナーが考えるクライアントコミュニケーションの5つのコツ
最終更新日: 2024年10月30日
デザイナーの仕事は、実は「デザインをしていない時」こそが重要であると筆者は考えている。
もちろん成果物も重要であるが、その手前でどんな手順を踏んでそのアウトプットまで辿り着いたかという過程も重要であり、むしろそういった過程こそが、最終的なアウトプットのクオリティに大きく影響を与えるのではないだろうか。
筆者は、クライアントワークでの成果物の完成度は、技術的なデザインのクオリティの高さはもちろんのこと、クライアントさまからの期待にどれだけ応えられたか、という側面にも大きく左右されうると感じている。
筆者もデザイナーとして、クライアントワークでデザイン業務をすることが多い。しかしこの記事では、筆者がクライアントワークに取り組む過程でデザイン以外の側面で気をつけている点を紹介したい。
- プロジェクトゴールの見直し
- デザインプロセスの設計と説明
- 言葉の認識確認と辞書作り
- レビュー会の適切な運営
- 社内での咀嚼の時間
1.プロジェクトゴールの見直し
筆者は、クライアントさまへの提案時はもちろん、プロジェクトが開始したてのタイミングでも、定義されている課題やゴールは適切かを再確認するようにしている。
設定された課題やゴールが適切かを改めて自分達で問うことで、課題の背景にまで目を向けやすくなると感じている。
クライアントさまにも確認をとりながら課題の背景を知っていくことで、受け取った資料の文字情報や会議の会話では見えてこなかった部分が見えてくることがある。
場合によっては課題のリフレーミング(再定義)を行うことで、より最終的な成果物の完成度を上げられると考える。
心に留めておきたいことは、これはあくまでも「見直し」であり、場合によっては他の方法を提案しようというものだということだ。
デザイナーには時に、クライアントさまからの要望を冷静に見定める客観性が求められる場面がある。ゆえに、もし課題そのものが間違っていると感じるのであれば、その理由をしっかりと言語化をし、お伝えする必要があると考える。
2.デザインプロセスの設計と説明
デザイナーの考えるプロセスを、デザイナーではない人にも理解してもらうことは、仕事に対する納得度と、現在のプロセスに対して相手からの理解を得るためにも、とても重要な作業であると考える。
大概の現場において、デザインの教科書に載っているプロセス通りに事が進むことは少ない。ゆえにデザイナーはプロジェクトごとにプロセスの最適化が必要になる場面も多い。
この時、そのアレンジしたプロセスがデザイナーの独りよがりなものにならないためにも、クライアントさまにそのプロセスの意図をわかりやすく説明することはとても重要だと感じている。
相手にわかりやすく伝えようとする行為は、自分の提案を改めて客観的に理解することにも役立つのではないだろうか。
デザインプロセスを筆者がクライアントさまに説明する上で、気をつけていることが3つある。
① 誰にでもわかる言葉を使うこと。専門用語を使わざるを得ない場面であれば、その単語を説明する一言を付け加えることである。
最近はデザインにまつわる専門用語が一般にも認知されてきてはいるが、なるべく誰にでも理解できる言葉で言い換えるべきだと考える。
② スライドに図を使ったり、スライドに載っている図や文章だけでは説明不足だと感じた場合は、FigmaやMiro上でその場で新たに図を作成して説明すること。
③ 人によって解釈が違いそうな言葉を使う際には、その言葉と意味が混在されやすい別の言葉を比較し、今回使いたい言葉の意味をはっきりとさせること。
このように相手がデザインに関する知識が無いことを前提にして、丁寧に言葉遣いや説明の方法を選ぶ必要があると考える。
3.言葉の認識と辞書作り
クライアントさまによっては、その会社ならではの専門用語や略称があったりする。
そういった言葉については、筆者は不明な時ははっきりと意味を聞き、その言葉と定義をまとめたプロジェクト用の「辞書」となるものを作成している。
そうすることで認識の齟齬を防止し、表記の揺れをなくすための対策になる。
それに加え、普段のクライアントさまの言葉遣いを真似ることも効果的だと感じている。コミュニケーションが円滑に進むだけでなく、認識齟齬を防止することにもつながるためだ。
ちなみにビートラックスでは、プロジェクトにおける辞書作りの一つの方法として、付箋にわからない言葉を意味を聞いたのち、付箋でまとめて一目で見直すことができるようにしている。
スプレッドシートにまとめるより見やすく、後からグルーピングもしやすく、領域ごとの言葉の整理ができるからである。
4.レビュー会の適切な運営
これはデザインをした後の話だが、クライアントさまとのデザインレビューとその事前準備も重要だと感じている。
レビュー会は、クライアントさまが求めることと自分たちの現状の進捗の差分を話し合いながら把握できる貴重な時間である。
そのため、話し合いで議論すべきポイントが事前に絞られ、検証したいことをクライアントさまにも十分に理解いただくことが重要である。そうすることで、短い時間でクライアントさまから意見を引き出すことができる。
そのためには前提として、2で紹介した【デザインプロセスの設計と説明】によってそのプロセスへの理解を常に得られていることが重要だ。
筆者は定例会議で今現在のプロセスで行っていることを資料の最初に入れておき、毎回の会議の初めに確認する時間を作るようにしている。
しかし、そうは言ってもレビュー会では意見の発散に終始してしまう時もある。
その際には、議事録ノートに「Parking Lot (今は一旦おいておいて)」と呼ばれる欄を作り、そこに意見をまとめておき、後から振り返ることができるようにすると、過去に出た意見も後から見直すことが可能だ。
ちなみに近年はリモートワークが一般的になったことによって、オンラインツールを活用したレビューの実施が可能になった。
そこでビートラックスでは、デザインのUIなどのレビューは会議外で自由にFigmaなどでコメントをいただき、会議はそのフィードバックに対する認識の確認や議論する場という位置づけをすることで、棲み分けを明確にする試みも行なっている。
このようにすることで、効率良くレビューの進行を行うことができたと感じている。
5 社内での咀嚼の時間
レビュー会後や定例会議の直後に、社内のプロジェクトメンバーでクライアントさまからの意見を整理し、「咀嚼」する時間も、メンバーの認識を揃えて次のアクションを明確にする上で重要な時間であると考える。
振り返りの時間をすぐに設けることには、以下のようなメリットがあると考える。
- クライアントさまからの意見や言葉のイントネーションや意図をまだ鮮明に覚えているため、議論が効率的に行える。
- 皆で一度話し合うことで「なぜそのような修正が必要なのか」を改めて問いやすくなる。
- 話し合いの中でネクストアクションをタスクレベルまで細分化・具体化できる。
- チーム内で認識の齟齬がなくなる。
このように会議直後にメンバー全員で話し合うことで、「クライアントさまの求めていることは何か」を常に意識しながら効率よく次へと進めると感じている。
終わりに
今回はデザインスキルとは違った観点で、デザイナーにとって重要なクライアントさまとのプロジェクト進行に関するポイントをまとめてみた。
いずれも共通して重要なスキルは、コミュニケーションの丁寧さだと感じた。
クライアントさまから情報やご依頼を受け取り、それを適切な形でユーザーに届けるデザイナーという仕事の特性上、クライアントさまとのコミュニケーションの質は、最終成果物のクオリティに大きく影響すると感じている。
この記事で述べた内容は、著者が実際にクライアントワークを通じて感じたり、実践したことになる。
皆さまの仕事において、少しでも参考になれば幸いだ。
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