デザイン会社 btrax > Freshtrax > デザイン思考におけるアイディア...
デザイン思考におけるアイディア発想方法とは? – デザイン思考を学ぶ Part 4
現在、“デザイン思考”の注目度は高まり続けている。しかし、その注目度は高まる一方、具体的なプロセスやビジネスへの活用方法を正しく理解している人が増えているわけではなさそうだ。デザイン思考はマーケターだけでなく、営業・企画・戦略・技術部門の方まで幅広く使用できる。
今回は「デザイン思考を学ぶ Part 4」として、イノベーションを起こすアイディアの出し方について記載していく。
まずはじめに、デザイン思考の全体のプロセスを確認しよう。
■ デザイン思考のプロセス
- Empathize : ターゲット、ユーザーを設定し、理解する
- Define : ユーザー視点で具体的なニーズを選定する
- Ideate : ニーズ解決のためのアイディアを沢山だす
- Prototype : 選んだアイディアを元にプロトタイプを早いスピードでつくる
- Test : プロトタイプを元にユーザーに対してテスト
今回は3つ目のプロセスである、”Ideate”に焦点をあて、イノベーションを起こすアイディアの導きだし方について詳しく記述していく。Ideateの段階では、出来るだけ沢山のアイディアを出すことが最も重要になってくるのだが、その前に一つだけ最終的な目的であるイノベーションについての理解を深めておこう。
■ デザイン思考から生まれるイノベーション
オグルヴィ・アンド・メイザーのファウンダーであるDavid Ogilvyは、「LeaderとFollowerとを分けうることこそがイノベーションである。」と述べた。確かに、イノベーションの定義は”新しいアイディアから新たな価値を創造し、大きな価値をもたらす自発的な人・組織・社会の幅広い変革”であることをみても間違っていない。しかし、これだけ聞くと多くの人は自分には無理かもしれないと尻込みしてしまうのではないだろうか。
しかし、心配する必要はない。実際、製品、サービス、環境そしてデジタルエクスペリエンスのデザインへの支援で世界を牽引するIDEOはイノベーションをもっと身近な方法で定義づけた。
・IDEOが唱えるデザイン思考からのイノベーション
上の図がIDEOが定義づけるイノベーションである。言葉で説明すると、「有用性」、「ビジネスの妥当性」、「技術的実現性」の3つが重なるところに生まれるものがイノベーションであるというのだ。ただし、決して容易だといっているわけではない。
では具体的にこれら3つを満たすアイディアはどのようにして生み出すのだろうか。
■ 4つの切り口でアイディアは次々と浮かぶ
Y CombinatorのPaul Grahamは、イノベーションを起こすアイディアを生み出すため「未来を創造し、その世界に足りないものを創ること」を念頭に置いている。確かに的を得ているのだが具体的に何をすればいいのか分かりにくい。そこで、アイディアを出しやすくするアプローチ方法を以下にまとめようと思う。
・基本3要素
- User Needs :ターゲットのニーズをベースに (ターゲット選定の仕方)
- Trending Service Model : 流行のサービスをベースに
- Market Size : 市場規模の大きさをベースに
切り口をこれら3つのどれかにするだけで驚くほどアイディアは出しやすくなる。良いか悪いか、実現可能かどうかはおいといて、まずは浮かび上がったものを全て書き留めておこう。
アイディア出しのアプローチはこれだけではない。今、サンフランシスコを騒がしている最新で効果的なアイディエーション方法を紹介しよう。
・Business Idea Cheat Sheet を使う
上の図は、新規事業アイディアを出すアプローチとしてサンフランシスコで今最も注目されているシートだ。黄色で囲んだ横軸には、世界的知名度を誇るサンフランシスコ発の巨大スタートアップ(Uber, Tinder, Birchbox, Airbnb)が並び、青で囲んだ縦軸には、
生活に身近な単語が並べられている。(縦軸はあまりにも長いため割愛しているが、画像をクリックすれば原画をみることができるのでご心配なく。)
この図の使い方をざっくりと説明するとすれば、タクシー配車アプリとして有名なUberにFoodをかけ合わせたようなサービスを生み出そうというアイディアを考える前に、Postmatesというサービスが既に存在するということを一目で見て取ることができる。
逆に、AirbnbとMessageをかけ合わせたようなサービス案をあなたが思いついたとすれば、そこには競合がいないため勝機はありうる、といった具合に使える。
横軸の企業を変えたり、縦の単語を追加したりすることで、自分なりのリストをつくることもできるので、アイディアを出すときの一つの切り口として覚えていて損はないだろう。簡単ではあるがこれら方法で考え始めるだけでも次々とアイディアは出てくる。ここまで出来たら、今度は浮かび上がった沢山のアイディアをふるいにかける作業に入る。
■ アイディアを磨く8つの質問
先ほどのアイディア出しの作業とは違い、ここからの作業はかなりシビアだ。せっかく出したアイディアを削る必要がある。この行程は辛いが、沢山のアイディアを削り、磨いくことでこそ、イノベーションを起こすアイディアは生まれる。では、実際にどのような観点からアイディアを見つめ直すことが必要なのだろうか。以下の8つを質問項目を満たすことが出来れば質の高いアイディアと判断できるだろう。
- 技術的に現実性を帯びているのか?(Technical viability)
”タイムマシン”や”どこでもドア”を実現することが出来れば間違いなくイノベーションだ。しかし、今の技術では実現可能性は限りなく低い。あなたのアイディアはそうなってないだろうか?
- 違法性はないのか?(Legal viability)
そのサービスが違法であれば、切り捨てよう。合法なら問題無し。グレーなら見当の余地あり。ちなみに、サンフランシスコ発のスタートアップであるUberなどは法律的にはグレーと言われていたが、大成功を収めている。また、地域によって合法か否かは変わってくる。たとえばサンフランシスコではマリファナのデリバリーサービスは有名な投資家から出資されている。このように、日本では無理でも海外では可能なこともある。
- 費用的実現性はあるか?(Financial viability)
宇宙事業を例にすれば、テスラのCEOであるイーロン・マスクは莫大な費用がかかる宇宙事業も手がけることができる。しかし、あなたにそれほどの財産がある、または出資を確保することができるのだろうか?
- ターゲット市場のニーズに合っているのか?(Market viability)
”北極で氷を売っても売れない”という言葉があるように、その市場のニーズを満たしているのかどうなのか再度確認しよう。
- ユーザーにどう提供するのか?(Logistic viability)
Webサービスやアプリであればオンラインでダウンロードが可能だが、ハードプロダクトである場合は、配送方法、関税などなど調べておく必要がある。
- 過去にそのアイディアで失敗した人がいるのか?
過去に失敗した人がいれば避けるのがセオリーだったが、まだ大丈夫。時代が違えば受け入れられることもある。例えば、15年前に失敗に終わったフードデリバリーサービスも今ではタクシー配車サービスで有名なUberがUber for Food として成功させているように、何故失敗したのか、今の技術、ネットワークでは成功させられないかも考える余地はある。
- ある企業の独占市場ではないか?
ターゲット市場を独占している巨大企業があれば競争は難しい。また、今はその市場にいなくてもFacebookやGoogleが始めた瞬間につぶされてしまいうる領域は避けるのが無難だろう。
- 市場や業界が変わったときにそのアイディアは生存しうるのか?
法律が変わったり、新しいテクノロジーが出現したりする可能性が高ければ、そのアイディアが実現しても長続きしにくいだろう。ワープロをつくってもパソコンの台頭によって、必要なくなるといったことを例にとればわかりやすいのではないだろうか。
■ アイディアを整理するキャンバス
あなたがIdeateしたアイディアを深堀りさせたいときは以下のようなキャンバス(枠組み)を利用すると進めやすく、今後のプレゼンや資料づくりにも役立ってくるので活用してはいかがだろうか。
① Value Proposition Canvas (ex.EVERNOTE)
上の図はEVERNOTEを例にこのキャンバスを埋めたものなので、参考にして欲しい。
Productと書かれた四角の枠の中には、プロダクトまたはサービスであるEVERNOTEの利点と、特徴、また生み出されるエクスペリエンスを。Customerと書かれる円の枠内にはEVERNOTEがターゲットとした顧客のニーズ、求めること、また恐れとなりうる要素。Substitudeの中には、代替となりうる既存製品やサービスの活用方をまとめた。
② Business Idea Canvas
① のValue Proposition Canvasで整理できたアイディアをより掘り下げ、ビジネスプランに近いものを作るときはBusiness Idea Canvas を活用しよう。ポストイットでどんどんと番号順に枠を埋めて、ビジネスプランのドキュメントづくりにも十分な状態にもっていこう。
−Factors−
- Customer Segments : ターゲットとなる顧客層
- Problem : 解決したい問題
- Unique Value Proposition : なにがユニークでバリューがあるのか
- The “Wow!” : ユーザーがみたときに驚きや感動をどうやって与えるか
- Solution : 解決策
- Channel : どういうルートでそれを届けるか
- Revenue Streams : 売り上げがどういう方向で届くのか
- Cost Structure : どのくらいのコストがかかるのか
- Key Metrics : 上手く機能しているのか評価する指針
- Unfair Advantage : あなたが(あなたの組織、会社が)やるアドバンテージ
ex.) ネットワーク、資産、文化背景etc..
まとめ
以上がデザイン思考の3つ目のプロセスであるIdeateの入門的な部分となるが、なんとなく理解できただろうか?これらは実践してみることで最も身に付くので、すぐにでも行動に移して頭だけではなく身体で覚えてしまいましょう。次回はIdeateで磨いたあなたのアイディアをプロトタイプとしてつくるときのポイントを述べるのでお楽しみに。
関連記事
【イベント開催!】Beyond Borders: Japan Market Success for Global Companies
日本市場特有のビジネス慣習や顧客ニーズ、効果的なローカライゼーション戦略について、実際に日本進出を成功に導いたリーダーたちが、具体的な事例とノウハウを交えながら解説いたします。市場参入の準備から事業拡大まで、実践的なアドバイスと成功の鍵をお届けします。
■開催日時:
日本時間:2024年12月6日(金)9:00
米国時間:12月5日(木)16:00 PST / 19:00 EST
*このイベントはサンフランシスコで開催します。
■参加方法
- オンライン参加(こちらよりご登録いただけます。)
- 会場参加(限定席数) *サンフランシスコでの会場参加をご希望の方は下記までお申し込みまたはご連絡ください。(会場収容の関係上、ご希望に添えない場合がございます。予めご了承ください。)
- 対面申し込み:luma
- Email(英語):sf@btrax.com
世界有数の市場規模を誇る日本でのビジネス展開に向けて、貴重な学びの機会となりましたら幸いです。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。