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デザイン思考型の企業カルチャーをつくる3つの観点 〜今すぐ喫煙所を廃止しキッチン設置しよう〜
あなたは”Design-Driven Culture”(デザイン思考型の企業カルチャー)という言葉を聞いたことがあるだろうか。
これはデザイン的視点を社内のプロジェクトやミーティングから評価まであらゆるものに適用させることを表しており、AppleやNikeなど成長を続ける企業が目指すカルチャーとして現在最も注目を集めている。
ここ数年で、ビジネスにおいてクリエイティブな発想が今まで以上に重要となっており、企業は社内のカルチャーを改善し、スタッフのより自由な発想を通じて新しいプロダクトを生み出す事が求められている。
それに対して注目されているのが”デザイン (DESIGN)”を基本にすえた企業カルチャーの創造である。
英語で言う場合の小文字のdesignは表面を美しくする事、対して大文字のDESIGNは、世の中の様々な事柄をデザイン的観点から改善する為の価値を表現している。
これからのビジネスに対するデザインの価値においては、見た目の美しさ以上にプロダクトを成功に導く為の、”デザイン的プロセス” と ”デザイン的思考” が重要となってくる。
この2つを実現するためには企業の核となる会社のカルチャーをデザイン思考型にする必要がある。
今回は実際に成功している企業の実例をもとにデザイン思考型カルチャーを会社に根付かせる方法を紹介する。
【参考】あなたの会社はデザイン思考?企業のデザイン思考力診断
1. デザイン思考の根幹を理解する
これからデザイン的カルチャーつくるなら、まずデザイン思考の根幹を成すものを再確認しよう。デザイン思考を一言で説明しろと言われたら、「顧客にとって本当に価値があることを理解する」ということになる。
大部分の企業が「顧客最優先」を謳っているが顧客を本当に理解したサービスを提供するためには戦略だけでは不十分だ。
むしろ戦略以上に組織の仕組みづくりやスタッフの育成、環境づくりが不可欠である。それに加え予算振り分け、人材やプロジェクトの評価基準に顧客満足度を第一指標にしてはじめて名実共に顧客最優先を実行できているといえる。
デザイン思考型の企業は顧客が何を望んでいて、さらになぜそれを求めているのかということまで徹底的に理解する。
つまり、消費者が購入する意思決定までの道筋の仮説を練り何が人々の消費を駆り立て、何が消費を妨げているのかまで理解する。またどのような点が顧客に幸福体験を生み出しているのかも、徹底的なリサーチと研究で明らかにしている。
(ex.) 顧客ニーズと消費行動の探求により結果を出した3つの事例
Sephora
ミレニアルズが興味を持った商品を買う前にYouTubeでその利用法や利用体験をチェックしていることを発見。その導線を理解したソリューションを実施することに成功。
GE`s San Rammon
119人の水夫に実装アンケートを施行。調査結果をもとにしたソリューションが操縦士の事故率の低下に貢献し、デザイン賞を受賞。
S&P500
デザイン思考型企業の株価指数は10年で219%上昇(Design Management研究所調べ)。
2. 真似するべき成功企業の5つの具体的な取り組み
勘違いされがちなのだが、カルチャーというものはスタッフ同士が作り上げるものでありリーダーだけがデザイン思考を意識したところで何も変わらない。さらに言うとスタッフがイノベーティブでなければデザイン思考型のカルチャーは根付かない。
デザイン思考型のカルチャーを生み出すことが出来るスタッフは一貫して健康で豊かなマインドを保持している。では、スタッフのデザインマインドを創出することができる空間とはどういったものなのだろうか。様々な成功企業の共通点から真似する価値のある5つの取り組みを紹介する。
① キッチンを設置し喫煙所を廃止
ウォーリック大学の研究によればテスト前にチョコを与えたグループの方が対応する相手と比較したときに、10~12%も良い結果を出したという。
甘いものは脳の働きを助け、落ち着き、ストレス解消の役割があることが科学的に実証された。だから多くのサンフランシスコ企業にはチョコをはじめとする甘いものを備えたキッチンがあり、健康を害す喫煙所は撤廃されている(そもそも違法)。
しかし、不思議なことに日本のオフィスには喫煙所があって、キッチンを持たないオフィスが多い。喫煙休憩は許されて、チョコを食べることは一種のサボりのような空気さえある。
煙草は健康的被害があり、科学的にネガティブな要素しかないにも関わらずこの常識は何なのだろうか。もちろん、クリエイティビティを必要としない会社ならこの現状を維持すればいいのだろう。
しかし、これまでの常識にとらわれない環境を作りたいのであれば今すぐに喫煙所を廃止しキッチンを備えるべきだ。科学的に考えてもスタッフが煙草の代わりにチョコを食べるだけで、会社とスタッフの健康状態が改善され作業の生産性も間違いなく上がる。
② ペットとの触れ合いが可能
中央ミシガン大学のpresence of a dog in the officeの調査によるとオフィスで犬を飼う事がストレス軽減や生産性の向上に効果をもたらしたという。
さらにペットをきっかけにスタッフ同士のコミュニケーションやコラボレーションが促進されたという。コラボレーションはデザイン思考の基本でもあるため、この取り組みは非常に効果的だ。
Design Agencyのbtraxでも愛犬Cooper君はスタッフを癒しスタッフ同士のコミュニケーション促進に効果を発揮している。
③ 社外に出かける
会議は社外で行なおう。調査によると社会人は月に平均62回の会議に出席し、参加者の半分以上は無駄だと感じている。非生産的な会議に使われる時間は月に32時間にものぼる。ペーパーワークやフォーマルな内容でなければ社外のカフェ等のリラックスした空間でミーティングすることが好ましい。
また社外に出ることはリラックスを含め健康面でも効果がある。健康的な社員の幸福度は高く、会社にポジティブな効果を与えやすいことからL.L. Bean やJohnson & Johnsonといった企業がWellness Program を導入。
朝のランニングに留まらずランチ時間プラス散歩時間を設けるなど、方法は様々であるが社員が一貫して外に出歩いたり適度な運動ができる仕組みづくりを実施している。
④ スタッフのフィードバックは必ず実行する
Fierce, Inc.の調査によると、2/3以上の割合のスタッフが彼らのフィードバックを企業側が聞き入れてくれないと感じているという。これを防ぐ為にも四半期に1度または毎月1回はスタッフと面談する体制をつくろう。
そこで得たフィードバック(改善案)はスタッフの目に見える形で実行する。そうすればスタッフの満足度とやる気が向上することはもちろん会社の環境はますます改善される。
⑤ 社会、世界に貢献する
スタッフは社会や世界に価値を生み出している会社で働きたがる。
Intelligence Groupのリサーチによると、これは特にミレニアル世代(20~30代前半のスタッフ)に重視されており、64%の人が働く上で最も大切なことは世界に貢献することだと応えたという。つまりこれまで以上に企業は社会的責任を保持しローカルコミュニティへ貢献していくことが求められる。
3. 今日からできる3F
デザイン思考型のカルチャーの重要要素を説明した。では、自分の会社にデザイン思考を根付かせるために今日からできる3Fを紹介する。
① Formalize:組織をデザイン
役職名、会議室、プロジェクト名、新提案などの名前を見直す。
(ex.)
会議室: ”Helvetica”, “Futura”…etc (会議室の名前にフォント名を使う)
btrax コアバリュー: “We are all designers (社員の全員がデザイナーである)”
役職名: “HR Designer (人事デザイナー)”
② Foster :Workshop&MTG手法をデザイン
Design Driven CultureをうたっているMcKinley&Companyはの”4wall design action”(下の図)を実行している。部署を跨いだ質問や提案、返答が可能。スピード感を持った意思決定が出来るメリットがある。新プロダクト開発プロジェクトやワークショップの一つの方法として参考になる。
【進行方法】
- 画像内の4チームが一つの部屋に入り、ミーティングをスタート
- 各チームに一つずつボードが与えられる
- それぞれがカスタマージャーニー、テクノロジー、ビジネスオペレーション、プランニングに専念する
- 最初に「今日中になにを達成したいのか」「どんな課題が立ちはだかりそうなのか」を各グループが共有
- 各ボードのタスク、アクション、進展、プラン、アイディアは、みんながそれぞれみやすいように整頓
【参考】15分で出来るクリエイティビティを育むワークショップの2つ
③ Flub:失敗をデザイン
スタッフが挑戦する価値があると判断し、例えそれが失敗したとしても、それは成功だ。
Judy Estrinは Wall Street Journalにて、「企業が失敗とどう付き合うかがイノベーションを大きく左右する」と述べているように失敗を恐れずに挑戦できる雰囲気づくりや機会づくりをはじめよう。
Plus: “What have you designed today?”
イントラネットに、「今日は何をデザインした?」という質問を、書き込みを習慣化させる。デ
ザインの内容が大きかろうが、小さかろうがそれを賞賛しあう。(ex.)Marketing:新しいFacebook キャンペーンを実施した。Accounting:コストを節約した。…etc
番外編: 各社で独自のユニークな制度を取り入れる
企業カルチャーというものは、それぞれの企業の個性を最大限引き出す事も重要である。世の中に2つと同じ会社がある訳ではないので、それぞれの会社が目指すビジョンや、社会的役割、社員の行動規範を元に、他の会社では考えられないようなユニークな企業文化を考えてみるのも面白い。
国内で働きがいランキング1位を獲得したVOYAGE GROUPのオフィス内には「近未来的海賊の隠れ基地」をコンセプトに設計された「AJITO」と呼ばれるBARがあり、仕事終わりにふらっと立ち寄れるBARとしての使われ方以外にも、会議や商談、勉強会、社外の方を招いた交流会など様々な形で幅広く利用され、社内外のコラボレーション促進に役立っている。
また、以前にJapanNightに出場頂いたEyes Japanでは社内にバーを設置したり、社員のストレス解消の為に社長の似顔絵を描いたサンドバッグをオフィス内に設置したり、ミラーボールを回して終業を知らせたり、皆でソフトクリームをなめながらディスカッションをする時間を設けたり等、同社代表の Jun Yamaderaが 考案したその会社独自の制度を採用している。
まとめ
- デザイン思考は顧客の求めていることを本当の意味で理解する
- デザイン思考型カルチャーを構成するスタッフが求める環境をつくる
- 3Fで組織にデザイン思考型の基盤をつくりはじめる
番外編: それぞれにユニークな制度を導入
これら3点を常識にとらわれることなく会社へ導入することを考慮してみてはいかがだろうか。イノベーションを起こそうと躍起になっているもののこれまでの体制を見直す行動力がないのであればいつまでたってもイノベーションは生まれない。
時代に適した会社づくりができてこそその時代を魅了する価値やエクスペリエンスが生み出される。まずはデザイン思考型の会社づくりから始めよう。
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