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統計データで見るデザインの経営に対するインパクトの大きさ
ここ数年で経営に対するデザインの重要性に注目が集まっている。
デザインを経営に活用している企業の株価の伸びが平均値の2倍以上であったり、デザインを経営に活用している企業は平均と比べ、売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっているなど、その結果が具体的な数字に表れ始めている。
デザインと経営に関する最新のリサーチ結果
そんな中でも、デザイナー向けのプロトタイピングツールを提供するInVisionが、これまでにないレベルの世界規模でのデザインに関するリサーチを発表した。
The New Design Frontierと名付けられたこのレポートでは、世界中のさまざまな規模の企業や団体をリサーチを実施した。
リサーチ対象の内訳は、大企業:71%、エージェンシー:25%、非営利団体:2%、行政:1%で、金融や教育、エンタメなどの異なる24の業界から2,200を超える団体。
70%の企業が積極的に経営に対してデザインを活用してる
その結果、全体の2/3以上が、デザインを機能や見た目以外にも活用しているという事がわかった。全体の70%の企業が商品の開発や企業経営のプロセスにデザイン的考えを導入していると答えている。
デザインの浸透に関する主なアンケート結果:
- 商品開発プロセスに組み込まれている: 66%
- デザインリーダーが商品開発やエンジニアリーダーと連動している: 53%
- 従業員がデザインプロセスに参加している: 51%
- 重役がデザインプロセスに関わっている: 49%
- 従業員がユーザーや顧客リサーチに関わっている: 48%
デザインが経営に与えるインパクトが理解できる統計
また下記の通り、デザインの経営に対する効果としては、効率、利益、ポジショニングなどに加え、3/4近くの企業がデザインを通じて顧客の満足度とユーザービリティが改善されたと答えている。(サンプル数:2,229団体)
商品のクオリティに対するインパクト
- ユーザビリティ改善: 81%
- 顧客満足度向上: 71%
業務に与えるインパクト
- 社員の作業効率の向上: 33%
- 商品の市場リリーススピードの向上: 29%
会社の利益に対するインパクト
- 売り上げの向上: 42%
- コンバージョン率の向上: 35%
- コスト削減: 30%
マーケットポジショニングに関してのインパクト
- ブランド価値向上: 39%
- 新しい市場参入への効果: 25%
- デザインパテントや知的財産権への効果: 13%
- 評価額や株価への効果: 10%
組織内におけるデザイン熟成度と経営へのインパクトにおけるデザインレベルとその効果
このレポートでは、企業や組織がどれだけデザインを業務や経営に活かしているかによって、会社自体のデザインレベルを5段階に分けている。その結果、経営に対してデザインのポテンシャルを最大限に引き出しているLevel 5に入るのは、全体のわずか5%にとどまった。
全体の80%の企業が常にデザインを企業内の何かしらのプロセスに導入している中で、実に95%はまだまだデザインを活用する余地が残っている。
デザインの活用度合いレベルと全体での割合
Level 1 – 見た目に対してのデザインを重視している: 41%
Level 2 – 定期的にデザインワークショップを実施している: 21%
Level 3 – 業務プロセスにデザインが導入されている: 21%
Level 4 – 絶え間ない仮説検証が行われている: 12%
Level 5 – デザインこそがビジネスの根幹になっている: 5%
組織が大きくなるほど経営戦略へのデザイン導入難易度が上がる
組織の規模が大きくなればなるほど、デザインを経営に浸透させる難易度が高まる。例えば、大企業と比較した場合、最高レベルであるLevel 5の比率は、中小企業で2倍、小規模企業で3倍ほどの開きが見られる。
多くの大企業は、組織構造やプロセスが複雑化しており、経営に対してのデザインの導入に時間がかかる結果となっている。
デザインチームの大きさと経営へのインパクトは必ずしも比例しない
上記のデザインレベルにて、高い数字を達成している = 経営へのインパクトが大きい企業におけるデザインチームが必ずしも大きいとは限らない。
重要なのは、組織内でどのような影響力を持ち、経営陣からのサポート受けているかであり、デザイナーの数や大きさだけではそのインパクトを測ることはできないと言う結果が出ている。
言い換えると、むやみに多くのデザイナーを採用したとしても、そこにしっかりとしたプロセスとカルチャーがない場合は、宝の持ち腐れになってしまう可能性もあるのだ。逆にたとえデザイナーの数が少なくても、経営に有効活用することが十分可能と言うことである。
デザイン経営に遅れを取るアジア諸国
企業に対するデザインの浸透度合いを地域ごとに見てみると、大きな違いは見られないが、主に北アメリカとヨーロッパが経営戦略にデザインを活用しているLevel 5の率が他の地域と比べ比較的高い。
その一方で、南米とアジア地域は、中間レベルのLevel 2, 3はそれなりの比率となっているが、Level 5はそれぞれ1%、 3%と低い数字となっている。
それぞれのデザインレベルのメリットと改善点
では、それぞれのデザインレベルごとに、ユーザーや企業にとってどのようなメリットがあるのか、そして、次のレベルに上がるにはどのような点が課題となっているかの詳細を紹介する。また、それぞれのレベルにおける平均デザイナー数の調査結果も掲載してみた。
Level 1 – 見た目に対してのデザインを重視している: 41%
デザインを活用することで、主にUIなどの画面やプロダクトの見た目の改善を行っている。一昔前は、デザインレベルが低い=デザイナーが足りない、といのが一般的な理由であった。
しかし、レベル1に属する組織のデザイナーの数は平均30人。これは最高レベルであるレベル5組織のそれの倍であり、デザイナーの数がデザインレベルに比例するわけではないことがわかる。
Level 1では、デザイナーの影響範囲はかなり狭く、主にスクリーン上などでの”見た目のデザイン”にとどまっているケースが多い。
平均的なデザイナー数: 30人
主な活動/成果物:
- ワイヤーフレーム
- デザインカンプ
- プロトタイプ
主なメリット:
- ユーザビリティ向上
主な改善点:
ワークショップやオンランツールを活用し、チーム内のコラボレーションを促進する。ユーザーリサーチなどの活動を通じて、よりユーザー視点を基にした商品開発を進める。
Level 2 – 定期的にデザインワークショップを実施している: 21%
デザインチームが中心となって、社内ワークショップやユーザーテストなどの定期的な活動を通じ、非デザイナーを含む他の部署を巻き込みながらデザインを組織に浸透させる活動を行っている。
社内カルチャーとしても、デザインに関する話題が出やすい雰囲気になっている。
Level 2に達した企業の約50%がスケッチやワークショップなどを通じて、デベロッパーや経営陣などの非デザイナーとデザイナーとのコミュニケーションを促進している。
平均的なデザイナー数: 12人
主な活動/成果物:
- ワークショップ
- スケッチ
- 担当スタッフからのインプット
- デザインツールとデベロッパーツールの連動
主なメリット:
- ユーザビリティ向上
- 顧客満足度向上
主な改善点:
社内で共通のデザインシステムを作成するための人材を採用、アサインし、デザイナー、エンジニア、プロダクトマネージャーなどがデザインに対しての共通意識を持てるようにする。
Level 3 – 業務プロセスにデザインが導入されている: 21%
全体の業務プロセスにおいて、デザインの役割の明確化、主要パートーナーとの意識共有、プロジェクトを遂行する上でのデザインドキュメントの共有がされている。
そのため、Level 3に含まれる企業は、最も多くのデザイナー数を有している。Level 2に比べ、デザイン、開発、商品管理部署の役割の明確化が進んでおり、デザインドキュメントがそれらの部署をつなぐための役割を果たしている。
しかしながら、多くのデザイナーを抱えていることもあり、何でもかんでもデザイン至上主義になりがちで、作業効率が下がりがちなのもこのレベル。
平均的なデザイナー数: 54人
主な活動/成果物:
- 朝礼にデザインに関するトピックが含まれている
- デザインの優先順位が高い
- デザインブリーフ作成
- デザイン関連のドキュメント作成
主なメリット:
- ユーザビリティ向上
- 顧客満足度向上
- 売り上げ向上
主な改善点:
仮説検証をするために、ユーザーテストを行い、その結果を測ることで、より経営にインパクトのあるデザインプロセスとなる。
Level 4 – 絶え間ない仮説検証が行われている: 12%
組織としてデータを活用したデザインプロセスを実行しており、それぞれの施策に対して、高いレベルでの分析、ユーザー調査、効果測定が行われている。
加えてLevel 4の組織は、マーケットリサーチ、ビジョン作成などの経営戦略にデザインを活用し始めている。
経営陣も経営の結果に対してのデザイン重要性を十分理解しており、その活動へのサポートを提供している。また、対外的にもその取り組みが宣言されている。
組織のおけるデザインのレベルが4に達すると、効率性、コスト削減、プロダクトごとに対しての利点が見えてくる。
平均的なデザイナー数: 13人
主な活動/成果物:
- コンセプトテスト
- A/Bテスト
- データ分析
主なメリット:
- ユーザビリティ向上
- 顧客満足度向上
- 売り上げ向上
- プロジェクト毎の効果測定
- ファンネルとコンバージョン効果測定
- コスト削減
- 市場リリースまでの時間の短縮
- 従業員の作業効率アップ
- ブランド価値向上
主な改善点:
経営戦略にデザインを活用し始めたLevel 4の組織が次のレベルに達するためには、デザインを経営の中心に持ってくる必要がある。
このレベルの組織では、すでに様々な領域においてデザインの活用がされており、それを新規ビジネスにも導入することで最高レベルへの到達が可能となる。
Level 5 – デザインこそがビジネスの根幹になっている: 5%
会社全体にデザインの重要性がしっかりと浸透しており、なおかつ経営戦略の根幹にデザインが導入されている。全体のわずか5%が到達した最高レベル。
このレベルの組織では、戦略立案の際に、プロダクト・マーケットフィットを検証するために、徹底的なユーザーリサーチ、トレンドリサーチ、未来予測が行われている。
結果として、作業効率性からマーケットシェア拡大、時価総額の上昇、知的財産権の獲得まで、経営においてデザインが生み出す多種多様なメリットを享受している。
平均的なデザイナー数: 15人
主な活動/成果物:
- トレンドの認識と未来予測
- プロダクト・マーケットフィット施策
- デザイン的観点を企業ビジョンに導入
- クロス・プラットフォーム戦略
主なメリット:
- ユーザビリティ向上
- 顧客満足度向上
- 売り上げ向上
- プロジェクト毎の効果測定
- ファンネルとコンバージョン効果測定
- コスト削減
- 市場リリースまでの時間の短縮
- 従業員の作業効率アップ
- ブランド価値向上
主な改善点:
ビジネス戦略を顧客視点から行っているLevel 5の組織は、競合がデザインの重要性に気づく前に、よりその活動を推し進め、差をつけておく必要がある。
結論: どんどん明確になっていくデザインの重要性
このような統計を目の当たりにすると、デザインを経営に取り込まない理由が全く無いと言えるだろう。その一方で、デザインの効果が発揮されるのは、テクノロジーやデジタル系の業種に限定されると思っている人もまだ少なくはない。
しかし、デザインレベル5の企業が、金融や教育、エンタメ、インフラなど、様々な業種にまたがっていることからも分かる通り、経営に対するデザインのメリットは全ての産業に対して結果として現れている。
一番の理由として、ユーザー体験に加え、業務の効率や企業カルチャー醸成に至るまで、様々なエリアにてデザインの活用が可能であることが挙げられるだろう。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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