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大企業xスタートアップのオープンイノベーションをガンガン実現するDelta航空【CES 2020】
大企業がスタートアップとコラボし、新しい価値を生み出す。これは、多くの企業が目標に取り組んでおり、シリコンバレーに拠点を構える日本企業の最も重要なゴールの一つともなっている。
その一方で、実際の成功例は驚くほどに少ない。そもそも、多くのスタートアップは大企業との取り組みに興味がない。むしろ、めんどくさいとすら思われている。これは日本でもアメリカでも、ほぼ同じような状況である。
スタートアップが大企業に持つイメージ
- スピードが遅い
- 偉そう
- プロセスがめんどくさい
- 社員がポンコツ
- できない理由を並べるのが上手い
- アイディアをパクられる
このような理由で、これまでも数多くのコラボが失敗に終わっている。
CES 2020で発表されたDelta航空による複数スタートアップとのコラボ事例
空の旅行は非常にストレスが多く、課題が多い。それだけイノベーションが求められており、我々が提供しているデザイン思考ワークショップでも、テーマとして採用されることが多い。
そんな課題の多い航空業界の大手であるDelta航空が、今月Las Vegasで開催されたCES 2020でキーノートスピーチを行った。そこで紹介された、Delta航空とスタートアップとのコラボ事例を紹介する。創業95年の老舗航空会社であるDeltaは、いかにしてスタートアップのサービスを活用しているのだろうか。
1. Lyft (ライドシェア) : 空と陸の移動をスムーズに連動
水面下の時期を含め、これまで3年間パートナーシップを進めてきたDeltaとLyftは、お互いのユーザーデータを共有することで、乗客のフライトに合わせて、到着後にライドが迎えに来るサービスを展開。
また、Lyftで$1使うごとにDeltaの1マイルが加算される。すでに累計で15億マイルを計上しているとのこと。Deltaのマイルで車両の種類をアップグレードすることも可能。
2. WHEELS UP: プライベートジェットサービスを提供
最近アメリカで注目が高まってきているのが、サブスクリプションやオンデマンド型のプライベートジェットサービス。その中でDeltaはWHEELS UPというサービスとコラボすることで、一般的な旅客機に加えて、プライベートジェットのオプションの提供も開始した。
3. CarePod: ペット旅行サービスを提供
国土の広いアメリカでは、旅行の際に飛行機に乗るケースも多い。それはペットも同じ。通常、ペットは貨物室での移動となるため、飼い主が受けるストレスも大きい。そんなペットとの旅行改善に特化したのがCarePod。ペット専用のケージや、状況を逐一通知してくれるアプリなどを通じて、飼い主に安心感を与えてくれる。
4. Sarcos: 整備や荷物を運ぶ際のパワースーツ
機体の整備や荷物を運ぶ際の怪我が絶えない。そんな社員の課題に対して、DeltaはSarcosとコラボし、彼らが提供するパワーアシストツールを活用することで、業務の改善を行っている。
5. MisappliedSciences: 見る人に合わせて内容が変わるパラレルリアリティー画面
空港の電光掲示板には数多くの情報が表示されているが、個々のユーザーに必要な情報は少ない。そこで、搭乗客の顔をカメラで認識して、それぞれの顧客が求める情報だけを最適な言語で表示するテクノロジーを開発しているスタートアップとコラボした。
「パラレルリアリティー」と呼ばれるこのテクノロジーを実装した画面が、2020年の夏頃を目処にデトロイト空港にて試験運用される。
6. vital vio: 光学テクノロジーでキャビンを清掃
機内をより迅速に衛生的にするために、LEDを利用して菌の繁殖を抑えるテクノロジーを提供するvital vioとパートナーシップを組んだ。医療の現場で活用されているvital vioのサービスを航空業界向けに転換した。
7. Global Citizen: 発展途上国の飢餓や環境保護に取り組む非営利団体
Deltaのスタートアップとのコラボは、企業の利益追求だけではなく、社会貢献や発展途上国支援にも及んでいる。Global Citizenの活動に対して、無料のフライトや食事を提供することで、より良い世の中の実現も追求している。
Deltaがコラボしているスタートアップまとめ
今回発表された、Deltaがスタートアップとオープンイノベーションを行なっているリストは下記の通り。
- Lyft: ライドシェアサービス
- WHEELS UP: プライベートジェットサービス
- CarePod: ペット旅行サービスを提供するスタートアップ
- Sarcos: 整備や荷物を運ぶ際のパワースーツ
- MisappliedSciences: 見る人に合わせて内容が変わるパラレルリアリティー画面
- vital vio: 光学テクノロジーでキャビンを清掃
- Global Citizen: 発展途上国の飢餓や環境保護に取り組む非営利団体
大企業がスタートアップとのコラボを実現するための5つのポイント
今回の発表からも分かる通り、Delta航空はかなりのスピードで、複数のスタートアップとのコラボを実現している。では、創業100年近い大企業がどのようにして実現したのか。その中身を見てみると、おそらく下記の5つのポイントが重要だと考えられる。
1. スピードの速さ
スタートアップと大企業も最も大きな違いは、決断と実行に要する時間。新しいことをどんどん進めるために、スタートアップが爆速で進むのに対して、大企業は承認プロセス一つとっても、かなりゆっくり行う。もし、大企業がスタートアップのペースに合わせることができれば、コラボの可能性は上がりやすい。
2. バリューの共有
ここでいうバリューというのは、価値観やゴールなどの取り組みを通じて実現したい世界観のことをいう。お金を儲けるだけではなく、世の中に対して、どのようなインパクトを与えたたいか、という具体的なバリューの共有がないと、コラボは頓挫しがち。
3. 長期的なヴィジョン
今回発表された、Delta航空とLyftの取り組み一つを見ても、3年近くも水面下で話を進めていた。それだけ企業同士での取り組みを通じてアウトプットを生み出すには時間がかかる。速いスピードで進めながらも、諦めずにじっくりと長期的なヴィジョンを持つ必要がある。年間予算ごとにプロジェクトが右往左往してしまっては、コラボは実現しない。
4. トップからのコミットメント
スタートアップと協業したいのであれば、必ず経営トップが関わること。お互いの経営課題をじっくりと話し合う機会を定期的に設ける必要がある。担当者レベルだと目線が違いすぎて、話が合わない。やってる感を出すことが目的ではなく、あくまで結果を出すことをゴールにするには、トップからのコミットメントが不可欠となる。
5. ユーザー視点からのアプローチ
これも、大企業とスタートアップの視点の違い。多くの大企業はまだまだ自社都合で物事を進めている。それに対して、スタートアップは、どうしたらよりユーザーに喜ばれるかを日々追求している。それが、良いプロダクトが生み出される一番の理由にもなっている。今回のDeltaのCEOのEdが最も優れている点は、自信がユーザーの立場になって課題を考えているところだろう。
シリコンバレーでスタートアップとコラボしませんか?
世界のスタートアップとの中心地であるシリコンバレーでは、社会やユーザーの課題解決のために、日々新たなサービスが生まれている。その一方で、大企業はそのスピードやプロセス的問題で、後追いにならざるを得ない。
しかし、今回のDelta航空の事例のように、上手にスタートアップと連動することで、オープンイノベーションを達成することも可能になってきている。我々、btraxでは、日本の大企業に対して、スタートアップとの協業のコーディネーションも提供中。まずは、資料ダウンロードから。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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