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ブランド価値の効果測定方法 〜2つのデータ活用法〜
※この記事は2023年3月時点で最新の状態に更新されています。
ブランディング施策を行った際に、その結果はどのように計測すれば良いのだろうか?
これがマーケティングだと、訪問者数、ページビューやコンバージョンレート、リード獲得数などの具体的な数字に落とし込みやすいが、ブランディングになってくると、どうしても「ふんわり」した結果になりがちである。
実際のところ、ブランドの効果測定をしっかりと行なっている企業は全体の48%に留まっている*。
しかし、実はブランディングでもその効果を測る方法は存在する。
ここで紹介するのは、ブランドマネージメントにおける、ブランド価値の算出におけるデータの活用方法。専門的な内容はなるべく避け、よりわかりやすい形でまとめてみた。
ブランドの価値とは?
そもそもブランドにはどのような価値があるのだろうか?
消費者は自分たちが認知し、信頼している商品を購入する傾向にある。
ブランド力をアップさせることで、この行動傾向を利用して、長期的に収益性の高い売上を最大化することができる。
適切なブランド施策を行うことで、売り上げが25%向上したというデータもある。
ブランドの価値を高めることは、最終的にそのブランドを保有する企業が得られる付加価値を上げることに繋がり、それこそが、ブランディングを行う目的となる。
ブランド力が上がる主要なメリットは:
- 巨大な広告費用をかけなくても収益と利益の獲得ができる
- 既存顧客の離脱率を下げる
- 優秀なスタッフの獲得と維持に有利に働く
などが挙げられるだろう。
ブランド価値を測定するための2種類のデータセット
ブランディング施策を進めていく上で、データの測定がとても重要になってくる。そのデータの種類は大きく分けて下記の2つである。
1. 経済性 (Oデータ)
まずは「Oデータ」と呼ばれるもの。この“O”は、業務 (Operations) の意味で、販売データ、財務データ、人事データなどの業務に直接関連するデータなどが含まれる。
これらは数値化しやすく、時間が経過するに合わせて、何度も測定してデータセットとして獲得していく。
ブランド価値を測定するデータドリブンなアプローチでは、その結果をもとに、現在のパフォーマンスを証明したり、洞察したり、過去の傾向に基づいて予測したりすることにも利用される。
ブランドによる経済性を示すデータセット例:
- 販売データ
- 財務データ
- 人事データ
- 営業データ
- 顧客サポートデータ
このタイプのデータは、主に企業側に蓄積されるデータになるので、ユーザーの感情やフィーリングよりも簡単に測定することができる。
一方弱点は、過去の活動や起こったことを示すものでしかなく、未来に何が起こるのか、なぜそうなるのかを知ることは難しいことだろう。
そこで、2つ目のタイプのデータが必要になってくる。
2. 感情的 (Xデータ)
2つめのデータタイプは、消費者やユーザーの「心」に関係するデータで、「Xデータ」と呼ばれる。“X”は、体験 (Experience) の意味。このデータタイプでは特に、感情的な意思決定や、ブランドが人々の心の中にどのように存在するかといった定性的な理解のために利用される。
顧客が一つの商品を購入する際に、平均で5-7のタッチポイントで、ブランド体験を行なっている *。
ブランド価値の向上に投資しているブランドは、他のブランドに対して「精神的な優位性」を得ることができる。この優位性により、たとえプレミアム価格で販売されていても、そのブランドの製品を購入するというバイアスがかかる。(例: AppleのiPhoneは10万円でも高く感じない)
これは、消費者がブランドのメッセージングに自分の「自己イメージ」を重ね合わせることで生まれるもの。
製品を購入することで、自分が共感するブランドの価値を購入すると感じる。
このようにして、製品は消費者の将来の展望を表したり、インスピレーションを与えたり、自尊心を高めたりする力を持っている。
また、強力なブランドは、優秀な人材を惹きつけ、従業員のモチベーションを高めることが比較的容易であり、彼らが会社に長く留まる可能性も高くなる。
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OデータとXデータの取得&活用方法
ブランド価値測定に必要なデータセットの種類を理解した上で、実際のデータ獲得の方法と活用方法を紹介する。
Oデータ
まずはブランドが企業の経済性に与える指標になるOデータから。数ある業務に関するデータの中からどのようなデータを取得するのが良いのだろうか?
シンプルな答えとしては、経営陣が注力したいと考えている指標を元に設定するのが良い。
例えば、売り上げの向上を最優先している場合は、売り上げに関するデータ。人材獲得を優先したい場合は、人事に関するデータなどになってくる。
Oデータ取得に関しての注意点
名詞で定義する:
Oデータの測定値、指標、および目標をできるだけ明確にするために、「名詞」で表現する必要がある。
例えば、「ページビューが増えた」とか 「購買意欲が高まった」 といった表現ではなく、「増加数」、「平均値」、「割合」などの表記を利用数する。
できるだけシンプルに:
データの取得目的は、あくまでブランド価値を測るためのものであり、複雑なエクセル表を作成するためのものではない。
したがって、できるだけ少ない種類のデータセットを簡潔に表示できる内容にしておく必要がある。
Xデータ
次にXデータ。”what”を定義するOデータに対する”Why”を示す指標となる。
Oデータがより「定量的」なデータタイプであるのに対し、Xデータはより「感情=定性的データ」になる。
その取得方法は自ずとユーザーインタビュー、フォーカスグループ、アンケートなどを通じて行うことが多い。
その際には、単純な一問一答形式よりも、より深堀するような第二、第三の質問の準備や、アンケートに構造化されていない自由形式のフィードバックを入れる余地を残しておくと、より具体的なインサイトを獲得することが可能になってくる。
Xデータ取得の際のポイント
- ユーザーのブランドに対する期待値と結果のギャップを理解する
- ユーザーがそのブランドを選択する際に要した時間とエネルギーを理解する
- ブランドがユーザーの人生に与えるポジティブインパクトを理解する
OデータとXデータを掛け合わせる
Oデータ、Xデータそれぞれのデータセットを取得した後は、その二つを掛け合わせることで、「何が」「なぜ」そのような結果になったのかを理解することで、ブランド価値の変化を測ることができる。
例えば、直近12ヶ月の離職率が5%低下したというOデータがあり、従業人への意識調査で、会社の「社会的メッセージを通じたブランドへの共感度が高い」という結果が得られれば、ブランド評価の向上指数を測ることができる。
例: ブランド価値: ブランドの社会的メッセージによって離職率が5%低下した
ブランディングもデータ活用の時代
上記のOデータとXデータの両方の異なるデータタイプを利用して、ブランド価値を適切に査定する。それにより「何が」「なぜ」というブランド価値の全体像が見えてくる。
このように、これまでは、ぼんやりと感覚的な効果測定に留まっていたブランディング施策も、具体的なデータセットを活用することで、事業にとっての具体的な価値を測定することができるようになるだろう。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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