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クリエイティブな事がそんなにも凄いのか?
いままで誰も見た事のないようなものを創り出すのはワクワクするし、かっこ良い事である。イノベーションを作り出すにはクリエイティブである事が必要とされる。
もちろんクリエイティブである事はとても重要であるが、必ずしもそれが”無”から”有”を生み出すようなオリジナルである必要は無い。
もし、いまだ存在指定しない全く新しいアイディアで物づくりやビジネスを始めようと思っているのであれば、あまりおすすめしない。
特にビジネスモデルを考える際に、今まで世の中に無いアイディアを考えるのは恐らく間違った方法であろう。
むしろ、もし成功の可能性を高めたいと思うのであれば、既存の問題の解決かすでにある事柄の改善策を探した方が得策だと思う。
もちろん世の中に存在しないような複数の異なる商品や、サービスアイディアをクリエイティブな視点から考える事自体には全く問題は無い。そして、奇抜なアイディアを思いつくのも自由。
そのプロセスはとても楽しい。しかし、もしもそれが世の中の問題を解決したり、人々の生活を豊かに出来るものでなければ恐らくほぼ確実に自己満足プロジェクトで終わってしまうだろう。
世の中に受け入れられるイノベーションを作り出すには、クリエイティブ面とビジネス面のバランスがとれている必要がある。
この辺りは、デザイン思考のプロセスで利用されるエンパシーマップやリーンキャンバスを利用するとクリアになるだろう。
よいアーティストは模倣するが,素晴らしいアーティストはアイディアを取り込むのがうまい。
– Steve Jobs via Pablo Piccaso
僕たちのような人種、いわゆるデザイナーやクリエイターと呼ばれる人達の中にはオリジナリティがある者こそ偉く、既存のものを改善したり、模倣したりする人々を軽蔑するタイプの人もいる。
でも、その軽蔑している人々が創り出すものは、誰にも相手にされずに自己満足で終わってしまうケースが少なくは無い。
彼らはそれでもかたくなに ”オリジナル” である事にこだわる。
その一方で、どんなにクリエイティブであっても多くの人の注目を集めず、世の中に対してほとんど影響を与える事が出来ないプロダクトにどんな存在意義があるのであろうか。
たとえそれが崇高な哲学の元に創り出されたとしても、見られない、使われない、喜ばれないクリエイションに大きな存在価値を見いだす事は僕には出来ない。
もっと言うと、お金を生み出さないクリエイティビティは趣味の域を出る事が出来ない。もしお金儲けを否定するクリエイターがいるとすれば、彼は既にクリエイターではない。
デザイナーやクリエイターと呼ばれる職業は、人々から愛され、喜ばれ、お金を集める事が出来るものを創り出すのが仕事である。
それを理解せずにクリエイティブである事だけにフォーカスし、オリジナリティの低い作品を否定するような事は全くナンセンスな気がする。そしてその考えをビジネスに適応しようなんて考えるのはもってのほかである。特に外部資本を必要とするのであれば。
何かを作り出すときに、それが100%オリジナルである必要はない。むしろ今の時代、100%オリジナルである事はどう頑張ったとしてもあり得ない。
サンフランシスコ州立大学のデザインスクールに通っていた頃、先生が言っていた「自分がどんなに頑張ってオリジナルだと思ってデザインしたとしても、残念ながら、ほぼ確実に既に誰かによって作り出されている」という言葉は今になっても非常に説得力がある。
創造性とは、物事をつなぐことだ。もしあなたが創造的な人に、どうやって仕事をしているのですか?と訊ねてみても、クリエイティブな人は少し照れくさそうにするだけだろう。なぜなら彼らは実際のところ、創造的なことなんてしていないからだ。物事の見方が違うだけのこと。まあしかし、そんなことも後になって分かる話だが。- Steve Jobs
あのピカソですらアフリカンアートからの影響を多大に受け、一見ものすごくオリジナルに見える作風もその元ネタはアフリカの原始的アートにある。
完全オリジナルである事 “だけ” が素晴らしいのではなく、既存のスタイルを参考にしながらも、そこに自分らしさのエッセンスを入れる事により、オリジナルな作風が生み出される。
お金儲け”だけ”を目的にしているビジネスに存在価値は無いと思うが、クリエイティブであること”だけ”を目標にしているビジネスも同等に罪だと思う。
今までに全く存在しないプロダクトを想像する事は自由であるが、それを実際に創り出せるかどうかは全くの別次元である。
なぜなら、アイディア自体には価値は無く、それを実行に移し、世の中に受け入れられるプロダクトに変換した時のみに存在価値が見いだされるからである。
問題なのは、例え全く存在しない素晴らしくクリエイティブな商品アイディアを思いついたとしても、多くの場合その商品を喜んで使ってもらえるユーザーを無理矢理探さなければならなくなる事である。
ものすごくクリエイティブな商品は、ものすごくクリエイティブな考え方を理解出来る消費者にしか響かない可能性が高い。
したがって、残念ながら、誰も想像出来ないようなプロダクトを世の中に普及させることで世界を変えるようなイノベーションを通し、社会に対してのムーブメントを生み出す事はほぼ不可能だろう。
ゼロスタートよりも既存の問題解決にフォーカスした方が良い理由
クリエイティブなものはその特性上、存在価値や利用方法などの点で説明するのに非常に多くの時間がかかり、市場に受け入れられる前に滅びてしまうケースが後を絶たない。いわゆる、”早すぎた傑作” になりかねない。iPhoneは成功したが、ニュートンは上手くいかなかったのが良い例であろう。
そこにニーズがあれば、そのニーズに対応している事を説明出来ればユーザーに商品コンセプトを理解してもらいやすくなる。
説明する際には単純に「こんな問題ありますよね?それを解決するのがこれです!」で済んでしまう。加えて、プロダクトアイディアが世の中のニーズにマッチしているので、顧客もみつけやすい。
そして何よりも、作る方もどのようなプロダクトを作り出したら良いのかが明確に想像できるので、速いスピードで作り出す事が可能になる。目的が既存の問題解決であるために、それに関連してない内容は除外する事が出来るからだ。
しかしこれが完全にゼロスタートの超クリエイティブなプロダクトであれば、数多くのトライアル&エラーが必要になり、開発やデザインに非常に多くの時間とコストが費やされるわりには、それが成功するかどうかは未知数である。
イーロンマスクはTeslaとSpaceXの2社を経営しているが、Teslaは既存の問題解決を、SpaceXは火星旅行という、全く当たらしいコンセプトを打ち出している。
後者は彼だからこそ出来る規模の資金と時間を費やしているが、それでも本当に実現するのか、市場ニーズがあるのかは全くの未知数である。
従って、とても革新的であるが、彼以外の人が始めるには全く非現実的なビジネスモデルだと言える。
クリエイティブなビジネスを行いたいのであれば、完全オリジナルよりも既存の市場ニーズにフォーカスする事が得策であろう。
そしてそれが世の中に受け入れられ、大きなお金を儲け、社会を変えていけるような力を持った時にこそ、最高のアートが実現されるだろう。
既存の90%に対して10%のクリエイティビティを注入した時に大きなイノベーションは生み出される。
お金を稼ぐことは芸術。働くことも芸術。儲かるビジネスは最高のアートだよ
– Andy Warhol
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
photo by Tomás Fano
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