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【UXリサーチの価値】法人向けサービスでUXリサーチを成功させるコツ3選
筆者はBtraxでUXリサーチャーを担当しているのですが、近年日本でもUXデザインというワードは認知されるようになったものの、UXリサーチについてはまだ十分に理解が広まっていないように感じています。
特に法人向け(BtoB)のサービスやプロダクトにおけるUXリサーチは、その重要性にもかかわらずしばしば見過ごされがちです。
- UXリサーチって本当に必要なの?
- AIが発展した後もデザイナーやリサーチャーに依頼する価値はあるのか?
という疑問が沸々と湧いてきそうな今だからこそ、今回はUXリサーチとは何かという基本から始め特にリサーチが軽視されがちな法人向けサービスのUXリサーチに焦点を当て、その特徴や重要性についてご紹介していきたいと思います。
二本立ての記事の後編となる本記事では、法人向けサービスのためのUXリサーチのメリット、及び実践する上でのコツをご紹介していきます
前編の記事をまだ読んでいないという方は、ぜひそちらも合わせてチェックしてみてください。
法人向けサービスのためにUXリサーチを行うメリットとは?
前編の記事では、法人向けサービスにおけるUXリサーチはROIがわかりにくい。
また、ビジネスソリューションに自信がある企業であればあるほどUXリサーチを行わずともとりあえず前にはには進めるので、実行されずに前に進みがちであるという側面を取り上げました。
ではそんな法人向けサービスのためのUXリサーチを実施するメリットとは何か?
主要な3つのポイントをまとめましたので、一緒に見ていきましょう!
①法人向けのサービスこそ、”ユーザーへの共感”が競合に負けないサービスを生む
前述の通り、法人向けサービスの顧客は、消費者向けのサービスのように満足度や感情的な側面、個人の価値観を基に商品を選ぶわけではありません。
このため、個人としての体験や考えを掘り下げていく定性調査の必要性を疑問視する人がいることは当然かと思います。
しかし、ステークホルダーが複数存在し、購入時に綿密な検討が必要とされるような複雑性を抱えたサービスにこそ、定性調査は効果的です。
例えば、実際にサービスを使用するユーザーにとって重要なことが、意思決定を行う経営層には重要でないこともあります。
決裁権を持つマネジメント層に好まれるサービスを提供し、一時的には導入されたとしても、現場で実際にサービスを使うユーザーが不満を抱えていた場合、彼らが後に管理職に就いた際により現場に求められるソリューションへ乗り換えられてしまうようなケースは少なくありません。
法人向けのUXリサーチでは、多様なステークホルダーと意思決定プロセスを整理・可視化し、多角的にサービスの妥当性やニーズを探っていきます。
また、導入時だけでなくその後の継続利用に必要な要素を特定し、長期的な利用を見越したサービス改善のためのインサイトを抽出します。
サービスの導入から実際の日々の利用まで、様々な人が関わる法人向けサービスだからこそ関わる人々の生の声に耳を傾け、見過ごされがちな細かいニーズや不満から改善案を練ることは有効であると思います。
②市場投入時のリスクを抑え、マーケットフィットを最大化する
UXリサーチはサービス開発の様々な段階で実施が可能ですが、特に市場投入前の導入は効果的です。
開発初期段階でユーザーからの質の高いフィードバックを得ることは、市場投入後に起こりうる期待値やニーズのズレ、マーケットの特殊性を見過ごすリスクを低減します。
これは、新しいサービスだけでなく、既存のプロダクトを新たなマーケットに投入する場合にも有効です。
事前リサーチを行わずに過去の成功体験だけを頼りに参入すると、予期せぬ障害が発生し、競合に対して不利な状況になるリスクがあります。
ターゲットユーザーの深い理解と、マーケットおよび業界の特性を網羅的・構造的に把握することで、サービスのマーケットフィットを最大化できます。
③顧客満足度の向上は、インターナルのコスト削減にもつながる
ユーザーのニーズを正確に理解し、ビジネスゴールと照らし合わせて優先順位を明確化することは、開発プロセスの効率化・最適化に繋がります。
また、見落とされがちですがユーザーの声をプロダクトに反映させることは、クレームや問い合わせの削減に大きく貢献します。
特に、サービスがスケールしカスタマーサポート部署が設けられると、当然ですが顧客対応には人件費が発生します。
ソリューションがビジネスニーズに合っていても、ユーザーがサービスの使い方や細かな機能を理解できなければ、それは直接的に問い合わせの増加に繋がります。
そしてそれは内部コストとなります。
法人向けサービスは、内容や用途が複雑なので導入のための教育コストが大きく、ユーザーの期待値や緊急性が高いために利用開始後のクレームが発生しやすいです。
設計段階からこれらの要素を考慮することは、顧客満足度の向上とクレーム・問い合わせ対応の工数削減につながります。
難易度高めな法人向けサービスのUXリサーチを成功させるコツ3選
さて、ここまで法人向けサービスのUXリサーチが後回しにされがちな理由と、実施した場合のメリットについてご紹介してきました。
ここまで読んでいただいた方の中には、「やっぱりやったほうがいいのはわかったけれど、実施のハードルが高いのもやっぱり事実なんだな」とモヤっとしている方もいらっしゃるかもしれません。
一般消費者向けのサービスに比べ、複雑で難易度の高い法人向けサービスのためのリサーチ。成功させるためのコツはいくつかありますが、特に重要なことは以下の3点であると筆者は考えます。
①”巻き込み力”と情報・データ収集
法人向けのサービスは、サービスの構成要素が多く複雑で、ステークホルダーの数も多いです。
さらに、ソリューション自体がニッチな領域に特化している場合が多く、リサーチには幅広い知識と深い洞察の両方が必要です。
このような状況下で重要となるのは「人」です。
プロセスの仕組みや関連する専門知識などの情報を得るためには、インターネットや書籍よりも、可能な限りその業界に精通している人(各部署の担当者やベンダーを含む)に直接聞くことがより効果的です。
これは、ニッチな業界の情報は一般にインターネットや書籍で公開されていることが少ないためです。
例えば、ソリューションが化学分野の研究者向けのサービスであっても、その販売経路を理解するためには代理店の知識が必要になるなど、様々な角度からの情報収集が求められます。
ターゲットユーザーからのフィードバックや意見を聞くだけでなく、サービスに関わるできるだけ多くの「人」を巻き込み、直接情報を収集することが成功の鍵となります。
②”単純化しすぎない”情報整理
法人向けサービスのリサーチでは、その複雑性ゆえに、情報の整理が肝になります。
そこで注意が必要なことは主に2つ。
- たくさん集めた情報からインサイトを抽出する際に、情報を単純化しすぎないこと。
- 無闇に情報を組み合わせて”正解っぽく見える”結論をこじつけないこと。
ターゲットが誰であれ、現実の市場を相手に、生身の人間の声を集める上で避けられないこと、それは”矛盾”です。
”コストが一番大事だ”と言っている割に目の前に最安値のオプションを提示しても買ってもらえず、顧客は一見割高に見えるサービスを使い続けている。
これは一般消費者向けのサービスだけではなく、法人向けのサービスでも起こります。
また、法人向けのサービスでは、現場ではAが大事だと言っていて、マネジメント層はBが大事だと思っていて、法務部の人はCは外せないと言っている。
全員同じ会社にいて同じゴールを目指しているはずなのに、言っていることがまるで違うというような事態が起こります。
このような矛盾に対峙したときに重要なのは、矛盾を矛盾しているまま”まるっと”受け入れることです。
「Bと言っている人もいるけど実際にはCだよね」と勝手に結論づけずに、各ステークフォルダーがある程度納得して進めるための公約数はどこかにないのか、、?全てはトレードオフの関係にあるのか?
といった問いからサービスの改善点を探っていくところにUXリサーチの価値があると思います。
ボトルネックだと思っていた問題が実は突破口を見つけるための鍵を握っているなんてこともあります。
先入観を捨てて、できるだけ生のデータを集め、複雑なものを複雑なものとして受け入れる。そこからのインサイト抽出が、真の顧客理解とマーケットフィットの最大化に繋がります。
③デジタルツールの活用と再現性の高いシステム作り
法人向けサービスのユーザーリサーチが、一般消費者向けのサービスに比べて特に難しいポイントはリクルーティングです。
業界がニッチであればあるほど、ターゲットのイメージに近い人々にインタビューやサーベイへ参加してもらうハードルは上がります。
また前述の通り、集めるデータも多様で、データの下処理や分析にも時間がかかるため、できる限り全体のプロセスをシステム化・効率化することが重要です。
例えば、
- リクルーティング方法の持ち札を増やし、Aがダメな場合はBとすぐに動けるようノウハウを体系化する。(法人向けリクルーティングに特化したサービスも存在するので、自社のサービスと相性の良いサイトを見つけておくと安心です)
- リクルーティングの際の募集文章を目的別にテンプレート化し、ストックしておく。
- インタビューなどから得た音声やテキストのデータを、分析用に加工するためのデジタルツールの選定及びフローを確立しておく。
パンデミックによりオンラインでインタビューを実施する会社が増えた結果、リサーチを効率化するためのサイトやツールも増えてきています。
それらをうまく組み合わせ、またノウハウを体系的に蓄積することで、より時間をかけるべきタスクへ集中することができます。
本記事では、UXリサーチの役割と、法人向けのサービスにおけるUXリサーチの重要性及び成功のコツについてご紹介しました。
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■参加方法
- オンライン参加(こちらよりご登録いただけます。)
- 会場参加(限定席数) *サンフランシスコでの会場参加をご希望の方は下記までお申し込みまたはご連絡ください。(会場収容の関係上、ご希望に添えない場合がございます。予めご了承ください。)
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世界有数の市場規模を誇る日本でのビジネス展開に向けて、貴重な学びの機会となりましたら幸いです。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。