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海外の共創マーケティング成功事例3選
我々は、自社商品への愛が強すぎるが故に、時にユーザーが本当に求めているものを見失ってしまうことがある。技術力の結晶であるはずの商品なのに、なぜか売れない。特に、日本では成功しているのに、海外ではいまいちユーザーの反応が悪い、ということはないだろうか?
そんな時は、商品開発やマーケティングの基本に戻り、ターゲットとなるユーザーを理解し、彼らが抱えている問題に対して、どうソリューションを提供できるかを見直すことで、ブレイクスルーを見つけることができるかもしれない。ユーザーをビジネスの中心に据えるというのは、デザイン思考の基本的な考え方の一つだ。
ただし問題は、どうやってユーザーが欲しいものを理解するか、である。
商品開発にも不可欠な「共創」
自社だけではなく、ユーザーやステークホルダー、また他の企業と共に商品を開発したり、販売促進活動を行ったりする「共創マーケティング」というマーケティング手法が数年前に話題になった。この方法で成功した企業の事例は、枚挙に暇がない。
「何を今さら」と思う人もいるかもしれない。しかし、むしろユーザーを積極的にビジネスに巻き込んでいくことは、ユーザー起点の商品やサービスを提供する上で、欠かせないプロセスになりつつある、と言うことができそうだ。
1. LEGO IDEAS:熱狂的なファンのアイディアを商品化
ユーザーを商品開発に巻き込むことを「Co-creation(共創)」呼ぶ。今日、多くの企業がこの「共創」アプローチを取り入れ、成功を収めている。最も有名な事例は、レゴの『IDEAS』プロジェクトだ。
IDEASのオンラインプラットフォームでは、レゴユーザーが商品化して欲しいレゴセットのアイディアを投稿することができる。そして、10,000以上の投票が集まったアイディアは、商品化が検討される仕組みになっている。
画像は、9,361の投票が集まり、商品化を目前に控えたアイディア。(レゴIDEASのウェブサイトより)
アイディアが商品化された際には、売上の1%のロイヤリティーが発案者に与えられる。加えて、発案者の名前が組み立てマニュアルにクレジットとして記載される。
自分が考えた商品が店頭に並び、さらにマニュアルに名前が載ることは、ファンにとっては非常に名誉なことであり、最高のブランド体験である。また、アイディアの発案者でなくても、優れたアイディアに対して投票をすることで商品開発に携わることができるという点も、コミュニティー構築に一役買っている。
IDEASプロジェクトを通して、レゴはユーザーのクリエイティブなアイディアを商品開発に活かすだけでなく、世界中のユーザーと繋がり、ブランドロイヤリティーを高めることに成功している。
2. Targetのアプリ:デザイナーとユーザーを直接繋ぐ
大手ディスカウントチェーンのTarget(ターゲット)は、社内デザイナーとロイヤルカスタマーを繋ぐ秘密のアプリ『Studio Connect』を運用している。
あえて「秘密の」と書いたのは、このアプリは完全招待制、事前アンケートで選ばれた約600名のロイヤルなTargetファンしか使うことができないからだ。600名のユーザーは、例えば家族の有無などの条件によって、細かくグループ化されている。
Targetの全デザイナーがこのアプリのアカウントを持っており、彼らは商品開発のあらゆる過程において、ターゲットとなるユーザーグループに直接フィードバックを求めることができる。
従来のアンケート調査やフォーカスグループインタビューでは、ユーザーのフィードバックを得るには早くても数週間を要し、情報が揃った時には、既にそれらの情報が古くなっていることがある。また商品開発の段階が進み、既にそれらの情報が必要でなくなる、もしくは修正不可能な段階まで商品開発が進んでしまっているという問題もあった。
このアプリでは、ソーシャルメディア感覚で即座に商品のターゲットとなるユーザーからフィードバックを貰うことができるため、デザイナーはユーザーが「今」感じていることを、非常に早いスピードで商品開発に反映させることができるようになった。
ユーザーに対しては、Targetで使用できるポイントが付与されるという金銭的な報酬もあるようだが、発売前の商品を試すことができたり、商品開発に加わることができたりするという点に、多くのユーザーがモチベーションを見出しているようだ。
また、オンラインではどうやったらこの秘密のアプリに招待されるかの議論がか交わされており、その特別感が選ばれたユーザーのブランドに対するロイヤリティーを高めている。
3. Choosy:ソーシャルメディアを使って爆速で商品開発
レゴ、Targetの事例から分かるように、ユーザーを商品開発に巻き込むには、ユーザーと直接コミュニケーションを取ることができるプラットフォームが必要だ。プラットフォーム構築と聞くと、非常にコストが掛かりそうであるが、実際はそうとも限らない。
2018年夏にローンチしたばかりのD2CファッションスタートアップのChoosy(チュージー)は、ソーシャルメディアを活用して、ファストファッションよりもさらに早く、ユーザーが今欲しい商品を商品化できることが売りだ。
Choosyウェブサイトより
Choosyは、AIを使ってソーシャルメディアで話題になっているセレブリティー着用のスタイルを見つけ出し、それらのスタイルから「インスパイア」された商品をオンデマンド、かつ売り切れ御免方式で生産・販売をしている。(他のブランドのデザインから「インスパイア」された商品を作ることの是非については、多数の議論が成されているが今回は割愛する。)
Instagramで見つけた憧れのスタイル対して、#GetChoosy とコメントすることで、ユーザーはChoosyに直接リクエストをすることができる。
また、facebookコミュニティー「Choosy Style Scouts」では、自分が欲しいと思うセレブ着用のスタイル画像を投稿することによっても、商品化のリクエストをすることができる。投稿されたスタイルの中でも、特に人気があるスタイルは商品化され、提案者にはその商品がプレゼントされるという。2018年11月現在300名以上の熱心なファンによって、日々新しいリクエストが投稿されている。
Choosy Style Scount facebookページ。モデルのケンダル・ジェンナーのInstagramストーリーのスクリーンショットが投稿されている。
商品開発チームはターゲットとなるユーザーが日常的に使用しているソーシャルメディアを使うことによって、リアルタイムでユーザーが欲しいもの、流行っているものを知ることができる。ただし、このモデルを採用するには、ユーザーのリクエストを高速で商品化できるインフラが必要だ。
Choosyの場合は、ファウンダーが中国出身で、実家が中国最大のテキスタイル生産工場を保有しているということで、中国に強力な生産コネクションがあるようだ。その結果、ファストファッションよりさらに早く、今流行っているものを商品化することに成功している。
まとめ
以上、ユーザーを商品開発に巻き込んでいる3社の事例を紹介した。ユーザーと「共創」することで、企業はユーザーのニーズにあった商品を作ることができるだけでなく、ブランドへのロイヤリティーを高めることができる、ということがこれらの事例から分かる。
ユーザーからのフィードバックを取り込むには、対話ができるプラットフォームが必要であるが、必ずしもコストをかけた大掛かりなものである必要はないことは、Choosyの例から明らかになった。重要なのは、ファンコミュニティーを構築し、エンゲージメントの向上に努めることだである。また、ユーザーのフィードバックを高速で商品化もしくは、プロトタイプ作成ができる環境も必要だ。
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