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ユーザー、消費者の「欲望」を創造するブランディング3つのポイント
「ブランディング」と聞いて、どんなイメージを浮かべるだろうか?同じ商品でも、ブランディングすることで「ブランド」という装飾がつき差別化されるもの、商品に付加価値を与えるもの、と考える方は多いのではないだろうか。
今回の記事は、原点に立ち返り、改めて「ブランディング」という言葉の意味を再考察する。この記事を読む皆さんがブランディングを捉え直すきっかけとなれば幸いだ。
その原点とは、「ブランディングとは消費者の欲望を創造することである」という概念だ。なぜなら、人間が何かしらの行動を起こす時、それは「欲望」が発生した時だからだ。
この記事は、「ブランディング」という言葉に対し、「定義が漠然としているがゆえに、いまいちピンとこない」、「自社のサービスのブランディングを強化していきたいが、そもそもどのようにブランディングすれば良いのかを具体的にイメージできていない」、そんな方に読んでいただきたい。
欲望が人を動かす
人間の欲望は様々だ。例えば、喜びを感じたい、尊重されたい、共感したい、満足感を得たい…といったように。
それらの欲望をよりわかりやすく噛み砕くと、「自分の生活をより良くしたい」、「自分らしさを表現できている感覚が欲しい」などが挙げられる。
ではそんなさまざまな欲望とブランディングはどう関係するのか。
今回は、主にtoC向けのサービスやプロダクトにおける、ユーザーや消費者の「欲望」を掻き立てるブランディングの3つのポイントをご紹介する。
ユーザー、消費者の欲望を掻き立てる「ブランディング」の3つのポイント
- 本質的であること
- 魅力的であること
- 野心的であること
1. 本質的であること
あなたのブランドは、社会に対してどんな価値を提供しているブランドですか?
ブランドが「本質的」であるとはどういうことか。それは、ブランドがパーパス(社会的な存在意義)を持っているかどうか?という問いに言い換えもできる。
ブランドは、何かしらの課題感から生まれていることが必要だ。課題の種類は、社会課題でも良いし、ユーザーが感じている悩みでも良い。課題の規模の大小というよりは、課題に対しての解決策としてそのブランドが存在していることが重要だ。
例えば、低身長の女性に向けた衣服を展開するファッションブランドのCOHINAは、ユーザーの「サイズの合う服がなく、おしゃれを楽しみたいけれど楽しめない」という悩みを解消している。
同様の悩みを抱えている女性にとって、COHINAというブランドがこの世の中に存在する一つの理由になる。
なぜ「本質的」なブランドであることが大切なのか。それは、モノが溢れている現代において、他のモノと差別化する要因となるのが「選択肢が沢山ある中でも、それを自分のライフスタイルに取り入れたいと思わせる理由」だからだ。
そのためには、単に世界観が魅力的、というだけではなく、ブランドに根付く「課題解決」の精神が存在する必要がある。
ユーザーも、「自分が抱えている課題や悩みを解決してくれる」という、ある種の信頼感のようなものも、「課題解決」の精神が根づく本質的なブランドからしか感じられない。
自分達のブランドの「本質」が何かを探るためには、他ブランドとの比較をするのではなく、自社のブランドをより深掘りして、社会に提供している価値を理解することが必要だ。
自分たちはどんなユーザーのどんな課題を解決するのか、社会のどんな課題に貢献するのか、という自問自答をしなければならない。
あくまでもブランドの本質を見抜く際には、競合との比較で見えてくるものではないことを押さえておいて欲しい。
2. 魅力的であること
あなたのブランドは、どうやってユーザーをワクワク、ドキドキさせる?
魅力的なブランドを作るためには、1つ目のポイントで述べたように自分たちのブランドの「本質」を深掘りして理解した上で、ユーザーの感情の高揚を引き起こさせる必要がある。
ブランドの魅力となる要素は2つの価値に分類できる。
機能的価値
機能的価値とは、製品を使う目的を果たすのに、機能的に不自由がなく、便利だと感じられることによって感じられる価値。
情緒的価値
ブランドの製品を使っていることで自分の生活を良くしてくれているという実感があること、そして気分が上がることによって感じられる価値。
この2つの価値をいかにして感じさせるかを考えることが、魅力的なブランドを作る上での重要な要素になってくる。
特にこれらの価値のうち、情緒的価値は、自分達のブランドをブランドたらしめる要素になるだろう。
機能的価値はある程度、技術を駆使することで解決できる故、技術的価値のみでは差別化しづらい。
一方、情緒的価値は自分達の本質が見えていないと言語化が難しいが、ブランドのオリジナルの色が出やすい。
ブランドとしてどちらの価値も追い求めることは重要である一方で、そのブランドにしか出せない世界観や、ユーザーに与える印象で差別化をすることに最終的には重きを置くべきではないだろうか。
3. 野心的であること
パーパス達成のために、どのようにユーザーを巻き込んでいるか?
野心的なブランドになるか否かは、ユーザーを巻き込めるかどうかにかかっている。
そのブランドのユーザーが、ブランドの価値を社会に発信しようと思えるエヴァンジェリスト(伝道者)的な役割を果たして、ブランドとともに、ブランドが提起した課題を解決しようと思うかどうかが鍵になる。
野心的なブランドになるには、深掘りの動きではなく、ユーザーを巻き込む動きが必要になってくるため、本質的であり魅力的なブランドを創造することとは違った難しさがある。
しかし、難易度は高くとも、ブランドに共感する人々の輪を広げるためにも、ぜひユーザーを巻き込んで野心的なブランドになることを目指していただきたい。
まずは「本質的」なブランドに
以上で3つのポイントを解説した。
なおこの3つのポイントは、説明した順番で、本質的なブランドを目指すことから始め、次のステップとして魅力的なブランド、最後に野心的なブランドを目指すというステップを踏んでいただきたい。
というのも、なんらかの課題に根付く本質的なブランドでない限り、サービスやプロダクトが魅力的であっても、それは表面的な魅力にしかなり得ず、長期的にはブランドに意義を見出してもらえなくなるからだ。
また、本質的かつ魅力的でなければ、そもそもユーザーを巻き込むことが非常に難しいからだ。
従って、本質的、魅力的、野心的、というように、自社からユーザー、そしてコミュニティと、次第に外に目線を向けていくステップでブランドを捉えていただきたい。
そして、野心的なブランドを構築するためには、「コミュニティをいかに作れるか」が大事な要素になってくる。
すなわち、支持するブランドのスタンスが、自分の嗜好性やライフスタイルを示す指標にそのまま転換されるのだ。
これを実現するためには、ブランドの本質を見極め、社会においてブランドがどの立ち位置にいるのかを決めておくべきである。
結果的に、「欲望」を掻き立てる3つの要素を満たすブランドを作りたければ、まずは本質的なブランドでないといけない。ブランドがどう行動し、それに対してユーザーがどう反応するのかを、上記の3つの視点で考えてブランドの要素に盛り込むことを意識していただきたい。
3つの要素を意識しているブランドの事例
最後に、上記の要素を満たしているブランドの事例を紹介する。今まではかなり抽象的な議論に終始してしまっていたので、具体的なブランドから、上記の3つのポイントをイメージをしていただけたら幸いだ。
本質的で、魅力的で、野心的なブランド
1. Patagonia
上記の3つの要素を満たしているブランドとして、多くの方がご存知であろうPatagoniaを例に挙げて説明する。
Patagoniaは、1973年にアメリカ・カリフォルニア州で誕生した、アウトドアのウェアや用品を取り扱うブランドだ。「故郷である地球を救うためにビジネスを営む」という明確なミッションを持っている。
アウトドアブランドならではの厳しい環境変化にも耐え、心地よい着心地を持続させる機能性はもちろんのこと、衣服にはフェアトレードの縫製を採用。着ていることで自分が解決したい社会課題に対して解決の一助になっているという情緒的価値も生み出す。
また、Patagoniaは自分達のミッションに紐づいた活動を「アクティビズム」と称して、ユーザーを巻き込んで行なっている。
例えば、気候変動を引き起こす要因を知ることができる、クライメート・アクティビズム・スクールを開講したり、スノーボーダー、スキーヤーを巻き込んで脱炭素社会を意識した選択と行動を啓発する団体(Protect Our Winters)と提携したりしている。
さらに、自然環境の保護/回復のために売上の1%を寄付する、1% for the Planetの活動にも参加している。
まさに、ブランドの本質を理解し、共感するユーザーを巻き込んで活動する、また、参加すべき活動にブランドを上げて取り組んでいる、野心的なブランドであると言えるだろう。
2. Pangaia
Pangaiaとは、7つの社会課題解決 / 社会活動に取り組むアパレルブランドだ。
- Biodiversity – 地球の生物多様性の保護
- Innovative Materials – 科学、目的、デザインの3つを重要視した自然由来の素材選
- Ocean Health – 海洋汚染
- Climate Action – 水生生物の繁栄、海洋汚染の予防
- Circularity – 循環型モデルを採用し、資源の消費を最小限に抑え、廃棄物をなくし、良い製品を長く使うよう心がける
- Elevating Human Potential – 多様性の尊重
- Philanthropy – 慈善活動
Pangaiaは「社会へのインパクトを可視化する」、「持続可能なサプライチェーンの構築」、「地球の全ての資源にとってネットポジティブ(全体でプラスとなること)を実現する」という、3つのブランドビジョンが確立されている。
このブランドを身につけることで、ユーザーはPangaiaのブランドビジョンに共感し、サステナビリティへの関心が高いことを示すことができる。
衣服の素材には自然由来の素材や、リサイクル素材を用いており、サステナビリティ・地球環境保護への取り組みへの協力を感じられる購買体験を実現している。
また、AIR INK®(大気汚染から作られた水性黒インク)を用いて服のプリントを施しており、細部にまでブランドミッションに則るよう、こだわって商品が作られていることが理解できる。
細部までこだわりが詰まっているからこそ、着る人に対して機能面だけでなく、情緒的な価値を感じてもらいやすい。
また、#PANGAIAChangemakersというソーシャルPFも登場し、ブランドに共感したユーザーを巻き込んで活動する、野心的なブランドになりつつあると言えるのではないか。
3. KAPOK KNOT
KAPOK KNOTとは、カポックという東南アジアの木の実から取れるコットンを用いて、ダウンジャケットと同レベルの防寒性を、植物から採取される繊維を利用することで実現しているD2Cのアパレルブランド。「消費者」「生産者」「環境」への三方良しのものづくりを実現している。
KAPOK KNOTはブランドストーリーが明確であり、商品の製造プロセスが透明であることが特徴だ。「Farm to Fashion」というスローガンのもと、原材料の選定から顧客の手元に届くまでの各過程におけるステップが明確である。
カポックの素材は機能的にも大変優れている。従来のコットンの1/8の軽さであるにもかかわらず、繊維の空洞により、吸湿発熱に優れている。ゆえに、サステナブルな素材でありながら、軽くて快適に過ごせるのだ。
サステナブルな素材の物をスマートに身につけられることで、自分が支援したい活動に参加しつつ、洗練された気持ちになれるという情緒的価値を生み出している。
まとめ
以上で、ユーザー・消費者の欲望を掻き立てるブランディングの3つのポイントと、それらの要素を満たしているブランドの事例を紹介した。
ぜひ今後ブランドの立ち上げを予定されていたり、自社のサービスのリブランディングを検討されている方は、まずは自分のブランドが社会に対してどんな価値を提供しているのか?という問いから考え始めてみていただきたい。
本質を考え抜くことこそ、あなたのブランドが社会で存在意義を持ち、人々の共感を得て、永く愛されるブランドとなる一歩となるだろう。
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