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企業メッセージを効果的に伝える 海外のブランドポッドキャスト事例5選
筆者はポッドキャストを聴くことが好きで、3年ほど前からよく聴くようになったが、最近では企業の配信が増えていると感じる。
ブランディングの一環として企業が配信する「ブランドポッドキャスト」とは、直接的に会社や商品のプロモーションは実施しないが、ブランドメッセージを伝えつつ、オーディエンスが知りたいと思うような有益なコンテンツを提供しているポッドキャストのことを指す。
日本はブランドポッドキャストが徐々に増えてきている段階である一方で、アメリカでは制作を専門に請け負うポッドキャスト制作会社が増加している。
ポッドキャストプラットフォームでのコンテンツ配信に加え、Youtubeにもポッドキャスト収録風景をそのまま配信する形式がスタンダードになりつつある。
拡大するポッドキャスト市場
なぜ今企業がブランディングとしてポッドキャストに力を入れているのか。
その背景には、世界的なポッドキャスト市場の拡大がある。世界のポッドキャストのリスナー数は年々増加傾向にあり、2025年には8億人を突破すると推測されている。(参考)
それに伴い、企業が配信するブランドポッドキャストの数も年々増えている。
また、Spotifyによるポッドキャスト分析企業であるChartableとPodsightsの買収や、最近ではAmazon musicでの番組オリジナルコンテンツ配信などからも、コンテンツ配信企業各社のポッドキャストへの注力が見て取れる。
ブランディングに有効なポッドキャスト
冒頭で述べたように、市場の拡大以外にも、ブランディング施策として有効であることを示すデータも出ている。
ポッドキャストの親密な会話形式の環境が、ブランド認知度やブランド指向、好感度、購入意思をも増加させているのだ。
リスナーと密なコネクションが築けることで、ブランドイメージ強化につながっている。(参考)
むしろポジティブな効果を発揮する「ながら聴き」
もしかしたら、動画などと異なり注意を惹きつけない音声コンテンツは、印象に残らずちゃんとコンテンツを届けられていないのではないか、と思う方もいるかもしれない。
しかし面白いことに、ながら聴きがむしろブランドイメージを印象付けるとの調査結果がある。
ポッドキャストリスナーの94%が他のタスクをしながら聴いているにも関わらず、むしろエンゲージメントや感情移入、ポッドキャストに対する長期記憶が上がっているというのだ。(参考)
このように、侮れない効果を持つポッドキャストをブランディング施策の1つとして活用する企業が増えてきているのが現状なのだ。
今回は海外のブランドポッドキャストの事例について紹介する。
中でもポッドキャストやコンテンツ配信を本業とする企業ではないものの、アクティブにポッドキャストを配信している企業やブランドの事例に絞ってご紹介する。
海外のブランドポッドキャスト事例5選
1: Trader Joe’s: Inside Trader Joe’s
全米に530店舗以上を構えるスーパーマーケットチェーンによるポッドキャスト。季節ごとにおすすめ商品の紹介やTrader Joe’sで働く人々の話が楽しめる。当初シーズン5までの予定だったが、あまりの人気に現在シーズン11まで続いている。(参考)
ショッピングリストと称した是非とも食べてみたくなるおすすめ商品の紹介など、とても実用的で生活に根ざしたコンテンツであることが人気の所以であろう。
筆者のおすすめ
Trader Joe’s プロダクトのパッケージやラベルデザインを行うチームへのインタビュー
Episode47: Trader Joe’s Design Delicious
よくあるプライベートブランド商品は、1つの共通したデザインで展開されていることが多いが、Trader Joe’s プロダクトは商品ごとに異なるパッケージデザインがなされている。
それだけパッケージに対してこだわりのあるTrader Joe’sでは、普段どのようにデザイナーたちがデザインのアイデアを出しているかなどが語られており、パッケージデザインを考える上でのアイデアの見つけ方が参考になる。
2: Shopify: Shopify Masters
EコマースプラットフォームであるShopifyによるポッドキャスト。
起業家や自身でEコマースビジネスを始めたクリエーターらのリアルなビジネスの話、ブランドを作り上げていく過程をインタビューを通して知ることができる。
これからEコマースビジネスを始めようとしている人への参考情報とともに、誰でも簡単にEコマースビジネスのオーナーになることをサポートするプラットフォームとしての、Shopifyのブランドイメージを発信している。
筆者のおすすめ
100% プラントベースのインスタントラーメンスタートアップ、immiへのインタビュー
How This Plant Based Ramen Brand Built A Community of Thousands Prior to Launching
immiは、共にアジア系のバックグラウンドを持ち、モバイルゲームのプロダクトマネージャーだった2人の創業者が、様々な業界のテックカンパニーを経験したのちに立ち上げたインスタントラーメンのブランド。
ラーメンに対しても、それまでのプロダクト開発の経験が生かされたプロセスやスピード感で事業を進めている様子が窺えて興味深い。
3: Ben & Jerry’s: Into the Mix
アイスクリームブランドであるBen&Jerry’sによるポッドキャスト。
社会問題に対しメッセージを積極的に発信していることで知られるBen&Jerry’s。
ポッドキャストもブランドが大切にしている価値観を表現するような、アーティストやアクティビストらのインタビューで構成されている。
あえてプロダクトではなく、ブランドや企業としての取り組みにフォーカスしている、というのも一つの戦略なのかもしれない。
筆者のおすすめ
環境問題に積極的に働きかけているパンクアイコン・Patti Smith氏らへのインタビュー
Episode7: Patti Smith and Bill McKibben
1970年代からニューヨークを中心に「クイーン・オブ・パンク」としてカウンターカルチャーを長年音楽で牽引してきたPatti Smithの団結を呼びかける言葉には力を感じる。
彼女以外にも様々な人へのインタビューを通し、企業が社会的使命を明確に打ち出すことで、そのメッセージに共感する人々がBen&Jerry’sのファンになり、ブランドイメージをより強化している。
4: 3M: Inside Angle
3M Health Information Systems による番組。
ヘルスケアシステム全体に切り込んだトピックにおける、専門家らの様々なチャレンジを聴くことができる。
ヘルスケア領域のUXデザインやオンライン診療についてなど、ヘルスケアに関わる人やサービス設計者が知りたいと思う第一線の情報を得られる場となっていると考えられる。
他にも”What’s Next”や”Science of Safety”などの番組を配信中だ。
筆者のおすすめ
ホストの1人であるDr.Travis Bias氏による、自身の父でありUXデザインの専門家であるDr. Randolph Bias氏へのインタビュー
Transforming health care with UX design
患者にとって、病院内の体験は大抵心地よいものではない。
そうした上で医療現場のUXを考えていくには、共感や観察を通してユーザーのプロセスに関するデータを集め、医師や看護師らを巻き込み、チームで病院の体験をデザインしていくことが重要だと語られている。
医療現場という一般の企業やユーザーとは多少異なるシーンにおけるUXについてのインサイトが興味深い。
5: Escape Fitness: Escape Your Limits
フィットネスジムデザインやトレーニング器具、トレーニングプログラムなどを扱うEscape Fitnessによるポッドキャスト。
様々なフィットネス業界のインフルエンサーへのインタビューを通して、欧米のフィットネス業界の動向やフィットネス・ヘルスケアに対する起業家らの考えを知ることができる。
フィットネス関連の事業を考えている人に対しブランドの認知度を上げ、フィットネスやヘルスケア業界におけるビジネスの参考事例を提供していると言えるだろう。
筆者のおすすめ
「ヨガエンターテインメント」として新たなヨガコンセプトを提供しているDrunk YogaのEli Walker氏へのインタビュー
Ep 246 – Drunk Yoga | Human Connections Through Unconventional Fitness | Eli Walker
バーでのジョークから始まったというDrunk Yogaについて取り上げている回。
演劇のバックグラウンドを持つヨガインストラクターがファシリテートする新しいヨガ(お酒もあり!)で、従来の難しそうなヨガのイメージを覆す、よりヨガをエンターテインメントで身近なものにするためのストーリーテリングや体験設計の話が面白い。
ボーナス: サンフランシスコ・デザイントーク
サンフランシスコのデザイン会社のCEOブランドンが日本で働くデザイナー、デザインに興味がある方、デザインをビジネスに取り入れたい方に向けて、デザインに対するインサイトや今後のデザイナーの在り方、プロダクトや企業のデザイン戦略の歴史などについて話します。
まとめ
記事では、ここまでブランディング活動の一環としてポッドキャストがどのように使われているかを見てきた。
筆者も1リスナーとして、これからも様々な企業がポッドキャスト配信を始めていくことに期待したい。
今回取り上げたブランドポッドキャスト番組は、配信を通して直接的にリスナーに宣伝するのではなく、発信するトピックやスピーカーによって、うまくブランドの世界観や伝えたいメッセージをリスナーに届けているものが多いと感じた。
ブランディングを効果的に行う参考になれば幸いだ。
btraxでは上記のようなブランドデザインを始め、サービスデザイン、コミュニケーションデザインと包括的にサポートさせて頂いている。
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Written by: Akari Utsumi
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