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ブランドの個性を定める – ブランドパーソナリティー【ブランディング入門#5】
世間にブランドの重要性が認知されていくのと同時に仕事をオファーするサービスも増え、デザイナーに仕事を依頼することが手軽になった。
その結果、世の中にはクオリティの高いクリエイティブを持つブランドが多く存在するようになった。
そういった状況では、表面的なクオリティの高さだけでは他社との差別化や商品を顧客に選んでもらう理由にはならなくなってしまった。そこで、ブランドは見た目ではなく顧客が感じるイメージをうまく形成し顧客に伝える必要性が生まれた。
良いイメージが形成されてはじめてブランドのロゴやテーマカラーが意味を成し、信用に繋がる。今回は、そんな企業の内面を表すブランドパーソナリティの決め方について紹介する。
ブランドパーソナリティとは
そもそもブランドパーソナリティとは、企業の属性や性格を示すブランド構築には欠かせない要素である。ブランドのロゴやヴィジュアルといった視覚的要素のクリエイティブ資産とは異なり、顧客の企業に対する感じ方や捉え方という抽象的なものを指す。
簡単に言うと、ブランドを擬人化してみたときに顧客が感じる人柄ならぬ「企業柄」「ブランド柄」である。また、顧客は共感したパーソナリティのブランドの製品を持つことでそのイメージと自らを繋げている。
例えば、そのブランドの製品を持っている人を想像してみて欲しい。Appleの製品を持っている人とMicrosoftの製品を持っている人とではだいぶ印象が異なるであろう。
Apple製品を使っているユーザーはデザインに対し敏感で活発そうに見える。対してMicrosoftの製品を使っている人は専門知識に詳しいプロフェッショナルな印象を受ける、
といったように同じ業界のブランドであっても異なった印象を受ける。そういう印象の違いに顧客は反応、共感し、購入するかどうかを決めているのである。
ブランドパーソナリティの価値
上記のようにブランドパーソナリティはブランドごとの差別化に大きく貢献する。
それ以外にもブランドパーソナリティーの価値として、共感によるロイヤリティの向上が挙げられる。いわゆる顧客が企業のファンになるのである。
実際にパーソナリティを確立したブランドは、ライフタイムバリュー(顧客がそのブランドに生涯どのくらい利益をもたらすかという数値) が以前と比べ3倍以上にも跳ね上がったという記録がある。
また、高いロイヤリティを持つ顧客を生み出すことができれば口コミによる宣伝効果も期待できる。
特にパーソナリティに共感した顧客の口コミによる新規顧客はブランド全体に良い感情を持った状態で関わってくれるため、ブランドに熱中してくれるまでが速い。
ブランドパーソナリティを決める3つの方法
ブランドパーソナリティはなるべくシンプルで的確にブランドを表せる形容詞であり、尚且つ共通の認識として使える言葉が望ましい。
複雑な言葉や難解な表現でパーソナリティを決めてしまうと本人以外は理解できなかったり、人により様々な解釈をしてしまう可能性がある。そういった状況で生まれたブランドには統一感がなく、顧客への定着が難しい。
そこでブランドパーソナリティを言葉として伝わりやすい状態にするためのフレームワークを3つ紹介する。
1. ディメンションフレームワーク
Jennifer Aakerによって提唱された方法である。ブランドパーソナリティを大きく5つに分け、今の自分のブランドがどの属性に該当するのか考える方法である。
そのブランドに対して印象を抱く言葉を3~5つほど連想する。それらが5つのパーソナリティのどれに当てはまるかを考えて導き出す。ここで重要なのは、客観的視点や今後のブランドのなりたい姿ではなく現状の顧客が持つイメージを的確に見つけることだ。
- Sincerity(誠実):親切、気が利く、素直、
- Excitement(刺激):積極的、自由、元気で活発、ユーモアがある、現代的な、若々しい
- Competence(能力):能力がある、責任感のある、しっかりしている、自信に満ちた
- Sophistication(洗練):上品で、グラマラスな、お洒落、高級、知的
- Ruggedness(頑丈な):男らしく、タフ、アウトドア、無骨
例えば、とあるブランドで連想された言葉が「大胆で自由、開拓精神を感じる」などの場合、Exicitement (刺激) というパーソナリティがふさわしいということが考えられる。
冒頭でも述べたAppleはクリエイティブ、スタートアップ感、若々しい印象を感じさせることからSophistication (洗練) に分類することができる。
スポーツウェアメーカーのNikeの場合は若々しくアクティブで新製品作りに積極的な印象があるため、Excitement (刺激) となる。
この他にも自動車メーカーのTeslaには未来や勇敢さの他にワクワクやカリスマ性を感じる。そのためTeslaにはExcitementとSophisticationの2つが考えられる。
ここで紹介した属性はブランド1つにつき1〜2つ程度が好ましい。2つ以上では顧客がブランドに対し持つイメージが散漫になりやすく誰の心にも刺さらなくなってしまう。
2. アーキタイプフレームワーク
Carl Gustav Jungの理論に基づいたフレームワークである。特徴はブランドが望む顧客像からブランドのパーソナリティを決められる点とディメンションフレームワークと比べて細かく属性が分かれている点にある。
1番外側はパーソナリティを表しており、1つ内側はそのパーソナリティの顧客 (人物) が求めている価値観である。そして1番中心はそういった価値観を持った人が最終的に目指していることを示す。
自動車メーカーのメルセデスベンツを例に考えてみる。メルセデスをディーラーに買いに来る人は社長や役員といった権力を持つ人という印象がないだろうか。
そういった人たちは会社を大きくするために、会社の仕組みを作り社員に指示すること (人の上に立つこと) に価値を感じている。そんないわゆるエリート志向なパーソナリティを持つ人に向けてメルセデスは車を作っている。
こういったように、求める顧客の考え方からブランドパーソナリティを導き出すことで細かく、具体性の高いパーソナリティを設定できる。また、今後の顧客像から今の顧客像を分析することにも使うことができる。
3. ディメンションとアーキタイプの組み合わせ
これまでの2つを組み合わせることで、今のブランドの状態と今後獲得したい顧客のパーソナリティとの整合性を考えることができる。また、ひとつのパーソナリティの枠に様々な言葉が並んでいるためパーソナリティの想像もつきやすい。
これらの3つのフレームワークの項目の言葉はサイトや人により異なる。よって臨機応変にグラフの中の言葉を新たに考え、そこから連想できる言葉を並べて新たな項目を作ることも有効である。
このようにカスタマイズしていくことでよりブランドパーソナリティを正確に決めることができる。
出典:Brand Personality Definition, Frameworks & Examples to Inspire You
ここで大切なのは客観視することである。アーキタイプフレームの場合でも今のブランドと方向性が大きく異なる欲求をもつ顧客をターゲットにしてしまうとブランドは崩壊し始める。
そうならないように現在の分析と、変化するのであればそのパーソナリティが変わる理由、ストーリー含め設計しなくてはならない。
そしてこのような大掛かりなブランドのリデザインにはこれまでロイヤリティの高かった顧客が離れてしまうかもしれないというデメリットを考慮する必要がある。
パーソナリティ (個性) を受け入れる
ブランドパーソナリティを定めることができれば、あとはそれに沿って一貫したクリエイティブを生み出していくことができる。そうすれば顧客に対しより強いブランドの個性や印象を提供することができ、覚えてもらいやすくなる。
今では個人でもブランドを持てる時代になったからこそ、規模の大きいブランドは顧客が感じる印象を細部まで統一させることに気を配らなくてはならない。
そうでなけば、お店ごとに評判にばらつきが出て顧客は不信感を募らせ、ブランドの信頼を失う。
そうならないよう、今ブランドがもつポテンシャルや顧客が感じているパーソナリティを見定め受け入れる必要がある。その見定める段階で今回紹介したフレームワークをぜひ活用してみてほしい。
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