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グローバルブランドをローカルへ。btraxのファシリテーターによるブランディングワークショップの事例紹介
グローバルブランドの日本市場向けローカライゼーションプロジェクト
アメリカに本社を構えながら、世界各地で活躍するグローバルな組織体制を持つ今回のクライアント。自社商品を北・南アメリカをはじめとし、アジア、ヨーロッパなど、世界の各地域で展開し、マーケティング活動を行なっています。
今回btraxは2フェーズに渡りプロジェクトをご一緒させていただきました。
1つ目のフェーズでは、ユーザーインタビューをもとに日本市場向けのペルソナ策定を実施。2つ目のフェーズではグローバルブランドの日本市場のローカライゼーションに向けた支援をさせていただきました。
今回はその2つ目のフェーズにあたる、日本市場向けのブランドのローカライゼーションワークショップについて、クライアントが感じていた課題を解決するための提案から、ファシリテーターとしてプロジェクトの実行までを担当した筆者の視点で共有します。
課題:「日本のユーザーに響くデザイン」を作りたい
現在、クライアントは自社ブランドの根幹となるブランドガイドラインを展開しています。これはグローバルで共通のもので、そのガイドを基本として、各国のデザイナーに販促物の制作を依頼しています。その過程で、クライアントは各国特有のデザインの要素を反映する難しさを感じていました。
今回は各国のオフィスの中でも特に頭を悩ませていたクライアントの日本オフィスから、btraxへ、「グローバルブランドの日本向けのローカライゼーションのためのワークショップを行なってほしい」というお問合せをいただきました。
ヒアリングを重ね、見えてきたクライアントの日本オフィスが抱える、具体的な悩み・課題は、グローバルのブランドガイドラインの要素だけでは、日本の市場やユーザーに沿った販促物が制作しづらい状況にあることでした。
そして、アメリカ本社も上記の「裏返し」の課題を感じていました。日本のユーザーに合わせて販促物を制作した際には、グローバルのブランドガイドラインに沿わないコンテンツを制作してしまうことになるとのことです。
そこでbtraxは、アメリカ本社のメンバーと日本オフィスのメンバーに対して、2日間の対面とオンラインのハイブリッド形のワークショップをご提案しました。
このワークショップのゴールの1つは、アメリカ本社のメンバーに、日本のユーザーの行動特性や日本独自のデザインの傾向を理解してもらうことでした。このゴールを達成するため、ワークショップの1日目のテーマを”Understand”とし、アメリカ本社のメンバーに、日本のユーザーに関する前提をインプットしていただく1日にしました。
2日目には、1日目の日本のユーザー理解を踏まえ、ブランドとしての全体の統一感を握っているグローバルのブランドガイドラインを、日本向けにローカライズするにあたり変更すべき要素は何か、またどこまでローカライズして良いのかを議論するための1日として予定していました。
そして、この2日間のワークショップが終わる時点では、日本市場・ユーザー向けの明確なビジュアルサンプルを含むブランドガイドラインの制作を予定していました。
1日目のワークショップを終え、浮き彫りになった新たな課題
しかし、ワークショップの1日目を終えた時点で、クライアントにとっては、ブランドガイドラインの改訂に移るよりも先に、ローカライズの方法や要素に関する議論の時間をより多く取ることが必要だと判明しました。
具体的には、アメリカ本社の日本市場・ユーザーへの理解や、その理解に基づく今後のアプローチについて、ブランドガイドラインのローカライゼーション以外の方法も含め検討の必要があること、その落とし所を探るため、より上流工程の議論が必要であると考えたのです。
2日目のワークショップをより有意義なものにするために
そのため、日本向けのデザインの詳細に入る前に、クライアントの日本オフィスのメンバーが、アメリカ本社のメンバーに対して、日本市場での経験を共有し、より多くのインサイトを紹介する時間を確保した方が良いと判断しました。
その判断に合わせ、btraxのプロジェクトチームは、2日目のワークショップのタイムテーブルを急遽調整しました。2日目のタイムテーブルの変更により、結果として、2日間で日本市場向けのブランドガイドラインを制作するまでには至りませんでした。
当初のスケジュールから変更したことで見えた新たな発見
しかし、タイムテーブルを変更し、btraxがフェーズ1で支援したユーザーインタビューに基づく日本市場の理解と、そこから得たインサイトを共有したことは、良い結果につながりました。
クライアントに、日本の独特な文化と、日本と他の地域とのギャップを改善するために何をすべきかをより深く、明確に理解していただけたためです。
また、クライアントの日本オフィスのメンバーには、アメリカ本社のメンバーの意識改革を大きな成果として感じていただきました。
ワークショップを実施する前は、アメリカ本社に日本オフィスの状況を説明しても、言語の壁や文化的な違いから、なかなか理解が進みにくい状態でした。
それが、今回のワークショップで、アメリカ本社のメンバーが日本オフィスのメンバーと共に日本ユーザーの理解を深められたことで、今後の日本市場・ユーザー向けのアプローチ方法を共に積極的に考えるように意識を変えられたためです。
ワークショップ成功の3つの要因
今回のワークショップを終えて、改めて考えると、今回のワークショップの成功の要因は、Key Decision Maker(重要意思決定者)の参加、ワークショップ参加者の積極的な姿勢、btraxファシリテーターの柔軟性という3つではないかと考えます。
まず1つ目の成功要因は、何よりもクライアント側のKey Decision Makerの皆さまに2日間のワークショップ参加のお時間をいただけたことではないかと考えています。
btraxではブランディングのプロジェクトをご一緒することが多くあります。しかし、このような領域の課題はロジックだけで解決できないことも度々あります。ブランドを守り続けてきた作り手の想いと経験値でしか説明できないこともあり、業務の責任範囲が違う現場レベルの判断のみではできる範囲が限られてしまうためです。
そのためbtraxでは、ブランドにまつわる議論のような上流の概念を扱う際には、必ずその組織のKey Decision Makerに参加いただき、その方々の意図を汲み取りながら現場のプロセスとの整合性を取るようにプロジェクトを実施するケースが多いです。
今回も、プロジェクトの発端はクライアントの日本オフィスのメンバー間で起こっていた課題でしたが、根本的には組織全体のブランディングの方針に紐づいていました。そのため、グローバルブランドを司る、アメリカ本社の担当メンバーや幹部にも参加してもらうようご依頼させていただきました。
よって、日本オフィスが持つ課題に対して明快な議論をアメリカ本社と交わすことができ、方針の決定まで持っていくことができました。ワークショップが終わる頃には、課題の全体像を捉えた、課題解決に向けた次アクションが明確となり、次のステップに備えることができました。
2つ目の成功要因として、クライアントの素晴らしいチームワークが挙げられます。
ワークショップ中に必ず発言をし、分からないことは素直に質問し、それに対して違いの意見を尊重しながら、丁寧にそれぞれの立場の意見を提示していました。ワークショップを運営するファシリテーターとしては、このような議論が自然と行われることは理想的だと感じています。
最後の成功要因は、btraxのファシリテーターの柔軟性にあったと考えています。
具体的には、本来のスケジュールにこだわりすぎず、その時に行われた議論をその場で精査し、クライアントが現状必要とすることを見極め、それを元に計画を適宜調整したことです。
今回のbtraxのファシリテーターは、議論の中心で話をモデレートするだけでなく、外からその議論を見守る立場に徹することも多くありました。しかしその間にも、その議論の価値や意味づけを考え、次のアクションを見据えて、適宜その場のキーパーソンに議論のスコープを提示しました。
結果的に必要な情報が時間内に洗い出され、参加者全員が納得感を持った次アクションを決定することができたと考えています。
本ワークショップの学び・次回に向けて
今回、クライアントの要望は、日本のデザインの要素を知りたい、それをクライアントのブランドに適用した場合にはどのように見えるのかを知りたいということでした。それに沿ったワークショップを企画し、実施することができたことは良い点として挙げられると思います。
また、ファシリテーターとしてのbtraxの価値を改めて感じました。成功要因として、クライアントのチームワーク、コミュニケーション能力の高さを前述していますが、アメリカ本社のメンバーと日本オフィスのメンバーだけでは、議論を行うのは難しかったのではないかと思います。課題に対する当事者同士の議論になる場合は、客観的に状況を捉えることが難しかったり、思っていることを伝えにくかったりする場合もあるためです。
第三者としてbtraxが関与し、バトンを繋ぎながら議論を進めることで、根幹の課題がより明確になったと考えています。
しかし、次回のプロジェクトに向けた反省点も見つかりました。それは、クライアント社内の現状把握をより強固に行うことです。各参加者は現状の課題に対してどのように感じており、どこまで理解があるのか。その状況把握のために時間を費やした方が良いのか、など、日本オフィスのメンバーのみならず、各所とすり合わせを行う重要性を感じました。
最後に
最後に、改めて対面でのワークショップで集中的に課題に向き合う時間は、チームの間に素晴らしいコミュニケーションを生むことを再確認できました。
今回のワークショップはbtraxのサンフランシスコオフィスで実施したこともあり、アメリカ本社のメンバーが対面で参加されました。彼ら彼女らにとって異文化である日本について自分ゴト化して学ぶ場として、対面のワークショップの価値は大きかったのではないかと思います。また、2日間、集中力を維持して、質の高い議論を実現できたこともまた、対面だからこそできたことではないかと思います。
btraxでは、グラフィックデザインやUI/UXデザインの制作のみならず、豊富なワークショップの運営経験を持つファシリテーターと共に、組織に寄り添いつつ、本質的な課題の解決を見据えたデザインワークを提供しています。
北米・日本間でのブランドのローカライゼーションや社内でのコミュニケーション改善のお困りごとがあれば、お気軽にbtraxにお問合せください。
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