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モバイル広告のAppLovinに聞く海外展開の秘訣
昨今、スマホの普及率が上がり、アプリ等モバイルファーストのサービスが続々と増えている。アプリ市場のデータ会社App Annieによると2008年から現在に至るまでApp Storeでリリースされたアプリの累計本数はなんと450万本にも上る。
これだけの膨大なアプリが世に出ているということは、その開発やプロモーションを支える会社も数多く存在しているということだ。今回インタビューをさせて頂いたAppLovin(アップラビン)もまさにアプリ開発の支援を行う会社の一つ。サンフランシスコに本社を構え、現在世界中で6カ国に拠点を持つ今急成長中のスタートアップだ。
これまでに数多くのゲーム会社や大手広告主、最近ではTik Tokをはじめとする中国の会社とも多くの仕事をしている注目すべきモバイルマーケティングのプラットフォームだ。
新しい市場に向けた新規サービスの開発に携わるbtraxでは、モバイルマーケティングプラットフォームという今後成長が見込める市場で挑戦し続けるAppLovinにローカライゼーションの秘訣を伺うべく、今回はAppLovinの日本を統括するAppLovin株式会社、代表取締役の林宣多氏にインタビューを実施した。
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アプリ市場で日本は見逃すことのできない国
ーまずはAppLovinについてお伺いさせてください
AppLovinは、ユーザー獲得やアプリのマネタイズを最適化したいアプリ開発者のために作られたモバイルマーケティングのプラットフォームです。2011年に広告プラットフォームとして創業し、以降アプリ開発者を包括的にサポートしています。
私は2013年にAppLovinの本社に15番目の社員として入社し、約3年間サンフランシスコで働きました。その後日本支社の立ち上げのためにこちらに異動し、現在は日本市場と韓国市場の統括をしています。
日本支社には、ビジネスディベロップメント、アカウントマネージャー、マーケティングを含む10名のスタッフが常駐しており、1人1人がスタートアップらしいマインドを持っています。仕事のクオリティが非常に高く、みんな積極的な姿勢とオーナーシップを持って仕事に取り組んでいます。
AppLovin株式会社 代表取締役の林宣多氏
ーAppLovinは米国の会社になりますが、どのような背景があり日本展開に踏み込んだのでしょうか?また日本展開においてどのような準備をされましたか?
アプリ市場の中で3番目に大きな国である日本はポテンシャルが大きく見逃すことのできない国の1つだと私たちは考えていました。その背景の一つに日本はゲーム大国であることが挙げられます。
多くのゲーム会社がクオリティの高いゲームを日本および世界中に日本から展開しており、当時すでに日本のクライアントさんとのお取引もあり、サンフランシスコからサポートしていました。
また、日本に展開したい海外のゲームアプリ・デベロッパーも数多くいましたので、弊社が日本市場におけるサポートを強化することで、彼らのビジネス拡大に貢献できると考えていました。そのため、米国とヨーロッパへの展開を終えた後次に向かう市場の1つが日本だということは明確でした。
今回日本市場に展開するにあたっては、マーケットにおいてチャンスがどのくらいあるのかを見極めるために、先ずは遠隔でサンフランシスコから出張と電話ベースで営業し、実際にビジネスを回し手応えを確認しました。現在、特にアプリの世界では、現地にオフィスがなくても営業・受注からサービス提供までが可能です。
ですので、先ずは遠隔でできる限りのことをやり、各ローカルで少しでも実績を作ってからそれぞれの地域に進出することを私はお勧めします。こちらのプロセスは日本市場に限らずどの国への進出においても非常に大切なステップで、他の国に展開する際にも同じプロセスをへて進出するようにしています。
ー日本に展開する際に直面した課題は何ですか?また、どのようにその課題を乗り越えましたか?
全てにおいて本社から承認をもらうプロセスだと、ビジネス成長のスピードを失いかねないと考えておりました。スピードの低下はビジネスチャンスを失うのみでなく、これから採用していく社員のモチベーションにも関わると思っていましたのでそこには非常に注意しました。
幸い私は本社でCEOを含む経営陣と働いていたので彼らがそれぞれどのように考え決断するのかを体感していました。ですので、ほとんどのことを確認なしに決められてましたし、承認をもらっておいた方が良いこと、後から報告しておいた方が良いことなどがあれば、適宜連絡する形で大きな問題は起きず素早い立ち上げと成長を達成することができました。
日米で大きく異なる広告代理店との関係
ー林さんが思う日本と米国で最も異なる文化やマーケットの違いは何でしょうか?
クライアントに対するアプローチの仕方が異なるのではないでしょうか。米国のクライアントはロジカルに物事を決断するので私たちもサービスやアプリの説明をする際にはデータドリブンでロジカルに説明することでやる気になってもらえることが多いです。
しかし日本では担当者が直接決められないことも多く、特に他社での成功事例を意識する傾向があると考えていました。ですので、やみくもにクライアントを増やすのではなく、先ずは成功確率の高い数社とのお取引に注力し、その後その事例を元に他社へ展開していくことを最初の戦略としました。
ー日本でのサービス展開を成功させるために活用したストラテジーはありますか?
私は過去に日本市場でのアドネットワークの立ち上げ経験がありましたので、市場中での重要な顧客やプレーヤーについては理解していました。
その中での一つの大きな違いは、米国ではほとんどが直接の広告主とのお取引になるのに比べて、日本では広告代理店が大きな影響力を持っていることでした。そのため私たちは日本の広告代理店とのネットワークをできる限り強固なものにすることに注力しました。
ー広告代理店との関係性が重要になるとのことですが、信頼を得るためにはどのようなことに注力しましたか?
私たちが今までお付き合いのある広告代理店のほとんどは、サイバーエージェントやセプテーニ、アドウェイズのようなモバイルを得意とする代理店です。
これは私たちが行った事の一例に過ぎませんが、最初から数多くのクライアントさんとお取引をするのではなく、まずは少数のクライアントと仕事をしていき良い結果を生み出すことで、サステイナブルな関係性を保つ事を心がけました。こうする事で代理店から高い評価を受けクライアントの数も徐々に増やしていく事ができました。
しかし一方で、日本の代理店さんとのお取り組みは米国本社がこれまでやってきたやり方と違う部分も多く、CEO含め本社メンバーには理解してもらう必要がありました。理解してもらえてたのかは分かりませんが、これまでの実績と信頼があったため、私の方針の大体は承認してもらうことが出来たのは大きなメリットでした。
ローカライゼーションに必要なのはマーケットと文化の理解
ー今後、AppLovinの日本支社をどのように成長させていきたいですか?
私たちはアプリマーケティングのプラットフォームを提供し、マネタイズやユーザー獲得の支援を行っています。その際、ただ自社のサービスを売り込むのではなく、クライアントの課題やニーズを深く理解し、状況に応じたより良い解決策を提案しています。そして、一時的ではなく中長期的な関係性を構築することで、クライアントと一緒にビジネス価値を構築していきたいと考えています。
ー企業カルチャーは企業の成長に大きく関係しているかと思うのですが、AppLovinのカルチャーを教えて下さい
私たちはAppLovinをスタートアップだと捉えているので、新たなことを学んだりチャレンジしたいと願う人達が集結しています。そのため英語が上手に話せるかどうか、役職にフィットするかどうかは関係なく、個人の仕事に対する姿勢や思いを尊重します。
また、社内ではトランスパレント(透明性)が重視されているので、情報をオープンにし、チーム一丸となってビジネスを成長させていける環境作りには引き続き注意を払いたいと思っています。
AppLovinのオフィス風景
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ー最後に、日本市場への展開を考えている企業に対してどのような助言がありますか?
今まで数多くの外国企業、特にアドテク企業が日本に展開して失敗しているのを私自身見てきました。その理由の大きな要因は、初期の採用ではないかと思います。
新規市場への参入はスタートアップ経営と同じで新しいものを世に広めていく必要があり、営業力・プロダクト理解力・戦略性・PR力など総合力が問われると思います。
多くの企業は日本に展開する際、英語力がある人やその業界で経験のある人を選ぶ傾向にあり、彼らは実際に実績もあるし実力もある。ただ、出来上がったビジネスを拡大できる人材とスタートアップ的に動けてビジネスを推進できるかは別のスキルなのかなとは思います。
私はそのようなスキルや経験よりもスタートアップマインドがあり、形にこだわらずビジネス立ち上げに楽しさを感じれるような人材こそ、このような海外企業の日本市場展開でも活躍できるのかなと思いますし、実際に弊社メンバーは皆がそういう人材です。
もしも英語力があればそれにこしたことはないし、もし仮に英語力がないとしたら通訳者を雇えばいいというくらいの感覚で良いと考えています。
スキルがあってもプロダクトやマーケットへの理解が足りていない、または本社から言われたことをただこなすだけでは意味がありません。日本、韓国、中国の市場は北米市場と全く異なるのでそれぞれのマーケットを知る自分の頭で考えて自ら動ける起業家的な人材を確保することが何よりも大切なのではないでしょうか。
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