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Amazon Goの仕組みは脅威となるか?サンフランシスコ店へ行ってみた
以前の記事「小売業界の敵はAmazonではない? これからの小売が知っておくべき課題」でも紹介したように、Amazon Goの台頭により、レジなしコンビニひいてはその技術が注目が浴びている。
サンフランシスコにはレジなしコンビニのスタートアップ2社が実験店舗を展開してきたのだが、ついに先日Amazon Goもオープンした。
Amazonの大規模計画は小売業界の脅威になり得る
Bloombergによると、Amazonは2021年までにAmazon Goを3000店舗まで拡大する計画をしているという。この数字がどれだけの規模かというのは、1901年創業の小売最大手、Walgreensと比較すると理解しやすいだろう。
先ほど紹介した以前の記事にも記載されている「米小売企業の売上高ランキング2017年版」によると、WalgreensはAmazonよりもランキングがひとつ上の6位であることがわかる。同社は現在、主に24時間営業のドラッグストア(コンビニエンスストア型に近い事業)を米国内で約8100店舗ほど展開している。
この規模を考えると、3年という短い期間で4店舗から3000店舗までの拡大計画は驚くべき規模であることがわかる。さらには、実現するとAmazon Goストアの規模だけで全米の小売業界では間違いなくトップクラスの規模になると推測できる。
サンフランシスコでは2店舗目のオープンが今年の冬に予定されており、Googleマップ上ではすでに確認することができる。
また、2019年にはシカゴで3店舗目を展開し、ニューヨークにも初出店する予定だという。これが実現できれば計9店舗となる。
では、Amazon Goは小売業界にどれほどの影響を与えるのだろうか?それを実感する機会を逃さないために早速取材を行ってきたので紹介しようと思う。
サンフランシスコのAmazon Goへ行ってみた
米国西海岸時間の2018年10月23日、6店舗目となるAmazon Goがサンフランシスコにオープンした。今のところ営業時間は月曜日から金曜日の午前7時〜午後9時までだ。
筆者は開店翌日の現地時間の2018年10月24日に取材を行ったが、店内、店外ともに大勢の客がいた。外にいる客は列に並んでいるのではなく、入店に必要なAmazon Goのアプリのダウンロード、セットアップを行っていた。
またオープン間もないからか、オレンジ色の服を着用したスタッフも大勢いて案内を行っていた。
入店ゲート前のイートインスペース
店内のレイアウトはコンビニエンスストアそのもので、入店ゲート前に座席と電子レンジ、フォーク・スプーン・箸・紙皿、調味料などが設置されていた。
ストアのモットーが「Good Food Fast」であるように、調理済みの食品などが多く売られており、店内ですぐ食べられるようになっているようだ。
ストアに入店。レジなしコンビニの仕組み
上記の画像のように、Amazon Goの専用アプリに表示されたQRコードで入り口のゲートにてスキャンを行うと入店ができる。
入店時のスマートフォンのバッテリーが1%で筆者は焦りを感じていたが、Amazon Goは同行者がいる場合は、同行者にスキャンをしてもらい先に店内へ入り、その後に再度同行者がスキャンをして店内に入ると1人のQRコードで2人入店することができるようだ。もちろん決済はスキャンした1人にされる。
その後、入店と同時に天井に設置されたカメラやセンサー類によって店舗内の行動がトラッキングされる。
上記の画像で見られる、天井にぶら下がっている黒い正方形の物体はすべてカメラ・センサー類だ。この画像はストアのほんの一角に過ぎないのにも関わらず、両手で数え切れないほどのカメラ・センサー類があることがわかる。
棚から取り出した商品は上記のカメラ・センサー類などに加えて、棚の重量センサーなどによって識別される。その後そのまま退店をすると専用アプリにデジタル領収書が送られ、クレジットカードで自動的に決済される仕組みだ。
ストアの品揃え・価格
全体的な品揃えに関しては、大手ドラッグストアのWalgreens、CVSと比べるとどうしても物足りなく感じてしまう。しかし、日本でもおなじみの7-Elevenがサンフランシスコにもあるのだがそこと比較すると、レジがない分、広く感じられ、商品ラインナップも充実していた。特に調理済みの食べ物やサラダなどに関しては他と比べ品揃えが圧倒的に充実していた。
健康を意識した商品ラインナップもWhole Foodsの買収が影響しており、新鮮な野菜が手に入りやすくなったことに加え、一貫したブランディングによるものであろう。
価格に関しては、サンフランシスコの物価を考えれば高くもなく安くもないといったところだった。だが、調理済みの食べ物が店内のキッチンでスタッフによって作られていることを考えるとお得感がある上に、何より食べるまでが速い。
これらのことを考えると、Amazonは、デリ、カフェ・ランチスポットとしての利用を積極的にターゲットにしているようであった。
ちなみにサンフランシスコの店舗では、従業員専用のゲートの奥は全く見えなかったため、キッチンを見ることができなかった。
退店・デジタル領収書の受け取り
程なくして退店し、専用アプリで領収書を確認するとすぐには表示されなかった。もちろん、入店中に自分が手に取っているアイテムをアプリ上でリアルタイムに確認することもできなかった。
膨大なデータ処理で時間がかかるためか領収書が届いたのは2時間後だった。選んだ商品は正確に認識されていたが、間違いがあった際にはまた店に戻らなければいけないのかという懸念を感じた。しかし、Amazon Goのスタッフに聞いたところ間違いが起きる確率は限りなく低く、返品する必要はないようだ。
店内でのリアルタイムの行動とアプリの連携によるUXに若干のストレスを感じつつも、そこはAmazonブランドによって相殺されていると感じた。参考: 「Amazonを成功に導いたユーザーを夢中にさせる4つのUXデザイン要素」
そして、領収書には買ったもののほかに、店舗滞在時間が17分56秒であったことも表示されていた。ユーザーは店内でどれほどの時間を費やしていたかを可視化できる、また、今後の買い物で時間を意識できるようになることによってAmazon Goの価値を再認識することができるだろう。
まとめ
実際に体験してみると、チェックアウトのプロセスを完全に排除するのは確かに大きな革新であると実感できた。店内には多くの客がいたのにもかかわらず、ストレスはほとんど感じなかった。
そして、Amazon Goはアプリから店内のクオリティまでが他のレジなしコンビニを展開しているスタートアップよりも高く、動作が安定していた。
しかし、天井には過剰なほどのカメラ・センサー類が見られたほか、デジタル領収書が届くまでのラグやデータ処理のコスト、現状はスタッフが従来のコンビニエンスストアよりも多いなど、いくつかの面で課題点は見られた。
以前の記事「小売業界の敵はAmazonではない? これからの小売が知っておくべき課題」でも紹介したが、忘れてはならないのは、技術ありきでは進歩は実現しないということだ。
実際にユーザー体験を向上させるには、それらの技術を駆使する前にユーザー中心のマインドセットが必要になる。現在のような変革期に対応するためには、テクノロジーや情報に精通するだけでなく、それらを活用するためのマインドセットがより今後重要になるだろう。
冒頭で触れた「レジなしコンビニを展開しているスタートアップ」はこちらの記事「Amazon Go型の無人レジ店舗の普及を目指す2つのスタートアップ企業」で紹介している。
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