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Amazon Go型の無人レジ店舗の普及を目指す2つのスタートアップ企業
以前の記事「AmazonGoの仕組みは脅威となるか?サンフランシスコ店へ行ってみた」で紹介したように、実はAmazon Goストアがサンフランシスコに展開する以前に、2社のスタートアップがすでにレジレス店舗の試験的なデモ店舗をサンフランシスコ市内で展開していた。
サンフランシスコに突如現れたレジレス店舗
Amazonが3年という短い期間で3000店舗ほどまでに拡大を計画しているレジレス店舗であるが、その台頭により、レジレス店舗ひいてはその技術やIot、AIを活用し、小売業界の革新を目指しているスタートアップが現在注目を浴びている。
以前にこの記事「小売業界の敵はAmazonではない? これからの小売が知っておくべき課題」でもそれらに関連した多くのスタートアップを紹介したが、今回の記事ではサンフランシスコでレジレス店舗のデモ店舗を展開している2社について紹介する。
Zippin
Zippinは2018年8月にサンフランシスコで招待制のデモ店舗をソフトオープンさせ、市内でレジレス店舗を展開する第1号となった。またAmazon Goに続き、アメリカでレジレス店舗を展開する2社目となった企業だ。
基本的なレジレス店舗の仕組みはAmazon Goと同じように、事前にアプリをインストールし、決済情報を登録したのちにQRコードを入店ゲートにてスキャンすることで入店が可能となる。
その後、商品を持って退店すると電子メールで領収書が送られる仕組みだ。
Zippinの認識技術
Zippinでは入店ゲート、棚の重量センサー、天井に設置されたカメラから顧客が商品を手に取ったかどうかが認識される。現時点では服などの柔らかい商品などはカメラや棚が認識できず、対応できないというが、包装されていて、形があるものは認識されるという。
実際に取材へ行った際には商品が正しく認識され、領収書も退店後にすぐ届いた。
また、Zippinでは認識技術に加え、在庫管理に強みを置いており、店舗側がスマートフォンを見るだけで、どの商品をいつ、いくら補充すればいいのかなど正確な情報が得られるという。
同社が認識に使用しているハードウェアはすべて一般に流通している汎用品であり、認識のためのソフトウェアをSaaSとしてサービス提供をする予定だという。
Amazon Goが店舗を1から作るのに対して、同社は既存の小売店舗にレジレスの仕組みを提供することを前提に開発を行っている。
Standard Market
Standard Cognition社が運営するStandard Marketは、同社初のレジレスストアの実店舗デモだ。Zippinに続き、2018年9月にサンフランシスコにてソフトオープンした。
Standard Cognitionの認識技術
店内はデモ店舗であるため、商品が少なく殺風景に見える。それだけではなく、天井や棚のセンサー類、入店・退店ゲートがないためAmazon Goストアと比べてさっぱりしている。
画像で確認できる限りで、天井にはいくつかのカメラが設置されていることがわかる。
店舗内にスタッフがいたので店舗面積とカメラの設置台数を聞いてみたところ、185.8平方メートル(少し広いコンビニ程度)に27台のカメラを設置しているという。
Amazon Goストアと比べると(参考:AmazonGoの仕組みは脅威となるか?サンフランシスコ店へ行ってみた)圧倒的にカメラの台数が少ないことがわかる。
Amazon Goストアで設置されているような入店・退店ゲートや重量センサー、カメラなどが用いられた専用の棚などは必要とせず、天井のカメラの認識技術のみでユーザーの購買行動を認識できるという。
チェックイン認識技術の仕組み
Standard Market専用のアプリでチェックインボタンを押すと、スマホのスクリーンに一瞬だけ赤色が表示され、これを天井のカメラが認識し、チェックインとなるようだ。
筆者はこの時のスマホのバッテリーが1%だったので、早くチェックインしないといけないという焦りがあった。Amazon Goでは同行者がいれば、1人が2人分の会計をまとめて行うことができため安心できるのだが、Standard Marketでは今のところできないようだ。
カメラのみによる認識技術の課題点
実際に商品を2点バッグに入れ、外へ出るとレシートが送られて来ないのでスタッフに確認したところ、どうやら受け取りに時間がかかるとのこと。
しかし、1週間以上経ってもレシートが来ない。
原因は詳しくはわからないが、同行したbtraxのスタッフも商品を2点バッグに入れて外へ出たにもかかわらず、約1時間後に来たレシートには1点の商品しか認識されていなかったので、おそらくは単純に認識されていなかったのではないのだろうか?
他にもデモ店舗では、一度に店舗内に入れる人数は3人までの制限があるなど、カメラ以外のセンサー類を用いないでユーザーの購買行動を認識するのはまだ課題があるように思えた。
しかし、上記の課題点のどれもさほど大きな問題ではなく、技術的にはカメラだけでの購買行動の認識は可能のように思えた。今回のデモ店舗で得られたデータから改善は十分に期待できるであろう。
実際に、数週間以内に新機能のトライアルを実施し、商品数の増強や、同時に買い物できる人数の増加を予定しているという。
レジレス店舗システムの導入・拡大を目指す
同社も既存の小売店舗にレジレス店舗のシステムを導入することを前提に開発をしている。
カメラのみによる認識技術が可能になれば、センサー類を使用した専用の棚などを使用する必要がないため、既存の小売店は導入コストを抑え、レイアウトもある程度自由に配置することができる。
同社は店内にある膨大な商品をカメラが認識するためにAIを利用し迅速に学習できる技術を開発しており、特許を取得する方針だという。さらには、2019年までに開発を目指している新たな機能では入退店時にスマホを取り出す動作すら必要なくなるという。
2018年7月には、日本の一般用医薬品などの卸大手PALTACと提携しており、日本での研究開発、実証実験を行っている。2020年の東京オリンピックまでに3000店舗にレジレス店舗のシステムを導入したいとしている。
まとめ
上記で紹介したようにレジレス店舗の技術を開発するスタートアップ2社が実証実験をサンフランシスコで行っているが、その他にも同様の技術を開発するスタートアップ、大手企業がアメリカ国内に多く存在する。また、中国でも同様のスタートアップが増えてきている。
日本でも、それらのスタートアップに先駆けて、東日本旅客鉄道株式会社とJR東日本スタートアップ株式会社がレジレス店舗の技術を開発するベンチャー企業のサインポスト株式会社と協業し、2017年11月には埼玉県大宮駅にてレジレス店舗を展開し、2018年10月にはその実証実験を踏まえ、第2回目のレジレス店舗を東京都の赤羽駅にて展開している。
英市場調査会社「Juniper Research」によると、2022年までにレジレス技術を使用した店舗での決済総額が米国内で780億ドルを超えると予測されており、規模・成長率がともに高いマーケットのシェアを獲得するべく、多くのスタートアップが乱立し、競争が激化している。
他の業界に比べ、テクノロジーによる進歩で遅れていた小売分野であったが、実店舗の重要性、価値が見直された今、小売業界は間違いなく変革期にあると言える。現在のような変革期に対応するためには、テクノロジーや情報に精通するだけでなく、それらを活用するためのマインドセットがより今後重要になるだろう。
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