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ビットコインは近いうちに金融システムを大きく変える【インタビュー】breadwallet アダム・トレイドマン氏
日本でも誰もが名前は聞いた事があるビットコイン。2014年のマウントゴックスの破産の影響で、危険で信用できないものや、一過性で長続きしなかったものという認識をしている人も多いと思う。
しかし世界的に見るとビットコインは注目を更に高めており、サンフランシスコやシリコンバレーでも毎年多くのビットコイン関連のスタートアップが誕生している。今回はサンフランシスコ某所にて、ビットコイン系のスタートアップで注目を集めているbreadwalletのアダム氏にbtrax社CEOのBrandonと共に最新のビットコイン事情を聞いてみた。
ビットコインをめぐる最近の情勢について
ービットコイン関連のビジネスには投資資金が集まっている
ビットコインのスタートアップは、それぞれの会社毎に事業戦略が異なっています。ビットコインの商業利用は3〜4年前に始まり、たくさんの投資家がビットコインに投資を行ってきました。2015年にビットコイン関連のスタートアップに投資された合計金額は、1995年にAmazonやebayなどのインターネット会社に投資された合計金額を大きく上回っており、たくさんのビットコインスタートアップが生まれています。
ービットコインは紙幣システムを変える
ビットコインは銀行にとって変わる可能性があると思っています。会社からの給料がビットコインで支払われるようになって、商品購入の支払いもビットコインになれば銀行の口座はいらなくなる。お金の形が貝殻から金銀に変わり、金銀から紙幣へと時代とともに変化してきたように、ビットコインは次のお金の形になる可能性があります。
今の紙幣には多くの欠点が有り、ビットコインはそれの上位互換です。人類の歴史から見てもビットコインはすごい発明であり、それがたくさんの投資家のお金が集まっている理由です。
https://blog.btrax.com/jp/fintech-trends/
ー日本とアメリカのビットコイン環境の違い
今の段階ではアメリカの方が日本よりもビットコインユーザーは多いです。日本人は保守的な性格が強く、特にお金というフィールドではなかなか新しいものに手を出さないのだと思います。しかし日本での使用率は低いものの、ビットコインの認知度は極めて高いです。
もともとビットコインを作成した人も日本人である可能性が高いと言われてますし、マウントゴックスも日本でビットコインビジネスを広く展開していました。もともとマウントゴックスはマジック・ザ・ギャザリングというカードのオンライン交換所を行っていましたが、その技術を活用してビットコインの取引所を作りました。
だからビットコインの大量取引とセキュリティには向いていなかったです。日本でビットコインが流行れば、支払いにお釣りがいらなくなるし、ATMでの引き出し手数料も不要になり、メリットが多いと思います。日本人は新しいテクノロジー活用のスイッチのオンとオフが激しくて、一度スイッチが切り替われば一気に浸透できると思います。
ビットコイン1.0からビットコイン2.0へ
ービットコイン1.0について
最初のビットコインの会社の事を私はビットコイン1.0と呼んでいますが、初めは既存銀行のビジネスモデルを適用していました。日本ではbitFlyer等がこのモデルに該当します。このタイプのビットコイン会社は、Bank of Americaに行って口座を作るように、身分証やいくつかの個人情報を提出してビットコイン口座を作成します。今までドルや円で行っていた取引がビットコインになっただけです。
ービットコイン1.0の問題点
ただし既存銀行のモデルはたくさんの問題を抱えています。例えば、高い取引手数料、対応の遅さ、顧客対応の悪さなどです。国をまたいで口座を作るには、国籍や住居地などの問題も発生します。ビットコイン1.0の会社は既存銀行のモデルを引き継いでいるので、これと同様の問題が発生してしまいます。
ーこれからのビットコイン2.0について
私たちbreadwalletはこの様なビジネスモデルではなく、ビットコインを世界中に広げるというビジョンをもとに、ビットコイン2.0なる新しいビジネスを展開しています。私たちはビットコインのプラットフォームを作り、世界中の人たちがビットコインの利便性を使うことができるようにしたいと考えています。
ーサービス内容について
私たちのプラットフォームでは、迅速かつほぼ手数料なしで世界中の人たちがお金を送ることができます。これはメールでメッセージを送ることに似ています。今ではすぐに無料でメッセージを送ることができますが、それをお金で行おうとしています。
モバイルからアプリをダウンロードしたらユーザー登録は不要。ただ起動してお金を送るだけで、送る人の名前も受け取る人の名前もいりません。私たちはユーザーのお金を持つわけではないので身分証の提示も当然不要です。数億円の送金であっても5秒でできます。
ー操作方法について
操作方法もいたってシンプルで送るのか受け取るのか2択のみ。ITに詳しくないお母さんでも使える様にシンプルさを追求しました。これで世界中の人が使えると思います。私たちはこのサービスで、グーグルがインターネットでしているようにビットコイン取引のユーザーフェイスを作りたいと思います。ここを経由して人々が取引を行えるようにしたいです。
ーセキュリティが強い
ビットコインの1番のメリットはブロックチェーンで動いており、中央管理者が不要で分散化されていることです。それにより何千、何万というそれぞれのPCによって管理されるようになります。だからユーザーは1つの会社を信じる必要もありません。
私たちはこの中央管理者がいらないシステムを商業目的で作り上げている唯一の会社です。先日も香港でビットコイン会社がハッキングされてユーザーのお金が$72M(72億円)盗まれました。数年前には東京でマウントゴックスが$65M(65億円)盗まれました。これはとても大きな問題です。
しかし私たちは中央管理者がいないのでユーザーのお金を持ちません。1ドルもお金を持たないというのが他のビットコイン会社との大きな違いです。お金はブロックチェーンで管理されておりハッキングされることはありません。
ビットコインの今の使用状況
ー紙幣よりも安定しているため使われる
世界には紙幣の値段が安定しない国が多くあります。例えばアルゼンチンでは給料日の次の週には紙幣の値段が90%まで目減りしてしまうことがよくあります。紙幣価値の変動リスクを避けるために、給料日に全てのお金を使って食料品などを買いだめする人も多くいます。
実際にアルゼンチンではビットコインを給料に変える人もいます。他にもアフリカの一部の国などでも同様な動きがあり、紙幣の価値が安定しない国ではビットコインは有効に活用されています。
ー海外送金に適しているため使われる
身分証すら持っていなくて銀行口座も当然作れない移民の人たちがアメリカにはけっこういるが、今の金融機関はそのような人たちにサービスを提供できていない。しかしそんな人たちも携帯電話は持っており、ビットコインはその人たちに海外送金の機会を提供している。
ビットコインは今まで金融へのアクセスがなかった人たちに、アクセスを与えることができ、それは図書館が無い地域のアフリカでもグーグルがあれば情報を入手できるようになるのと似ています。
ーボラタリティが高く投機的であるため使われる
ビットコインの使用理由として上記のような利用もありますが、実際のところはビットコインの取引は半分以上が中国で行われており、中国では投資家がギャンブルのように取引しています。ボラタリティ(値段変動の激しさ)が高く投機目的に利用されるのです。
ビットコインが更に普及するために必要なこと
ーディスカウントサービスの提供
現在支払いではクレジットカードが使われることが多いですが、クレジットカードの使用により消費者はマイルなどのポイントを貯めることができます。ビットコインがクレジットカードに取って変わり、一般的な生活でも普及するためには消費者にメリットを与える必要があります。
既にいくつかのスタートアップはそのようなサービスを提供しています。例えば”Fold”というスタートアップはスターバックスでの支払いをビットコインで行うことにより、5%のディスカウントを受けることができます。このような会社がもっと現れれば、消費者メリットが増えてユーザーは増加します。
ー1ヶ月の支払い猶予サービスの提供
クレジットカードは支払いが一ヶ月後なので、実質的に1ヶ月間支払いの猶予を受ける事ができます。しかしビットコインは即時支払いなので、この支払い猶予メリットを受けることができません。それを解決するために、ビットコインベースでお金を貸すようなスタートアップ会社も出てきています。
ー小売店へのメリットは既にある
ビットコインが小売店にもたらすメリットは既に高いと言えます。消費者がクレジットカードを使った場合には、クレジットカード会社は小売店から数%の手数料を取りますが、ビットコインにはこれがほぼありません。また盗難されたクレジットカードが使われた際の負担は小売店側が被りますが、ビットコインにはこれがありません。なので小売店側がビットコインを使うメリットは既に高いと言えます。
ービットコインは今度どのように発展していくか
既存の銀行とスタートアップが共存するような形でビットコインは発展して行くと思います。今はスタートアップがいくつものサービスを生み出していますが、どこかの段階で既存の銀行もビットコイン会社を買収するか、または自分で始めると思います。その結果、既存の銀行とスタートアップがミックスされたような形でビットコインは発展していくと考えています。
インタビューを終えて
21世紀の資本主義の中心地となり世界中から優れたスタートアップが集まるサンフランシスコ。この地は多産多死と表現されることも多く競争率はどこよりも高い。
西海岸はもともと陽気で気楽と表現されることの多いが、どこかギラついてピリッとしているところも合わせ持っている。今回インタビューを行ったbreadwalletはまさにそのような会社であり、世界を変えようとしているスタートアップの独特な雰囲気が感じられた。