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顧客体験を向上させる 次世代モバイル通信5Gの活用事例3選
CESやMobile World Congress等、世界的なITイベントやカンファレンスで5Gが注目を浴びていることは言うまでもない。
ここ米国においても、5Gへの投資は各国との経済競争における重要な役割を担うとして、国家をあげた優先事項になっており、徐々にそのサービス実現が具現化している。
今回は、米国大手通信事業者における5Gへの取り組みに触れながら、将来実現が期待されているその活用事例についてご紹介していきたい。
4G/LTEと何が違う?
そもそも、5Gは4G/LTEと何が異なるのだろうか。各国の様々な業界の事業者が注目し、新しいサービスが期待される5G。
本題に入る前に、5Gが現在我々が使っている4G/LTEと比べてどのような点で優れているのか3つのポイントで簡単に触れておこう。
1.高速・大容量
5Gは従来比約10倍の速度を誇る。これにより今まで数分~数十分要していた映画や音楽のダウンロードがわずか数秒にも満たない時間で可能になるのだ。
より高画質かつ大容量の通信が短時間で処理できるため、4Kの次に注目されている8Kにも耐えうる程の速度なのだ。
2.低遅延
5Gを使うと1ミリ秒以下の低遅延を実現すると言われており、これは従来の約1/10にあたる。これが実現されることにより、遠隔での医療やロボット操作、自動運転といった、よりリアルタイム性が求めらるサービスの可能性を広げることができる。
3.同時多接続
1つの電波収容局で同時に接続収容可能なデバイス数が格段に上がることも5Gの強みだ。一度に収容できる数は100万になると言われている。これは従来のスマートフォンやタブレット接続のみならず、例えば工場内に多数存在するセンサー、家庭内家電、我々が身に着けるウェアラブル端末等、全てのものがつながるIoTを1つの電波収容局で同時接続することができるくらいのスペックなのだ。
5G元年となる2019年、米国大手通信事業者の取り組みは?
デロイトの調査によると、既に世界各国で72の通信事業者が5Gサービス実現に向けた評価を開始しており、そのうち25事業者が2019年内に5Gサービスをリリースすると言われている。2020年までにはその数は倍になるとも書かれている。
米国の5G実現においては、4大通信事業者が競争しており、AT&TとVerizonが先行し、その後にSprintとT-Mobileが続くといった構図になっている。
例えば、AT&Tは全米12都市で既に5Gサービスを先行して提供し始めている。弊社btraxオフィスがあるサンフランシスコでも2019年内にサービス開始が予定されている。また、既に一般企業での採用事例も見られており、Deep South Studioというビデオ制作会社では高画質ビデオ伝送インフラとして5Gを活用することが決定している。
また、Verizonは主に宅内向けや自治体向けサービスに注力し、昨年10月より複数都市でサービスを開始した。一方、SprintとT-Mobileは企業統合による豊富なインフラ基盤を活用し、大手2社に対向しようと投資を加速している。
残念ながら、スマートフォンやタブレット端末自身は現時点で5Gに未対応のため、我々自身が利用できるのはもう暫く先になるが、5Gを提供するための土管となるインフラへの整備は着々と進んでいるのだ。
具現化されつつある5Gを活用したサービス
では、4G/LTE以上の力を発揮する5Gが実現するとどのようなサービスが生まれるのか、いくつか直近の具体例をあげながらご紹介していきたい。
1.スマートハイウェイ
5Gと密接にリンクするサービスの1つに自動運転があげられるが、それと平行して検討されているのがスマートハイウェイだ。
スマートハイウェイとは、高速道路を走行する車の車両内に取り付けられた様々なセンサーや通信設備と、高速道路上に設置されているスマートシステム(例えば、電力供給システムや料金所、街灯等)が連携させることでより安全で便利な運転を実現するものだ。
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これらの情報から、事故を予測、回避したり、万が一事故が発生した場合においても、その問題の原因をデータに基づき特定し、事故防止対策を強化したりと、より安全性の高い自動運転環境が実現されることになる。
車両や道路上のスマートシステムから提供されるデータをAIで分析するという取り組みもトレンドの1つだ。
2.遠隔医療
米国では5GとVR/ARを活用した遠隔医療の取り組みが進んでいる。例えばAT&TとVITAS(終末期医療の大手プロバイダ)は、遠隔から患者をケアするツールとして以下2つの目的でVR/AR技術を検証している。
1つめはVR/ARを活用し、患者が感じる快適度をあげるという取り組みだ。VR/AR技術を活用し、仮想的に大自然での旅行を体験させたりすることによって、あたかもその場にいるような安心感を与え、患者の精神状態や健康状態を安定に保つことを目的としている。
2つめは、自宅での診療が中心になるような場合に、映像や診療データといったコンテンツのモバイル化によるデータ通信にも耐える環境を整備することを目的としている。
3.スポーツ、エンターテイメント
米国プロバスケットボール競技であるNBAのファン体験向上にも5Gの活用が注目されている。
先般、NBA所属チームの1つであるSacrament KingsがVerizonの5GテクノロジーとVR/AR技術を活用した360度視点でのファン体験デモを開始している。
来場者はこのサービスを使うことで、ライブストリーミング映像を通して様々な角度から選手の動きや試合の様子を視聴体験でき、リアルタイム統計等、まさに没入型の体験を得ることが可能になる。
これは米国のスポーツフランチャイズでは初の試みとなり、スポーツやエンターテイメント業界での5G活用事例として大きな一歩を踏み出しそうだ。
まとめ:5Gに求められるものは「イマーシブ(没入できる)」かつ「パーソナライズ(個々に根差した)」サービス
5Gは高速・大容量、低遅延、多接続といった点で4G/LTEを上回る技術になるため、それ自身を実現するための技術進歩も勿論必要だ。しかしながら、それ以上に構想した5Gのうえで何を提供するか、どのようなコンテンツやアプリケーションをどのようにサービスとして提供するかが非常に重要だと感じている。
今回紹介したような米国で大手通信事業者とメディアやコンテンツ事業者等の統合が顕著なのもその表れではないだろうか。
特に顧客体験という意味では「イマーシブ(没入できる)」「パーソナライズ(個々に根差した)」がキーワードになってきている。5Gをとりまく環境でビジネス開発していくためには、今まで以上にエンドユーザ体験、それも個々人の体験を常に意識していくことが求められそうだ。
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