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文系と理系に分ける日本教育の限界とそのリスク
文系、理系、オレ何系?
後輩の起業家でGoodpatchのCEOでもある土屋尚史とのPodcast対談で思わず口走ってしまった一言。
日本の高校に行っていた頃、いわゆる進路を決める際に自分が文系か理系かのどちらかを選択し、それに合わせて受験する学部を決めるわけだが、その当時の自分といえば、まさに「で、オレ何系?」という感じだった。
そもそも興味があるのは音楽。得意なのは美術。誰よりも優れていたのが自由研究と、入試には全く関係のない科目ばかり。特に苦手だったのが選択問題で、事前に答えが決まっている問題には全く興味がわかない。
マークシートに至っては、ドットの集合がどんな柄になるかを重要視して選んでいたりしたため、ほとんど得点を取ることができない始末。
そんな状況で文系か理系かなんてのはどうでも良い。結局、圧倒的に女子の少ない理系を選んで大失敗だったが。そうなると大学受験も圧倒的に不利なのは当たり前。
日本では結果的に大学に入れない始末
そもそも入りたい大学も学んでみたい専攻も無い。
まあ、無いというか、はっきりわからない。せっかく入るなら好きなことを学びたい。でも、日本の受験制度だとまずは文系か理系で分けて、その後偏差値に応じて、A大学の文学部、B大学の法学部、C大学なら商学部という形で受けるのが一般的とされていた。
自分にとっては極まりなく謎な仕組みだが、常識だった。じゃあ、本当に好きなことで受ければ良いかというと、音大に入るほどピアノはうまくないし、ロックバンドをやってるから入れる大学も見当たらない。
クリエイティブなことにしか興味がないハンデ
最終的に自分が専門としたのがデザインであるが、ではデザインやものづくりに興味があるタイプの人は文系なのか理系なのか?
多分どちらでもあり、どちらでもない。文系と理系の両方の知識と感覚が必要なのだが、日本の高等教育で教えられる内容ほどの浅く広く意味なく学ぶのはちょっと違うと思う。
そうなってくると、本当に「オレ何系?」と言ってしまいたくなる気持ちもわかる。現在の日本ではクリエイティブ系の人が学びたくなるようなカリキュラムがまだまだ少ない。じゃあ美大に行けば良いのか?
でも、最近注目されているような、UXデザインやデザイン思考などの経営とデザインを融合させるための分野などは、日本の学校ではなかなか教えてくれない。
アメリカでは入試のない大学も多い
もちろんハーバードやスタンフォードなどの名門校は、SATやらGMAPやらのテストに加えて、エッセーや面接、過去のボランティア活動など様々な側面から生徒を評価し、合否が決まる。その一方で、自分が行っていた公立のカレッジなんかは、入試がない。
日本の大学にことごとく落ちたこともあり、運良くサンフランシスコのカレッジに行き始めたのがその後の自分の人生を決定付けたのは間違いないだろう。
あのまま受験に成功して日本の大学に入っちゃったりなんかしたら、正直これほどまでに熱中できる事に出会えていかの自信が無い。
専攻を決めるのも3年目から
自分の好きな事に出会えた一番の理由は、専攻を決めるのが一通り様々なクラスを受けてからの3年生になってからという仕組み。1-2年の頃はとりあえず必要な科目と興味のある科目を自分で選んで受けられた。
そうする事によって、一般教養、音楽系のクラスに加えて、デジタルデザインのクラスを取ったことでその後のフォーカスを決めることができた。
これがもし入学時から専攻が決まっていて、途中で他のことに興味が湧いても、なかなか変換するのが難しいだろう。もしくは、自分の中でこっそり諦めて地道に学ぶべきことを学んでいたのかもしれない。
でも、好きでもないことを学ぶのはかなりしんどい。そもそも興味がなければ深掘りもしないだろうし、単位を取る以上の労力をかける必要すら感じなくなってしまう。
自分の場合は、運よくデザインに出会えたことで、他の教科が単位ギリギリでも、デザインのクラスでは誰にも負けないレベルで頑張れた。
そもそも、4年制の総合大学にしっかりとデザイン科があり、現役バリバリのデザイナーが先生になっているのもありがたかった。
最近注目されているのはデザインやリーダーシップなどの分野
で、日本の場合であるが、現在教えていることのその多くが、暗記や計算などコンピューターやネットが得意とする分野が多い気がする。例えば「そんなことGoogleに聞けばすぐわかるよ。」的な内容だったりする。
その一方で、現実の世の中でどんどん必要とされてきているエリアは、クリエイティブ系の能力だったり、リーダーシップだったりするのではないかと思う。頭の良い人より賢い人。個人の処理能力よりもチーム全体のパフォーマンスをあげれる人など。
これは、特にアメリカでは顕著で、最近の従業員の待遇や給与水準にも反映されてきている。その理由の一つがおそらくそれらのスキルがGoogle検索やAIで代用しにくいエリアなのではないかと思う。
近いうちに単純作業や、知識重視の仕事、難しい計算などは殆どAIやロボットに取って代わられるのが目に見えているため、日本の受験勉強で費やすエネルギーの98%ぐらいは無駄になってしまうだろう。
それよりも面白いアイディアを出せることや、ユーザーを理解できること、そして多くの人を巻き込むことのできる能力の方が世の中では必要とされる。
皮肉なことにこれらのほとんどが学校ではなかなか学ぶことができない。もちろん日本の入試で試されることは皆無だろう。
最近のMBAではデザインを学ぶことも
アメリカだと、最近ではビジネス系の専攻でもデザインやプログラミングのカリキュラムを導入しているケースが少なくない。例えば、ハーバード大学のMBAプログラムでもデザイン思考のクラスを履修するようになってきている。
そして、一般的には文系とされているデザイン科も、数字やデータ的な側面から学ぶことで理系に分類される学位も増えてきている。ようなスキルを身につけ、今後のキャリアに活用するのかに重点がおかれるため、専攻、カリキュラム、学位全てがかなり臨機応変に構成され始めている。
文系と理系の2つに分ける限界
そもそも人間の属性を文系か理系かの二つに分けることに限界がある。冒頭でもある通り、今後注目されるクリエイティブ系の場合は、どちらに属すのだろうか?文系的な知識や能力も必要になれば、データやAIを活用する必要性を考えると理系的なスキルも必要になる。
では、理系の代表とも言えるエンジニア系はゴリゴリ理系を突っ走るのが良いのか?実はエンジニアとして会社から高く評価される人たちには、自分が作り出すものを相手にわかりやすく説明するための高いコミニュケーションが不可欠だし、ネット上で情報を配信することで注目を集めたければ、優れた文章力もかなり役立つ。
したがって、一見理系だと感じる分野で、文系的能力が求められるケースも少なくはないと感じる。
文系ですがエンジニアになっても良いですか?
例えば高校生の段階で文系・理系に分けてしまうことでの一番の被害者は生徒自身だと思う。日本の学生からよく相談される質問の一つに「僕は文系なのですが、やっぱエンジニアを目指すのは無理ですよね?」がある。僕の答えは「Why not?」
どちらに分類されるかでその後のキャリアが決まってしまう。これは、選択肢を減らし、未来への可能性も下げてしまう。
文系の人はエンジニアに向いていない、というしょーもないレッテルを貼ってしまう仕組みは罪である。そもそも、今後増えてくると思われるような、現在存在していない職業などはどのように解釈すれば良いのか?
例えば、UXデザイナー、なんて仕事が出てきたのはここ10年以内。果たしてこの役職に向いているのは、文系なのか理系なのか?
答えはシンプルで、両方であり、逆にそれだけでは足りないこともある。ロジカル的な考え方と、ユーザーを理解するコミュニケーション能力、そして新しい事を想像できるクリエイティブの能力も必要になってくる。
このままだと世界的に見ても日本の教育制度はリアルにヤバイ
めまぐるしく変化する現在の世の中において、数十年間もあまり大きく変化していない日本の教育制度は、世界的に見てもとても異質なものだと思われる。いまでもテストで電卓もパソコンも使えない、カンニングはNG、なんていうのは、信じられない。
実社会では、テクノロジーをどれだけ活用できるか、どれだけ効率よく裏技を使えるか、そしてクリエイティブな発想ができるかが勝負の中で、それを絶対的に否定して評価しているのは、優等生になればなるほど人間の可能性を押さえつけられてしまっているとすら感じる。
現に、うちのインターンを経て立派にデザイン会社を経営しているGoodpatchの土屋もINFOCUSの井口も両方大学を卒業してないしね。それ以外の子達は超高学歴だったのを考慮しても、今の日本の高等教育は、やっぱ時代に合ってないのかな、って思ってしまう。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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