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日本の新規サービス規制に思う事
2018年6月、日本国内の民泊に対する規制強化でAirbnbの足元の登録件数が約8割減の1万3800件まで減った。
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自分でも頻繁に利用しているサービスでもあり、当時これには大変大きなショックを受けた。
この動きは「ユーザーのためになる = 正義」の概念が強いサンフランシスコに住んでいると、大きな謎である。
正直、この規制は、ユーザーに素晴らしい体験を広めるのを全力で阻止しているようにしか感じられなかった。
おそらく内情としては様々な事情があり、お偉いさん達の正当な言い分もあるのであろうが、いちユーザーとしてみれば、この動きは弊害でしかない。
短期的な既得権益保護が長期的な崩壊を招く
それと同時に、おそらく今後海外から日本にくる方々や、国内で空いた物件を効率的に活用することで生活の足しにしていた方々などにも大きな影響が出るであろう。
そして、長期的に考えると、日本という国が自分で自分の首を絞めることで、自己破滅を招く原因にもなりかねない。
イノベーション後進国まっしぐら
この状況で政府主導のオープンイノベーションに対する取り組みなんてダブルスタンダード極まりないし、ちゃんちゃらおかしいと思われても仕方ないだろう。
行政的な仕組みや動きがない中で、建前だけの取り組みをしたところで、焼け石に水である。
テクノロジーで社会問題を解決… できねーじゃん!
もともとAirbnbは、イベントなどで急激に同じ都市に人が集まった際の救済策として始まった。
そもそもホテルの部屋数が足りないし、ゲリラ的に人の家に泊まる危険性と不便性をテクノロジープラットフォームの力で改善するのが目的だった。
そして、その素晴らしい体験を通じてユーザーにそこに住むように旅行をしてもらおうというのが最終的なゴールになっている。
急激なニーズでホテルの値段が不当につり上がったり、そもそも足りない部屋数など、社会的な問題をテクノロジーの力で解決するという、スタートアップの存在意義として最も正当な考え方だろう。
しかし、それに対して政府の強い力で押さえつけてしまうと、その目的が達成できなくなるだけではなく、次から起業家を目指す人のモチベーションも下がってしまう。
アメリカでも出る杭は打たれるが
そもそも、新しいサービスが出てくると注目が集まり、そして叩かれる。これはアメリカでも日本でもどこの国でも変わらないだろう。
実際、Airbnbの本社のあるサンフランシスコでも、政府とのせめぎ合いは確実にある。現にUberもAirbnbも確かにグレーゾーンで始まったことで、行政からの圧力は半端なかった。
それに対して例えば、Airbnbは定期的にホストユーザーを一斉にサンフランシスコの本社に集め、無料で食事を振舞いながら、行政に対しての働きかけの勉強会を提供し、より良い環境づくりを目指している。
そこでは、どの政治家にどのようにアピールするべきか、その理由の提示方法や、有権者としてのプレッシャーの掛け方などをしっかりと説明することで、自分たちのサービスの継続を実現している。
その結果もあってか、サンフランシスコ市内の物件に関してはホテル同様の宿泊税を市に納めることで引きづつき物件の掲載および利用が可能になるように折り合いをつけた。
この辺もユーザーを犠牲にせずに行政と上手に、そして対等に立ち回った例であろう。
新規サービスが原因じゃない。ユーザーが正しい選択をしているだけだ
海外でUberを一度でも使ったことのある人であれば、その便利さと卓越したユーザー体験に感動したことと思う。
もちろん日本国内だとタクシーの台数も多いし、サービスも良い。それでも、”Uberがあったらなー”と思う瞬間は少なくない。
これは、根本的にUberがタクシーの代わりになっているわけではなくて、そもそも体験が格段に良いからである。
同じく、Airbnbに泊まる人がホテルよりも高い価値を感じているのであれば、ホテルに泊まらなくなるのは自然な流れ。
例えば、アメリカでは下記のような新しいサービスが提供されてから既存のプレイヤーがどんどん消えていっている。しかしその原因は既存業者にもある。
- 誤: Netflixによってビデオレンタルが消滅 → 正: 延滞料金が高すぎた
- 誤: Uberによってタクシー業者が倒産→ 正: 横柄なドライバーと面倒なチップのシステム
- 誤: iTunesがCD販売を激減 → 正: お店に出向いてアルバム単位で高いお金を払って買わなければならない
- 誤: Amazonによって実店舗が大打撃 → 正: わかりにくいレイアウトと質の低いカスタマーサービス
- 誤: Airbnbによってホテル業界が大打撃 → 正: 物件の少なさ、時期によってのぼったくり価格
- 誤: スマホの出現でガラケーが消滅 → 正: 金儲け優先のクローズドなエコシステム
消費者は単純により良い体験を得る方を選ぶのである。その点においては、既存のサービスの不振を新規参入業者のせいにするべきではない。そもそも既存のサービスの努力が足りないのが原因なのだから。
自由競争の中では消費者がより良い体験のサービスを選ぶのは当然であって、そこを行政の力でねじ伏せようとするのは、強い重力で強烈に落下しているのにそれに対して無理に抵抗しようとしているのと同じ。
結果的にはユーザーに対しての嫌がらせに近い状況を生み出してしまう。
そして、既存の業者を過剰に保護すれば、より良い体験を提供しなくても良くなり、サービス低下を招き、最終的にワリを食うのは消費者になってしまう。
どんどん不便になっていく日本での生活
今回のエアビー問題のように、新しいテクノロジーを活用してより良い生活を実現するようなサービスを日本で展開するのは至難の技だろう。現にUberもSpotifyなどの企業もかなり苦戦している。
その結果、ユーザーとして海外では日常生活になくてはならないようなサービスが使えなかったり、仕事でも便利なクラウド系のサービス利用禁止だったり、キャッシュレスが一向に進んでいなかったりなど、何かと不便が多すぎる。
こんなことが続きすぎると、生活インフラの欠如に近い状態になり、世界においていかれる国になってしまう。そして長期的に見ると、海外からの旅行客や移民が減るだけでなく、もともと住んでいる人もやってられなくなるだろう。
ラップにするなら、
“Uberもねー、エアビもねー。
コンビニは、あるけれど、キャッシュレス、進んでねー。
おらこんな国やだー。おらこんな国やだー。
海外さ出るーだー。”
ってなりそうである。
“上が決めたことだ、しょうがない”をやめよう
今回の件に対して”行政が決めたことだからしょうがない。それに従おうとしなかったAirbnbが悪い”といった意見もあるようだが、この”しょうがない”文化がある限り、新しいイノベーションはなかなか生み出されないだろう。
以前の「アメリカ企業が日本企業に勝っている一つの事」でも紹介したが、アメリカ人の感覚ではこの、”しょうがない”という感覚が薄く、絶対にどこかに打開策があるはずだ、と信じて進めるケースが多い。
と、言いながらも、結局はイノベーションには卓越したロビイング活動が不可欠ということなのだろう。
だとすれば、やはりどうしても大企業が有利になるのは明白で、新しいことを通じて社会を改善しようとしているスタートアップは不利なってしまうだろう。
新しいイノベーションを作り出すには海外で取り組む方が良いかも
こんな状況の日本国内では、イノベーションを生み出すようなカルチャー、マインドセットを醸成するのは非常に難しく、やっぱ国内だけで生み出すのには限界があると感じる。
対して、それこそシリコンバレーなど海外の環境に触れることで出てくる新たなアイディアやビジネスモデルも絶対にあるだろう。そして、それをアーリーアダプターにぶつけることで新規事業を生み出す仕組みが必要だと考えている。ビートラックスのサービスもこの考え方を元に提供されている。
“一番の支援は助成金や政府が運営するインキュベーション施設などだけではなく、起業やスタートアップコミュニティが生まれやすくするために旧態然とした法規制や商習慣の排除。支援をするよりも邪魔するのをやめる方が近道なのかもしれない。”
日本が大好きだからこその憂いである。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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