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世界を変えられなかった12のサービス ~第一次ドットコム時代のアイディア~
ここ数年でオンラインサービスの普及により、消費者を取り巻く環境に大きな変化が訪れ、サービス提供側も最新のテクノロジーを活用した、斬新なビジネスモデルが生み出されいる。今でこそ多くの商品やサービスをオンラインで受ける事が可能であるが、その多くはここ数年で生み出されたものが多い。
しかし、以外にも斬新に思われるそのアイディアの多くは、実はネットが一般消費社に普及し始めた1990年代後半に生み出されたモデルに極似している。
その当時は家庭向けネット環境が整っていなかったり、スマホが存在していなかった事もあり、”時代が早すぎた”感がある。一方で、そのサービスの内容的に、オンラインでの普及が難しいような奇抜なアイディアもある。
その時代はWeb系サービスの前例がほとんど無いと行っても良い時代だったので、どんなユーザーがどんなニーズでどのようにネットを活用するかすら全く分からない状態だった。
その一方でインターネットを活用したビジネスに対して市場の期待は高まるばかりで、”全てがネット化する”というコンセプトを信じて、巨大な資金が流れ込み、株価の高騰も招いた。そして次から次へとネット系の企業が1-2年の超短期スパンで上場。それがいわゆる第一次ドットコムバブルである。そんな状況から、当時は今以上に猫も杓子も”○○○.com”とう名前の会社を立ち上げ、ネット系サービスの提供を試みていた。
2000年前後のドットコムバブルとその終焉を示すNASDAQの株価推移
しかしその多くは2000年前後に訪れたドットコムバブルの終焉に合わせて、ほとんどが消滅してしまった。その頃は、Uber ファウンダー Travis Kalanick 驚異の失敗歴でも触れられている通り、極短期間でネット系ビジネスに対して市場の動向と世の中の風潮が180度変わってしまった。そんな時代の中でも逆風に立ち向かい、今では見事なまでの地位を獲得している、Yahoo, Amazon, eBayなどの企業もある。その一方で、ネット系スタートアップはIPOしたものも含め、時代の流れに飲み込まれ、そのほとんどが消滅した。実は、Googleですら、ドットコムバブルの後にリリースされたサービスでなのある。
今振り返ってみると、消滅してしまったサービスの中には現代であれば十分通用しそうなビジネスモデルや、実際にそこからヒントを得たと思われるサービスも存在しており、過去から学ぶ”逆タイムマシンビジネス”が実現できる。過去のアイディアから学ぶ事で未来のイノベーションを生み出す為のヒントが隠されている。
ドットコムバブル時代の15のサービスとその現代版
1. Webvan
サービス概要: 第一次ドットコムバブル最大の失敗がWebvan. 全ての商品がオンラインでオーダー時代になると信じ、いち早く食料品のEC+配送サービスを提供。サービス開始後わずか1年で上場、12億ドルの評価額、2年で従業員4,500人、26都市にて展開するまで成長。
活動時期: 1999-2001
失敗理由: 物流や倉庫設備に10億ドルもの投資を行い、破竹の勢いの2001年、我に返った投資家がユーザー数と利益率が巨大投資に見合わない事に気づき、株価が暴落。IPO時には一株$30だった株価も倒産直前には$0.06まで下落し、2,000人の従業員を解雇。その後見事に倒産。
現代の類似サービス: Amazon Fresh, Instacart
2. Pets.com
サービス概要: ペット用品をオンラインで売るサービス。1998年のサービス開始後実に268日でNASDAQに上場。かわいらしい犬のマスコットを活用し、120万ドルを掛けたスーパーボール向けコマーシャルや米国大手デパートMacy’sとのタイアップ等、大々的な広告宣伝を展開。
活動時期: 1998-2000
失敗理由: 市場規模の大きいペットフード業界に参入したECサービスであるが、とにかく投入した資金規模 (300万ドル) が大きすぎた。売り上げが思う様に上がらず、慢性的な赤字が続き2年弱で倒産。
現代の類似サービス: Wag
3. eToys.com
サービス概要: おもちゃ製品のECサービス。1997年にリリース直後からクリスマスシーズンには最もアクセスの多いサイトにまで成長。Amazonやトイザらスなどともパートナーシップを結ぶ。1999年にIPO
活動時期: 1997-2001
失敗理由: 1999年のIPO当日より株価が$20から$78に跳ね上がるも、売り上げが当初の期待を大幅に下回ってしまった為に、失速。2000年のQ1だけでも7450万ドルの赤字を計上。最終的に2.5億ドルの負債を抱え2001年に倒産。
現代の類似サービス: Yoyo
4. Napster
サービス概要: インターネットを介してユーザー同士で音楽ファイルのやり取りが可能なサービス。P2P型MP3ファイル共有サービスの先駆け的存在。当時20歳だったファウンダーの1人、ショーン・パーカーは一躍注目の的となった。
活動時期: 1999-2001
失敗理由: 音楽ファイルをネットでシャアするという全く新しいビジネスモデルの為、米国のレコード会社がその違法性について指摘し、同社を告訴。最終的には2600万ドルの賠償金を支払う事になり、サービス停止。
現代の類似サービス: Spotify
5. Kozmo.com
サービス概要: ビデオ、ゲーム、DVD, CD, 本、食品などをオンラインでオーダーし、1時間以内で無料で届けるサービス。また、米国内のスターバックスの店舗に返却ボックスを設置し、そこに入れるだけで返却が可能にした。
活動時期: 1998-2001
失敗理由: 1999年の年商は2億ドルにまで達成したが、無料配送サービスが負担となり2300万ドルの赤字であった。2000年にはスターバックス社との5年契約を締結。IPOの申請を行ったが、上場することは出来なかった。2001年4月に1,100人の従業員を解雇し倒産。2013年9月に近い将来にサービスの再開をアナウンスした。
現代の類似サービス: Netflix, Amazon
6. boo.com
サービス概要: イギリスを拠点としたファッションEC系サービス。ブランド製品をオンライン購入可能という当時では画期的なサービス。
活動時期: 1998-2000
失敗理由: 思った以上に売り上げが上がらず2年間で1.35億ドルの資金を損失。サイトの使いにくさや、他のアパレルブランドのEC参入も失敗の原因とされている。
現代の類似サービス: Guilt, Fab., Beautylish
7. Beautyjungle.com
サービス概要: シカゴを拠点としたコスメ系ECサービス。幅広いセレクションと高級ブランドの取り扱い、そして小売店のECサイトマーケットプレイス的な位置づけで差別化を計った。
活動時期: 1998-2000
失敗理由: コスメをオンラインで購入するユーザーが思った以上に多く無く、予想をはるかに下回る売り上げでリリースから約1年でサービスを停止した。
現代の類似サービス: Birchbox, Beautylish
8. SixDegrees
サービス概要: 6人を介せば世界中の人々と繋がれるというコンセプトの元、見知らぬユーザー同士の間に共通の友達を表示し、掲示板やメッセージを使う事で繋がるサービス。ソーシャルネットワーキングサービスの先駆け的存在で、2000年には100万ユーザー登録、平均で毎時4,000ユーザー獲得を達成。
活動時期: 1997-2001
失敗理由: 広告収入が思う様に伸びず、2001年にビジネスを売却した。
現代の類似サービス: LinkedIn, Facebook
8. Go.com
サービス概要: ディズニーが始めたポータル系サーチエンジンサービス。ディズニーが所有するコンテンツ関連を充実させた。
活動時期: 1999-2001
失敗理由: AOLやYahooなどとの競合に飲み込まれ、ユーザーの獲得に苦戦。また、ディズニー社のサービスである事からアダルトコンテンツを検索出来ないというハンデも原因とされている。
現代の類似サービス: Yahoo, Google
9. Flooz.com
サービス概要: 新たな仮想貨幣として市場をにぎわしているBitocoinであるが、実は十数年前にも同じコンセプトのサービスが存在していた。Flooz.comと呼ばれる当サービスは、ポイント制度を利用して消費者ユーザーとストア間でのバーチャル通貨での購入が可能になる。
活動時期: 1999-2001
失敗理由: テレビコマーシャルを含む大々的なチャンペーンを通じてのユーザー獲得施策を行っていたが、おもったよりユーザーが集まらなかった。加えて、マネーロンダリング用に悪用されたりもしたことも影響し、2001年にサービスをクローズした。
現代の類似サービス: Bitcoin
10. Pseudo.com
サービス概要: 最も早い段階でオンラインでの音楽、映像コンテンツを配信したサービス。オンラインラジオからスタートし、ライブ動画配信、最終的には最大級のチャットルームサービスも提供した。
活動時期: 1993-2000
失敗理由: 地道にユーザーを獲得し、会社の成長を見越していた矢先にドットコムバブルの終焉とともに投資が引き下げられ倒産。
現代の類似サービス: Ustream, Livestream
11. Dodgeball
サービス概要: スマホが普及する随分も前から提供されていたロケーションベースのサービス。ユーザーは自分のいる場所を入力するだけで近くにいる他のユーザーを知らせてもらえる。
活動時期: 2000-2001
失敗理由: ニューヨークの学生達によって開発されたサービスであるが、iPhoneなどの適切なデバイスが無い時代であったので、あまり普及しなかった。
現代の類似サービス: Four Square
12. Audiogalaxy
サービス概要: ネット上にアップされている音楽ファイルをダウンロードして聞く事が出来るサービス
活動時期: 1998-2002
失敗理由: 著作権フリーのコンテンツを無料で利用出来るコンセプトサービスであったが、商業コンテンツをシェアするユーザーが後を絶たず、Napsterの事例と同じく権利問題の訴訟が多発し2002年にサービスストップ。 2010年にこっそりサービス再開をしたが、2013年にまたクローズした。
現代の類似サービス: iTunes
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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