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UX Design x Company Value 〜ビートラックスセミナーより〜
ここ数年でテクノロジーが進化し、全てのプロダクトがユーザーへの価値を提供するための「サービス」に変わってきています。そして、優れたサービスを提供するには、おのずと優れた顧客体験を提供する必要があります。これからはプロダクトの種類や内容に関わらず、どんな商材でも顧客に提供する利用体験=ユーザーエクスペリエンス (UX) こそが顧客満足度をアップさせる為の最重要課題になのです。
以前に東京で開催されたセミナーにて上記のUXと企業価値の関係を説明しました。その内容を分かりやすくまとめていただいたので、ご紹介します。
btrax主催の「ユーザーエクスペリエンス(UX)が企業にもたらす価値とは〜Value of UX for Businesses〜」というテーマのセミナーに参加してきたので、レポートを書こうと思います。
btraxとは
btrax (ビートラックス)はアメリカ、サンフランシスコ・シリコンバレーを拠点にグローバル市場向けブランディング、マーケティング、リサーチ、ユーザーエクスペリエンスデザインサービス提供するコンサルティング会社です。もとはWebデザイン会社だったのですが、ここ2、3年でUXの需要が高まり、2013年よりUXのデザイン(コンサル)会社として経営されています。本日は、そのbtraxのCEOであるBrandon K. Hillさんがサンフランシスコより一時来日とのことで登壇されました。
目次
- ユーザーエクスペリエンス(UX)とは?
- どうしてUXが必要なの?
- UXの役目って?
- UI vs UX?
- UXタイムラインとは?
- 5 layers of UX?
- まとめ
ユーザーエクスペリエンス(UX)とは?~What is user experience(UX)?~
Everything that affetcts as users interaction with that product or service.
ユーザーがサービスやプロダクトを利用するにおける全ての体験がUXです。
どうしてUXが必要なの?~Why it is so important?~
Customers select products or services based on the experiences their can get.
消費者はモノよりやサービスよりもその体験に価値を感じるようになってきました。
UXを感じるときに分かりやすい例はこちら。
ex) STARBUCKS vs 吉野屋
STARBUCKS COFFEEは一番安いショートサイズのドリップで300円。一方、吉野家の牛丼は並盛で280円。(+お茶もついてきますよね)
では、なぜみんなSTARBUCKSに行くのでしょうか。
STARBUCKSに訪れるユーザーはモノの値段にお金を払っている訳ではないのです。どのような時間を過ごせるか。この体験における価値に対してお金を払います。その価値は人によって様々です。
- ゆっくり時間を過ごせる
- おしゃれな感じがする
- 店員さんがかわいい、かっこいいetc…
UXを想像するときにITサービスを想像しがちですが、UXとは日々の行動全てにおいて利用されます。
他の例も見てみましょう。
ex) Tesla Motors
様々な革命を起こしてきたイーロンマスクが設立者として有名なTesla。シリコンバレーで制作された今話題の電気自動車です。顧客満足度はポルシェを超え、上場後約1年で株価は3.5倍。
人気の秘密は?
実は、Tesla車の顧客は車の性能をあまり気にしません。得られるエクスペリエンスを重視しているのです。
Tesla車で得られるエクステペリエンスとは
- スマホアプリでリアルタイムで自分の自動車の状態が分かる。
- タッチパネルで操作が可能。
- キー おもちゃトランクを触るとトランクがあく。
- 乗り続けると性能がよくなる 自動車をソフトウェアが制御。ダウンロードアップデートを繰り返し、車の性能が高まる。(通常の車と同様に、ブレーキを離した時にちょっと進んだほうがいい、というユーザーの声が反映されアップデートが行われました)
また、オーダーはオンライン。購入体験としても新しい感動を得られます。
Teslaはもはや車ではなく、4つのタイヤがついたスマートデバイスです。ユーザーが受け取るエクスペリエンスはスマホやタブレットに近いものなのです。
その他にも昨年より、開発者用に配られているGoogle Glassは、「デバイスでなく利用体験」を提供し、その利用体験を味わいたいと待ち望んでいるユーザーが多くいます。(ちなみにBrandonさんは既にGoogle Glassを使ったそうです)
このように成長を続けている企業がUXを重視していることからUXの重要性を感じることができますね。
UXの役目って ~The roles of UX?~
UXがもたらす価値
- 対ユーザー: 使いやすい。
- 対ビジネス: 売り上げが上がる。
- 対ユーザー+ビジネス: 期待値が合致している。
優れたUXは上記の3つのバランスが絶妙に取れています。
顧客がプロダクトを通して受け取る体験こそが企業や商品のイメージ作りに直結しているので、優れたエクスペリエンスをユーザーに体感してもらう事は、もっとも良いブランディング構築方法なのです。
優れたユーザーエクスペリエンスは、ユーザーのゴールとビジネスのゴールが一致する。
~UI vs UX?~
UIとUXの違いとは?
- UI is 見た目を含むデバイスの操作画面。
- UX is 操作したことによる得られる体験。
こちらの例を見てみましょう。
ex) HEINZ ケチャップ
ボトルとして、かっこいいのは左側、つまり昔のHEINZかもしれません。
でも、UXを考えるとバリューは逆転。
昔のHEINZはボトルはかっこよくても、全然ケチャップが出ない上に、出たと思ったら飛び散ってしまうのです。
そう考えると、UIとUXは必ずしも比例するとは言えませんね。
UIのクオリティは、ユーザーが費やした時間量に反比例する。
UXのクオリティは、ユーザーが費やした時間の濃さに比例する。
~User Experience Timeline~
これから述べることは、ユーザーエクスペリエンスをデザインする上で必ず理解しておかなければならないことです。UXとは狭い概念ではありません。
How a customer experience a product.
つまり、顧客がどのようなプロセスで体感するのかが重要なのです。
- Marketing → Know
(どのようにして知ったか。ユーザーが一番最初に知るきっかけはマーケティングやプロモーションです。)
- Channel → Trial & Buy
(店舗や営業などから購入する)
- Product → Use
(多くはここだけをフォーカスしがちです。しかし、商品を使うエクスペリエンスはマーケティングとチャネルを必ず経由します。)
- Customer Service → Support
(買っておしまいではありません。ユーザーに感動体験は、購入してからも続きます。)
商品がよくても体験価値が低ければ自ずと総合的なエクスペリエンスは下がり、企業に対するエクスペリエンスも下がるのです。アメリカでヒットしているサービス(スタートアップに多い)は一括してエクスペリエンスが優れている場合が多いです。
日本では部署が分かれているため一連のエクスペリエンスがぶつ切れになっている場合があります。その点、先ほど例にも挙げたスターバックスは4つのプロセスが密着しています。
- 看板 Marketing
- 購入 Channel
- 商品 Product
- 対応 Support
スターバックスなどの飲食店ではUXをスムーズに考えやすいかもしれませんが、商品になるとプロセスもタイムラインも部署も分かれています。総合的なエクスペリエンスデザインは見えづらくなりがちですが、全体的な部分を考える必要性があります。
なぜなら、ユーザからすれば買うときも使うときも対応もひとつの体験であるからです。
5 layers of UX?
- Strategy: 戦略立案
(ユーザーゴールとビジネスゴールの選定。) - Scope: プロジェクトスコープ
(どの範囲でどういうモノを作る?マーケティングをどうするか?ペルソナは?ビジネスにおける必要用件定義。) - Structure: 構造
(マーケティング、チャネル、プロダクト、サポート どのようなカタチづくりを行うのか。ユーザーフローはどうなるか。) - Skeleton: レイアウト
(Webサイト、ワイヤーフレーム、プロトタイプ、コンテンツ作成。) - Surface: 視覚的デザイン
(ビジュアル的なデザイン、プロダクト。ブランディング、インタラクティビティ。)
UXデザインとはArt and Science、直感的な感覚と科学的に実証されたものであるのです。
まとめ
近年、UXはbuzz wordとなっていますがUXとは決して新しいことではありません。
でも、最近になって注目されてきたのは何故でしょう。
1つ、プロダクトの性能がすごく高くなってきたため。
2つ、そのため性能レベルでの比較はしづらくなってきたため。
差別化がしづらくなると価格競争になってしまいがちです。だからこそ、商品自体の魅力よりも一貫したエクスペリエンスが重要となってきているのです。
Q & A
既にプロダクトがリリースされており、改善段階の場合はどうやってUXフロー行えばいいですか?
何が一番ボトルネックになるのかを数値から判断し、仮説を立てマーケティングやチャネルの部分まで立ち戻ってチューニングしましょう。
実は、プロダクトのUXを計ることが最も難しいのです。HAPPY値カウンターを作れば売れるのではと思っていますね(笑)
どのような職種の人がUXを見ればいいのですか?
全部の部署が全てやらなければいけないというわけではありません。アメリカでは既にUX departmentというUXに特化した会社があります。
UXは基本はプロダクトマネージャーと呼ばれる人が最初から最後まですべてを見ます。なので、全体を通して見ることができる人が適していると思います。
UIよりもUXが勝っているためにヒットしている商品はありますか?
ex) Fitbit フィットネスグッズ
ハードウェアもとても簡単なつくりだし、数値計測も大雑把です。しかし、このようなプロダクトを医療系などの専門の会社が作った場合、ユーザーからするとおもしろくないものになりがちなのです。このプロダクトにおけるユーザーニーズは楽しい、簡単、分かりやすいというUXですから。
つけた見た目がかっこいいは派生物でしかすぎません。しかし、どれだけかっこよく見えるかということはUXにつながります。
近年は、精度 < 体験が重視されています。これらをアメリカは得意としており、日本は精度を一番に求めてしまうので不得意としています。相手のことを考えてプロダクトを考えること、それが重要なのです。
どんな人がUXデザイナーに向いていますか?
アメリカITベンチャーではグロースハッカー、UX専門職(UX Designer)と呼ばれる人たちが存在します。
デザイナーの一種と勘違いしがちですが、実は一般的に定義されるデザイナーとは異なります。UXデザイナーは全体の設計をする人であるため、グラフィックデザイナーやUIデザイナーとは全く異なった技術を持ち合わせているのです。どちらかというと人間工学や心理学、問題解決能力が高く、どうやったら改善できる?と考えられる人が適しています。
先ほど例に出したテスラーで採用する人は、車のバックグラウンド知識は不必要だそうです。問題解決に長け、エクスペリエンスを提供できる発想力を持つ人を求められているそうです。
これからの時代、モノづくりのエンジニアの需要とは?
技術が進化し、開発者の単価が下がっていますね。需要はエンジニアの定義によると思います。サンフランシスコでは仮説をたててデザイン設計、そしてプロトタイプをつくることが重要とされています。プロトタイプで動かすことが完了したら、量産は中国などに作ってもらうことも多いです。ですから、プロトタイプを作れる開発者はニーズがありますね。
元は、デザイナーであったが、外部と交流し教育し、設計やプロトタイプを作れる開発者を育てているケースが増えてきています。
ユーザーの声を聞くときに注意すること
何を聞くか、が重要です。
ライフスタイルパターンなどあえて商品に関係のない質問をしてみたり。
商品について質問はあまりよくないですね。
いくらだったら払いますか?とかどう思いますか?という質問は、避けた方がいいでしょう。
人間は心理学上、いい答えを言ってしまうし傾向にあるし、想像力に欠けてしまいますからね。
セミナーのレポートは以上になります。
今回のセミナーはでSTARBUCKSのUX例が多く出てきましたが、私はSTARBUCKSでアルバイトをした経験があるので感動体験の提供はすごく身近に感じました。お客様が入店されたときの「おはようございます」の挨拶から、商品の説明、ペイストリーの整列、ドリンクに対するこだわり、そして提供する際また帰られる際の配慮など、全パートナー(スタッフ)が徹底していましたから。
しかし、ユーザーの体験という意味では一緒なはずなのにどうしてかWebサービスの場合は点で見てしまいがちです。視野を広げてユーザーの”知る”から”体験する”までの一連の流れをシュミレートすることが必要だと再認識させられました。
また、ネット業界だとビジネスに偏ってしまいがちですが、ユーザーニーズ達成とビジネスニーズの達成はイコールであることを実践し、伝えていける人材になれたらいいな感じました。
今後もbtraxさんは2ヶ月に1回くらいのペースでセミナーを行うそうなので機会があれば、参加してみてください。(無料です♪) 彼らが提供しているセミナーやサービスのお問い合わせはtokyo@btrax.com まで。
筆者: 鞍立寛子
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■開催日時:
日本時間:2024年12月6日(金)9:00
米国時間:12月5日(木)16:00 PST / 19:00 EST
*このイベントはサンフランシスコで開催します。
■参加方法
- オンライン参加(こちらよりご登録いただけます。)
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- Email(英語):sf@btrax.com
世界有数の市場規模を誇る日本でのビジネス展開に向けて、貴重な学びの機会となりましたら幸いです。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。