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スマートウォッチ向けUXデザイン入門1 ~ウェアラブルに必要なエクスペリエンス~
最近はスマートフォン関連サービスやアプリの熟成が進み、スマホの”次”に来るデバイスに注目が集まっている。特にサンフランシスコ・シリコンバレーエリアではIoTやウェアラブルに代表されるようなハードウェアとソフトウェア融合させ、ユーザーに対して新しいサービスを提供するスタートアップが増えている。
彼らは既存のスマホでは達成出来なかった価値をユーザーに届ける事を目的と定め、最新テクノロジーを活用し新たな市場開拓を進めている。
これからはコネクテッドデバイスの時代
今まではパソコンだけでしか使っていなかったソフトをスマホで利用し、場合によってはタブレット、テレビなどでも利用可能になって来ている。これからの時代は一つのアプリケーションに対して、複数のデバイスでの利用が常識となる。
複数のデバイスがインターネットに接続し、ユーザーがその利用シーンに応じて異なるそれらを利用する「コネクテッドデバイス」型ユースケースが増えその環境を取り巻くエコシステムが形成され始めている。
米国Cisco社の試算によると、2020年までに世界で実に500億ユニットのコネクテッドデバイスが普及される見込みだと言う。それに対して、デバイスやコンテンツを作成する側もユーザーに対して最もふさわしいUIやUXのデザインを行う必要がある。そ
の場合、ユーザーが求める利用価値がそれぞれのデバイスで異なるので、新たな利用体験の設計が不可欠となるだろう。また、デバイスによっては、今までに想定していなかった利用シーンを考える必要も出てくる。新規デバイスの場合は特に。
デバイスごとに異なる利用方法
スマホの次はスマートウォッチ
そんな注目を集めている次世代のデバイスであるが、アメリカでは現在までに様々な憶測と検証が行われている。FitbitやNike Fuel Bandに代表されるようなフィットネス系のデバイス、視覚ウェアラブルのGoogle Glassとその競合たち、そしてMotrola 360, Apple Watchなどが話題のスマートウォッチなど。中にはIoT型のアクセサリーや下着なども話題を集めている。そんな中で最も現実的に考えられるのがスマートウォッチだろう。
理由としては、これまでに装着していなかったデバイスをユーザーに新たに装着させるのはかなりハードルが高く、最初はその目新しさから購入したとしても、いつの間にか使わなくなる、着けなくなる自体が発生する。
また、フィットネス系のウェアラブルの様に時計に加えてもう一つ装着しなければならない場合は、両手に何かしら装着する事で、見た目がやや滑稽になってしまう。
その一方で、既に世の中の多くの人々が既に装着しているのが時計である。この時計という長年人類に愛されて来たデバイスをスマホやネットと連動する事でスマート化させたのがスマートウォッチである。
これならば新しく何かを装着する必要が無い為、ユーザーにとっても少しは取っ付きやすいだろう。AppleがApple Watchの発売を発表したのも理解出来る。
スマートウォッチに必要なUXとは
その一方で、ユーザーへの利用体験をデザインするUXデザインの側面から考えると、新たなチャレンジにもなる。その場合、忘れてはならないのが、デバイスが異なってもUXの役割は「可能な限りシンプルな利用体験を通してユーザーの問題を解決する事」に変わりないという事。
それぞれのデバイスがユーザーに提供する価値を最大限に引き出すUXが必要になる。それを達成するにはデバイスごとに最適なユーザー体験を与えるインターフェイスやユーザーエクスペリエンスが不可欠になる。
例えば、Macのパソコンに実装されているOS XとiPhoneやiPadなどのデバイスのiOSが敢えて異なっているのは、それぞれのデバイスがユーザー提供するが価値が異なり、OSが提供するべきUXが異なるからである。
従って、スマートウォッチを代表とするウェアラブルデバイスのUXを考える場合は、一度既存の概念をリセットする必要があるだろう。
スマートウォッチ向けUXデザインプロセス
数ヶ月前よりbtrax社でも実験的にスマートウォッチ向けのアプリ開発を開始し、そのデバイスが持つ可能性と限界を計りながら、ユーザーに提供出来る価値の選定と新しいビジネスモデル生成に関しての仮説検証を繰り返している。その知見を元に考えたスマートウォッチ向けUXデザインのポイントを紹介する。
1. そのデバイスの得意、不得意を認識する
どのようなデバイス向けのUXデザインを行う際ににも、最初のプロセスはそのデバイスが持つ長所と短所を理解する事。実装されているセンサーや構成要素を理解し、スマートウォッチだからこその強みを最大限に引き出すUXデザインを心がけ、スマホが得意な部分との住み分けを行う。一つのポイントとしては、無理に複雑な利用方法を避け、スマホが得意な事はスマホにやらせると割り切る。
ウェアラブルデバイスを構成する要素
- ハードウェア
- アプリ
- センサー
- ユーザーからのデータ
スマートウォッチの長所
- 手が離せない状況でも利用可能
- アウトプット情報が目につきやすい
- データの自動計測/データ獲得
スマートウォッチの短所
- 限定的な表示エリア
- 手動でのインプットが困難
- 電池の減りが早い
上記の様に、スマートウォッチは必要な時にだけ必要な情報を伝えることで、ユーザーの時間を無駄にしない点に最大のメリットがある。また、スマホよりも情報量が少ない分、ユーザーの時間を占有しないという価値も考えられる。
これはどのようなUXデザインに関しても共通している事であるが、そのデバイスがいろいろな事が出来るからといって、いろいろな事をさせる必要はない。むしろユーザーにストレスを与えない程度の利用方法の提案が必要である。
2. 考えられる利用シーンの想定を行う
次にスマートウォッチの利用シーンを想定する。スマホとの利用価値の違いを理解し、スマートウォッチならでは利用体験を考える。その場合は、ユーザーペルソナの設定を行い、最終的なユーザーゴールの選定をする。
スマートウォッチの利用シーン一例:手が離せない状態
- 料理中
- 運転中
- 満員電車
3. デバイスやOSメーカーがリリースしているデザインガイドラインを読む
既に発表されているスマートウォッチデバイスや実装OSに対しては、UXやUIに関するデザインガイドラインが発表されている。デザイン作業を開始する前にまずはデザインガイドラインを熟読する。
4. 他のデバイスやプラットフォームとの連動を想定する
実際にスマートウォッチを利用して分かる事であるが、そのデバイス単体で出来る事が非常に限定的である。従ってアプリを制作する際には、他のプラットフォームとの連動を想定し、それに沿ったUXのデザインが不可欠である。例えば外部サービスとAPIなどでコネクトする事で、アプリの可能性が格段に広がる。
5. ユーザーが利用してた既存のデバイスの存在を意識する
スマートウォッチに対するUXをデザインする際の大前提としては、デバイスが基本的には「時計」であるということ。どんなに凄い機能が実装されていたとしても、ユーザー目線で考えるとそのでばいすは、あくまで時計プラスα。逆に全く新しいデバイスという感覚を与えてしまうと、ユーザーが違和感を感じるだろう。
UXの基本はユーザーには直感的な体験を提供することであるため、やはり「時計」がユーザーに与える利用体験の枠をはみ出さないような設計が重要である。その為には、出来るだけユーザーにインプットをさせず、その代わりデータの自動獲得するなどの方法で、使い易さを優先する。
6. ユーザーの脳が処理出来ないレベルのUXは無意味である
そして、もう一つ重要なのは、ユーザーが人間である以上、人間の脳が一度に処理出来る情報量には限界があるという事。人気のスマホアプリのその多くが、機能を限定したかなりシンプルなものであることからも分かる通り、極力機能や仕様を削る事で、ユーザーにストレスを与えないUXデザインを行うべきなのは。デバイスがスマートウォッチなっても変わらない。むしろそのデバイスの特性上、より一層シンプルな方がよいだろう。
まとめ
アメリカ国内の調査によると、米国スマホユーザーは平均で一日125回スマホをチェックする。今後スマートウォッチが普及すれば、そのチェック回数を減らし、ユーザーの時間を節約してあげる事で新たな価値を提供出来るかもしれない。
その一方で、全く新しいデバイスの搭乗に多くの消費者が様子見である状態もいなめない。しかし、一昔前のiPhoneがそうだったように、Apple Watchなどのビッグプレイヤーが市場をにぎわす事になれば、我々デザイナーの仕事もよりいっそうエキサイティングになってくる事は間違いない。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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