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シリコンバレー発、人の課題を解決する未来のロボットたち
- サンフランシスコでは、「人の生活にある課題を解決するための手段」としてテクノロジーロボットが生活に密着し始めている
- デリバリーロボットはEコマースやオンラインオーダーの普及による人手不足・コスト・エネルギー・交通などの問題に一役買っている
- 移動手段にもロボット技術が使われている。InMotionは小回りもきく、電動一輪車としてサンフランシスコ民からも利用されている
近年、日本でも商業施設や宿泊施設などで案内ロボットを見かけるようになりましたが、果たしてロボットが我々の生活に密着していると言えるでしょうか。
物珍しさから、エンターテイメントとして扱われたり、大型の施設や国際イベントで大々的にお披露目・導入されたりしているのをみることは増えてきましたが、人の生活に寄り添い、共存しているシーンを見ることは少ないのではないでしょうか。
一方、ここサンフランシスコでは、実際にロボットのテクノロジーを使って生活をしている環境があります。もちろん世界トップクラスのテクノロジーが集まるエリアですが、テクノロジーを技術革新に留めることなく、あくまで「人の生活にある課題を解決するための手段」として導入している例が多々見られます。
そこで今回は、サンフランシスコですでに導入されていて、生活の一部として使われているロボットテクノロジーを紹介します。
デリバリーロボット
今日では、AmazonなどのEコマースサービスが一般化したことに伴い、配送量の増加と人材不足により宅配サービスのコスト増加が問題化しつつあります。特に集配センターからエンドユーザーまでの「ラストワンマイル」での人件費高騰は大きな課題として認識されてきています。
実際に、配車サービスのUberのドライバーたちによるストライキがロサンゼルスで発生しましたが、Uber Eatsにも同様の問題があります。既に英国や台湾でもUber Eatsの配達員によるストライキが決行されています。
同様に日本でも先日、Uber Eatsの配達員のための労働組合ウーバーイーツユニオンが結成され、世界中で配送のコストが上がってきているようです。
また、環境意識の高いサンフランシスコ・シリコンバレーエリアの人々は、宅配サービスの増加に伴う排気ガスの増加やエネルギー問題、交通量の増加も問題になっています。こういった問題を、テクノロジーの力を使って解決する手段の一つとして、デリバリーロボットが注目されているのです。
サンフランシスコ市では、基本的にデリバリーロボットが市内の道路を走行することは禁じられていのですが、近年いくつかのスタートアップ企業が導入に向けて準備を進め、実証実験の申請を行っています。実際に許可を既に得た企業もあり、本格的なデリバリーロボット導入の兆しが見えてきています。
Starship Technologiesのデリバリーロボット
Starship TechnologiesはSkypeの共同設立者である Janus FriisとAhti Heinlaによるフードデリバリーロボットのサービス展開を目的としたサンフランシスコのスタートアップ企業です。Starship Technologiesは既に、シリコンバレーの一部地域及びサンノゼやアメリカの他都市、さらにロンドン等のアメリカ以外の国でもサービスを展開しています。
Starship Technologiesはモバイルアプリも開発しており、ユーザーはこのアプリを通じて提携しているレストランからメニューを選び、配達を依頼・注文します。その後、ロボットがお店まで食事を受け取りに行き、指定した地点まで運んでくれるので、ユーザーはアプリで食事を注文後に受取指定地点で待っているだけで良いのです。
さらに今後のサービス展開についても意欲的で、今後は全米の大学にも拡大していく準備をしているようです。先日、4000万ドルの資金調達にも成功し、今後ますます注目されそうです。
PostmatesのServe
Postmatesは、サンフランシスコに本社を置くスタートアップ企業です。2011年に食品宅配サービスとしてスタートし、現在では全米でサービスを展開しています。
現在、自社サービスは人による配達を行っていますが、今後、ロボットによる配達に切り替えていく展望です。その為に開発されたのがServeというデリバリーロボットです。
Postmatesによると、Serveは「Lidar(ライダー)」という、光による測距センサーを用いて周囲の状況を検知していると言います。これは自動運転でも使われている技術です。
そんなPostmatesは、2019年の8月にサンフランシスコ市内の歩道でフードデリバリーロボットのテスト走行に関する申請の許可を受けました。まさにこれから実証実験が始まろうとしています。
デリバリーロボットServeは可愛らしい外見が特徴的。近いうちにこのロボットたちが市内を走り回っている姿が見れるかもしれません。
(blog.postmates.comより抜粋)
Kiwi CampusのKiwibot
Kiwi Campusはカリフォルニア大学バークレー校のスタートアップ企業です。カリフォルニア大学バークレー校のスタートアップ支援プログラムであるSkydeck acceleratorの支援を受け、スタートしました。
Kiwi Campusのサービスも、ユーザーがアプリを通じて、レストランのメニューの配達を依頼します。そして、フードデリバリーロボットKiwibotがユーザーの指定地点まで食事を運んでくれる、という仕組みです。Kiwi Campusによると既に150台のロボットが稼働しており、実際に大学のキャンパス等でKiwibotを見ることができます。
Kiwibotは便利という点だけでなく、愛着という点でも学生から受け入れられています。以前、あるKiwibotが火を噴いて壊れてしまったことを受けて、バークレーの学生たちは、そのKiwibotの為に追悼を行ったのです。ロボットの追悼というのもおかしく思えるかもしれませんが、日々、献身的に食事を届けてくれるロボットに愛着を持ち、感情移入するのも自然な話なのかもしれません。
移動手段としてのロボットテクノロジー
通勤や移動などにもロボットテクノロジーが浸透しています。近年、サンフランシスコ近辺でよく見かけるのが、電動のスクーターやキックボード、一輪車といった乗り物です。これらは新しいガジェットとして、新しい物好きのサンフランシスコ市民に愛好され、普及しつつあります。
さらにサンフランシスコでは、通勤ラッシュの対策や環境への配慮などからこれらの電動スクーター、キックボード、一輪車を選択する人が増えてきているのです。
また、これらは単に物珍しいガジェットではなく、新たなビジネスも生み出しています。LimeやBirdをはじめとした電動スクーターのレンタルサービスです。モノを所有する必要がなく、アプリを利用して簡単にレンタルできる仕組みが整っているため、あっという間に普及しました。
これらは車道を通るため、車を運転する人からすると安全性を疑問視する声もあり、法整備などの問題は残ってはいますが、新たな市民の移動手段として生活の一部になりつつあります。
InMotion
InMotionは電動スクーター等を開発している企業です。元々は国際的なサッカーロボットの競技である、RoboCupに参加していたチームが始めたスタートアップ企業です。RoboCupはロボット技術の促進を目的としたロボット競技会として知られており、2050年までに人間のFIFAワールドカップチャンピオンチームに打ち勝つロボットチームを作ることを、最終的な目標としています。ここで培われた技術が、技術革新にとどまることなく、実際にサンフランシスコで生活の一部として取り入れられてきているのです。
サンフランシスコでよく見られるのはInMotionの電動一輪車です。自転車に比べて小型なので(重量はかなりありますが)、バス等の交通機関や店内に持ち込みやすい利便性もあります。
古いタイプの物だとパワーが足りず、坂の多いサンフラシスコの町中を走るのは苦労するかもしれませんが、公園等で平地を走るのであれば十分走行できます。
筆者もInMotionの電動一輪車を使用して通勤、週末の移動をしています。一輪車が自動でバランスを取ろうとするので、それに慣れるまで初めは多少の練習が必要ですが、コツをつかめばとても快適に町中を走り回れます。
まとめ
技術をただ高めることだけに留めるのではなく、人がもつ問題を解決してこそ、その技術・サービスに価値が生まれます。ここサンフランシスコ・シリコンバレーには人を中心にするマインドセットがあるからこそ、このようなスタートアップたちが人々の生活に入り、受け入れられ始めているのではないでしょうか。
また、筆者は前述のRoboCupに参加していた経験があります。その経験上、ロボット開発は、トライ&エラーの繰り返しと言えます。実験室でどれほど調整しようとも、実際に運用すると予期せぬ問題が次々と見つかり、現場への適用性や技術者の応用力を試されることもままあります。そういった開発スタイルは、チャレンジとイノベーションを信条とするベイエリアの気風にマッチしていると思います。改めてテクノロジーとイノベーションが相乗効果で育っていく場所なのだと思います。
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