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Raspberry Piでできることとは?海外のIoT開発事例7選
スマートフォンの次のトレンドが、IoT(Internet of Things)であることに異論を挟むものはいないだろう。ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)では、IoTの祭典と呼ばれるほどIoTの製品で埋め尽くされた。そしてこれは、一部のコアなファンだけが楽しむものに留まらない。
2020年を目処に一般家庭の家や自動車など身近なところにIoT製品があふれてくると予測されている。そんなIoTの開発に重要な役割を担うシングルボードコンピュータの1つ「Raspberry Pi」を事例と共に紹介する。
スマートフォンアプリよりも困難なIoTプロダクトの開発
スマートフォンのアプリとIoTプロダクトの開発における大きな違いの1つと言えば開発コスト。現在、スマートフォンアプリの開発コストは、ストレージやサーバなどのクラウドサービスの発展によって驚くほど低くなった。
インターネットの初期とは違い、サーバに多額の費用をかけたり、インフラエンジニアを雇ったりしなくても、現在サービスの開発が可能であるからだ。
一方で、IoTはソフトウェアだけでなくまずハードウェアを開発する必要があり、スマートフォンアプリと比べてコスト面でのハードルが高くなってしまう。つまり、製品化や量産コストが高いことはもちろん、プロトタイプ開発も簡単ではない。
そんな中、徐々にハードウェアを開発する環境が整ってきている。まず第一に、3Dプリンタやレーザーカッターなどが低コスト化し普及してきている。それに加えて注目すべきは、IoTの頭脳として、シングルボードコンピュータ、いわゆるマイコンの高性能化&低価格化である。その中でも代表格と呼べるのがRaspberry Pi(ラズベリーパイ)だ。
Raspberry Pi(ラズベリーパイ)とは
Raspberry Pi(ラズベリーパイ)はARMプロセッサを搭載したシングルボードコンピュータである。性能が違う複数の製品があり、価格は若干異なるが、どれも5,000円未満で購入できる。大きさは名刺サイズで、重さはわずか45g、また電圧は5Vの電源で動作する。
これはスマートフォンの充電器と同じ電圧であり、乾電池でも動作できる。こう聞くと、Raspberry Piのことを、LEDをチカチカ点滅させたり、ラジコンを作ったりというような、電子工作愛好者向けのオモチャと思っている人も多いかもしれない。
しかし、Raspberry Piの実態は、高性能コンピュータだ。まず代表的なOSであるLinuxを搭載できる。そしてなんとHDMI出力を持つため、ディスプレイをつなぐことも可能。
さらに、USBポートを持ち、マウスやキーボードを使っての操作も行える。LANポートを持ち、インターネットにも接続可能だ。Webサイトの閲覧も行える。驚くべきことに、Microsoftは、次期OSであるWindows 10のRaspberry Piへの無償提供を発表し注目を浴びた。
Raspberry Pi、ディスプレイ、マウス、キーボード、USB小型無線LANアダプターと各種ケーブルのみで弊社オウンドメディアfreshtraxを閲覧
インターネットに接続され、一昔前のPCと遜色ないレベルの処理能力を持つRaspberry Piを使ったプロダクトは、もはや趣味の領域を超えてきている。数十年前から趣味でラジオやラジコンを作る愛好者がそもそも存在しており、秋葉原には電子部品を販売する店舗が多数見られる。
その電子工作の愛好者がRaspberry Piなどの安価なシングルボードコンピュータを見逃すはずはなく、また、Webやスマートフォンアプリの開発者の中にも興味を示す者が増えておりIoTを自作する愛好者がここ数年でどんどん増えているのだ。では、そんな彼らによって作られたからすばらしいIoT事例を紹介しよう。
Raspberry Piのクールなプロダクト7選
1. 35.5kmの上空からスーパーマンが見た地球を
photo by dave
画像、高度、位置情報を取得する機器を搭載したスーパーマンとバルーンを成層圏まで飛ばし、写真を撮影するプロジェクト。写真を撮るだけだけでなく、高度と位置情報も記録していることが大きな特徴だ。
徐々に上昇していくが、ある高さ以上まで達するとバルーンが破裂してしまい、地表に落下してくる。なんと、最高高度は35.5kmだったそうだ。風の影響を受け、スタート位置とは大きく離れたところに落下してしまうため常識的に考えると発見は困難だが、位置情報を無線で取得できたため簡単に発見できたとのこと。装置全体や飛行記録などより詳細な内容と、作り方は次のページをご覧いただきたい。
Superman Test Flight
2. DIYスマートホーム。ドア、ライト、あらゆる操作を音声で
ガレージやライトなどをiPhoneのSiriを通して音声で操作できるツール。動画はガレージのドアを開くやりとりから始まる。「open garage door(ガレージのドアを開けて)」とSiriに命令すると、「OK I am opening your garage door.(分かりました、ただいま開けます)」とSiriが答え、ドアが開く。他にも、室温の調整、ライトの点灯、テレビのチャンネルの切り替えなど様々な例が紹介されている。
SiriProxyという技術を使うことで、iPhoneのSiriに対して、独自の命令とその動作を追加・設定している。他にもいろいろな応用ができそうだ。YouTubeの動画の説明文内で詳しい説明を行っている。以下のYouTubeのページをご覧いただきたい。
SiriProxy on Raspberry Pi Home Automation Control
3. Google Play Music専用音楽デッキ
Google Play Musicとは、クラウド上に音楽を保存して、それをストリーミング配信で楽しめるサービス。保存した音楽はどこからでも楽しむことができる。このプロダクトは、Google Play Music専用の音楽デッキで、懐かしい小さな液晶ディスプレイを使い、ボタンやツマミで音楽を選択したり、再生することができる。
時代の流れに伴い、CDやMDの音楽デッキを持つ人は減り、ほとんどの人がPCやiPhoneなどで音楽を楽しむようになった。ただ、音楽デッキで音楽を楽しんでいた世代の人々は、PCで音楽を楽しむのは、少し味気ないと感じることもある。使わなくなった古いデッキを改造して、クラウド上の音楽を聞けるようにするのも楽しそうだ。
作者はGitHub(ソフトウェア開発プロジェクトのための、ソースコード等の共有ウェブサービス) において、プログラムのソースコードだけではなく、デバイスの図面のCADデータまで公開してくれている。詳しい作り方は次のページを見てほしい。
Google Play Music Internet Radio (Raspberry Pi and Arduino)
4. 陶芸家待望のスマート窯
Photo By JamesSGao
陶芸用の古い窯に、温度計が取り付け、プロパンガスのバルブを電子制御できるように改造し、Raspberry Piに接続してある。計測した温度に基づいて燃料のプロパンガスの供給流量を調整し、自動的に最適な温度に設定できる、まさにスマート窯である。WiFiに接続することで、その場にいなくても温度の管理や確認をすることができる。
陶芸では、温度調整により作品の善し悪しが決まる部分が大きい。温度調整に失敗すると、焼き上がりにムラが生じたり、割れてしまったりする。
実際に、記事の中でも手動で調整したときは失敗してしまったが、自動調整ではうまく行ったと記載されている。ちなみに、かかった費用は$200(20,000円)程度だそうだ。開発者のサイトはこちら
5. 遊び心あふれるコネクティッドトイレ
トイレを流すたびに、また、トイレットペーパを交換するたびに、その情報がGoogleスプレッドシートに保存される、遊び心あふれるプロジェクトだ。気になるコストは、Raspberry Pi以外で$40(約5,000円)未満だそうだ。
この情報をどのように使用するかまでは説明されていないが、トイレットペーパの在庫管理を行ったり、1回あたりに利用したトイレットペーパの量を管理するなどの利用ができるだろう。
似たコンセプトとしてはトイレの空き情報をリアルタイムでWebから閲覧したいという要望がbtrax社内ではあがっていた。詳しい作り方は以下に紹介されている。
Internet of Things Toilet Uploads Events to the Cloud (Raspberry PI)
6. 夢のオリジナルアーケードゲーム
photo by rolfebox
権利関係では問題がある場合もあるが、ファミコンなどの家庭用ゲーム機のエミュレータを自分のPCにインストールして楽しんでいる人もいるかもしれない。なんと、Raspberry PiはLinuxが動作するためエミュレータをインストールすることができる。
ボタンの入力をRaspberry Piで受け付けるようにし、ディスプレイをつなげばオリジナルのアーケードゲームが完成する。作り方の詳細は、以下のページで解説されている。
2-Player Bartop Arcade Machine (Powered by Pi)
7. 世界最小!1/3スケールの初代Macintosh
photo by Adam Rosen
初代Macintoshは、1984年に発売された、伝説的なプロダクトだ。その1/3スケールのMachintoshだ。なんと実際に動作し、MacPaintなどで遊ぶことができる。ファンにはたまらない製品だ。Raspberry Piに搭載されているOSはRasbian(ラズビアン)というraspberry Pi用の標準のOSだが、「Mini vMac」という初代のMachintosh OSのエミュレータが動作している。
余談だが、スティーブ・ジョブズは、プロダクトの外見だけでなく、回路など内部の美しさにも異常とも言えるほどにこだわったことで知られているが、このミニMacintoshの内側は回線でごちゃごちゃしている。次のページで、内部の写真も含めて詳しく説明されている。
Behold The World’s Smallest Working Macintosh!
【おまけ】植物の水やりを世界のどこからでも、チャットツールから
このプロダクトは日本人によるものだが、興味深いので紹介する。植物の水やりをチャットツールのslackから行えるプロダクト。「wpi water」と投稿すると、水が与えられる。インターネットを経由しているので、世界中のどこからでも、水やりを行える。これなら枯らしてしまうこともないだろう。
なお、slackは人気急上昇中の社内チャットサービスであり、様々なWebサービスと容易に連携できることからエンジニアを中心に利用が広がっている。このように、IoTと連携することも可能だ。開発方法は以下のページで詳しく説明されている。もちろん、解説も日本語だ。
Raspberry PI と Hubot で観葉植物の水やりを自動化する
btrax社内でもIoTプロダクトを開発中
少し改善したり、ケースを作るなど見た目もちゃんと作れば製品になりそうなものも多く、驚いたかもしれない。ここで紹介したものは、作成者が詳しく作り方を紹介してくれているものばかりだ。電気工作やプログラミングの知識を少しでも持っている人は、自分でも作れそうだと感じたものも多かったと思う。ぜひチャレンジしてみてはいかがだろうか。
btrax社では、IoTプロダクト開発とそのコンサルティングのノウハウを蓄えるため、IoT製品の調査だけではなく、プロトタイプ開発を行っている。そのため、日頃からRaspberry Pi等のシングルボードコンピュータの利用を行っている。また日本企業のクライアントと協同してサービスやプロダクトを作るプログラム「イノベーションプログラム」を実施中。
詳細はこちら「〜日本の企業に世界トップレベルのイノベーションメソッドを〜 btrax(ビートラックス)が体験型イノベーションプログラムを提供」から。また近日中に自社の事例も紹介する予定である。
photo by Digitalarti
CES 2025の革新を振り返りませんか?
1月11日(土)、btrax SFオフィスで「CES 2025 報告会: After CES Party」を開催します!当日は、CEOのBrandonとゲストスピーカーが CES 2025 で見つけた注目トピックスや最新トレンドを共有します。ネットワーキングや意見交換の場としても最適です!