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シリコンバレーに来るならスーツは着ない事
日本からビジネス目的でアメリカに訪問される方のが多くが、国内での常識に合わせスーツを着用している事が多い。
しかし、こちら西海岸,では、スーツを着ている人を見る事が非常に少ない。
特にシリコンバレーエリアだと、天候が良い事もあり、一年中Tシャツとジーンズで仕事をするのが一般的である。
少しフォーマルな場所に行く場合であってもビジネスカジュアルと呼ばれる、ジーンズにジャケットやスラックスにワイシャツなどのスタイルが多く、上下が揃ったスーツで決める事はかなり稀である。
スーツを着ていると不審者?
カリフォルニアでスーツを着ているのは、金融系か弁護士、そしてセールスマンか就活中の人等の少数派になるので、テクノロジー系の企業が密集するこの地域では、逆にとても浮いてしまい違和感を持たれる。
サンフランシスコのカフェでスーツでWindowsのパソコンを使っていると不審者に見える。スタートアップのイベントにスーツで入ろうとすると怪しまれて入り口で止められる可能性もある。
西海岸スタートアップはカジュアルなスタイルが “正装”
米国でのこのカジュアルなスタイルは特にシリコンバレーを中心とした西海岸に多く、特にテクノロジー系のスタートアップ企業ではかなりスタンダードとも言える。人と会って営業するよりも、プロダクト作りに専念するのが一般的に広がったからだろう。
その原因は国土の広さに。アメリカと日本の国土の違いをおさらいしてみよう。
ざっとこんな感じである。
アメリカの国土は日本の約26倍。
ニューヨークからサンフランシスコまでは飛行機で片道6時間。3時間の時差がある。近そうに思えるロサンゼルスからサンフランシスコまでも飛行機で1時間以上かかる。サンフランシスコ – シリコンバレー間だって、車で1時間以上かかる。
これはどういうことかというと、簡単に足で稼ぐ営業ができないということ。では、どのようにして顧客やユーザーを集めれば良いのか?
そう。プロダクトの質、ブランド力、マーケティングにフォーカスするしかない。
足を使った営業力に頼れない分、他の方法でユーザーを集めてくるしかないのだ。
だから自ずとプロダクトの質が上がり、重要な差別化要素であるデザインおよびデザイナーの役割も上がる。結果として、デザインバックグラウンドを持つ人材の重要性が高まり、経営陣にもどんどん採用される…という感じ。
特に短時間で急成長が求められるスタートアップに関しては、一気にユーザーを集めなければならないのだ。営業に頼っている場合ではない。
と、いうこともありスタートアップ界隈の人たちはスーツを着る機会がほとんどない。
スタートアップの原動力は既得権益に対する反骨精神
そもそもスタートアップ系の人達はコーポレート (大企業) に対する反逆意識が強いのでスーツを着る事を極力避けようとするし、ネクタイをする機会などオシャレなパーティーの場ぐらいしか無い。
スティーブ・ジョブスが生前愛用していたジーンズに黒のタートルネック、白のスニーカーの組み合わせもこの辺りではカジュアル過ぎるという事は全く無い。Meta CEOのマーク・ザッカーバーグも一年中同じデザインのTシャツやパーカーを着ている事で有名。
東海岸ではスーツもスタンダード
その一方で、ニューヨークを初めとした東海岸や多くの大企業では、日本の企業と同じく、スーツを着る事が常識とされているケースも少なくはない。
やはりビジネスの場においては、スーツを着る事が日本でも米国でも一般的にはいまだにスタンダードとされている。これに対して、最近興味深い研究結果がカリフォルニア州立大学ノースリッジ校から発表された。
同校の研究によると、スーツを着ている人の特性は、
- 権力を誇示したがるが、他の従業員とのコミニュケーション量が少ない
- 物事の詳細よりも概念的な考え方をしがち
- 具体的なデータや事実ではなく主観に頼った決断をしがち
である事が判明したという。
これらの特性は、いわゆる大企業病と呼ばれる内容に似ている。
反対に速いスピードで物事を進めるスタートアップの人々は、個々のステータスよりもチームワークを。全体的な概念よりもプロダクトの詳細を。主観よりもデータや事実に基づく決定を重要視することから考えても、彼らにとってふさわしい格好を職場でも実践していると言えるだろう。
米国の大企業の一部でもスタートアップ的カルチャーを推進する為に、スタッフにこのカジュアルなファッションスタイルを推奨する動きも出て来ている。
GAFAなどシリコンバレーの多くの企業が次々に速いスピードでイノベーションを生み出している事にならい、まずは見た目からスタートアップ的カルチャーを根付かせることで、イノベーションを喚起しようと言うのが狙いである。
実はこのスタートアップ的ファッションスタイルとその効果については、アメリカに先駆けて、日本国内でもかなり以前より一部の人々によって実践されていた方法である。
かつて日本発のノベーターの代名詞であった本田技研の創設者、本田宗一郎氏は現役時代自ら他のスタッフと同じ純白のつなぎを着て、現場にて若手スタッフと一緒に汗を流した。
社長も他のスタッフと同じ服装にする事で、同じチームの一員としての意識を根付かせ、無駄な緊張感を排除するのが目的だったという。これは正に現代のシリコンバレー周辺のスタートアップが行っている方式と類似している。
日本からスーツでこちらに来ようと考えている方は、是非カジュアルな服装の準備も併せて行う事をお勧めする。
そうする事で現地の人々とも違和感無くとけ込む事が可能になるし、イベントや訪問でも彼らとのコミュニケーションを円滑に進める事がしやすくなる。
また、現代の日本の職場でも服装のカジュアル化が少しずつ進んでいるが、イノベーションを生み出したい企業は、思い切ってスタートアップ型ファションスタイルを取り入れてみるのも良いかもしれない。
テクノロジー系の地域でスーツを着るほど馬鹿げた事は無い。Tシャツとジーンズで必死にプロダクトを作っている若者がスーツを着ている大人に心を開くもんか – Dave McClure
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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